幽霊たち
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2011/06/14 (火) ~ 2011/07/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
傑作舞台に興奮!相性の良い佐々木・白井組
終演後、たくさんの方が異口同音に、「難しかったね。よくわからなかった!」と感想を述べていましたが、私は、ワクワクするほど、面白かったし、佐々木さんの演技も、白井さんの演出も、共に、近来稀に見る必見舞台だと感じられました。
カフカの描く世界にも似た、一見不条理系の芝居にも見えるのですが、実際は、人間誰しもが抱えている、根源的命題がテーマの非常に卑近なストーリーなのだと感じます。
白井さんと佐々木さんの取り合わせは、大変相性が良く、終始ワクワクし通しでした。
奥田さんは、もちろん存在感では、何も申し分ないのですが、やはり舞台慣れされていないせいか、時々、台詞を咬みそうになったり、つっかえたりする一瞬、慌てるご本人が顔を出してしまった時があり、その一点が惜しい部分でした。
私が蔵之介さんのファンになったのは、舞台がきっかけでしたから、今でも、舞台俳優の佐々木さんのファンで、彼の舞台は、チケットが入手できなかった時以外、全作品拝見しています。
そして、いつも思うのは、舞台俳優、佐々木蔵之介は、当代一の名役者だという感嘆にも似た喜び!
ファンとしては、こういう喜びを感じさせて下さる役者さんには、感謝の気持ちが溢れます。
映像のみの蔵之介ファンの方に、是非とも観て頂きたい舞台でした。
PHANTOM THE UNTOLD STORY
Studio Life(スタジオライフ)
シアターサンモール(東京都)
2011/06/09 (木) ~ 2011/06/27 (月)公演終了
満足度★★★★
主役の演技力が物言う芝居
よく知られている「オペラ座の怪人」の前日譚的な物語。
主役のエリックを演じる、林さんと山本さんは、共に、スタジオライフの役者さんの中でも、突出して演技力のあるお二人なので、どちらも拝見したく思いましたが、やはり、スタジオライフ初見時に、一目で魅了された山本芳樹さん主演のsortチームの方を選択しました。
オープニングで、スタッフの映写ミスがあったり、第1章の運びがやや冗長には感じましたが、物語が進行するに従って、つまり、主演のエリックの視点からの芝居になるに従って、観客を吸引する力が増し、どんどんこの芝居の世界にのめり込んで行く自分を感じました。
個人的には、第3章のストーリー展開がとても好きです。ジョバンニ役の曽世海司さん、拝見する度に、役者としての技量がアップされて、いつも驚かされます。特に、この芝居のように、主人公に心情的に寄り添うような役柄は、本当に任に合って素敵です。
ストーリー展開的にも、以前この山本さんと曽世さんで観た「白夜行」を彷彿としました。
山本さんは、運命に翻弄される寡黙な主人公をやらせたら、たぶんライフで右に出る役者さんはいないのではと思います。
でも、林さんのエリックも、実は、とても観たいと、幕が下りた瞬間に痛切に思いました。拝見できませんが、林さんのエリックもきっと素晴らしい予感がします。
六月大歌舞伎
松竹
新橋演舞場(東京都)
2011/06/02 (木) ~ 2011/06/26 (日)公演終了
満足度★★★★★
諸々に感慨深い松嶋屋4代観劇
現仁左衛門さんが、孝夫さん時代から、もう40年以上のファン歴なので、今月の歌舞伎を見逃すわけにはいかないと思っていました。
先代の仁左衛門さんから、千之助君まで、4代の松嶋屋さんの至芸を拝見できた幸せは筆舌に尽し難い思いです。
故あって、もう一度、今再び観ておきたいと思った「頼朝の死」と、仁左衛門さんが、孫の千之助君と連舞する「連獅子」、共に万感の想いで観劇しました。
千之助君、子獅子の所作が、手順舞踊にならず、懸命に心を表現しようとする様が心打ちました。
親子での「連獅子」は数々観ましたが、孫ととなると希少ではないでしょうか。
代々伝わる芸の真髄を見せて頂き、大満足です。
レ・ミゼラブル
東宝
帝国劇場(東京都)
2011/04/12 (火) ~ 2011/06/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
過ぎた日に乾杯!
