ミスターの観てきた!クチコミ一覧

21-40件 / 191件中
おとうふ

おとうふ

劇団道学先生

OFF OFFシアター(東京都)

2021/08/27 (金) ~ 2021/09/08 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

5日、下北沢のOFFOFFシアターで上演された劇団道学先生公演『おとうふ』の木綿チームを観に出かけた。これは、知人の役者・もりちえが出演していた関係からである。1993年に中島淳彦によって書かれ上演されて以来、上演のたびに脚色の手が加わり、今回は菅沼岳による脚色による上演。初演と違う点は、登場人物が5人から8人に増えたことらしい。
基本、「おんな三人の芝居」である。あるテレビ局の楽屋というか控え室における売れない役者というかエキストラのというか、そういう関係の女性3人による会話劇に、ADやら彼女たちの(元)夫やら刑事やらが出てきて、3人の会話に肉付けを加えていく。リーダー的ベテラン役者・田島真紀子(もりちえ)がシングルキャストで、残る2人のうち同じくベテランの林場由香里(山口智恵)と新人の柿本千恵美(塚本茉莉子)がダブルキャスト。男優陣も基本シングルキャストという布陣。
舞台設定の関係からAD陣の出番も意外と多く、3人の会話に色々と絡んでくる。
例えば、題名の『おとうふ』は、有名タレントに出すはずだった弁当をADが間違えて彼女たちのところに運び、3人がそれを食べる。弁当のおかずの中に高野豆腐が入っていて、その味付けが濃いという話になっていく。これは味付けだけでなく、3人の人生が濃いと言うことに関わってくる重要な点だ。
さらに、AD2人が柿本の恋人で自殺した橋詰高志と偶然関わり合いがあったこと。
その橋詰の自殺現場に柿本がいたことも衝撃的な告白で、この舞台の締めくくる動機となっている。
上演時間約1時間45分というのは、妥当な長さだろう。

それにしても、中心となる女優3人の熱演が光った。ほとんど舞台に出っぱなし。良い芝居を観せてもらった。

一寸先とちょっと前

一寸先とちょっと前

ONE AND ONLY

cafe&bar 木星劇場(東京都)

2021/08/27 (金) ~ 2021/08/29 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

知人の脚本家・加藤英雄の作品『一寸先とちょっと前』の朗読ライブヴァージョンを観た。舞台上演としては2年前にGフォースアトリエで観ている。「自殺しようとした女性を助けて亡くなった女性の死」の真相を巡り、複数の姉妹関係、不倫、中年夫婦、熟年恋愛といった複雑ながら登場人物が微妙な関係で繋がっている人間模様。生と死、愛と失恋、健常と障害。内容が豊富で、100分の朗読はちょっとキツかったかな。

黒い箱の中に白い箱

黒い箱の中に白い箱

TAIYO MAGIC FILM

すみだパークシアター倉(東京都)

2021/07/21 (水) ~ 2021/07/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

25日、錦糸町にあるすみだパークシアター倉で上演されたTAIYO MAGIC FILMの『黒い箱の中に白い箱』を観てきた。この劇場、自分の好きな劇団である桟敷童子の常打ち小屋で、桟敷童子以外の劇団の公演で出かけるのは初めて。この公演に出かけたのは、出演者の一人に知人の役者・水野以津美がいたことが直接のきっかけであったが、あとから演出の一人に少なからず関わりのある藤井仁人がいたことも知り、ますます期待を持って出かけた訳である。

事前に配布されていたフライヤーでは20分の短編作品を4作品上演すると言うことだったが、実際に蓋を開けてみると30分近い作品が4作品と、なかなかボリュームのある内容になっていた。

4作品は、ケーキ屋が舞台となり店長と常連女性客との恋愛、町内会イベントを巡っての店長と妹の下品な努力、そしてYouTubeに動画をアップしてケーキの売り上げアップを狙うバイトの仕組んだ偽強盗劇と3つのエピソードが入り組んだ『CEKE』、消極的な自分と積極的な自分との葛藤をミュージカル仕立てでまとめ上げた『歌いかけてくる』、醜男と醜女の純愛に割って入ってくるイケメン男性のその後とその娘の自殺使用とする前の告白劇となる『夏に雪が降る』、結婚に反対だと思っていた生真面目な父親が結婚前の娘に見せる一世一代のギャグをかます『ウエディングドレス』。1作目はドタバタ、2作目はほんのり、3作目は「え、お前あっちの男のその後!?」という思いがけない逆転、4作目は父親が見せる娘への愛情にホロリと涙。
水野以津美は1作目でケーキ屋の店長の妹役でなかなかの好演。演出・藤井は3作目を担当。これは脚本の面白さが4作の中で一番だった。

配布されたプログラムにキャストが載っていたが、役者名でのみで役柄が分からなかったので気になる役者が誰だと断言できないのが残念。
それにしても、臀部をくりぬいたパンツをはかせ、それが下品嫌いな彼女にばれないように店長の腰にしがみついて引き回されていた水野以津美の演技、ご苦労様でした。

七祭〜ナナフェス〜この夏、胸アツ!演劇2本に映画だ、わっしょい!

