はじめ ゆうの観てきた!クチコミ一覧

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ゴジラ

ゴジラ

リブレセン 劇団離風霊船

かめありリリオホール(東京都)

2010/09/27 (月) ~ 2010/09/27 (月)公演終了

満足度★★★

ゴジラの愛
前作「さて、何が世界を終わらせるのか」が結構好きだったので
観に行きましたが、笑いの部分で弱いような気がした。
今となってはやっぱり設定に余りにも無理があり過ぎるよなぁ。。。

でも、やっぱり橋本直樹のケレン味溢れる演技は凄く好きだ。
そして、ゴジラ演じる竹下知雄は上手いと思いました。


ネタバレBOX

ラスト、山の噴火の場面でやよいがゴジラの話振っても
家族はじめとして皆さらっとスルーしていたのは、この物語が
純真さそのもののやよいの願った幻想だったからなんだろうか?? 

最後、ゴジラによく似た男がやよいにスミレを差し出して(二人の出会いの
きっかけがスミレの花だった)二人で避難しに走り出して幕、は何か
釈然としないものを少し感じたけど、良いエンディングで良かった。

それにしても、ハヤタの空回りっぷりには笑いました(笑
でも、好人物だよなー、ハヤタ。 若干KYですが。。
庭劇団ペニノ『アンダーグラウンド』

庭劇団ペニノ『アンダーグラウンド』

庭劇団ペニノ

シアタートラム(東京都)

2010/06/06 (日) ~ 2010/06/13 (日)公演終了

満足度★★★

擬似解体ドキュメンタリー
演劇、というよりは「見世物」。
気の利いた台詞や、アッと驚く展開の妙に期待してはいけません。
というか、作・演出家もこの作品が「一発ネタ」的なモノだと完全に
分かった上で、「ショー」として客に見せていることは明白です。

ジャンル違いますが駕籠真太郎のグロバカ漫画とか楽しめる人には
ものすごく向いていると思います。

ネタバレBOX

とりあえず演出が良かった。 特に、右端に設置されてたテレビ。
アレで逐一解体の様子を映し出したり、脳波(?)の乱れをリンクさせたり、
果ては患者の何だかよく分かんない変顔コーラス(笑)を見せてくれたり。

アレがなかったら、舞台上の様子が全然分からないんで評価も
落ちてたかなぁ。 ライトの使い方も洒脱でサーカスかなんかの
ショーみたいな感じを与える事に成功してました。

音楽も地味に良かった。 ジャジーで華麗な曲に乗せて内臓摘出したり、
全体的にブラックユーモア満載。 

最後の方で、ショーの終わりに間に合わなくなりそうな手術スタッフ陣が
大慌てで、生掴みで心臓抜き出しちゃったシーン。 
実際はかなりヤバ目のとこなのに、どこかコミカルなのは
この作品のチャーミングさだと思う。
アメリカン家族

アメリカン家族

ゴジゲン

吉祥寺シアター(東京都)

2010/04/29 (木) ~ 2010/05/02 (日)公演終了

満足度★★★

団欒ぶち壊し系ホームバースデイ・コメディ
とにかく出てくる人が皆リアル。
いや、過剰なほどの演出で「笑い」に昇華されているんですけど。
うわー、かなりイタいけど、こういう人いそうだよね、っていうのが
土佐和成演じる伊原夫と吉牟田眞奈演じる次男の恋人のウザさ(笑

特に、伊原夫のテンション高めなのに、空気読めな過ぎて滑り続け、
嫁はおろか父親にまで邪険にされる有様は結構作品の中でも
光っておりました。

個人的には目次立樹演じる次男カウンセラー・リョウさんがツボ!
見せ場はそんな多くないけど「リョウサン、ホントはニホンジン!!」の
怪演には思わず痺れました。 笑いの部分では一番貢献してたかも。

ネタバレBOX

勿体ないな、と思ったのは時間の長さと過剰な演出。
前者はもっと短く出来たんじゃない? 要らないエピソードが多いような。
伊原夫が刺されるのなんか、後でフォローも無かったし…。
後者は台詞間の「間」の部分まで皆で騒いで、の演出で埋めちゃったので
逆に鼻白んでしまったかな。 