まさに、この歌詞の心境でした。
今まで、通算100回は超えると思われる観劇歴ながら、実は、このスペシャルキャストには、初見の方がいらっしゃいました。鳳蘭さんのテナ夫人。さすが、貫禄が違いますね。
せっかく、招待券を頂いていた頃は、子育て真っ最中で、私が初めてこの作品を観たのは、父亡き後、一番信頼している劇評家の萩尾瞳さんが、まだ無名だった岡幸二郎さんを大絶賛されていたからでした。
あの時、帝劇の最後列で、岡アンジョルラスに出会った時の感激は未だに忘れられません。
看板に偽りなく、このミュージカルは、本当に、無名な俳優をスターにできる作品だと、嬉しい驚きでいっぱいでした。
あれから、何年でしょう?たぶん、その頃はまだ生まれていなかっただろう、加藤清史郎君の健気なガブローシュ振りを拝見しながら、このミュージカルがどれだけ、たくさんの実力あるミュージカルスターを育て上げて来たかを思うたび、涙が溢れて困りました。
前回のスペシャルキャストの時と違って、今回は、若いアンサンブルの実力も素晴らしく、全くベテラン勢と遜色がないので、観ていて、気持ちの良いことと言ったらありません。
客席にたくさんの女子高生の団体がいましたが、たまたまこんな舞台を観られてしまった彼女達は、幸せ者だなあと、つくづく羨ましくなりました。
しらなみ浮世
蜂寅企画
劇場MOMO(東京都)
2011/06/02 (木) ~ 2011/06/05 (日)公演終了
満足度★★★★
洒落た台詞と劇構成
蜂寅さんは、旗揚げからずっと観ていて、今回3回目。
個人的好みで言えば、今回の作品が一番好きでした。
白波ものとして、取り立てて独自性を感じる筋立てではない、言わば、テレビの時代劇でよくあるパターンのストーリーではありましたが、不思議と、厭きることなく、観られました。
意外と、ワクワクするし、次はどういう展開?と、興味を繋ぐ劇構成が巧みです。
そして、これは、旗揚げでも感じましたが、狭い舞台空間をそれなりに、その場所と錯覚させてしまう、舞台マジック的な簡易的セットが生かされていました。
場面転換一つないのに、こういう風に見せられる才覚は凄いと思いました。
どうも、雰囲気がゲキバカに似ていると思ったら、ゲキバカの吉田さんが、制作だったのですね。
戦争にはいきたくない
らくだ工務店
駅前劇場(東京都)
2011/05/20 (金) ~ 2011/05/29 (日)公演終了
満足度★★★
看板に偽りあり感が否めない
日常の断片を、時系列でリアルに丁寧に描く、脚本・演出の技量は並外れていると感じます。
ただ、このタイトルに引かれてチケットを買った自分には、やや、誇大広告感が拭えませんでした。
タイトルにある、「戦争」は、必ずしも、普遍的概念のそれのみではなく、誰かの内面的戦争であったりする。舞台は、確かにネジ工場で、間違いありません。
でも、たとえば、永井愛さんの「こんにちは、母さん」と、同じくらいの比率で、日常に実際の「戦争」を織り込む程度で、舞台に提示するのなら、ここは「戦争にはいきたくない」というタイトルは、やはりルール違反な印象を受けてしまいました。
役者さんは、皆さん、自然体で、とても素敵な演技を披露して下さいました。
ただ、山路さん目当てで行った自分としては、やや肩透かしを食らいましたけれど…。
(でも、あれだけの出演で、あのゾッとする程の威圧感は、さすがです。)
久々に舞台を拝見した河相我聞さん、存在感ある古川さん、クスっと笑わせてくれる間合いが絶妙の今村さん、可憐な小橋さんのたおやかさ、和ませ役の駒木さん等、俳優陣には、全くもって、何一つ不満の見当たらない、素晴らしい舞台を拝見できて、大満足です。
後、当日制作の方に提案ですが、入場するなり、「傘をお預かりします」と言われ、先の方が番号札をもらっていたので、さすがと感心したところ、柄物の傘は、見分けがつくので、番号札はなしと言われました。
でも、終演後、たくさんの傘の中から、自分のものを探すのはやはり難儀でしたし、ブランド物の高い傘と、似た柄の安い傘を間違える方がいるかもしれません。
「預かる」と言う以上は、責任を持って、どの傘も番号札を配った方が、後で、問題が少ないように思うのですが…。
又聞きの思い出
ワンツーワークス
ザ・ポケット(東京都)
2011/05/19 (木) ~ 2011/05/29 (日)公演終了
満足度★★★★
なるほど、そういう意味?