七祭〜ナナフェス〜この夏、胸アツ!演劇2本に映画だ、わっしょい!

On7

シアター711(東京都)

2021/07/02 (金) ~ 2021/07/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

11日、下北沢のシアター711で上演された、On7第5回公演『おんなな七祭』千穐楽を観てきた。このOn7 という演劇ユニットは、老舗劇団に所属する女優7人がプロデュース公演を行うユニットで、数年前にその存在を知ってから観に行くようになったもので、7人の中に知人は存在していない。ちなみに、7人というのは、渋谷はるか(文学座)、安藤瞳(青年座)、吉田久美(演劇集団円)、小暮智美(青年座)、宮山知衣(テアトルエコー)、保亜美(俳優座)、尾身美詞(青年座)のこと。あえて誰かのファンというなら尾身美詞だろう。なにせ、あのキャンディーズの美樹ちゃんの娘なのだ。

それはさておき、今回の公演は40分の舞台2本と40分の映画1本の3本立て。フライヤーの記述から、舞台2本→映画という構成だと思ったら、実際には映画→舞台2本という内容。
最初に上映された短編映画のタイトルは『うまれる』。これがなかなか重い内容だった。小学校でいじめのために亡くなった娘の亡くなる原因を知った母親が、そのいじめ仲間の子供達を詰問し、母親達に刃物を突きつけ復讐を果たし、自らは娘の通っていた学校の校舎から飛び降り自殺するというもの。これが、生まれる子供、生まれるいじめ、忌まれる憎悪という危険なテーマ。親の愛情を考えるきっかけになって欲しいというプログラムの解説だが、それを考える前にテーマの重さ、死への復讐というものの問題を映像で突きつけられた観客は、上映終了時、じっと押し黙ったままだった。
ここで会場の換気のため5分の休憩が入ったのは、このあと舞台を観なくてはならない観客に取っては救いの時間だったかも知れない。
2つの舞台は各3人の女優が出演し、2つの舞台をつなげる役目を宮下が受け持っていた。
で、1作目はミュージカル仕立ての『夜会』。場所は劇場の楽屋。とある女優とそのマネージャー、そしてマネージャーの姉が演じるのは、マネージャーの姉が実は吸血鬼で、病で残りの寿命が短いことを知ったマネージャーが、姉に血を吸われ自ら吸血鬼になり、さらにそのマネージャーが女優の血を吸い女優も吸血鬼にして不死身の身体にし、マネージャーとして女優を更に売れ混もうという内容。
2作目は、『座れ!オオガミ』。グラウンドで観たこと聴いたことのないスポーツの応援に来ている出場者オオガミの勤務する会社の女子社員3人から成る応援団。なぜそんな応援団が出来たかというと、3人の中に親子ほど離れたオオガミと付き合っている女性がいたからなのだった。その女性のためにも、どこか納得のいかないまま応援を続ける女性達。

映画は重いテーマだったけれど、舞台の方は娯楽とでも言える内容だったかな。観終わってホッとしたのが正直な感想。ただ、舞台に出てきた女優達が映画の役柄とダブって見えてしまったのがちょっと心に痛いところだった。

次回公演も楽しみにしたい。

キネマの天地

キネマの天地

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2021/06/05 (土) ~ 2021/06/27 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

20日、久しぶりに新国立劇場小劇場で上演された舞台を観た。演目は、井上ひさし作『キネマの天地』である。演劇好きの間では有名な井上ひさしの代表作の一つ。

出演者の紹介を兼ね、粗筋お書いておこう。舞台は、松竹キネマ蒲田撮影所の某スタジオ。ここに、超大作『諏訪峠』出演の打ち合わせと称して、監督の小倉虎吉郎(千葉哲也)が4人の人気女優を呼び出す。それは、大幹部の立花かず子(高橋惠子)、お母さんもので有名な大幹部待遇の徳川駒子(那須佐代子)、ヴァンプ役で人気の幹部女優滝沢菊江(鈴木杏)、そして娘役で人気の準幹部の田中小春(趣里)。しかし、この4人を呼んだ本当の目的は、舞台上演中に突然死した小倉の妻であった人気女優・松井チエ子を殺した真犯人捜し。刑事役に下積み役者・尾上竹之助(佐藤誓)を刑事役に仕立てて4人の女優達を責め立てていく。しかし4人には確たる殺人の証拠は亡く、それどころか実は真犯人は肝心の刑事役だった尾上である事が発覚。この過程で、それまでギスギスしていた4人の女優達の連帯感は高まり、最後には揃って銀座に繰り出していく。
実は小倉監督の目論見は、映画撮影前に4人の女優の融和をはかることであって、妻の殺人の犯人捜しは監督の策した細工で、尾上も実は真犯人では亡く監督の指示の元に刑事役や犯人役をこなしていたのであった。

