KAEの観てきた!クチコミ一覧

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ニジンスキー

ニジンスキー

ニッポン放送

天王洲 銀河劇場(東京都)

2012/04/01 (日) ~ 2012/04/08 (日)公演終了

満足度★★★

東山ニジンスキーの舞踊は堪能しました
バレエは、昔、ローザンヌ国際バレエコンクールに出場した同級生の舞台を観たぐらいで、全く知識がないに等しいのですが、先日、息子の同級生が在籍しているバレエ団の劇場中継で、ニジンスキー振り付けの「牧神の午後」を観たお陰で、何となく、彼に対するイメージができていて、観劇の参考になりました。

で、素人目で観る限り、東山さんの踊りは素晴らしかったと思います。

ただ、萩田演出の舞台は、いつも大変幻想的で、こういう作品には、特に、それなりの一定水準のキャストが揃ってこそ、味わいが出るのではと思うのですが、今回、残念ながら、かなり演技が未熟なお二人が、主要キャストで、その上、台詞をとちって言い直したり、素人劇みたいな芝居をされるので、せっかくの東山さんと岡さんの好演がぶち壊しになった気がしました。

それと、余談ですが、8日から、西武池袋線中村橋駅にある、練馬区立美術館で開催中の「バルビエ×ラブルール展」で、バルビエが描いたニジンスキーの絵や、ニジンスキー本人の舞台写真等が、展示されています。6月3日まで。ご興味ある方は是非に。鹿島茂さんのコレクション展です。
「ドリアングレイの肖像」の絵等もあり、何かと興味深い展示会でした。

ネタバレBOX

荻田作品は、どうも、主役を、関係者が回顧するといった構成で描く舞台が多いように思うのですが、今回もそういう作りでした。

こういう構成の舞台だと、初めに登場するキャストの力量次第で、観客の気持ちを掴めるかどうかが、舞台全般の印象をかなり左右すると思うので、その点、演技が未熟な出演者を最初に長く登場させたのは、マイナス要素だったように感じました。

東山ニジンスキーが踊り出して、ようやく、興味深く観る体勢になりました。

今回、驚いたのは、昔はこういう役どころは苦手とされていた筈の岡幸二郎さんが、ディアギレフという人物像を的確に体現されていた点でした。

ディアギレフとニジンスキーの関係性を見ていたら、唐突に、亡くなられた沖雅也さんと日景さんの関係を思い出してしまいました。
ニジンスキーとディアギレフが、死後の世界で語り合う様は、愛憎の複雑さを感じさせて、ちょっと恍惚感さえ感じました。

何度も、ニジンスキーの妹役の安寿さんに、同じ台詞を繰り返させるのは、作者は効果的と思われたのでしょうが、私には、むしろ逆効果だったように思えました。
そのため、ラストに客として、順応できないもどかしさがあり、残念でした。
TEA AT FIVE キャサリン・ヘプバーン~五時のお茶~

TEA AT FIVE キャサリン・ヘプバーン~五時のお茶~

博品館劇場

博品館劇場(東京都)

2012/03/28 (水) ~ 2012/04/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

大好きなお二人なので観て来ました
十朱さんは「バス通り裏」から、もうかれこれ50年ぐらい大好きな女優さん、鵜山さんも、私の好きな演出家ベスト5に入る方なので、お二人のお仕事ぶりを拝見したくて、行って来ました。

ですから、キャサリン・ヘップバーンについての知識はあまりなくて、話に付いて行けるか、やや不安でしたが、たとえ彼女を知らない人でも、十分楽しめる内容の芝居で、安堵しました。

一人芝居と言うより、一人語りといった趣の芝居で、ヘップバーンと十朱さんの女優人生も重なる部分があって、見応えある舞台でした。

十朱さんの初舞台から拝見している身として、十朱さんも、自分も、ずいぶん長く年月を経て来たことに、より感慨深い思いがしました。(それにしても、十朱さんは、私よりかなり年長なのに、いつまでもお若くて、お茶目で、素敵!)

客席に空席が目立ったのがとても残念です。

微笑ましく、笑える要素も盛りだくさんの素敵な舞台でした。
十朱さんやヘップバーンファンの方には、必見舞台だと思います。

「黄昏」の演技しか印象がないので、今度、若い頃の映画も観てみたくなりました。

ネタバレBOX

さすが鵜山さんの演出は、セットにも工夫が凝らされ、ヘップバーンの写真は出さずに、話題に上った男性のみが、セットの上の空間スクリーン上にその都度浮かび上がります。

ヘップバーンの写真も出してしまうと、目の前で演じている十朱さんのイメージを損なってしまうからだろうと、その妙案に感心しました。

1幕では、「風と共に去りぬ」のヒロインをやりたいと、連絡を待っている頃のヘップバーン、2幕では、晩年の交通事故で、車椅子に乗ったヘッブバーン。

十朱さんは、この女優の人生の変化を、見事に体現されて、職人芸のような名演技を披露して下さいました。

ほとんど、一人語りの態を取りながら、決して退屈な瞬間がないのは、十朱さんの名演ももちろんですが、時々、電話が鳴ったり、見えない場所にいる、気の利かない家政婦や助手に、用事を頼んだりする、動きの変化を適度に入れて、舞台に変化が生まれるから。

とても、秀逸な脚本であり、演出だと感嘆します。

スペンサー・トレーシーとの恋愛秘話には、胸を打たれ、同時に、小坂一也さんとの、楽しげなデート現場を何度も見た自分には、この彼女の告白が、十朱さんご自身と重なる部分もあり、余計に、心に響きました。

