実演鑑賞
満足度★★★★★
5月30日午後、錦糸町のすみだパークシアター倉で上演された劇団桟敷童子の『獣唄 2021改訂版』を観た。実は2019年に村井國夫主演を想定して桟敷童子の座長・東憲司が書き下ろした作品であったが、公演期間半ばに主演の村井が心筋梗塞のため降板し、副座長の原口健太郎が代役を務めて上演が再開された作品を、改めて村井を主演として上演するために一部改訂して作り上げられたもの。
舞台の粗筋は2019年と大きく変わっていないので、その時書いた感想から粗筋の部分を引用させて頂く。
舞台は貴重な種類の蘭の花が採取出来るというとある仙石嶽という山村。そこでハナトと呼ばれる蘭採収人である梁瀬繁蔵(村井國夫)と彼の娘3姉妹トキワ(板垣桃子)・ミヨノ(増田薫)・シノジ(大手忍)の間で起こる愛憎悲劇。そのきっかけを作るのが、東亜満開堂(社長役・原口健太郎、社長夫人役・もりちえ)という花屋で、時代は太平洋戦争中。花で東亜の繁栄を夢見る満開堂社長の望みは、蘭の中でも最も珍しい品種「獣唄」の獲得であった。その獣唄を観たことのある繁蔵と、蘭採取人の後を継ぎたい長女トキワ。この二人の葛藤は、満開堂だけでなく妹たちや村人達をも巻き込み、最後には3姉妹がそれぞれ命を絶っていく。
見物であった。主役の村井と満開堂社長役の原口の存在感。そして、長女であるトキワ役の板垣桃子の熱演とキノコ採りの名人役の鈴木めぐみの怪演は、今の桟敷童子の実力の高さを見せつけていた。社長夫人・もりちえの存在も大きい。実は、こうした主要な役どころは2019年と同じなのであった。悲劇が悲劇を誘発するその魔性というか偶然性を、蘭の花の採取人という設定で観客に迫った東憲司の脚本と演出そして舞台装置に感服させられた。もちろん、その脚本の持つ迫力を演技で見せつけた村井國夫を筆頭とする役者陣も凄かった。
2時間という上演時間を忘れさせ、観客は舞台上の世界にのめり込んでいった。
いやぁ、凄い作品を観せてもらった。