と言う訳で、「松井チエ子殺害の真犯人糾明の集まり」という探偵撃破、実は探偵劇では無かったという訳だ。

舞台成功の鍵は、4人の女優たちがそれぞれの個性をどう描ききれるかと、尾上役の佐藤がどれだけ真に迫った演技ができるかにかかっていたが、さすがベテランというか実力者ばかりの出演者の演技は優れもの。演出も冴えていて、大変見応えがあった。
さすが、新国立劇場の舞台。充実した2時間を過ごさせてもらった。
ちなみに、個人的には高橋惠子と佐藤誓の演技が気に入った。また、那須佐和子がシアター風姿花伝の支配人である事を知ることが出来たのは意外な収穫。

牛乳の唄

牛乳の唄

兎座

小劇場B1(東京都)

2021/06/02 (水) ~ 2021/06/06 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

6日、下北沢の小劇場B1で上演された兎座第3回公演『牛乳の歌』千穐楽を観た。これは、兎座のメンバーに知人の役者・古川奈苗がいた関係からであるが、同じメンバーでこの作品の作・演出を担当している藤原珠恵の他の作品も既に観た経験があり、親しみのある演劇ユニットという感じで劇場に出向いた。

舞台となっていたのは、かつて主宰者・姜京子(高乃麗)の娘・千賀子(松本みゆき)の人気もあって大所帯であったが、千賀子の喫煙発覚・退団で一気に人気がなくなり現在では団員数が5人になってしまった小劇場系の劇団・姜京子演劇研究所。タイトルの『牛乳の歌』と言うのは、この劇団の劇団歌のこと。
老い先長くない事を自覚した姜は、娘・千賀子に連絡を取り、千賀子の劇団復帰を兼ねた公演を計画する。しかも、その内容は千賀子が劇団を辞めるいきさつを描いた作品。その作品を通して、千賀子の良きライバルで今は劇団の看板女優である金本亜美(小林愛里)が実は千賀子の喫煙現場写真を撮ってマスコミに流したことをそれとなく描こうとしていたのであるが、実は千賀子はそのことを既に知った上で劇団を去っていたのであり(実は姜京子もそれに気づいていた)、一人亜美がそのことで心にわだかまりを感じていたのであった。結局、千賀子は劇団の説得に応じて復活を決意し練習に臨むのであるが、そこで亜美が事の真相を告白。千賀子は全て知っていたと逆に亜美をなぐさめ公演に向けて練習を進める。結果として、公演は姜京子が亡くなってからの上演となったけれど、劇団の後継者として千賀子は再び劇団の牽引者になり、みんなで『牛乳の歌』を歌っていく。

まぁ、粗筋はこんな感じだったかな。中心的な存在は上記の3人で、その周りを芸達者な役者達が劇団員や舞台監督などを演じて内容に膨らみを持たせていた。古川奈苗は前半では姜に怒られ泣いてばかり、後半では劇団員に演技を指導する立場になって怒ってばかりという正反対の面を見せ芸の広さを見せつけてくれたし、舞台監督役の剣持直明はひょうひょうとした役柄で劇全体に柔らかさを運んでいたのが印象的。

タイトルの『牛乳の歌』と劇本体の内容の関係性の付け方が希薄のように感じられたが、役者だけでなく、脚本・演出も回を重ねるごとに内容が深まってきていて、藤原珠恵の今後が期待された。
ちなみに、プログラムにある4コマ漫画は古川の作であろう。
次回公演も楽しみにしている。

獣唄2021-改訂版

獣唄2021-改訂版

劇団桟敷童子

すみだパークシアター倉(東京都)

2021/05/25 (火) ~ 2021/06/07 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

5月30日午後、錦糸町のすみだパークシアター倉で上演された劇団桟敷童子の『獣唄 2021改訂版』を観た。実は2019年に村井國夫主演を想定して桟敷童子の座長・東憲司が書き下ろした作品であったが、公演期間半ばに主演の村井が心筋梗塞のため降板し、副座長の原口健太郎が代役を務めて上演が再開された作品を、改めて村井を主演として上演するために一部改訂して作り上げられたもの。

舞台の粗筋は2019年と大きく変わっていないので、その時書いた感想から粗筋の部分を引用させて頂く。

舞台は貴重な種類の蘭の花が採取出来るというとある仙石嶽という山村。そこでハナトと呼ばれる蘭採収人である梁瀬繁蔵(村井國夫)と彼の娘3姉妹トキワ(板垣桃子)・ミヨノ(増田薫)・シノジ(大手忍)の間で起こる愛憎悲劇。そのきっかけを作るのが、東亜満開堂(社長役・原口健太郎、社長夫人役・もりちえ)という花屋で、時代は太平洋戦争中。花で東亜の繁栄を夢見る満開堂社長の望みは、蘭の中でも最も珍しい品種「獣唄」の獲得であった。その獣唄を観たことのある繁蔵と、蘭採取人の後を継ぎたい長女トキワ。この二人の葛藤は、満開堂だけでなく妹たちや村人達をも巻き込み、最後には3姉妹がそれぞれ命を絶っていく。