昔、まだ若かりし頃、ウディ・アレンの映画は、よくデートで観に行っていたので、ハートフル・コメデイタッチの芝居なのかとばかり思っていました。
ところがどっこい、かなりストレートな家族劇。自分には思い当たらなかったとしても、誰か知人の家庭では似たような状況が展開されていそうな、万国共通の普遍的なストーリーが、そこに描かれていました。
ストリーテーラーである、アルマの最初の台詞で、この題名の意味がわかり、なるほど、面白そうと、観客に興味を抱かせるのが、巧みだなと感心しつつ納得しました。
意外性がないと言えば、そんな気もするけれど、家族の間では、ありがちな感情の行き違いの様が、普遍的なので、それ程、古臭い印象は受けません。
前回公演では、これ以上ないというくらい、憎たらしいキャラの人物を熱演された重藤さんが、今度は一転、悩める青年を好演していて、役者力のある方だなと驚きました。
久々に舞台で拝見した萩原さん、時折、台詞を言えるかとハラハラさせられる場面があったのは、残念でした。
ダイアン役の山田キヌヲさんのスタイルの良さに、西洋人の雰囲気があり、素敵でした。
奥村さんには、もう少し、ハリウッドで、バリバリ活躍されているエージェントの気風を体現して頂きたかったと思いました。
もし、またどこかで、この芝居が再演されることがあるなら、今度は、エディ役は、山口馬木也さんに是非と、妄想しつつ、帰宅しました。
風と共に来たる
劇団テアトル・エコー
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2011/05/20 (金) ~ 2011/06/01 (水)公演終了
満足度★★★★
映画制作は妥協との闘いから生まれる
初演を観たかったのですが、諸事情で見逃したので、今回の再演は、本当に嬉しく思いました。
私にとっての「風共」は、ビビアン・リーとクラーク・ゲーブルではなく、帝劇初演で観た、那智わたるさんと高橋幸治さんのコンビの舞台作品。これは、未だに各場面が鮮明に思い出される名舞台で、私の50年以上の観劇歴でも、ベスト1の舞台でした。キャストも、好配役で、これ以上の「風共」はもう2度と観られない気がします。
まあ、そんなわけもあり、この映画制作舞台裏秘話の舞台は、大変興味深いものがありました。
映画も小説も舞台も、ありとあらゆる作品を熟知しているので、各シーンが、殊更面白く感じられました。
ただ、演出のせいかもしれませんが、秘書役の女性の演技が、芝居じみてオーバーなため、せっかくの男優3人の丁々発止の演技に水をさしたのが残念。
アメリカでのオリジナル舞台を知らないので、何とも言えないのですが、この作品、男優3人だけの芝居にした方が、一層面白かったような気がしました。
黒い十人の女
ナイロン100℃
青山円形劇場(東京都)
2011/05/20 (金) ~ 2011/06/12 (日)公演終了
満足度★★★★
痛快感があった
私は、この映画は未見なので、舞台化に当たり、どれぐらい、ケラさんのオリジナリティが発揮されているのか、知る由もないのですが、映画未見の私には、ゾクゾクする程、刺激的で、ワクワクする芝居でした。
最近のケラさん舞台で、一番好きかも。
とにかく、10人の女が壮観!皆が個性に溢れ、何だか不思議な魅力に溢れていました。
私は、男運がいい方で、みのすけさん演じる風松に対する女達の復讐を個人的にはしたくなる対象はありませんが、親類や親友を酷い目に遭わせた男達に、こういうことをしたくなって、登場人物の女性達の行動に、何だか、爽快感さえ感じてしまいました。