最後の場面、一家が来訪者達をバットやら傘やらでつつき回して
強制的に追い出すのは、言っちゃ悪いけど大いに共感した。
自分達だけの「空間」に空気読まないで居座り続けるのを叩き出して
何が悪い?って感じなんだろうね。 

役柄では長女と父親が好き。 大成のさりげない優しさも良いね。
ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶

ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶

チェルフィッチュ

ラフォーレミュージアム 原宿(東京都)

2010/05/07 (金) ~ 2010/05/19 (水)公演終了

満足度★★★

空虚な言葉がコミカルに浮き彫りに
まず、あの繰り返されつつも、微妙に細部が異なっている厄介な台詞を
語りつつ、切れの良い動きを見せ、もとい魅せてくれた俳優達にエール。

何度も何度も執拗に繰り返される、一見意味の無い言葉の数々、
「ホットペッパーって役に立つんですよねー」「クーラーが寒くて地獄
みたいなー」「女性ってそうですよねー」…

何回も繰り返される動きと共に、見ているうちに俳優達がまるで
「演技している人間」というよりも「律動するゼンマイ人形」か何かのように
見えて仕方がありませんでした。

ネタバレBOX

結局、派遣の社員達はクビにされた同僚の送別会をやる、といいながら
その実皆自分のことで頭が一杯で、同僚をタネにしてどれだけ自分のことを
語る、というか、押し付け合うか競っている。 そんな空虚過ぎる風景。

正社員達も互いのことなんてどうでもいいし、クビになる同僚も会社の
人間なんて素でどうでもいい。 どうでもいい人たちが開いてくれる
送別会より、それにかこつけて自分のことを話す方が大事。

暗転直前、派遣の「小松さん」がクビになる「エリカさん」に、
「私達も遅かれ早かれ後を追いますんでー」って言った時笑った。 ヒドッ。

『ホットペッパー』が一番面白かったかな。 登場人物が三人と
三者三様違う動きを見せてくれるし、台詞もヴァリエーションがあったし
一人が躍るような動作で自己主張してる時の、他の二人の反応も
何気に面白かった。 うちわであおぎ出したりするし(笑
ぎこちなく、不穏なjohn cageの音楽もマッチし過ぎです、本当に。


『クーラー』『別れの挨拶』は動きの切れは凄く良いのだけど
いかんせん人物が二人ないし、一人なのでどんなに良くても
基本同じ動作の繰り返しなので冗長にはなった、かな。
少し時間も長いような気がした。

でも、動き的には『別れの挨拶』が一番良かったと思います。
表に出ろいっ!

表に出ろいっ!

NODA・MAP

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2010/09/05 (日) ~ 2010/09/28 (火)公演終了

満足度★★★

裏「ザ・キャラクター」
中村勘三郎ファンが多かったのか、一挙手一投足に観客大ウケ。
でも、勘三郎さんはサービス精神旺盛でした。 歌舞伎パロディやって
笑わせてたり、他ではしないようなぶっ飛んだ動きしてたり。 
その捨身のパフォーマンスがすごく面白かった(笑
若手女優さんも溶け込んでた、というより溶け込み過ぎてた(笑

特に序盤の、若干引きそうになる程の高テンションについてこられるかで
結構決まってくるかな、と思います。

しっかし最後の台詞、相当キツい皮肉だねぇ…。

ネタバレBOX

内容は、まんま上の「説明」に書いてある通りです。
母親はいい歳して若年アイドルグループ、父親はアトラクション、
娘は… あの「書道教室」にモノの見事にどっぷりハマってしまっている。

前半は「ザ・キャラクター」と同じく三者間のドタバタで進行していくけど
ひょんなことで娘の行き先がバーガーショップのおまけ目当ての行列ではなく
「書道教室」ということが発覚してから、舞台に何ともいえない黒い雰囲気が
立ち込めてくる。

家元のいう、「世界の終り」を信じる娘は、それゆえにそれを信じない
両親と対立、家元から授かったという「人魚の粉」を飲むといい出す。
なんでもこの「人魚の粉」を飲むことで人は生まれ変われるらしい。

…「ザ・キャラクター」を観た人は、ここでこの場面の雰囲気が
あの「地下室」でのやり取りと被ることに気がつかされます。
実際照明も、あのシーンと全く同じものにされててぞくっとした。
三人が互いを鎖でつなぎ合ってるのもまるで同じ。