見物であった。主役の村井と満開堂社長役の原口の存在感。そして、長女であるトキワ役の板垣桃子の熱演とキノコ採りの名人役の鈴木めぐみの怪演は、今の桟敷童子の実力の高さを見せつけていた。社長夫人・もりちえの存在も大きい。実は、こうした主要な役どころは2019年と同じなのであった。悲劇が悲劇を誘発するその魔性というか偶然性を、蘭の花の採取人という設定で観客に迫った東憲司の脚本と演出そして舞台装置に感服させられた。もちろん、その脚本の持つ迫力を演技で見せつけた村井國夫を筆頭とする役者陣も凄かった。
2時間という上演時間を忘れさせ、観客は舞台上の世界にのめり込んでいった。
いやぁ、凄い作品を観せてもらった。

social D

social D

ニサンカタンソ

北千住BUoY(東京都)

2021/05/13 (木) ~ 2021/05/16 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

16日午後、BUoYで上演されたニサンカタンソ第一回公演『social D』のteam Woman千穐楽を観てきた。これは、知人の役者・高坂汐里が主宰している関係からである。この作品、team Womanと男性team Manの2ヴァージョンからなっていて、自分が観たのは高坂汐里が出演しているteam Womanの方。

舞台はエピローグ付きの1時間55分ほどの作品。
エピローグは、事の発端である婚活パーティーの一場面。そう、この物語に登場してくる5人の女性が参加している。そして、5人はこれはという男性と付き合うことになったのだ。
本編はそこから。この5人が付き合いだした男性。実は同じ男性で、それぞれの女性に違った職業をしていると5⃣股交際をしていたのだった。そのことを、5人の女性の一人、堂丸彩乃(高坂汐里)が知ることになり、この男性・高野岳に復讐すべく高野名義で残り4人の女性を呼び出し、事の成り行きを説明する。タイトルのsocial Dというのは、この5人のイニシャルにDが付くことから名付けられた仲間としての呼び名。5人は高野を呼び出し、本人の口から5股の事実を白状させる。その過程で「恋愛とは何か」「結婚とは何か」「5人は満たされていたのかいなかったのか」が論議されるのだが、結局高野は5人の怒りを買って岩というかブロックというか固いもので椅子にくくりつけた高野を打ちたたく。途中5人の一人がトイレに駆け込み吐くのであるが、実は彼女、高野の子供を妊娠していた。その妊娠の事実を高野が素直に喜んでくれないことに、怒りを込めた表情でブロック?を手にするシーンで物語は終了する。

この舞台を見始めて気づくのは、物語の展開がかなり容易く想像できてしまう点。まぁ、脚本的に軸になる事柄が使い古された内容という事なのだ。それを楽しく緊迫感ある舞台に仕上げたのは、演出と役者の個性だと感じた。脚本と演出は松井カズユキが担当していた。作品の短所と長所双方を担った形。役者では、当日プログラムを物販で購入しなかったの役者名が明確で無いのだが、5人の女性の中で一番年長の女性を演じた役者の演技が秀でていた。
このニサンカタンソという団体の本質を見極めるには、まだ数回公演を見続ける必要があるだろう。次回作を期待したい。

ころぬのこと【全公演配信実施】

ころぬのこと【全公演配信実施】

東京ノ温度

nakano f(東京都)

2021/05/08 (土) ~ 2021/05/11 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

11日火曜日、東京・中野のNakano fで上演された東京ノ温度第十四回公演『ころぬのこと おうたむ』を観てきた。これは、知人の役者・水野以津美が出演していた関係からである。思えば、一番最初に水野以津美の役者としての姿を観たのが東京ノ温度の公演であった。

この作品は上映時間約60分で、コロナが流行しているさなか、父親が生前遺言状を書いたことがきっかけで起こる三人娘の動揺というか心に起こったさざ波を、弁護士や長女の夫も巻き込んで進んでいくというもの。水野以津美はその長女役であった。
舞台は三人娘の一人の友人がバイトしている喫茶店。三人娘がそれぞれ資格の異なる役柄を上手く演じていた。ただ、前回の公演でもそうだったのだが役者がマスクをしているので表情がよく分からない。声と身振りで演じている内容を理解しなくてはならないのがちょっと苦痛。体調管理を充分にし、観客との距離をしっかり取っての公演ならマスクなしでも可能ではないだろうか。

なお、当日は本編上演後にやく15分の『ころぬのころに』も上演されたが、頭の中は本編のことで一杯。この『ころぬのころに』の印象が薄かった。終わり方がちょっと中途半端だなぁと言う印象だけが残った。

引き結び

引き結び

ViStar PRODUCE

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2021/04/21 (水) ~ 2021/04/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