ヘップバーンも、十朱さんも、ご結婚は一度だけだったのですね。
きら星のごとく【YoutubeにてPV動画公開中!!ご来場誠にありがとうございました!!】

きら星のごとく【YoutubeにてPV動画公開中!!ご来場誠にありがとうございました!!】

蜂寅企画

王子小劇場(東京都)

2012/03/29 (木) ~ 2012/04/02 (月)公演終了

満足度★★★★

戯曲と殺陣は完成度抜群
蜂寅企画は、ご縁あって、旗揚げから拝見していますが、中尾さんの戯曲には、いつも泣かされ、これは、商業演劇の大劇場でも、十分通用する才気だと観る度、感心します。珠玉の台詞がたくさんあって、観る度、心の琴線を刺激されています。

今回の舞台は、今まで以上に、殺陣も本格的で、近くで観ても安心できるレベルの高さに息を呑みました。

ただ、今回、やや演出の間の悪さを感じる点があり、いつか中尾作品を別の演出家で観てみたいと思わされたりもしました。

ネタバレBOX

蜂寅に出演される役者陣は、正直、まだ演技的には進歩途上だと感じる方もいらっしゃるのですが、いつも、感心するのは、きちんと役になりきる持ち前の資質と、時代を感じさせる空気感を体現できる方が多い点。

名優的演技力には及ばずとも、きちんと観客の心をその時代に連れて行ってくれるから、きっと共感して泣けるのだと思います。

中尾さんの書く名台詞は、思わず、メモしたくなるくらい。特に、せゐが応為に諭すように言う「今更でいいのさ」の件には、心を打ちぬかれたような感銘を受けました。

伊織と箕の関係は、「蝉時雨」のようで、グッと来ました。

でも、だからこそ、いつにない転換の間の悪さは、やや気になってしまいました。いつもなら、もっとスピーディな展開で、演出の小気味良さが光っていたように思うのですが…。

伊織が、箕に渡す浮世絵が四つ折にされるのも、どうも不自然に感じました。
当時に生きていたわけではないので、はっきりと確信はないのですが、当時の人間は、あーいうものを四つ折にはしないような気がして、巻物のようにするのが普通なのではと、ちょっと違和感を感じました。

最後は、私も、頼光には、元の絵に戻ってほしかった気がします。

とにもかくにも、素敵な時代劇ファンタジーで、演劇という娯楽が必須人間の自分には、大いに共感できるメッセージも籠められた舞台に、元気を頂きました。

先日、国芳展を観て来たばかりなので、一層感じるところが多かったかも。

いつか、国芳を主人公にした第二弾も観てみたいですね。
幻蝶

幻蝶

東宝

シアタークリエ(東京都)

2012/03/12 (月) ~ 2012/04/04 (水)公演終了

満足度★★★★★

田中圭さんの好演に戦慄が走った
内容を全く知らずに観に行ったので、予想に反して、リアルなセットや、笑いもある舞台進行に最初は戸惑いつつ、観ていましたが、期待以上の田中圭さんの素晴らしい演技に魅了されて、50年以上演劇を愛してやまない自分には、贅沢過ぎる喜びを頂きました。

作られた人気アイドルが、いきなり舞台の主役をして、登場した途端、台詞を忘れ、一同ひっくり返りそうになった舞台など、枚挙にいとまがないほど、演劇ファンとして、臍を咬む思いを経験してきましたが、今日の田中さんのような、実力ある若手役者さんの台頭は、まだまだ日本の演劇も捨てたものじゃないなと感涙します。

内野さんとのコンビネーションもバッチリで、あまり期待していなかった分、余計、満足度の高い公演でした。

脚本の古沢さんに対する知識は皆無でしたが、「ALWAYS3丁目の夕日」や「キサラギ」の脚本を担当されたのですね。
さもありなん、2作とも、人間描写とストーリー構成が卓越していました。
気になる脚本家さんが、またお一人増えました。

ネタバレBOX

何となく勝手に、シュールな展開の舞台を想像していたので、笑いを取るところから始まる幕開きにまず仰天しました。

ストーリー展開も、人物描写も秀逸で、ずっと引き込まれて観られる佳作だと思いましたが、ややセットがこの作品の色に見合っていないのではという気がしました。

特に、二人が蝶を探す山林の木が、如何にもセットセットしていて、気分が削がれました。もっと幻想的なセットの方が良かったのでは?

山小屋を管理する会社の安藤さん(七瀬なつみ)が、あんな場所に、スーツとハイヒールでやって来るのも、あまりにも不自然。特に、2度目の登場では、豪雨の中、コートも着ていません。幾ら車で来たにしろ、駐車した場所からかなり歩く筈で、こうした些細な矛盾が、せっかくの作品の質に水を注すように感じました。
彼女は、ムシ屋である戸塚(内野)と真一(田中)に出会うことで、後半変化するので、その前提描写として、如何にも企業人間らしさを出したかったのだろうとは推察しますが、ここまで来ると、作品に嘘が入り込み過ぎて、レベルを落とすように思いました。

最後の真一の行動は、「ギルバート・グレイブ」の名シーンを彷彿とさせました。

この作品、映画にしたら、より味わい深いものになりそうです。
満ちる

満ちる

MODE

座・高円寺1(東京都)