三人を外に行かせない為につけられた鎖はそもそも三人が
自分の信じるものを強硬に捨てられないことの結果。
それなのに、それに呪縛され自分ではその鎖を脱して外に
脱出することが出来ない。

結果的に自分で招いた鎖を外すことことすら他人に期待する、その滑稽さ。

でも、決して三人を笑えない。

ここで「演劇」をレビューしている私が鎖につながれている、それを自分で
外せないでいる、そのことに気がつかないでいるかもしれないし。。

ちなみに、最後勘三郎さんが演じる能楽師の

「神様でも泥棒でもいいから水を飲ませてくれ!!!」

はキツかった。 

結局窮地に陥った時には、自分の全てを賭けると言い張ってた趣味嗜好も
水以下、張り子の虎だったわけで、じゃ、そんなの今まで信じちゃってた
貴方って一体何なんですか? という皮肉な一撃をくらった感じ。
エネミイ

エネミイ

新国立劇場

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2010/07/01 (木) ~ 2010/07/18 (日)公演終了

満足度★★★

通過点
性別、年齢、家庭環境など観る人によって全く違った印象を与える
作品だと思う。 テーマがテーマなだけに、「誰が間違っている」とか
「誰が正しい」というのをひとまず置いておいて(あるいは観客に任せて)、
ストーリーだけ投げかけた作品ですが。 間口は大きく広がったと思う。

登場人物で、特に共感出来る人は残念ながらいなかったけど、
観るべき作品だと思うし、観終わった後は共感、あるいは出来ずとも
自分に近しいと思える人を舞台の上に発見出来る作品ではないかと。

ネタバレBOX

演出を蓬莱氏自身で無く、別の人、鈴木氏が手掛けたのは
正解だったと思う。

蓬莱氏は過剰というか、突き抜けてしまうのでテーマは心に
突き刺さってくるのだけど、その分ものすごく疲れるから。。。
鈴木氏の、基本大らかで〆るとこだけきちんと〆るという演出は
バランス的によいと感じます。 蓬莱演出だったら、多分重苦し過ぎて
二時間以上は耐えられなかったと思う。。

内容は…一言でいうと、「依存する人たち」の話かな。。
一家全員、来訪者の二人、山田、みんな何かに依存して、「それが
私の生きる(進む)道」って感じで生きている。
演出では相当抑えていたと思う部分だけど、結局そこが感じ取れたから
誰にも共感出来なかったのかも。

母親は明らかに父親と脱コミュニケーションなのに「お父さん仕事
頑張った!!」って言っちゃう辺り、日本人だなぁ、と。 

姉。 あんま重要じゃない役回りだけど、言っていることは一番現実的で
よく理解出来る人だった。 何だろう、感覚が一番マトモだと思った。

男四人。 うん、みんな同じようなものだね。
それぞれが思うファンタジーの中、「敵」に向かって腕を振り上げて
いるけど、その拳は「敵」、ならぬ「的」には当たらない。 

だっていないもん、敵なんて。 
自分がいると思っているモノと闘い続けるのって何よりも辛い。
ファンタジーの中にいるから、互いが理解し合えない。 問題は
そこにあると感じました。

この中で一番礼二と歳が近いけど…
彼がシフト表の話をし出した時、凄く真面目で優しく他人想いであることは
痛いほど伝わってきたけど、正直「ふーん、それで?」と感じてしまった。

彼の自己犠牲的に匂う部分がどうしても受け入れがたかったのもあるけど
彼と、現実世界の深夜遅くまで頑張って仕事しちゃう入社したての社員とが
ものすごくオーバーラップし、そこに昔の自分を見るような気がして。

今だからいえるのだけど、↑のような感覚って結局「自分が」っていう
思いが強過ぎるんだよね。 自信過剰というか、自己本位というか、
最終的にはそこに行きつくし、やがては自分で気がついて脱却していく
べき「通過点」だと思うから。 

なので、ヨーロッパ旅行に誘われた礼二が断る気持ちもよく分かる。
ヨーロッパ旅行より、今の自分にはやらなきゃいけない仕事があるから
よそに目を向けられないという想いですね。 すごく生々しかった。

でもそれは結局、自分を中心においている発想なんだよね。 
余裕が無いし、「入れ込む人」というのは、まだ自分に自信が無い人の
裏返しということもよく分かっていると思うから。