24日午後、池袋のシアターグリーンのBOD in BOXで上演されたViStar PRODUCE公演『引き結びー紬ぎ結ぶははじまりの糸ー』を観た。これは知人の役者・井上茜が出演していた関係からである。上演は一部ダブルキャストの紬チームと結チームで行なわれており、自分の観に行ったのは結チームによる上演で、結果として大千穐楽の公演となり、終演後には主宰の星宏美の涙ながらのコメントが観客の涙を誘った。

舞台はとある劇団の千穐楽公演の受け付け窓口。劇団員の忙しさの合間をぬって登場するのが、この舞台の主役・星乃美桜(星宏美)。劇団に入団希望者としてやってきた美桜は、実はこの劇団の主宰者・佐藤慶大(岡教寬)と主演女優であり制作もこなす北郷春(中山ヤスカ)の養成所時代の恩師の娘であったが、弱視というハンディを背負っている女性でもあった。そのハンディから、女優になるのに反対する父親・星乃真咲(音野暁)や出来るかどうか困惑する劇団員達。しかし、美桜の決意の固さとその母親で女優としての目標でもあった故・星乃いぶきの事を思う父親や劇団員達の理解もあって、ついに劇団員としての舞台に望む。しかし、初日に劇団員としての初舞台の緊張に押しつぶされそうになる美桜。その彼女を後押しする劇団作家・桜田直弼(湯口智行)の言葉に勇気づけられ初舞台に望む美桜。無事に舞台を勤め上げた美桜は、晴れて正式な劇団員となるのであった。


何と言っても、この舞台の中心は美桜と春。準主役は桜田と佐藤。この4人の熱演が全てを決定づけた。特に女優二人の熱演には拍手を送りたい。
笑いを担当する佐藤と、涙を担当する美桜と春とでも言えようか。会場に時折すすり泣く声が聞こえた。自分も思わず涙・・・


気持ちよい舞台を見せてもらった。難点は、時折挟まれる間の悪さかな。これは脚本の問題だろう。今後の精進を望む。

6団体プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活』#3

6団体プロデュース『1つの部屋のいくつかの生活』#3

オフィス上の空

吉祥寺シアター(東京都)

2021/04/09 (金) ~ 2021/04/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

11日、東京の吉祥寺シアターで上演されたオフィス上の空 6団体プロデュース「1つの部屋のいくつかの生活#3」を観てきた。これは、舞台上に設定された同じセットを使って6つの劇団が60分の作品を上演するという競作プロデュースで、一公演に10分の休憩を挟んで2団体が上演を行うというもの。自分が観た回は、PnademicDesignの『犠牲と補正』、劇団競泳水着の『月にいるみたい』という作品が上演された。

舞台上の共通セットというのは、舞台中央に踊り場のある2階向かう階段と2階のドア、それに舞台上手と下手にあるドア。中央階段の一階胃部分には応接セット。この基本セットに何らかの追加セットを置くことは許されているらしく、例えば『犠牲と補正』ではベッドや車椅子、『月にいるみたい』ではホテルのフロント用のカウンターなどが追加されていた。

1作目の『犠牲と補正』は、難病の母子、その母を安楽死させた娘の恋人、動けないけれど意識はしっかりと持っている娘の声にならない叫び、妻を殺された夫の葛藤、被害者と加害者の関係と、かなり相関関係が複雑なのと、扱われているテーマが重いので、内容が分かれば分かるほど観ている側の心が締め付けられる。自分は、その重みから抜け出したくて上演中何度腕時計を観たことか。そう、いつこの重い芝居が終わるかと・・・。最後に加害者である男性と、安楽死させられた女性の夫が酒をくみ交わすシーンとなり、なるほどこういう落とし所があったのかと少し心が安まったのは救いだった。
2作目も、1作目よりは重さは軽いが重いと言えば重い作品。1ヶ月も家族や友人達と音信不通にしていた女性が、学生時代の友人のやっている湖畔のホテルに突然現れて1泊する。彼女がホテルをチェックアウトした日に彼女の消息を追っていた姉と友人がホテルにやってきて、彼女の蒸発状況を初めて知るホテルの人たち。宿泊客である映画サークルのカップルの行動が、消息を絶っている女性の行動に重なり、湖で自殺した可能性も暗示される。しかし、後日彼女がホテル滞在中に借りたお金がホテルの口座に振り込まれていて、彼女の生存がおぼろげに確認できる。彼女はなぜ音信不通になったのか。その謎を解くヒントが作品の所々に暗示されているが、最終的に彼女が今どうしているかは観る側の想像に委ねられているようだ。

60分という限られた時間と制約のある舞台セットでこれだけの作品を上演することの出来た劇団、脚本家や役者の力量に拍手を送りたい。たの4団体の作品を観る時間が作れなかったことが悔やまれる。

カミキレ

カミキレ

藤原たまえプロデュース

小劇場B1(東京都)

2021/02/14 (日) ~ 2021/02/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

2月21日、下北沢の小劇場B1で上演された、藤原たまえプロデュースvol.6『カミキレ』の千穐楽を観てきた。これは、演劇情報サイト・コリッチの招待券が当たったこともあったが、公演のプロデュースが兎座でもお馴染み藤原珠恵であることも観に行った理由の一つであった。