2012/03/22 (木) ~ 2012/03/31 (土)公演終了

満足度★★★

前半、新劇調
久しぶりに、すまけいさんの舞台を拝見したくて、行って来ました。

相変わらず、落ち着いて観られない劇場に不満は残るものの、最後まで観ると、行って良かったかなと思える舞台でした。

ただ、すまけいさんが登場されるまでは、どうも演技が押しなべて、新劇調で、あまり世界に入って行けないもどかしさがありました。

竹内銃一郎さんの脚本は、台詞を途中で切るのが特徴なのか、役者が喋る台詞がそこまでしか書いていないから、仕方ないのですが、相手が被せて自分の台詞を言う構成でないため、その度、芝居が止まり、変な間が空くので、違和感を感じました。
小説ならこれでも良いでしょうが、演劇だと不自然に感じます。

ネタバレBOX

往年の鬼才と言われた映画監督と、かなり年齢の若い、その娘の映画監督。

周囲の人間達が、この二人の合作を画策しますが、なかなか事はうまく進みません。

落ち着いた舞台進行で、派手やかさはないものの、一定の舞台基準は満たした作品だとは感じました。

ただ、前半、鬼才役のすまけいさんが登場するまで、外野の人間に、この鬼才の人となりを語らせる部分が長く、ちょっと退屈になりました。

雅史と大地が将棋をさすシーン、雅史の長台詞の間、彼が将棋の手を考えてる風もないまま、ただ仕草のみで、駒を進めるのは、如何にも演技じみて、嘘臭く、なかなか舞台の世界に身を委ねる準備が整わない苛立ちを感じて歯痒くなりました。

すまけいさんの台詞は、その点、聞こえとしては明瞭ではないものの、鬼才の人格をいとも自然に表出されてお見事でした。
途中、台詞を忘れて、やり直しをしたと見えたのが、実は、あれも演出の内なのかは判断に迷いました。演出なら、不要な感じだし、事実なら、むしろやり直しは、それほど、汚点にはならなかったと思います。

ただ、身内が「鬼才」と連発する台詞にはちょっと鼻白むものがありました。

とにかく、すまけいさんのお元気なご様子を拝見できて、感無量でした。
マイワン・アンド・オンリー

マイワン・アンド・オンリー

東京グローブ座

青山劇場(東京都)

2012/03/10 (土) ~ 2012/03/24 (土)公演終了

満足度★★★★★

極上の愛の賛歌
観る前は、かなり迷いましたが、行って本当に良かった!

素直に感動しました。

単なる、お気楽な、ボーイ・ミーツ・ガールの良くあるミュージカルかと、高をくくっていたのですが、してやられっぱなし。

久しぶりに、日本の上演ミュージカルで、プロの仕事ぶりを見せて頂きました。

主役の坂本さんは、所属事務所のイメージからか、真のミュージカルファンには敬遠される向きがあるのかもしれませんが、四半世紀も、ミュージカルを観ている自分的には、今や、日本の10本の指に入る、名エンタティナーのお一人ではと感じます。

大和田美帆さんも、同様で、彼女も初舞台から拝見しているので、最近の実力を観るにつけ、如何に努力されたかが、推量できます。

お二人が踊るシーンは、古き良き、アメリカミュージカル映画を観るようでした。

他のキャストも、それぞれ、役を楽しく演じられ、久々、観ているだけで、幸せになれる、素敵な作品でした。

最近、翻訳ミュージカルを観る度、違和感ある訳詞にゲンナリすることが多かったのですが、この訳詞は、グッドフィットでした。

ガーシュインの音楽が良いのはもちろんですが、訳詞がしっくりしているので、素直に舞台に酔いしれることができて、満足でした。

最後のカーテンコールで、ミュージシャンの挨拶を、映像で済ませたのも、奥ゆかしくて、好印象でした。

最近、やたら、出演者以上に、目立とうとして、最後に、我が物顔で挨拶するある指揮者に辟易しているので、この奥ゆかしさには、敬意さえ感じました。

昔から、何千という演劇を観て来ましたし、たくさんの演劇人や業界人にも会いましたが、とかく、プロ中のプロ程、出しゃばらず、謙虚なものですね。

ネタバレBOX

なかなかに含蓄のあるストーリー展開でした。

結婚式での牧師の祝辞には、思わず目頭が熱くなりました。

川平さんのミスターマジックスは、出番は少ないけれど、最高のインパクト。

鈴木綜馬さんは、珍しい憎まれ役を軽妙に演じ、大和悠河さんは、宝塚ファンの方には不満が出るのではと危惧していたら、最後の方で、カッコいい決めポーズもあり、アンサンブルの皆さんのレベルも高く、まさに、これぞ、スタンダードミュージカルという醍醐味に満ち溢れて爽快でした。

やっぱり、演出・振り付けが、本場の方だからでしょうか?

いつも、このぐらいのレベルのものを見せて頂けたら、チケット代も高いとは感じないのにね。

照明の美しさも殊の外で、この照明で、うまく場転をする技術にも感嘆!

とにかく、全てにおいて、プロの仕事を見せて頂いた感じがします。

この公演は、坂本さんや大和田さんを食わず嫌いな方にも、できれば是非観て頂きたくなる舞台です。
平成中村座 三月大歌舞伎

平成中村座 三月大歌舞伎

松竹

隅田公園内 仮設会場(東京都)

2012/03/03 (土) ~ 2012/03/27 (火)公演終了

満足度★★★★

口上は、身内意識で、涙涙でした
先代勘三郎さんの時から、中村屋さんと我家は親交が深かったため、勘太郎君が勘九郎を襲名するなんて、何だか、身内の襲名のようで、楽しい口上なのに、ずっとウルウルしてしまいました。

まず初めは、通称、吃又。仁左衛門さんと勘三郎さんで、この演目というのは意外です。仁左衛門さんは、本当に何を演じられても秀逸極まりなく、それを観ているだけで、幸せになれます。

