実演鑑賞
満足度★★★★
20日、久しぶりに新国立劇場小劇場で上演された舞台を観た。演目は、井上ひさし作『キネマの天地』である。演劇好きの間では有名な井上ひさしの代表作の一つ。
出演者の紹介を兼ね、粗筋お書いておこう。舞台は、松竹キネマ蒲田撮影所の某スタジオ。ここに、超大作『諏訪峠』出演の打ち合わせと称して、監督の小倉虎吉郎(千葉哲也)が4人の人気女優を呼び出す。それは、大幹部の立花かず子(高橋惠子)、お母さんもので有名な大幹部待遇の徳川駒子(那須佐代子)、ヴァンプ役で人気の幹部女優滝沢菊江(鈴木杏)、そして娘役で人気の準幹部の田中小春(趣里)。しかし、この4人を呼んだ本当の目的は、舞台上演中に突然死した小倉の妻であった人気女優・松井チエ子を殺した真犯人捜し。刑事役に下積み役者・尾上竹之助(佐藤誓)を刑事役に仕立てて4人の女優達を責め立てていく。しかし4人には確たる殺人の証拠は亡く、それどころか実は真犯人は肝心の刑事役だった尾上である事が発覚。この過程で、それまでギスギスしていた4人の女優達の連帯感は高まり、最後には揃って銀座に繰り出していく。
実は小倉監督の目論見は、映画撮影前に4人の女優の融和をはかることであって、妻の殺人の犯人捜しは監督の策した細工で、尾上も実は真犯人では亡く監督の指示の元に刑事役や犯人役をこなしていたのであった。
と言う訳で、「松井チエ子殺害の真犯人糾明の集まり」という探偵撃破、実は探偵劇では無かったという訳だ。
舞台成功の鍵は、4人の女優たちがそれぞれの個性をどう描ききれるかと、尾上役の佐藤がどれだけ真に迫った演技ができるかにかかっていたが、さすがベテランというか実力者ばかりの出演者の演技は優れもの。演出も冴えていて、大変見応えがあった。
さすが、新国立劇場の舞台。充実した2時間を過ごさせてもらった。
ちなみに、個人的には高橋惠子と佐藤誓の演技が気に入った。また、那須佐和子がシアター風姿花伝の支配人である事を知ることが出来たのは意外な収穫。