テレビドラマの「必殺仕置き人」を見終わった後の痛快感に似た感情でした。
10人の女達も良かったけれど、それ以上に、魅力的だったのが、桃子役の奥村佳恵さん。彼女の活躍は、今後もとても楽しみです。
花巻アナウンサー役の小林高鹿さんは、ずいぶん昔に一度舞台を拝見して以来でしたが、いやあ、驚きました。得な役どころだったせいもあるでしょうが、この舞台の成功要因のかなりの位置をこの方が占めていたと思います。
演技が、妙技になっていました。
散歩する侵略者
イキウメ
シアタートラム(東京都)
2011/05/13 (金) ~ 2011/05/29 (日)公演終了
満足度★★★
現実の侵略者は、もっと手強いので
この作品は、イキウメの初期の作品だと思いますが、私は、小説で読んだだけで、拝見するのは今回が初でした。
最近の前川作品の緊迫した濃密感が好きなので、この舞台は、ややそういう濃密度が希薄で、ちょっと期待ハズレな部分がありました。
それに、ここに登場する侵略者は、私と家族の周囲に蠢く侵略者より、ずっとヒトが良くて、退場の仕方がどうも楽天的な感じで、ちょっと肩透かしだったかも。
舞台空間の使い方も、作品の凝縮度を悪い方に緩和させた原因だったように感じます。
最近イキウメに参加された、大窪さんと坂井さんが、驚く程、イキウメ役者として、進化されていて大変嬉しい驚きでした。
主役の窪田さんも、熱演でしたが、もう一皮向けたら、素敵な役者さんに成長される予感がして、今後も、大注目の俳優さんです。
毎回、イキウメを観劇する度、思いますが、伊勢さんの愛らしさに、心が洗われるような感覚を覚えました。
満足度の星は3っつですが、これは、あくまでも、他劇団との比較ではなく、私がイキウメに期待する満足度限定の基準値に基づく評価です。
青に白
ペテカン
赤坂RED/THEATER(東京都)
2011/05/13 (金) ~ 2011/05/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
歓喜の声を上げたい程、素敵な芝居
私とペテカンとの出会いは、シアタートップスさよなら公演の時。
つまり、まだ日の浅いファンですが、今日は、改めて、あの日の出会いに感謝したくなりました。
素晴らし過ぎるくらい、絶妙のブレンド具合の芝居の色合い。笑って泣いて、嬉しくなって、もう今年最高の至福の観劇となりました。
いろいろ信じ難いことがたくさんあって、ちょっと小劇場嫌いになり掛けていた私の演劇愛に再び火をつけてくれたペテカンに、心より深謝致します。
ロマン
東京タンバリン
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2011/05/13 (金) ~ 2011/05/22 (日)公演終了
満足度★★★
ちょっと食傷気味のテーマなれど
息子がお気に入りの男優さんお二人がご出演でしたので、ふらっと三鷹まで行ってみました。
ホント、息子が敬愛している扇田さん、とても自然体の演技で、好感が持てました。
この芝居、扇田さん初め、男優陣が圧倒的に良くて、レベルアップに貢献されています。
ちょっと、最近、あちこちの小劇場で何度も観た傾向の芝居なので、またかとややテーマ自体には食傷気味でしたが、キャストが良かったので、観劇後の満足度はかなり高く感じました。
たいこどんどん
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2011/05/02 (月) ~ 2011/05/26 (木)公演終了
満足度★★★★★
下世話が光放つような演出に、陶酔感あり