たまたま今日の「徹子の部屋」のゲストでしたが、「役者には、褒め言葉が大敵。自信は必要だけど、自惚れはダメ」というようなお話をされていて、でも、私が知る限り、仁左衛門さんは、幾ら褒めそやされても、奢るところのない、常に進化を続けれている稀有な歌舞伎役者さんだと尊敬します。
勘三郎さんとは、信頼して連れ添う夫婦の愛情が滲み出て、素敵な夫婦ぶりでした。

夜の部は、この演目があったので、格調が保たれた気がします。 

勘九郎襲名の口上は、何と笹野さんまで列座するフランクな口上で、大変和やかで、観ていて気持ちのよい口上でした。勘三郎さんの親心が心に沁みました。

御所五郎蔵は、やはり、現段階では、勘九郎さんには、向かない役のように感じました。
彼の生真面目さが、芸にも役作りにも不向きな印象。まだ、型に拘って、硬さが出てしまいました。一方、海老蔵さんは、いつでも自己流だなあと、ある意味、役者の器なのかな?という感想を抱きました。
しかし、何度も観ている演目ですが、ここに登場する逢州さんは、あまりにもお気の毒。いつも、彼女の死には、泣かされます。だって、ただただ善意の人なのに。親切が仇になる見本のような役柄ですよね。七之助さんの逢州、なかなか味わいがあって素敵でした。

元禄花見踊は、ついこの間まで、子役だった5人の競演。中でも、橋之助さんの三男、宣生さんは、踊りの素質がずば抜けていて、将来が楽しみでした。
最後に、スカイツリーが舞台後方に見える趣向だったようですが、私の席からは見ること叶わず、残念でした。(座席の表記が弾かれて、何度もエラーが出るので、正確に書けませんが、本当は、右1列ですので)

ジキル&ハイド

ジキル&ハイド

東宝

日生劇場(東京都)

2012/03/06 (火) ~ 2012/03/28 (水)公演終了

満足度★★★

ジキルは適任なれど…
チラシを拝見した時から、危惧していた石丸ハイドは、やはり、あまり悪の象徴のようには見えず、ジキルが素晴らしいだけに、ちょっと残念。

でも、私的にはほぼ理想に近いキャスト陣で、初演より、ずっと、このストーリーが、心情的に納得できる舞台になっていたと感じます。

更に磨きを掛けて、石丸さんの持ち役の一つに定着するといいなと思います。

ネタバレBOX

お人柄の良い石丸さんだけに、ジキルの方は、適役でした。

ただ、今までの鹿賀さんとは真逆で、ハイドの方は、このお人柄の良さが邪魔をしてか、どうしても、悪の権化のようなイメージが表出されない不利が目立ちました。

濱田さんのルーシーにも、酒場の女の媚た色気が足りず、ハイドとの性愛に溺れ、歌う「デンジャラス・ゲーム」に、ちっとも危険な臭いが立ち昇らないのが、何とも残念でした。

でも、石丸さん始め、皆さんが歌詞を丁寧に噛み砕いて歌って下さっていて、これまでの公演より、作品性は優れていたと思います。

新聞少年役の寺元さんの澄んだ目力、吉田さんの安定感、濱田さんの歌唱力等、見どころ、聞きどころもたくさんありましたが、何より、初演と大きく異なるのが、ジキルの友人役の吉野さんの得難い魅力でした。

これまでの公演は、この役、こんなに舞台の存在感なかったと思うけれど、今回は、酒場でのシーンで、吉野さんの踊りが堪能できて、得したような気分でした。

中嶋しゅうさんは、歌になると、一挙に素人芸のようになるのが、ちょっと気になりました。
「ザ・シェルター」「寿歌」2本立て公演

「ザ・シェルター」「寿歌」2本立て公演

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2012/03/02 (金) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

初体験ですが
北村想作品、初体験。

「ザ・シェルター」は、一種、大人の寓話のような趣で、好感の持てる舞台でした。

「寿歌」の方は、いろいろな作家の持ち味をないまぜにした感じで、イマイチ、私にはよく掴めない作品でした。

とは言え、今回の2作品、共に、加藤さんの魅力満載で、加藤建一事務所の作品選びとしては、大成功だろうと感じました。

ネタバレBOX

ザ・シェルター」は、まず、キャスティングが絶妙。

シェルターの製品テストで、家族に協力を仰ぎ、3日間、地下に篭る予定で、途中、原因不明の停電になり、コンピューターが作動せず、閉じ込められた中で、昔の台風体験が語られる場面は、その主題歌が、BJMで流れるから、余計に、「スタンドバイミー」の大人版といった趣でした。
赤い傘が飛んでいくところは、「メリーポピンズ」を思い出します。

つまり、観ている側にも、過去の記憶を呼び覚ます仕組みが組み込まれている雰囲気。だから、何となく、郷愁を感じ、大人の寓話のような芝居でした。

何故か、突然、現状復帰して、それまで不安に駆られていた家族は、残るテストをやめて、日常に戻って行ける。

でも、実際の、震災後の日本の現状では、こういう選択は不可能なわけで、より一層、寓話感を感じました。

一方の「寿歌」は、別役さんとか唐さんとか、かつて観た不条理劇の様々なバリエーションが敷き詰めれた印象の作品。

だから、自分的には、あまり目新しさも感じず、他のお客さんほどには、楽しめない部分の多い芝居でした。

ただ、この芝居のゲサク役の加藤さんの佇まいは圧巻!それだけで、嬉しくなるような役作りでした。

違った役どころを、どちらも好演されている小松さんは、役の雰囲気作りは申し分ないのですが、どうも早口になると、いつものことながら、滑舌の甘さが顕著になり、台詞が聞き取れない箇所が出るのが残念です。

