パリのアメリカ人【2020年京都公演一部、福岡公演中止】
劇団四季
KAAT神奈川芸術劇場・ホール(神奈川県)
2019/03/19 (火) ~ 2019/08/11 (日)公演終了
満足度★★★
ヒロイン、リズ役近藤合歓(ねむ)さんのあちらこちら小鳥のように跳びまくる可憐さ。研ぎ澄まされた肉体芸術、バレエの魅力。ラスト20分間のショーは圧巻。大して汗もかかず息切れもせず、これをこなしているキャスト達に大拍手。
ジャガーの眼
劇団唐組
雑司ヶ谷鬼子母神(東京都)
2019/05/18 (土) ~ 2019/05/26 (日)公演終了
満足度★★★
全三幕。各40分×3と休憩10分×2で2時間20分。
サンダルその物を探偵事務所にしている一人の探偵。車椅子に乗せた等身大の蝋人形と共に現れる前の事務所の社長。ずっと肘を曲げ腕を宙に浮かせている蝋人形は仮面を外すと月船さららさん。その蝋人形、サラマンダと探偵はかつての恋仲とのこと。亡き恋人の移植された角膜を追う死者の女。その角膜を移植された若い男と恋人。死にかけた野犬の心臓を自らのものと交換しようとする少年(唐さんの娘、大鶴美仁音さん好演)。こうして登場人物を挙げるだけで頭がくらくらする。一人一人がジョージ秋山の漫画並みにキャラが立ち、完全にイカれた妄想狂のくんずほぐれつの取っ組み合い。人外『アベンジャーズ』のルールなき論争戦バトルロイヤル。とは言え不思議なことに最後まで観てしまうと叙情的な一篇の詩を聴いたような余韻を感じてしまう作劇。人に何かを伝えることの摩訶不思議。
劇中歌『死ぬのはみな他人、愛するのもみな他人』。自分と他人しかいない世界で何を求めて彷徨うのか?
1001
少年王者舘
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2019/05/14 (火) ~ 2019/05/26 (日)公演終了
満足度★★★
無数の物語の狭間で何かを探し続ける青年や少女の物語。今敏監督の『パプリカ』のような感覚。夢の中でこの舞台を観ている自分を俯瞰して観ている自分。無限の入れ子細工。時間と空間とが無数に重なって存在している多重世界。照明音響美術投影、最高峰の技術で見事にそれを表現。こんな方法論があったのか?とアイディアに感嘆。目の前でありとあらゆる世界の可能性を実感できる。それと共に統合失調症患者の話を一方的に聴かされているような苦痛も。何とも暴力的な舞台。『脱構築』『差延』、ポスト構造主義的な繰り返し喜劇なのか?神秘家グルジェフのワークやニジンスキーの手記を連想する。
LADYBIRD,LADYBIRD
アリー・エンターテイメント
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2019/05/02 (木) ~ 2019/05/06 (月)公演終了
満足度★★★★
何度観ても引き込まれる。子供向けと思わずに是非一度観て頂きたい。単純な話のようだが、幾重にも練り込まれた構造をしている。孤独なお婆さんに捕らえられた虫達の物語。虫籠の中で彼女の失った家族や友人の名前をつけられ、思い出話を聴かされている。テーマは耐えきれない苦しみとどう向き合うか?であろう。勿論答など無いのだが、葛岡有さん演じる主人公が『LADYBIRD,LADYBIRD』と歌う度に何かを感じる。毎年キャストが変わる毎に作品が厚みを増していくような。来年も観に行きたい作品。
りさ子のガチ恋♡俳優沼
バードランドミュージックエンタテインメント
新宿シアターモリエール(東京都)
2019/04/19 (金) ~ 2019/04/29 (月)公演終了
満足度★★★★
