実演鑑賞
満足度★★★
第一幕75分休憩25分第二幕80分。
1939年、デブ君の愛称で大人気だったロスコー・アーバックル(金田哲氏)のリバイバル上映の企画を、配給会社のデニー(元木聖也氏)にプレゼンしているビリー(小西遼生氏)。全く興味を持たないデニーに、ビリーは自分が助監督として参加していた18年前のサイレント映画黄金時代の日々を語り出す。チャップリンを育てたハリウッド喜劇映画の王様、マック・セネット監督(マギー氏)のもとに潜り込み数々の伝説のスター達との邂逅。監督の嘗ての恋人でもあった憧れの女優メーベル・ノーマンド(壮一帆〈そうかずほ〉さん)はその頃はコカイン中毒に。若き日のビリー(木村達成氏)がサイレント映画に捧げた青春。そして運命の1921年9月3日、「ハリウッドの笑いが止まった日」が訪れる。
ビリーの当時の恋人、サイレント映画のピアノ伴奏者のアリス(桜井玲香さん)が魅力的。この二人のささやかなロマンスが遠く懐かしきセピアの郷愁となりサイレント映画の興亡とだぶっていく。
サイレント映画ばかり観ていた時期もあり、かなり好きなネタなのだが何故か面白くなっていかないもどかしさが続く。配役のせいなのか、構成のせいなのか、もっと盛り上がる筈の場面が淡々と過ぎていく。命懸けのサイレント喜劇映画の狂気の核とは、死屍累々の無名のスタントマンの生き様あってこそ。『雨に唄えば』や『蒲田行進曲』のように。どうもその辺がごっちゃになっているような。KERAのオリジナルは知らないが、翻訳が上手く行っていない海外ミステリー小説を読むようなぎこちなさ。凄く面白い物語が無駄に煩雑なややこしさに阻害されて、観客のもとに届く時にはイマイチ楽しめないものに成り代わる。時折スクリーンに映写される本物のサイレント映画の断片は素晴らしかった。