日下さん、占部さんは、共に、実力ある女優さんで、安定されていました。
ジレンマジレンマ

ジレンマジレンマ

ワンツーワークス

ザ・ポケット(東京都)

2012/03/03 (土) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★★

まさにジレンマの観劇
ここの紹介文から想像したのとは、ずいぶん趣の違う演劇でした。

三つの部屋で進行する、3つの取調べが、演劇的な効果を生んで、巧みな構成で描かれて行くので、観ていて、ある種、ワクワクする感覚が宿るのですが、描かれる題材は、震災後の現実社会に根ざしているので、演劇として、舞台を楽しむ感情と、現実社会の現状を憂える気持ちが相反し、何となく、居心地が悪い心境で観てしまいました。

出演者全員の役者力が優れ、小劇場では珍しく、華のある若手も揃っていて、一跡二跳の時より、遙かに、劇団力もアップした印象。

東京新聞社会部の、実際、震災現場に何度も取材に赴いている片山記者と、古城さんのアフタートークは、大変、考えることの多い、実のある時間でした。

雪やこんこん

雪やこんこん

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2012/02/19 (日) ~ 2012/03/11 (日)公演終了

満足度★★★

井上作品にしては中身が薄い
この作品、何度か再演しているようですが、私は初見でした。

旅芝居の楽屋モノでは、「化粧」という傑作があるだけに、こちらは、戯曲としては、かなりレベル落ちという印象でした。

それに、ある新劇のベテラン俳優さんが、ミスキャストなのが、この作品を更に絵空事にするための拍車を掛けた気がして、如何にも残念!

逆に、若手の役者さんは、なかなか好演。

新井さんは、元ずーとるびなんて、思えない、得難い素敵な役者さんになられて、舞台を拝見する度、感無量です。

大好きな二人の女優さんの競演は、緑子さんに軍配かな?

ネタバレBOX

青年座は、養成所時代から、たくさんの所作を学ぶのですが、文学座は、どうも教えることが多岐に亘っていないらしく、これは、不思議と、劇団の特性にも響いているような認識が以前からありましたが、今回の舞台で、更にそれを痛感しました。

元、新国劇で、殺陣三昧の経験があるという、旅芝居の役者役の、金内さんが、全くどこをどう見ても、そんな経歴の役者には見えません。

最初の場面で、金内さんの台詞回しを、「名調子!」と褒めるシーンで、こちらの方が、顔が赤くなるほど、全く惚れ惚れしない台詞回しに、まず愕然。
踊りを踊っても、腰が座らず、手先もフラフラ。
横で一緒に踊る新井さんの方がずっと様になっていてこちらは、元新国劇座員に見えましたが、金内さんは、どこまでも、新劇役者さん。

「化粧」で、「新劇役者にはできない」とかいうような、笑う台詞がありましたが、あれを思い出して、確かに!と、一人、頷きました。

逆に、意外と様になっていたのが、ミュージカル畑の今さん演じる、元、新派役者。そう言えば、今さんの奥様は、歌手になる前に、新派で、八重子さんに付いて演技の勉強をなさっていたんですよね。
奥様仕込みでしょうか?感心しました。

「国定忠治」や「瞼の母」の台詞が、随所に挿入されていて、新国劇の楽屋が遊び場だった自分には、個人的に、楽しめる部分はあったものの、物語の主軸が、それ程のものでないので、舞台の出来栄えとしてはかなり期待はずれ感が残りました。
ハムレット

ハムレット

東宝

シアタークリエ(東京都)

2012/02/01 (水) ~ 2012/02/22 (水)公演終了

満足度

やけに大味の「ハムレット」
先に観た友人から、かなりネガティブな情報を入手していたので、相当覚悟して行ったのですが、それをも超越して、あまりにも大味なストーリー展開に、驚いてしまいました。

これでは、映画の予告編だけ見せられたみたいな気分。

昔の「夜のヒットスタジオ」の歌謡ドラマ並みの端折り方。

「ハムレット」の内容を熟知している人でも、たぶん、この舞台からは、何の共感も感動も享受できないだろうと思いました。

キャストのせいではむろんなく、演出のせいでもない。
この作品自体が、大味すぎるのです。

ネタバレBOX

まず、ミュージカル作品としても、楽曲に統一性もセンスもなく、聴いていて、楽しい曲も、感情移入して、感動する歌もないのが、まず第一のネック。

その上、訳詞に芸がなさ過ぎます。

「ブラザー」とか「シスター」とかの歌詞は、他に訳し様がなかったのでしょうが、伊礼さんや昆さんが熱唱すればするほど、陳腐にしか聞えず、吹き出しそうになるくらいでした。

長い原作を端折るのは致し方ないとしても、登場人物間の感情の流れが、全く表出されないまま、粗筋よりももっと省略した、「ハムレット」もどきのストーリーを追うだけでは、役者さん達も、情感を役に投影する間もないでしょう!