迷いましたが、これは観て正解でした。
6歳の頃からの橋之助ファンとして、嬉しく思える作品でした。
現代歌舞伎の趣のある、大変スピーディな道中物で、長時間の観劇を感じさせない芝居でした。
改めて、井上ひさしさんの偉才ぶりを痛感すると共に、井上作品と、蜷川さんの相性の良さを実感しました。
鳥瞰図 ―ちょうかんず―
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2011/05/10 (火) ~ 2011/05/22 (日)公演終了
満足度★★★★
芝居じみた演出がやや残念
「鳥瞰図」は、初めて早船作品に出会った舞台で、それ以来、早船さんとサスペンデッズファンになった自分には、待ちわびた待望の再演でした。
ですが、私の50余年に亘る観劇経験において、どうも初演より進化した再演作にはあまりお目に掛かったことがなく、今回も、ややそういう不安があっての観劇でした。
でも、やはり、最初の衝撃は変わらず、早船さんの物語構成、人物の動かし方、台詞で、感情を如実に表出する劇作家としての手腕に、改めて打ちのめされる思いでした。
ただ、その後、ご自身の演出での作品を多く拝見したせいか、今回は、この早船さんの名戯曲と違う空気の演出の不自然さが目についてしまいました。
その点が、やや残念!
いつの日か、早船さんご自身の演出で、この作品をもう一度拝見してみたい気がしています。
をんな善哉
劇団青年座
紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)
2011/05/12 (木) ~ 2011/05/22 (日)公演終了
満足度★★★★
笑って泣ける王道芝居には満足ですが
世の中は、節電のため、どこもエスカレーターは停止していて、地下鉄の階段を幾度も上り、息せき切って、ハンズからの渡り廊下を走り、ようやく劇場に着いたのが、開演2分前。「あー、間に合った!」と思ったのはぬか喜びで、受付にヒトが溢れ、もぎりの方が後方にいらして、ようやく、「左のドアからお入り下さい」と言われて、客席に入ろうとした矢先、「開演しましたから、お待ち下さい」と足止めを喰らいました。
会場も、携帯も、まだ時刻は、開演1分前の表示なのに。
「いつのきっかけで、入れますか?」と男性。聞かれた女性は、他と話中で、指示出さず。
私を先頭に、10名ほどのお客さんが待ちぼうけを喰っていました。
そうこうする内、客席に拍手が沸き起こり、高畑さんの台詞が聞こえ出しました。時計を見ると、開演予定時刻。
「何故?私達、開演してもいないのに、足止め喰ってたの?」と疑念が湧きました。
それから、待つことしばし。ようやくお兄さんが、「それでは、2名づつご案内します。あ、お客様は、前方ですので、先に、17列目のお客様からご案内します。」と、先頭の私は後回しにされ、ようやく席に着いた時には、高畑さんと堀部さんの会話が相当進行中で、しばらくは、状況把握に手間取り、気持ちもザワザワとして、せっかくの楽しみにしていた芝居の興を殺がれたことは大変残念でした。
一体、最後尾にいらした方が開幕何十分後に着席できたかは知る由もありませんが、演出の都合上の問題もなさそうな公演でしたし、私が入ろうとした時はまだ開演もしていなかったのですし、もう少し、観客に配慮した方策を講じて頂きたかったと憤りを感じました。
せめて、客席の後ろで、待機させて下さってもいいのにと思います。
そうすれば、座らなくても、劇の進行は理解できますから。
