其ノ街の涯ル 公演情報 中央大学第二演劇研究会「其ノ街の涯ル」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    凄く好きなジャンル。世界がいよいよ終わろうとしている最中、三つの世界の人々が何かに手を伸ばしている様を描く。冒頭、街頭に立つ女性が道往く人々に世界がまもなく終わることを告げる。「最後は貴方の愛する人と一緒に過ごして下さい」と。

    A 現代の日本。女子大生コウは世の中が嫌になり、世界の涯てを目指し山の奥深くへと。そこには野人やら修験者、人外のモノが息を潜め目を光らせている。
    B 三神(さんしん)の支配する中東のような街。三神はただの遊戯として、人間達の五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)を奪って遊んでいる。アケビはこんな世界から脱け出す方法を探る。
    C 神による信仰に支配された街。色付き(異能者)と色無し(普通の人)で差別されている。教祖の説く真理は歪で民衆を苦しめる。マチは病気の妹を救う為、反体制異能者グループに加わり、テロ活動を起こしている。

    三つの並行世界が重なるように存在している。崖にある底無しの穴が向こうへの通路らしい。

    キャスト33名がカーテン・コールで現れるのだが、全員一人ひとり見れば何となく役を把握出来る。これは凄い事でよくも上手に振り分けたものだ。大作映画並みにプロデューサーは有能。

    三神は白のカラコンの上に白目を剝き出すなど土方巽テイストたっぷり。
    マチの病気の妹はこの御時世にゴホゴホ盛大に咳込み続ける演出が興味深い。
    包帯でぐるぐる巻きにされた癩病患者の会話のシーンを投影された字幕で表現。文字が背景に浮かび上がる遣り取りが美しい。
    色付きは身体の何処かに幾何学的な印があるなどの工夫がいい。
    教祖役は綾野剛っぽくねっとりとして、狂気は松田優作の『蘇える金狼』を思わせる。

    これだけの話を全く退屈させない工夫が見事。面白かった。

    ネタバレBOX

    全く本筋に関係の無いコンビニ店長と女子大生(?)店員のエピソードが凄く良かった。世界の終わりに一世一代の告白をする店長と世界の終わりにそれをぞんざいに跳ね除ける店員。「世界の終わりだからこそそこを貫きたいの」、素晴らしい。こういうキャラこそ物語の主軸向き。

    A もうすぐ月が落ちて、世界は滅びる。その事を知った女性アナウンサーは報道管制を破りTVで人々に伝える。「最後は貴方の愛する人と一緒に過ごして下さい」と。人々はそれぞれ思い思いの人のもとへと向かう。コウは全く解り合えなかった父のもとに帰る。
    B 三神は遊びに飽きて別の世界へと向かう。
    C 洪水が起こり、世界は滅びていく。マチは教会の巨大な鐘を落として教祖を暗殺しようとするが、その刹那Aの世界に飛ばされる。牢獄の奥深く幽閉されている教祖の父は最期の力を振り絞って、教祖と修道女の双子の兄弟姉妹(=もう一人の自分)を呼び寄せる。癩病患者として隔離されていた二人、それぞれ魂の融合を果たすかのように一つになる。

    山に隠れ棲むカオナシのような物の怪は世界の終わりにすら誰にも相手にはされない。そんな彼の姿で終幕。

    ラスト、三つの世界が重なって同時に終わる絵が欲しいところ。
    開演時間を勘違いしてギリギリに到着してしまい、すみませんでした。

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    2022/03/11 06:21

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