1幕はまだしも、2幕のあれよあれよという展開には、目を覆いたくなりました。

ハムレットをイングランドに追いやる計画も語られず、ローゼンクランツもギルデンスターンもフォーティンブラスも登場せず、ハムレットとレアティーズの決闘シーンは、早送りのように進んで、あっという間に死を迎えるという、とんでもない展開に、ある意味息を呑みました。
RICHARD O'BRIEN'S『ロッキー・ホラー・ショー』

RICHARD O'BRIEN'S『ロッキー・ホラー・ショー』

パルコ・プロデュース

サンシャイン劇場(東京都)

2012/01/27 (金) ~ 2012/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

映画より、上品で、娯楽に徹していた
昔観た映画版は、もっと猥雑で、毒気のあるエロチシズムに満ちていましたが、この舞台は、フリークのための娯楽に徹した、ライブショーといった趣でした。

映画では、虐げられた人々の悲痛な叫びのようなものを、内有している雰囲気があって、時々、心の奥が疼く瞬間を感じたのですが、今回の舞台は、難しいことは抜きにして、とにかく、出演者も、観客も一丸となって、楽しもうぜ!って感じでしたね。

ロッキー・ホラー役の辛源さんが、素晴らしい役作りで、将来楽しみな役者さんだと思いました。
城田さん、伊礼さんに次いで、また楽しみなハーフミュージカル俳優さんが現れたのだなあと嬉しくなりました。

舞台そのものには、取り立てて不満はありませんでしたが、開演前に、客席で、ポップコーンが売れる度に、「お買い上げ頂きました」とキャストが叫び、拍手を強要するのも、趣向の一つとは言え、せめて、注意事項アナウンス中は、控えるべきではと感じました。
最近、また地震も多く、避難の場合の注意等もあるわけですし…。

ネタバレBOX

子供の頃は、苦手だった藤木孝さん。今は、逆に、若い俳優さんと並んでも、年齢を感じさせない意気軒昂ぶりに、長年の演劇ファンとして、嬉しさを感じて、ニンマリ拝見致しました。

役者さんそれぞれが、適役揃いで、楽しめました。

舞台に映像を持ち込むのは、個人的にはあまり賛成しないのですが、こういう作品では、絵本のようで、効果的だったように思います。

客席にも、たくさん、コスプレした人たちがいて、一緒に、歌ったり、手振り身振りをしたり、ミュージカルというよりは、ライブ感覚で、この雰囲気に乗れたら、楽しめるけれど、乗り過ごすと置いてきぼりを喰うかもしれません。

楽日だったから、皆、本当に、乗り乗りで、楽しそうで、何よりでした。

歌詞は、ほとんど聞き取れませんでしたが、この作品なら、それ程、問題視しなくて良さそうかなと感じました。
金閣寺 The Temple of the Golden Pavilion

金閣寺 The Temple of the Golden Pavilion

パルコ・プロデュース

赤坂ACTシアター(東京都)

2012/01/27 (金) ~ 2012/02/12 (日)公演終了

満足度★★★★

観られて良かったと思う舞台でした
今日の2階席は、私の列以外は、全て、男子高校生の団体。

行った時には、あれ、大変な日に来ちゃった!と正直、思いました。
クラスの男子の名前を覚えてしまうくらい、開幕前は、大声で私語が飛び交っていました。後ろの子は、「ヘッドフォンで、音楽聴いてようかな」「うん、バレないんじゃん」とか言ってるし、どうなることかと思いました。

ところが、これが始まってみると、皆が集中して、舞台に見入っているんです。これには、ビックリ!

完全に、亜門さんの演出勝ちでしょう。

この手の演出舞台は、過去に何度か観ていますが、これだけの大きな舞台で、空間のあそびを感じさせずに、物語の進行を観客に無理なく浸透させた演出舞台には、たぶん初めて出会いました。

遙か昔の若かった時に読んだだけの記憶で、どこまで原作と同じで、違うか、よくわかりませんが、あの当時、よく理解できなかった主人公の想いが、この舞台のお陰で、体感として、感じることができました。

高岡蒼甫さんの存在感が、群を抜いていました。

ネタバレBOX

音と、視覚と、映像と、簡易な大道具セットを巧みに使い、全体的に、大変スタイリッシュな演出でした。

ただ、想像で見せる演出と、リアルな効果音にややギャップを感じました。

1幕の終わりが、衝撃的で、皆固唾を呑んでいた割には、2幕の展開は、やや冗長や蛇足を感じ、特に、最後の場面近くなってからの回想シーンなどが、せっかくの作品を一気につまらなくした気がして、その点が残念でした。

金閣寺の表現と照明の色合いは、とても良かったと思います。

憧れの親友だった鶴川の死に直面し、自分の生き甲斐を失ったように哀しむ溝口の想いに共感し、思わず涙が出る自分に驚いたりもしましたが、それにしても、思春期真っ只中の男子高校生に挟まれての、こういう内容の芝居の観劇は、大層緊張するものですね。
カラミティ・ジェーン

カラミティ・ジェーン

梅田芸術劇場

ル テアトル銀座 by PARCO(東京都)

2012/02/04 (土) ~ 2012/02/11 (土)公演終了

満足度

いろいろと興味深い観劇でした
湖月さんの演技は、比較的好きなのと、個人的に、ある興味があって、観劇してきました。

うーん、なるほど!何となく予想したとおりの会場の空気でした。

今、あるベストセラー作家の、何故か、あまり世間に知られていない、ある団体をモデルにした小説を読んでいて、今日のこの会場の空気にも似た描写があって、大変興味深いものがありました。

湖月さんのジェーンには、やはり、魅力がありました。
ですが、共演者のレベルに、かなり疑問を感じます。

これ、無料公演なら、満足度2ぐらいですが、この値段では、マイナス2ぐらいの満足度ですね。

ネタバレBOX

かなり長くある劇団でトップクラスの男優さんが、これ程、滑舌が悪かったかと、再認識しました。
ずっと舞台俳優さんなのに…。
彼は、ナレーションも担当しているのですが、ほとんど、台詞が聞き取れませんでした。