でも、断言出来る。 彼は必ずヨーロッパ旅行に行くし、三里塚にも行く。

父親の、「年をとって一番辛いことは、昔のことを正確に伝えられない
ことだ」というのはすごく名台詞。 一番心に響きました。
そんなに驚くな

そんなに驚くな

BeSeTo演劇祭

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/07/17 (土) ~ 2010/07/19 (月)公演終了

満足度★★★

死体をめぐ…らないブラックコメディー
結構前から、色んな演劇人のインタビューで韓国の俳優は凄い、という
話をちらほら聞いていて、気になってた矢先に本作品の案内。
どんなものか?と軽い気持ちで観に行きましたが。

とりあえず日本のと比べて、色々とあけすけ、というかズバッと
言っちゃう、核心をついちゃうことが多いと感じた。
日本の劇団だったら雰囲気に任せてはっきり口にしない、客任せな部分も
韓国のホンだとえッ?と思っちゃうほど明確に口にしますね。
本作品では、特に後半部分に顕著でしたが。。。

そして、よくも悪くもよくしゃべり、よく動きます。 日本人的感覚では
ちょっとやり過ぎじゃ?と思う動きの派手さも、慣れれば新鮮で良いですね。

劇団・本谷由希子とか楽しめる人にはぴったりかと思います。

ネタバレBOX

下の方で詳細、かつ的確なネタバレがあるので。
簡単な人物のアウトラインを。

父…序盤ですぐに首を吊ってしまうので細かいことは不明だが。
   どうも自殺を図った時は情緒不安定だったようだ。
   死体となった後もほとんど意識されないことから、生前も
   ほとんど空気に近いような存在だったことが推測される。

長男…大物映画監督を目指すが、正直その器でない、良くて二流の人。
     本人もそれに気が付いているのか、必要以上に映画にのめり込み
     家庭をないがしろにして後悔も反省もしていない。
     本人の言動、また自分の妻にスナックの仕事を斡旋しておきながら
     その事実を全く覚えていない等、自分のことにしか関心の無い
     典型的な現代人。

次男…既に自宅から一歩も出てない生活が数年来続く典型的なヒッキー。
     後述の兄嫁に横恋慕し、その写真を自分の日記に貼っている、
     情緒不安定なせいかモノが食べられず、常にひどい便秘に
     苦しみ続ける、等自他共に認める「人間のクズ」。

義姉…夫が家庭を顧みなくなったせいで情緒不安定に陥っているばかりか
     それに加えて結構重度のアル中持ちの、相当ボロボロな人。
     寂しさを埋め合わせる為に、自分の店の客と頻繁に性交渉を
     結んでいる様子。 

以上でも分るように、個々人がバラバラでお互いの都合ばかりを叫び合う
この家庭は、父親が死んだところでどうといった変化は起こらない。

父親がぶら下がっているトイレの、扉を隔てた向こう側では、義姉が
男を連れ込み、たまに帰ってきた長男は弟相手に壮大な(でも、いつ
撮られるのか分らないような)映画の構想をぶちまけ、興奮に浸る。

父親? それは表面では悲しまれつつも、その実、各人の都合で
天井から降ろされもせず、まして葬式も挙げてもらえない、トイレに
設置されている壊れた換気扇以下の存在になってしまっている。

後半に進むにつれ、父親はほとんど忘れ去られ、義姉、そして
彼女としけこんでいた間男をめぐっての一家内バトルの様相を
呈してくる。 死人の処遇<浮気の話し合い な、この不気味な構図。

結局、最後に死んだ父親の口から一カ月経っても、まだ梁から
下ろして貰えずぶら下がったまま、との報告がされて幕。

終始、重くならず、どちらかといえば軽めの、笑いもしばしば
ちりばめられたこの作品は、それだけに黒さとエグさが高いです。

個人的には義姉のぶっ壊れたテンションの高さと、長男の、人を
小馬鹿にしたような目の演技が見事。 

長男が、浮気相手から「あんたがこの女の旦那だってこと証明して
見せろよ」と迫られて返した答え、「僕と妻はずっと昔に結婚しました。
それで充分じゃないですか」はこの映画監督の、他人への関心が
いかに低いかを如実に表現した、本作品随一の名セリフだと思う。
通りゃんせ

通りゃんせ

ユニークポイント

座・高円寺1(東京都)

