実演鑑賞
満足度★★★
6日、下北沢の小劇場B1で上演された兎座第3回公演『牛乳の歌』千穐楽を観た。これは、兎座のメンバーに知人の役者・古川奈苗がいた関係からであるが、同じメンバーでこの作品の作・演出を担当している藤原珠恵の他の作品も既に観た経験があり、親しみのある演劇ユニットという感じで劇場に出向いた。
舞台となっていたのは、かつて主宰者・姜京子(高乃麗)の娘・千賀子(松本みゆき)の人気もあって大所帯であったが、千賀子の喫煙発覚・退団で一気に人気がなくなり現在では団員数が5人になってしまった小劇場系の劇団・姜京子演劇研究所。タイトルの『牛乳の歌』と言うのは、この劇団の劇団歌のこと。
老い先長くない事を自覚した姜は、娘・千賀子に連絡を取り、千賀子の劇団復帰を兼ねた公演を計画する。しかも、その内容は千賀子が劇団を辞めるいきさつを描いた作品。その作品を通して、千賀子の良きライバルで今は劇団の看板女優である金本亜美(小林愛里)が実は千賀子の喫煙現場写真を撮ってマスコミに流したことをそれとなく描こうとしていたのであるが、実は千賀子はそのことを既に知った上で劇団を去っていたのであり(実は姜京子もそれに気づいていた)、一人亜美がそのことで心にわだかまりを感じていたのであった。結局、千賀子は劇団の説得に応じて復活を決意し練習に臨むのであるが、そこで亜美が事の真相を告白。千賀子は全て知っていたと逆に亜美をなぐさめ公演に向けて練習を進める。結果として、公演は姜京子が亡くなってからの上演となったけれど、劇団の後継者として千賀子は再び劇団の牽引者になり、みんなで『牛乳の歌』を歌っていく。
まぁ、粗筋はこんな感じだったかな。中心的な存在は上記の3人で、その周りを芸達者な役者達が劇団員や舞台監督などを演じて内容に膨らみを持たせていた。古川奈苗は前半では姜に怒られ泣いてばかり、後半では劇団員に演技を指導する立場になって怒ってばかりという正反対の面を見せ芸の広さを見せつけてくれたし、舞台監督役の剣持直明はひょうひょうとした役柄で劇全体に柔らかさを運んでいたのが印象的。
タイトルの『牛乳の歌』と劇本体の内容の関係性の付け方が希薄のように感じられたが、役者だけでなく、脚本・演出も回を重ねるごとに内容が深まってきていて、藤原珠恵の今後が期待された。
ちなみに、プログラムにある4コマ漫画は古川の作であろう。
次回公演も楽しみにしている。