金児さんという役者さんは初めて拝見しましたが、空手の腕前がある割には、立ち姿が美しくなくて、長身が効果的にならず、逆に、もてあましている感がありました。この役は、立ち姿の美しい役者さんで観たかったと思います。

劇中の小ネタも、まるで、面白くなくて、演出も、期待ハズレで、残念に思いました。
CHESS in Concert

CHESS in Concert

梅田芸術劇場

青山劇場(東京都)

2012/01/26 (木) ~ 2012/01/29 (日)公演終了

満足度★★★

訳詞が悪いのが難点
きっと誰もが、「へえ?こういう話だったのね」という第一印象だったろうという、内容でした。

チェス選手権を、政治的に利用する国家対国家のお話。

だから、歌詞も、ホンワカと、誰もが理解しやすい内容ではなく、聴きながら、理解しなければならない要素をたくさん含有してるにも関わらず、訳詞が、字余りで、歌詞の内容をほぼ理解できなかった冒頭が大変残念でした。

キャストは、皆、概ね歌唱力のある方ばかりで、石井さんも、大人の演技をされていて、いつものように熱すぎず、好感が持てました。

アナトリーの妻役のAKANE LIVさんが、初めて拝見した女優さんながら、大変歌唱力もあり、魅力的な佇まいで、注目しました。

ネタバレBOX

この作品、コンサート形式での上演が多いようですが、確かに、その方が良さそうに感じました。

チェスの選手権を、アメリカとソ連が、政治的に利用して、言わば、八百長があったり、裏取引があったりと、まるで、山崎豊子さんが書くような、およそ、ミュージカルとは不似合いなシチュエーションの芝居でした。

こういった内容なら、むしろ、ミュージカルではなく、ストレートプレイで、じっくりと描いてほしくなります。

1幕の最後に、アナトリーが、敵のセコンドであるフローレンスへの想いを籠めて歌う大曲「アンセム」はやはり名曲でしたが、この曲、もっとクローズアップされてもいいように思います。
Koji YAMAMOTO 35th Anniversary Live

Koji YAMAMOTO 35th Anniversary Live

シーエイティプロデュース

赤坂BLITZ(東京都)

2012/01/24 (火) ~ 2012/01/25 (水)公演終了

満足度★★★★★

待ち望んだ好企画公演に感涙
山本耕史さんは、私が長く大ファンでい続けている役者さんのお一人です。

その山本さんが、彼に人生の大きな転機を与えてくれたジョナサン・ラーソンの命日に、アニバーサリーライブを実現して下さいました。

もう十数年、こういうコンサートを待望していましたが、行ってみると、思いがけない曲まで聴けて、本当に感無量でした。

彼らの「RENT」を今一度、観たくなりました。

ネタバレBOX

一部では、へドウィックの歌からスタートし、思いがけなく、もう二度と生で聴く機会はないと思っていた「オケピ!」の「パーカッションの理想と現実」やレミゼラブルの「カフェソング」まで歌ってもらえて、感無量でした。

2部は、ジョナサン・ラーソン特集といった趣で、「RENT]初演時のキャストが、応援に駆けつけて、嬉しいステージとなりました。

やはり、私にとっては、このメンバーで、この訳詞の「RENT]こそが正当な印象があるので、この瞬間に立ち会えた喜びを噛み締めました。

山本さんが、演じたり、深く関わった人物、ジョナサンや土方、モーツァルト、竹中半兵衛、そして、今年の大河で演じる藤原頼長、5人共が、皆今の山本さんと同い年の35歳で、他界されたそうで、その人達の生きられなかった余生の分も、彼が今後、きらめいて生きていこうという節目の記念ライブという主旨もあったようです。

長年のファンの一人として、今後の山本さんの更なる飛躍が心から楽しみに思える、素敵なプレゼントライブに、充足感に満たされて、会場を後にしました。
平成中村座 壽初春大歌舞伎

平成中村座 壽初春大歌舞伎

松竹

隅田公園内 特設会場(東京都)

2012/01/02 (月) ~ 2012/01/26 (木)公演終了

満足度★★★

8年後の七之助さんのお六に期待します
昔、息子が、曽我五郎を、自分が、久松を踊ったことがあり、そういう懐かしさも手伝って、楽しみに雪の隅田川に初芝居を観に参りました。

「お染の七役」の方は、芝居のストーリーに重きを置くよりは、七役早替わりの趣向を楽しむ芝居だと思うのですが、それでも、芝居の核として、土手のお六と鬼門の喜兵衛夫妻の場の高揚感は、大事な要素です。

その点において、まだ今の七之助さんの若さでは、体現しきれない部分がありました。

8年後か10年後あたりの彼の再演に期待してしまいました。

それと、これは余談ですが、足元がお寒い方にと案内係りの勧めるブランケットが有料なのには驚きました。500円ですと購買を勧めていましたが、あれほど、当日その場で必要なだけで、持ち帰るには、荷物になるし、無用の長物になるものはないと思うのですが。

これは、来て頂いたお客様の居心地のために、無料で貸し出すべき物だと思いました。

ネタバレBOX

油屋での強請りの場が、弾まないのがとても残念でした。

11月の白浪五人男の浜松屋強請りの場面では、七之助さんの弁天小僧が生き生きしていただけに、これは、年齢的に無理もないことだと思いますが。

何しろ、40年前から、東京での公演の「お染の七役」はほぼ貫徹観劇しているので、どうしても、玉三郎さんと孝夫さんコンビのこの場面が目に焼きついてしまっていて、私には、痛々しささえ感じられました。