と、前置きが長くなりましたが、芝居自体は、久々に、ホームに戻った高畑さんを筆頭に、青年座の演技派揃い踏みの舞台で、笑って泣いて、誰もが安心して楽しめる人情喜劇で、大満足致しました。
ベテラン陣のさすがの演技はもちろんのこと、酒屋の娘役の小暮さんと、その恋人役の豊田さんの、自然な好演技が大変印象的でした。
鈴木聡さんと青年座の相性は、「妻と社長と九ちゃん」で既に実証済みですが、今回は、ベストキャスト揃いで、本当に、朗らかに笑える楽しい舞台でした。
港町純情オセロ
劇団☆新感線
赤坂ACTシアター(東京都)
2011/04/30 (土) ~ 2011/05/15 (日)公演終了
満足度★★
名作がズタボロ
橋本じゅんさんファンとしては、彼の復帰は本当に嬉しく、観劇させて頂きましたが、収穫はほぼそれのみ。
新感線のシェークスピア物は、「メタルマクベス」「リチャード3世」と拝見し、これが私には3作目でした。この2作も、どちらかと言えば、不作でしたが、今回の「オセロ」が、作品レベルとしては、ダントツ、前2作を下回る出来栄えに感じました。
青木豪さんは好きな劇作家ですが、脚色に関しては、あまり才気を感じません。それまで、シェークスピア未見だというクドカンさんの「マクベス」の方が、悠に、原作の味わいを生かしていました。
せっかくの名作「オセロ」が台無しの印象!
新感線にいつも期待している高揚感やエンタメ性も、今回は、ほとんど、体感できず、とても残念でなりませんでした。
久しぶりに、誘った友人に悪いことをした気持ちになりました。
レ・ミゼラブル
東宝
帝国劇場(東京都)
2011/04/12 (火) ~ 2011/06/12 (日)公演終了
満足度★★★★★
圧巻の禅ジャベール楽日
今まで、100回は観たと思う「レ・ミゼラブル」ですが、今回のキャスト(と言っても、今日のソワレのキャスト限定ですが)程、全員に不満を感じないカンパニーは初めてかもしれません。
今までは、なるべく自分のベストキャストの日を選んで行っても、必ず誰かに不満がありました。
今回のアンサンブルメンバーは、殊更目立つ人がいない代わりに、皆さん、真っ当に役を演じていらっしゃいました。
石川禅さんのジャベール役楽日でしたが、本当に申し分のない役作りで、感動を頂きました。
ちゃんと、歌詞が台詞として聞ける数少ないジャベール役者さんだと思います。
期待の和音ファンテーヌは、想像以上に素晴らしく、こういう上手い女優さんがどうしてトップにならなかったのかと不思議でした。
安定の育三郎マリウスや、自分的には最高の駒田・阿知波コンビのテナルディエ夫妻、演技・歌・慈愛心の3拍子揃った別所バルジャンが良かったのは言うまでもなく、そこに、新キャストの、Jenniferエポニーヌが大変な好演をされていて、嬉しくなりました。
以前、政府軍の陰声に一耳惚れし、CDにご参加頂いたよしつぐさんが、とうとうアンサンブルから昇格されて、アンジョルラスとして再生された記念すべき舞台、私も、母のような気持ちで見守りました。
たまに、役の気持ちが理解できてるのかと疑惑を感じるバルジャンとか、スタンドプレイが過ぎるテナ夫人とか、歌えない、演技できない、見た目も可愛くないコゼットとか、いろいろ拝見して来たので、こういう、純粋に舞台の世界に没頭させてもらえるキャストで、この不朽のミュージカルを鑑賞できたのは幸せでした。
最後のカーテンコールが何度も拍手鳴り止まず、演劇を愛する心を育ててくれた亡き父に、心から感謝したくなりました。
観たい芝居を、自分のお金を出して観に行って、こうして感動をもらえて帰ることができる時、至上の喜びを感じます。
本当に、不朽の名作ミュージカル、万歳!!
