実演鑑賞
満足度★★★
3年半前、初演を観ている。受付の人が凄い綺麗で、舞台が始まるとヒロインの藤田早織さん(現・館山サリさん)であった。そんなことを思い出しつつ観ていたが、かなりの場面を覚えている自分に気付く。
今回のヒロインの日野あかりさんは真木よう子に見えたり、玉井詩織に見えたりとにかく美人。横顔の鼻のラインがやたら綺麗。役柄は主人公(政井卓実氏)の別れた元カノ、そののち事件に巻き込まれて亡くなったことを知らされる。そんな彼女が夢に現れ、「銀河鉄道に乗って私に逢いに来い。」と誘う。宮沢賢治の『銀河鉄道』の元となった岩手軽便鉄道(現・SL銀河)に思わず乗車するのだが···。
前回より美術や演出を簡略化して、シンプルに刈り込んだ構成。テンポよく観易いのだが、劇中劇が『銀河鉄道の夜』のダイジェスト風で、初演の辿々しい迷宮感が薄れてしまった。「自己犠牲の美学」のエピソードを並べてしまうと途端に話は安っぽく俗っぽく。原作の持つ深く謎めいた魅惑は作者にもはっきりとはしない無意識の想念の渦で、綺麗に解決しない不完全燃焼感が逆にずっと後を引く作品の核心。
死者の魂と世界の果てまで旅に出、鉄道の窓から目に映るのは神秘的な美しき世界の謎。最初から最後までジョバンニの胸の裡をエーテルのように充たしているのは決して癒えることのない蒼き悲しみ。