舞台はとある区役所の戸籍・住民票係。ここに様々な理由で書類というカミキレを持ってやってくる人たちの人生を、3つの物語にまとめて75分に納めた作品。
まず登場した区役所の職員役3人がなかなかの個性的な面々。女性2人男性1人なのだが、その中の上司的な立場らしい栖原役の幸野紘子のクールさと、男性の鈴木役中村佑亮のキャラがどことなく「さかなクン」に似ていてなかなか面白い存在感を醸し出していた。
第一話のカミキレは婚姻届と離婚届。正反対の内容の込められた書類だけれど、男女の関係性がなかなか味のある設定だった。
第二話のカミキレは、死亡届。それを出す波川月子の演技にホロリ。
第三話のカミキレは、中年になってミュージカル俳優を目指す男性の戸籍謄本?の申込書かパスポートの申請書。舞台は一転してミュージカル仕立てになって、前話のホロリから一転してノリノリで面白かったですね。

最後に、区役所職員がなぜ公務員になったのかを話す場面で締めくくられていて、舞台構成的にしっかりした作品となっていた。

この作品を観て連想したのが『コーヒーが冷めないうちに』という舞台と小説。今回の『カミキレ』も、小説化出来そうな内容だった。

one cup of rice~おにぎりのむすび方~2020

one cup of rice~おにぎりのむすび方~2020

東京印

ザ・ポケット(東京都)

2020/10/21 (水) ~ 2020/10/25 (日)公演終了

満足度★★★★

10月22日、中野ザ・ポケットで上演された東京印「one cup of rice」~おにぎりのむすび方~2020を観てきた。これは、知人の役者・古川奈苗が出演した関係からである。ちなみに、東京印の公演を観るのは今回が初めてであった。

実はこの作品、タイトルに「2020」と付いているように以前上演された作品の再演である。今回は一部細かな点を改訂しての再演ということであった。

舞台は、とある街のおむすび屋。その店のアルバイト店員同士や常連客同士の恋愛(特に中心となるのは学校の教師を務める男性と飲み屋のママとの赤いバラを巡っての恋愛騒動)と、不慮の事故で死んだ娘を思うおむすび屋夫婦と、その娘の心臓を移植され自分探しをしておむすび屋を訪れる女性との話の2つが絡み合った笑いと涙の人情劇である。役者に与えられた役柄は重要で、今まで観てきた舞台の中では劇団時間制作の作品にちょっと近い。時間制作の舞台に流れる緊張感を緩くして、役者の自由性を広げるとこんな感じになるのかな。
印象深い役者としては、おむすび屋の主人役・小野剛民、自分探しの女性役・古賀成美、バラの恋愛騒動の女性役・佐藤恵美。亀の恩返し的な役だった役だった古川奈苗も、淡々とした表情での演技が似合っていた。
この舞台、役者によって随分と印象の変わる作品になるのではないかなぁ。
再々演を期待したい。

えんでれす

えんでれす

東京ノ温度

nakano f(東京都)

2020/09/26 (土) ~ 2020/09/29 (火)公演終了

満足度★★★★

9月27日午後、中野のNakano fで上演された東京ノ温度第十三回公演『えんでれす』を観てきた。これは、知人の役者・水野以津美が出演している関係からであるが、同時に知人の役者・古川奈苗と共演している宇塚彩子も出ているからである。

タイトルから分かるように、前回はグリム童話関連の舞台だったが、今回はミヒャエル・エンデの作品絡みの舞台であった。

関東近郊の高原リゾートホテルにやってきた、藤田岬(宇塚彩子)は、ホテル近くにあるドイツ人童話作家エンデのミュージウムを訪れた。すると、その夜、現実の世界とエンデの小説の世界がスリップして、岬はエンデの作品に出てくる人たちと出会い、翻弄される。エンデの世界の人たちは闇の奥方(水野以津美)に支配されているのだが、それがなんと岬の亡くなった母親そっくり、というか最後の場面では母親になっていたりして。

そんなこんなのドタバタロマン劇。存在感があったのは、主役を務めた宇塚彩子の存在感。それに、魔女やら魔法使いのキャラクターを演じると抜群の演技を魅せる水野以津美もなかなかのもの。エンデファンにとっては格別面白かったと思うが、そうではない自分としても「この先、岬はどうなってしまうのか?」と言う気持ちで舞台の進行に釘付け。いやぁ、面白かった。次回公演も、この路線で行くのかな? たまには日本人の童話作家の世界を演じてみてはどうだろう。

新雪之丞変化

新雪之丞変化

Project Nyx

ザ・スズナリ(東京都)

2020/03/19 (木) ~ 2020/03/29 (日)公演終了

満足度★★★★

20日午後、下北沢ザ・スズナリで上演されたProject Nyxの『新雪之丞変化』を観てきた。これは、知人の役者・もりちえが出演していた関係からである。
この作品は原作・三上於菟吉。作・白石征、構成・水嶋カンナ、演出・金守珍、美術。宇野亞喜良によるもので、かつて映画化もされていたらしいのだが、この手の和物の舞台はどちらかというと苦手で敬遠していた方だったので、原作がどんな物か一切予備知識無しでの鑑賞となった。