初演も観ているので、二回目。新垣里沙さんの代表作になりそうなはまり役。大竹しのぶさんのような怪女優になっていく予感も。本当、手の動きや目線といった細かい演技が凄い。常に何かをやっているので目を奪われる。ヲタ仲間、方言が似合う辻村りかさんが可愛かった。初演の階戸瑠李さんも良かったが、グラドル役の椎名歩美さんもリアルで宜しい。客を煽りに煽る。2.5次元舞台俳優の追っかけをしている主人公。グラドルとの同棲の噂を耳にしてから狂気に満ちていく。女性目線の方が楽しめる舞台だと思う。クライマックスの新垣里沙さんの捲し立ては感動すら覚える。
在庫に限りはありますが
劇団た組
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2019/04/10 (水) ~ 2019/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★
客足の少ないハンバーグ料理店の店主夫婦が主人公。夫は人のいる前で食事を取ることが出来ない。妻は性欲が強いのに夫との行為に抵抗感が。向かいのライバル店は大繁盛。あまりの人気に人肉を使っているとの噂までも。夫役、橋本淳氏が実に良い。黒沢清作品を思わせる存在感。妻役、徳永えりさんはかなりの別嬪であった。ドアはなく、看板とドアノブ二つが天井から垂れ下がっている独特なセット。ホン・サンス監督作品のようなコリアン・ニュー・ウェーヴっぽい雰囲気。他愛のない会話の中に何かが紛れている。夫婦の信頼感の垣根が壊れる時、待つのは悲劇か?奇妙な味の作品として秀逸。お馴染みの嘔吐あり。
幻想寓意劇 チェンチ一族
演劇実験室◎万有引力
ザ・スズナリ(東京都)
2019/04/05 (金) ~ 2019/04/14 (日)公演終了
満足度★★★★
超面白い。何となくのイメージでつまらない実験演劇(自己啓発センターじみた)への不安から、敬遠していた自分を恥じる。才気迸るデカダンス・エンターテインメント。BUCK-TICKやキュアーのファンなら嵌まる世界がそこにある。ヒロイン、ベアトリーチェ役の森ようこさんが凄い。夢でうなされるレヴェルのインパクト。中世イタリア、欲望の限りを尽くす悪魔のようなチェンチ伯爵。サディズムの権化の如く実の女房娘までも凌辱し虐め抜く。到頭、親殺しを選択せざるを得ないベアトリーチェ。後半は裁判に掛けられる彼女達の血を吐くような叫び。PUNKなメイクから肩甲骨を誇張した舞踏。J・A・シーザー氏の優れたバランス感覚によって普遍的なものになり得ている作品。舞台と客席の間にちょこんと置かれたキャベツがまたいい味。
乱
チームジャックちゃん
シアター風姿花伝(東京都)
2019/04/03 (水) ~ 2019/04/08 (月)公演終了
満足度★★★
全員女性キャストバージョンの『乱れ髪』を観劇。主演・土方歳三役の加々見千懐さんの眼力。力ずくで客を捩じ伏せる。まるで富野由悠季作品のように戦場にて繰り広げられる論争戦。武士道とは?新選組とは?正しい国家の在り方とは?滅ぶことが歴史上約束されている者達が虚構にて放つゾクゾクする色気。男装女子であるが故に虚構性は高まり、歪な思想や過度の情熱がフェティシズムと揺らめき立ち昇る。キーパーソン榎本武揚役の竹本優希さんが物語の舵を取る。不思議な力を持つアイヌの娘・チシタ役の齋藤かずえさんも印象的。襖と障子と松の木だけで見事に五稜郭の戦いを表現するアイディア美術。大井川皐月さん、安井茉穂さんなど各々見せ場が作られている。お薦め。
毛皮のマリー
パルコ・プロデュース
新国立劇場 中劇場(東京都)
2019/04/02 (火) ~ 2019/04/21 (日)公演終了
満足度★★★★
『白痴』の原節子を思わせる美輪明宏さんの存在感。片乳を露出したままのドレス姿。年齢と共に凄味を増す『毛皮のマリー』。もう寺山修司の作品というより、美輪さんそのもの。観劇後、涙を流す女性客が多かった。一度は観ておいた方がいい。外の世界の美術が効果的。
TOCTOC あなたと少しだけ違う癖
株式会社NLT
ザ・ポケット(東京都)
2019/02/28 (木) ~ 2019/03/10 (日)公演終了
満足度★★★★