小糸、お染、久松の七之助さんは、見目麗しく、申し分なし。奥女中竹川と貞昌にも、貫禄があり、見た目にも難はありませんでしたが、お光に哀れさが欠けるのと、お六に、胸をすくような、伝法な仇っぽさが足りなかった点が惜しく感じられました。橋之助さんにしても、小悪党にしては、ちょっと品が良すぎました。
孝夫さんの喜兵衛の時には、水桶の脇で、久松に殺される時、あーまだ死なないで、悪の色気を見せて!なんて内心思ったものですが、橋之助さんの喜兵衛が死んでも、何の感慨も湧きませんでした。(笑い)
きっと、何の役でも、少しお行儀が良すぎるのでは?
ラ☆カージュ・オ・フォール

ラ☆カージュ・オ・フォール

東宝

日生劇場(東京都)

2012/01/07 (土) ~ 2012/01/29 (日)公演終了

満足度★★★★

佳作度は不変
市村ザザは初役の頃に比べて、見た目の情感は薄れてしまったように感じますが、鹿賀ジョルジュとの長年の夫婦カップルとしてのしっくり感は増して来たように感じられました。

ラカージュオフォールの踊り子達は、観る度、レベルアップしていて、各人に存在感があり、レビューのシーンも、このストーリーとは分離しても、大いに楽しめる場面になりました。

ダンドンの今井さんが、数年前より、演技力が出て、嬉しい役作りをされていました。

原田さんは、好感度高い息子役でした。

後ろの席の女の子が、「あー、面白かった!何にも考えずに楽しく観れた。そしてちょっと泣けた」と感想を漏らしていましたが、私も同感!

このお二人のこの舞台はさすがに、今回が最後でしょうが、また、演技派カップルで再演を続けてほしい作品です。

ネタバレBOX

いつも思うのですが、アルバンとジョルジュが肩を組んで散歩する場面のセットがとても好きです。そして、ここに行き交う周辺住民達の佇まいがとても自然で、本当にこの街で暮らす小市民風な雰囲気が、甚く気に入っています。

家の中の場面は、やや誇張が多過ぎて、心が通わない部分もあるのですが、この二人の場面には、長年の二人の愛情が嘘でなく感じられて、いつまでも、この雰囲気に浸っていたくなります。

原田ジャン・ミッシェルが、最後に、母であるアルバンに許しを請う歌に、思わず目頭が熱くなりました。

今井ダンドンが、せっかくそれらしくなった反面、最近出て来たばかりの俳優でもないのに、相変わらず、森クミさんが素に戻って吹いてしまうのは、頂けません。客席は、好意的に笑っていましたが、これでは、ザザの情感を伝える芝居が成立しなくなって、ただの御ふざけ芝居に格下げしてしまう危惧がありました。

あー、でもやっぱり、岡田真澄さんのジョルジュが一番好きでした。
GOLD~カミーユとロダン~

GOLD~カミーユとロダン~

東宝

シアタークリエ(東京都)

2011/12/08 (木) ~ 2011/12/28 (水)公演終了

満足度★★★★★

クローデル姉弟の演技力に感嘆します
新妻さんの評判は漏れ聞こえておりましたが、またしても、伊礼彼方さんの演技の幅を実感し、大変感嘆致しました。

白井さんの演出舞台は、いつも、世界観が明白で、統一感があり、大好きです。全てにおいて、感情の起伏が、見事に表出された舞台で、その調和の美しさに酔いしれました。

演技派揃いのステージで、安心して観られたのですが、カミーユの父役の西岡さんのソロナンバーがかなりあるので、ちょっとハラハラしました。
古谷さんの代役だから致し方ありませんが、実力派のミュージカル俳優さんばかりなので、演技が素晴らしいだけに、そこだけがやや気になってしまって…。

ネタバレBOX

無音のステージ、年老いたロダンが、カミーユを回顧する静かな幕開けにまず意表をつかれました。

ロダンとカミーユの彫像が点在する舞台に、二人と、カミーユの3人の家族以外は、まるで、彫像と一体化するようなモノトーンの衣装。
ロダンが、地獄の門を制作中、弟子達が、あちこち、作業をして動いているにも関わらず、まるで、」舞台には、カミーユとロダンの二人しかいないかのような錯覚を覚える、実に、気の効いた演出が随所に行き渡っている感じがしました。

新妻さんは、初舞台の頃は、まだ役として歌う技量は欠けていましたが、舞台の度に驚くべき進化を遂げて、今や、こんなに、歌詞を台詞として届けられて、尚且つ歌唱力のある女優さんはなかなか見当たらないと思う程、名演をされていました。

そして、驚くのが、カミーユの弟ポール役の伊礼さん。
まだ少年の時には、歩き方も、子供のようで、いつものカッコいい青年役ときちんと演じ分けていらっしゃることに、まず驚かされましたが、その後、彼の社会的地位や年齢が上がる度に、徐々に、それを体現される技術に目を見張りました。声の出し方にも工夫され、本当にポールのその時の実年齢に見えるのです。
カトリックを狂信している様子も、それ故、姉を心配する心情も、手に取るように理解できます。

カミーユが、精神を病んで、精神病院に連れて行かれる場面は、先日観た「欲望という名の電車」なんかより、数等、心を揺さぶられ、いつか、新妻さんんにブランチを演じて頂きたいとまで思いました。

石丸さんも、この方には、持って生まれた品格があるので、芸術家の役はいつも大変お似合いです。
雨の夜、カミーユとロダンが結ばれるシーンは、息を詰めて観る程、甘美な美しさに満ちていました。
これは、演出の白井さんの品の表れだろうと思っています。

できれば、もう1回観たかったのですが、明日で楽。残念です。

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