ネタバレBOX


話の筋は意外とあっさりしていて、長崎時代に商人をしていた両親が当時の奉行?の陰謀で心中した恨みを晴らすべく、その息子が女形の花形旅芸人・雪之丞となって江戸に上り、親の敵の元奉行を討ち果たす・・・・はずが、実は心中していた男が当の奉行で、敵と狙っていたのが実は元商人で奉行に成り代わっていた実の父親であったことが判明し、様々ないきさつから結局息子である雪之丞に殺されることになるというどんでん返しが用意されてる仇討ち悲劇のアングラ版。
以前自分が分類した小劇場系舞台3系列の中でいうなら、大衆演劇的な要素を盛り込んだアングラ劇と言えるだろう。
役者の演技では、まず雪之丞を演じた寺田結美が秀逸。狙った武士が父親だったことが判明した瞬間の心の衝撃の描写がいまいちではあったが、前編を通して男役として雪之丞を上手く演じていた。ほかにも、役者名で言えば高畑こと美、加藤忍、もりちえ、河辺珠伶の演技も素晴らしかった。出演者全体の演技の水準が高かったので、たの役者達の名前も数え上げたら全員素晴らしい!と言える舞台であった。
また、宇野の美術と金の演出がこの舞台を盛り上げており、2時間を超える上演時間が短く感じられた。
女性だけによるアングラ劇。ますますの発展を期待したい。
赤すぎて、黒

赤すぎて、黒

劇団時間制作

萬劇場(東京都)

2020/03/04 (水) ~ 2020/03/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

12日午後、大塚の萬劇場で上演されて劇団時間制作第21回公演『赤すぎて、黒』のBチーム公演を観てきた。これは、知人の役者・古川奈苗が出演していた関係からである。
とは言え、彼女が出演していなくても、この劇団の扱うテーマの深刻さとそれを戯曲化する力には一目置いており、是非観てみたい舞台の一つであった。

話の中心は、愛情という価値観で家族が縛られている小野寺正明と、その交際相手で家族監禁殺人事件の被害者であった井出桃子との再婚問題で、愛情を強要されている小野寺家と監禁事件をきっかけに「普通」「真っ当」な生き方を理解し得ない井出家の価値観の違いで沸き起こる悲劇というか心のすれ違い。
この二つの違った価値観を持つ家族の結びつきを顕著に表しているのは正明と桃子であるが、実際の行動隊とも言うべき存在は、正明の長男夫婦と井出の長女。そして、価値観の違いを理解しているのが小説家・下妻と、正明の部下の枝田。下妻と枝田は陰のキーマン的な存在である。
そして、それぞれの価値観の中にいながら他の価値観にも敏感に触れていく小野寺家の次女・柚子とその同級生・安藤。そして二人と同級でもある井出愛子。
作品タイトルは、その高校生達の感じる愛の色なのだ。

難しいテーマ、そして心理描写が必要な登場人物を演じていた役者達は、みな素晴らしい。
特に、井出小梢を演じた古川奈苗と小野寺舞を演じた小川麻琴の演技が光っていた。
個人的に感情移入できたのは、小説家の下妻であったのだが・・・

それにしても、主催者・谷は「普通」と言う概念に対する、何か恨みのようなものがあるのだろうか(苦笑)
観終わった後にすっきり感というか、感激の涙とは無縁の、鉛のような重みを観る者に抱かせているように感じた。


次回公演も楽しみにしている。

赤すぎて、黒

赤すぎて、黒

劇団時間制作

萬劇場(東京都)

2020/03/04 (水) ~ 2020/03/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

劇団時間制作の『赤すぎて、黒』を観た。価値観の違う男女が結婚することで、価値観の違う家族が増えて感情の行き違いが各自の心をむしばんでいく。しかし、身につけた価値観はたやすく変えることは出来ない悲劇。心臓をわしづかみにされたような後味の苦いけれど見応えのある2時間。小説家の存在が意外に重要だったりする。

あさぎもん

あさぎもん

アフリカ座

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2020/02/28 (金) ~ 2020/03/03 (火)公演終了

満足度★★★

28日の午後、東京・池袋のシアターグリーンで上演された、アフリカ座第17回公演『あさぎもん』を観てきた。
これは、知人の役者・若林美保が出演していた関係による。

タイトルの『あさぎもん』とは新撰組のことで、なぜそう呼ばれているのかが冒頭に遊女達の会話から明らかにされ、当初の新撰組局長・芹沢鴨とその女・青梅の新撰組内部での暗殺劇でスタートするこの舞台。
新撰組と言えば、その芹沢暗殺、近藤・土方の関係、薄命な沖田、総長山南の切腹と舞台としては見せ場は多く、そのほとんどをこの作品は網羅している。そして、その進行に芹沢と梅の亡霊が影を落としている。