よく練られた脚本、これは面白い。エスプリの効いたフランス喜劇。前半は丁寧なキャラクター設定の解説。後半はその応用が細かく複雑に絡み合ってハイテンポの交響楽に。強迫性神経症の患者六人が医師の到着までの間、お互いの病状について語り合う。細かい約束事がラリーの応酬のように見事に展開。会場の笑いをかっさらったのは、同じ事を二度繰り返して言う強迫観念の女役、井上薫さん。何となくNOKKOを思わせる彼女が観客を爆笑の渦に叩き込む。潔癖症の山崎美貴さん、心配性の中村まり子さんも秀逸。もう一度観て細かい笑いを確認したい程。ルー大柴氏のパブリック・イメージでこれを見逃すと後悔する作品。
イーハトーボの劇列車
こまつ座
紀伊國屋ホール(東京都)
2019/02/05 (火) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★
松田龍平氏が良かった。理想の日本人像とも言える宮沢賢治。彼の思想は高畑勲、宮崎駿に受け継がれ今も尚、正しい人間の在り方の象徴のよう。勿論、現実の賢治はそんな格好いい訳もなく。高等遊民の自己弁護的ユートピア論は太宰治始め日本文学お馴染みの定番。美化した現実逃避を必死で続ける無力な木偶の坊の姿に、松田優作の『それから』がだぶって見えた。土屋佑壱氏の出演シーンがかなり湧く。紅甘さんが印象的な二役で美しい。エスペラント語の歌が秀逸。長い割に散漫な印象になってしまった物語。『思い残し切符』の謎に惹き付けられる。
ビョードロ
おぼんろ
新宿FACE(東京都)
2019/02/14 (木) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★★
何となくティム・バートン×ジョニー・デップの『シザーハンズ』を想像していたら、全くの別物。筋肉少女帯の世界観。この世を憎み滅ぼすルサンチマン・ファンタジー。真の主人公、ジョウキゲンの登場から物語は加速する。わかばやしめぐみさん演ずるジョウキゲンの恐ろしいこと。トラウマ級のキャラ設定に呆然。子供騙しではない、濃密な世界観。戦争兵器としての病原菌作りを生業としているビョードロという民。一族を皆殺しにされた最後の生き残りのほんのひとときの月夜のお話。土方巽を思わせる軟体サーカス団の呪術的舞踏がまた凄い。
月の谷 赤い石
秦組
d-倉庫(東京都)
2019/02/06 (水) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★
『赤い石』を観劇。主演・新垣里沙さんの何とも不可思議な存在感。俳優だと森田剛氏にも似たものを感じたことがある。ふてぶてしくも目が離せない、技術では表せない禍々しい『何か』。この人は一体何を演じていくことになるのか、興味は尽きない。(多分表象に現れるものとは全く別のことをしている。)横山一敏氏の醸し出す重厚な雰囲気が虚構を肉付けしていく。名前が判らないのだが、女中頭役の女優さんの怪演が凄かった。デフォルメされた動作に場内がどーんと弾ける。壮大な因果の輪を連想させる物語世界。他の作品にも興味が湧く。生演奏が見事。
陰獣 INTO THE DARKNESS
metro
赤坂RED/THEATER(東京都)
2019/01/17 (木) ~ 2019/01/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
江戸川乱歩マニア必見。乱歩の脳内世界が見事に再現されていて至福。純粋な『何か』に無力なる理屈で立ち向かう明智小五郎の葛藤。大槻ケンヂ氏の言葉を借りるまでもなく、乱歩世界は社会不適合者の妄想である。天願大介氏のパズルのような演出が冴えに冴える。明智小五郎役いわいのふ健氏が実に良かった。月船さららさんは愛らしいキチガイをやらせると絶品。若松力氏との濡れ場は美しい。乱歩は人間そのものを的確に捉えている為、時代が移り変わっても通用するのだろう。観れることに感謝。
深沢ハイツ302~もう一つのニュートンの林檎~
Sun-mallstudio produce