2010/08/05 (木) ~ 2010/08/10 (火)公演終了

満足度★★★

肩の凝らない「異文化交流劇」
とりあえず、雰囲気が良かった。
「異文化交流」というと、結構「衝突」「相互理解」というところに
スポットが当たりがちで、重くなり易いきらいがあるように思うけど
凄くバランスの取り方が上手く、良い空気を保ちながらも
伝えたいところはしっかり押さえられている。 

この種のテーマのものでは良作品だと思います。

ネタバレBOX

最初、時間軸と場面、登場人物が交錯して誰が誰で
どの場面なのか結構つかみづらかったです。
慣れてきて話に入り込んでくると、あー、この
キャラにはこういう背景があったのね、と腑に落ちる点もあったけど…。

個人的には、話の本筋的にも星野さん他数人の人物は削った方が
分り易さの点では良かったんじゃないかなー、と。

印象に残ったのは。

結婚相手の姉にバツイチに関わる事情を徹底追及され、苛立った
長女がふと漏らした一言、「結婚、面倒くさい!」に、
韓国人の旦那が、

「あいつ面倒くさい」「仕事面倒くさい」「生きるの、面倒くさい」

「面倒くさい、ってそういう言葉でしょ?」

「五秒以内に謝って」

「今なら忘れてあげるから。忘れるのが僕の特技だし」

って向かって、謝らせたシーンかな。
あそこに秘めた怒りを感じて、言葉がボディブローのように響いてきて。

思うに「面倒くさい」って相手をやんわりと拒絶する冷たい言葉なんですよね。
それでいて、自分は傷つかない、便利で「空気も読める」、けど厭らしい
言葉だなぁ、って恥ずかしながら、あの場面で初めてハッと気付かされました。

あと、気付かされたけど韓国語というのか、韓国人というのか。
とにかく向こうの文化は、物事をあいまいにはさせておかない、と
いうのもこの作品では巧みに描いていますね。

唯一長女のお披露目式に参加しなかった長男と、その恋人なのか
友達なのか良く分からないあいまいな立ち位置の娘との関係がまさにそう。

娘の方は韓国語で直接的に愛の告白を投げかけるけど、当の
言われている長男は曖昧な「えっと、何言ってんの」的な返ししか
出来ない。 というか、しようとしない。

この二組のカップルの、些細なやり取りに日本と韓国、双方の
違いがさりげなく描かれていて、巧いな、とうならされました。

ラストも含めて全体的には淡白でしたが、雰囲気は終始柔らかくて
クスリとさせる場面もところどころで用意されてたりするのでお勧めです。

余談。全面的に出張ってくる二人組の妖精的(?)存在の女二人のしぐさや
表情がいちいちキュート過ぎる。 この劇のMVP。
マルチメディア

マルチメディア

ペピン結構設計

こまばアゴラ劇場(東京都)

2010/08/28 (土) ~ 2010/08/31 (火)公演終了

満足度★★★

切なくなる
これは… 主人公たちと同世代、20代中盤~30代前半辺りまでの
観客はほぼ同じ体験をしているだろうし、ああ、分かる分かる!!!!と
思わず自分もそこに一瞬戻ったような感触を受けると思う。

その後、自分も、自分の周りのものも変わってしまう、ということに
思いが至って、観終わった後は少し切なくなると思いますね。

ほんの少し、自分が見てきた昔の風景、今も殆ど変わらないけど
でもやっぱりちょっと今のものとは一致しない風景を懐かしく感じました。

ネタバレBOX

酒屋がコンビニに、タバコ屋が「MULTI MEDIA」ステーション(多分、昔
少ししゃれた町の中心に設けられた科学記念館みたいなものだと思う)に
変わり、そのステーションも平成の終わりと共に閑散とし、潰されて
ユニクロに変わる運命を待つのみ。

そんな、自分のうちの近所でも当たり前にありそうな、寂れてシャッター街に
なりかけの商店街の住人達の物語。

昔は必要とされていた酒屋やタバコ屋、電気屋なんかが姿を消し、そこの
住民達は商店街を後にしていく。 それを淡々と告げる狂言回しのアサヒ。

昔の友人がやむを得ない理由で自分達のコミュニティから外れていく。
それほど悲しいことは無いんだよね。 やがて帰ってきても、もう感覚を
共有することが難しいんですね。 