実はこの感想を書く前に、SNSに次のような書き込みをした。

小劇場系演劇を大別すると、大衆演劇・新劇・アングラ劇の3つの方向に分類できると思う。なぜ今このようなことを書くかというと、先日観たアフリカ座の舞台を観て考えさせられる点が多かったからだ。

そう、このアフリカ座が魅せた新撰組の物語は、限りなく大衆演劇に近い新劇なのであった。
登場人物の化粧、甘い殺陣、それにどこぞの大衆演劇劇団の座長が演じているような近藤と、調所に娯楽として捉えることの出来る大衆演劇の香りを漂わせながらそれで終わらなかったのは、芹沢とお梅の亡霊の存在。そしてその二人に翻弄される隊士達の心の葛藤が描かれていたからである。
しかし、その心の葛藤を的を絞って深く掘り下げていてくれたら、この舞台はより劇的になっていたはずである。それが残念であった。

少女仮面

少女仮面

metro

テアトルBONBON(東京都)

2020/02/19 (水) ~ 2020/02/24 (月)公演終了

満足度★★★

20日午後、中野のテアトルBONBONで上演されたmetro第12回公演、唐十郎作・天願大介演出の『仮面少女』を知人の漫画家・松森茂嘉氏と観に行った。これは、metro主催者であり元宝塚の男役であり、本公演の主役である月船さららが松森氏の知人であった関係からである。

唐の作品には唐組や新宿梁山泊で接しているが、この『少女仮面』という宝塚の男役スターであった春日野八千代を題材にした作品を観るのは初めて。この春日野を演じるのが元宝塚の男役であり、天願大介の演出も初めてと言うことで期待して会場に出かけた。
中野にあるポケットスクェアのなかで最も舞台天井丈の高いBONBONの構造を上手く利用した大道具とえんしゅつではあったが、小さな見せ場が波状的に襲い最後に大クライマックスが訪れるという唐の作品の特性が上手く演出されていたかというと、若干疑問が残る。それは、全体的に盛り上がりにかける平凡な演出であったことに起因するのだが、そうなった原因の一つに、役者と唐の作品との相性という問題もあったように思う。
例えば、最も演出的に成功していたと思われるのが「水道飲みの男」を演じた井村昴出会ったが、彼の演技に唐の作品には欠かせない存在の役者・大久保鷹のような存在感を感じさせた点。
それに防空頭巾の女達も唐的な存在感を呈していたが、演出的には登場の仕方がもっと奇抜でも良かったかも知れないけれど、それなりの存在感を持っていた。
逆に、喫茶店のボーイ役達はやや洗練されすぎた感があった。もっと泥臭い存在でも良かったのではあるまいか。そうすれば、月船さらら演じる春日野の存在が一段とクローズアップされたのではないかと思う。
その月船さらら演じる春日野であるが、もう少しエネルギッシュな演技でも良かったように思う。

総じて、唐の作品を観た後に感じる「複雑なすっきり感」というものが希薄であったのが残念。

公演後、ロビーにて月船さらら本人を紹介してもらい挨拶を交わしたのだが、その際の印象として、彼女の個性に唐の作品は似合わないのではないかというおもいであった。

「朝日のような夕日をつれて」

「朝日のような夕日をつれて」

株式会社STAGE COMPANY

本所松坂亭(東京都)

2020/01/14 (火) ~ 2020/01/19 (日)公演終了

満足度★★★

演劇情報サイト「コリッチ」の招待券プレゼントに応募したところSTAGE THE WORKOUT『朝日のような夕日をつれて』のチケットが当たったので、19日12時の公演(3チームによる上演のうちのEX ver.)を観てきた。

この舞台に応募したのはタイトルが気に入ったから。どんな劇団なのか、どんな内容の舞台なのかは応募してから調べて知った。逸見輝羊 × 鴻上作品 第三と言うことで、いわゆる不条理劇らしかった。
『ゴドーを待ちながら』の世界と、玩具メーカー・立花トーイで究極の玩具を作ろうとしている男達の世界。この二つを、みよ子という女性を介して交錯する男性5人プラスαで上演された舞台。
演出の逸見はつかこうへいの作品に数多く関わっていた人物だけあって、どことなくつか風の雰囲気が感じられたが、5人の出演者のテンポの良い台詞と場面転換で2時間弱の舞台は短く感じられた。
ただし、台詞の発声が劇場の規模にやや不釣り合いだったことと、舞台内容とタイトルの相関関係がよくつかめなかったのが残念。
役者達は頑張っていた。個々の役者について書くのは省くが、不条理劇ではない舞台での演技を観たいと思った。
いや、このメンバーで、つかの作品を観てみたくなった。

とは言え、満足出来た舞台だったかと問われれば、やや物足りなさを感じたのも事実。
作品の掘り下げ方に問題があるのではないだろうか。

とにかく、あと数回観てみないとこの演出家の実力は分からないなぁと思った次第。

このページのQRコードです。

拡大