サンモールスタジオ(東京都)
2019/01/05 (土) ~ 2019/01/09 (水)公演終了
満足度★★★
期待通り面白い。タイムリープものとして判り易く観易い。『オペラ座の道化師』みまさんのアコーディオンと生歌が凄すぎる。物語世界をはみだす程の破壊力。必見。主演ヒロインの今村美乃さんの存在感が楽しいので、話の流れがテンポよく進む。人気女子アナ役の那海さんも流石。ほぼワン・シチュエーションでこれをやるアイディアが良い。
Love 駈込み訴え
JAM SESSION
アトリエファンファーレ東新宿(東京都)
2018/11/06 (火) ~ 2018/11/11 (日)公演終了
満足度★★★
成る程こんな演出もあるのか。何もない舞台上、7人のユダが口々に訴え続ける。“あの人…”は、“あの人…”が、“あの人…”を、“あの人…”に。愛する者を裏切るユダの心の葛藤。男女入り乱れ役者陣皆ボロボロ泣きながらの表現。嫉妬、失望、独占欲、自己愛、自虐。アイドルの熱狂的ファンの心理にも似て。『愛』とはそもそも何なのだ?がテーマのよう。時節柄、オウムを絡めるかな?と思ったがそれはなかった。
中国の不思議な役人
劇団☆A・P・B-Tokyo
明石スタジオ(東京都)
2018/11/01 (木) ~ 2018/11/06 (火)公演終了
満足度★★★★
寺山修司作品の中でも判り易く面白いのでお薦め。地獄の娼婦宿にさらわれた妹を救う為、兄は役人殺しを請け負う。ただ、その役人は不死であった。娼婦宿はエロ・グロ・ナンセンスのオンパレード。拾ったカストリ雑誌で読んだ丸尾末広の漫画のよう。飯塚美花さん初め娼婦達が客席にまで雪崩れ込み観客との垣根を破壊していく。ヒロインの花姚役、渡邉結衣さんが素晴らしい。よくこんな娘捜してきたなと驚いた。まだ中一、末恐ろしい。兄の麦役の横木安未紗さんが出ていると寺山修司度が高まる。出演している役者全員、実生活が見えない。舞台上にしか存在しないのではないかと思う程。
黄金バット~幻想教師出現~
劇団唐組
雑司ヶ谷鬼子母神(東京都)
2018/10/27 (土) ~ 2018/11/04 (日)公演終了
満足度★★★
怒濤の展開、面白いのか面白くないのかすら判断不能になる。ただ見終わった後は凄い充足感に包まれた。幻の学校に消えた教師を、かつての生徒達が思い思いの方法で捜していく。キーとなるのが、『ゴッホは何故自分の耳を切ったのか?』である。初期永井豪のキャラクターを使ってつげ義春が描いた劇画のよう。第二幕、隻腕の教師、月船さららさんの登場から狂気が炸裂。完全に気が違ったオーラに客席の空気が呑まれた。藤井由紀さんとの対決は見もの。福本雄樹さんが何でもこなせる良い役者だなあと感心。 ラストの光景の美しさは必見。
紅姫物語【ご来場ありがとうございました!】
劇団えのぐ
萬劇場(東京都)
2018/10/24 (水) ~ 2018/10/28 (日)公演終了
満足度★★★
面白かった。役者のレベルが高く、細かい演出がしっかりしている。妖怪と人間の純粋なる恋物語。劇中劇にて『椿姫』をも想起させる。物語の展開が想像の斜め上を行くので飽きさせない。噺家役の立田聡実さんの口上が実に良かった。キャラ一人一人に何かしらを持たせていてその他にはしていないのが良い。
宮沢賢治「銀河鉄道の夜」
楽園王
サブテレニアン(東京都)
2018/10/10 (水) ~ 2018/10/14 (日)公演終了
満足度★★★
観に行って良かった。下に電球を吊るした椅子が十二脚。殆どそれだけのセットなのだが、夢うつつの世界にいざなわれていく。ずらした句読点、妙なイントネーションで語られる宮沢賢治の世界。エッシャーの騙し絵からのインスパイアということでこちらも細かい部分にも勘繰ってしまう。『銀河鉄道の夜』の世界と一組のカップルの物語とが同時進行していく。ヒロインの藤田早織さんが綺麗だった。宮沢賢治論としても興味深い。敢えて欠落させている感覚が夢の中のよう。ラストのジョバンニが印象的。