チクリ、冬が胸をさす。 公演情報 ゴツプロ!演劇部「チクリ、冬が胸をさす。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    これを見逃す手はない。あっと驚く構成の妙。巧みな脚本に唸る。この世はまだまだ未知なる才能とアイディアに溢れ返っている。感心した。幾らでも物語を語る方法論に開拓の余地はある。
    昔、「メロディーは出尽くした」と言われた音楽界だが、ハウス(DTM〈Desktop Music〉)が台頭しアレンジを変えることによって無限に選択肢は増えた。「物語は尽きた」とされた映画界にはタランティーノが登場し、種種雑多なる語り口の変化で更に奥行きが拡がった。
    そんなことを今更思い起こす程、気持ち良く畏れ入った。お薦め。

    氷や雪の中に蝋燭を灯す町のイベント、“雪灯り(ゆきあかり)”が名物の長野のペンションが舞台。幻想的な光が雪の白と夜の黒を溶け合わせ、無数のキャンドルが放つ神秘的な炎の揺らめきに世界は妖しく照らされる。願い事をすると、それはきっと叶うと云う。
    ペンションを始めたばかりの男(久保俊貴〈としき〉氏)と今週でペンションを終業する女(林彬〈はやしあきら〉さん)、二組の物語が同時進行で語られる。下手にある階下と上手の階段を上った二階を役者陣は頻繁に行き来する。空間を立体的に活用、声だけのシーンなど上下左右かなり広く使われるステージ。
    練りに練られた構成とスピーディーな暗転による場面転換、張り巡らされた伏線、上質なミステリーのような演出が見事。面白かった。

    ネタバレBOX

    葉山あかりさんは“大衆的な”加藤綾子のような丁度いい可愛らしさで舞台を彩る。おっとりした九條愛美(まなみ)さんには博多弁でがなる見せ場あり。(ビンタはぬるいが)。二つの空間を跨ぐような謎の女、汀紗(なぎさ)さんへの意味深な演出から、観客は少々注視して観ることとなる。

    ラストは美しいが、「『桟敷童子』なら、この百倍は用意しただろうな」なんて思ってしまった。欲を言えば宗教的な厳かな力を意識させる伏線の種を丁寧に撒き、物語の収斂と共に説得力のある“卒業”を、約束された福音として降臨させたかった。それには音楽の使い方が重要。

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    2022/02/24 13:56

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