これまでの演出はこれが最後で、次は、ずいぶん、情感場面がカットされたり、大道具をあまり使わず、映像を使用したりするようです。
これまでの演出の「レ・ミゼラブル」は、今公演で見納めです。ちょっと感慨深い気持ちになるのは、そのせいもあるのかもしれません。
裸の女を持つ男
クロムモリブデン
シアタートラム(東京都)
2011/04/16 (土) ~ 2011/04/24 (日)公演終了
満足度★★★★★
刹那的悲哀と痛快さがない交ぜに、魅了
青木さんて、鶴屋南北の再来ではと、この劇団体験3回目にして感じました。
文章でこの劇団を語ろうとすると、適切な表現がなかなか見当たらないけれど、全てのクオリテイの度合いが揃っていると言うか、頃合の匙加減で時代を調理する、料理人の技を感じます。
役者さんが、全員、作・演の青木さんの主旨を心身で掌握し、それを、ご自身の工夫で、舞台上に体現していることが、肌で感じられ、観劇冥利に尽きる90分を過ごさせて頂けて、感謝です。
アンケートで、「今回の芝居であなたの思う一番悪い人物は誰ですか?」という質問事項がありましたが、その中の選択肢にはなかった、「この芝居を楽しめない観客」を、私なら、一番悪い人物と認識するだろうと思いました。
この芝居は、スネに傷持つ人、日頃、誰かを騙したり、自らの利益のために他人を利用するような日常を過ごす観客には、きっと、心から素直に楽しむ余裕が生まれないように感じました。
幸い、自分には、そういう卑怯な部分はあまりないので、この芝居、充分堪能することができました。
開演に間に合いそうもなく、途中で引き返そうかと思いましたが、これは、観て本当に良かった!
益々、クロムモリブデン中毒になりそうです。
トップ・ガールズ
シス・カンパニー
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2011/04/01 (金) ~ 2011/04/24 (日)公演終了
満足度★★★★
幕開きを観る事叶わず、残念
せっかく、開演ギリギリセーフで、間に合ったのに、あろうことか、会場案内係の青年の対応の悪さ故、こちらには、全く非がないにも関わらず、7~8分、見逃すことになりました。
そのため、どんな導入で、この芝居が始まったのか、想像の域を出ず、大変残念でした。
私の席に座っていた女性に場所を移動して頂け、席に座った時には、いろいろな時代のトップ・ガールズ達が、皆、口々に、自分の過去を語っている最中で、しばらくは、誰が誰やら、わからず仕舞い。
それもあってか、1幕は、心が遊離したまま、舞台を見守るだけで、イマイチ、のめり込めずに時間だけが過ぎて行きました。
ところが、2幕になると、俄然面白くなり、この個性溢れる女優さん達の夢の共演が、とても、ワクワクとして観劇できるようになり、ほっとしました。
皆さん、良かったけれど、特に、3役を、見事に演じ分けた麻実さん、意外にも、儚い少女の心を見事体現した渡辺えりさん、いつも身震いするほどの名演技の神野さんの名演ぶりに、魅了されました。
いつか機会があれば、もう一度、今度は、開幕からしっかり観たい舞台です。
わが星
ままごと
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2011/04/15 (金) ~ 2011/05/01 (日)公演終了
満足度★★★★
何気ない日常の愛おしさ
評判高い「わが星」、やっと拝見できました。
最初の方は、単調に思えて、やや眠くなったりもしましたが、観ている内にだんだん引き込まれ、描かれている世界に、誰もが同一概念を持てる、類稀な、人間賛歌的なステージングだと共感を覚えました。
何気ない日常に愛おしさを感じ、旧友に電話して声を聞きたくなる衝動に駆られて、劇場を後にしました。
癖のある役者さんには、不向きな作品のように感じます。
そういう意味では、とても、センスの良いキャスティングでした。