「この街」の、じゃなくて既に「あそこの」人になっちゃって、そこに意識が
根付いちゃってるから。

この物語には、昭和から平成へ移り変わり、否応なしに変化を求められる中
変化を拒み、時の止まった中、ただ生きる人たちもいる。

その人たちに、「時間は動いてる、変化してる」と告げてしまう事って。

果たして、良いことなのか、悪いことなのか。


序盤の、映画館がポルノとかアニメしか流さないようになった、ってエピソード、
自分の周りにも同じことがあったから、他人事とは思えなかったよ。。
主人公が自分の身の回りの人、かつての自分のように感じられてならなかった。



ロールシャッハ

ロールシャッハ

KKP

本多劇場(東京都)

2010/10/06 (水) ~ 2010/10/17 (日)公演終了

満足度★★★

細かい部分で妙に面白い
色んなところにさり気なく仕込まれた小ネタと、それを使っての動き、
間の取り方が絶妙に上手い。 ガハハと大笑いするより、ニヤニヤ
クスリとするタイプの笑いで、あっという間に引っ張られた2時間10分。
個人的には、後半のネタがツボに入りました(笑

最後の、思いもかけない展開とタイトルに込められた意味、
綺麗なまとまり方にも拍手。

ネタバレBOX

「開拓隊」なる存在が6つの島を開拓してきた中の一つ、「壁際島」。
そこには世界の果てのような場所が存在し、一つの灰色の巨大な
壁により、その向こうは謎に満ちている。

怒りっぽすぎるため外国人工員が何人も辞めていくのに悩む工場長、

「パーセントマン」という3Dマンガにハマリっぱなしの少オタク気味な青年、

人に合わせがちな、軽いノリの典型的な若者な男、

この三人が開拓隊より、この世界の果てにそびえる壁に大砲で穴を
開ける任務を命じられることから、この物語は始まります。

内容が分ると最後の場面のカタルシスが無くなるので伏せますが、
「今の自分」と「本当はなりたい自分」の両面、「壁のこちら側」と
「壁の向こう側」、どちらも違うようで本当は鏡に向き合うように同じものだよ。

そういう意味がこのタイトルにはこめられ、観客は大砲訓練にいそしむ、
というか、四苦八苦する三人を観ながら気が付いていくでしょう。

ちなみに、ネタ的には「串田発泡手!!!」と「朝の小ネタラジオ体操」に
ものすごく笑いました(笑 特に前者。

「お前っ!!!! 俺の職務聞いて笑っただろっ!!!!」

いや、笑いますって。 観客席も大爆笑の個人的笑いハイライト。
腹筋ヒクついたわー。
動かない生き物

動かない生き物

らくだ工務店

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/10/23 (土) ~ 2010/10/28 (木)公演終了

満足度★★★

分からない生き物
林和義の佇まいが良かった。 
後半に折り返すところで、観客に背を向けて述懐する場面があるのだけど
まさに背中に哀愁というか、醸し出される深みがたまらないです。

結構登場人物同士の掛け合いが面白く、よくありがちな、狙い過ぎて
外してしまっている部分も殆ど無いので、気持ちよく笑いたい!っていう
人には結構お勧めかも知れません。

ネタバレBOX

動物の気持ちが分かるというボランティアの女性(麻乃佳世)に、
動物園の職員(古川悦史)が言った台詞に思わずハッとした。

「貴方、動物達の何を知っているっていうんです?」

「プレーリードックが何を食べるか、そういうこと分かりますか?」

現実でもよくある、日常のあらゆる場面で遭遇する「表面的に
分かっていること」と「突っ込んでいかないと分からないこと」の違い、
言われてみれば気が付くのに普段は隅に置いておいてしまって
いるものを見事に喝破された気分でした。

自分の目の前にいる人が幸せそうに見えても、実はそのように
表面的にふるまっているだけで、心の奥底では悲しみを
押し殺しているのかもしれない。

自分がした親切に相手が一軒喜んでいるように見えても、その裏側では
やれやれと厄介な風に感じているのを噛み殺しているのかもしれない。

それは、表面的に見ているだけでは分からない。

同じ人間でも、ほんの表面上の付き合いの相手と、気心の知れた
親友という間柄との相手では全然見え方が違うように。

他の何よりも、人間が一番厄介で「分からない動物」なのかも。


役者はみんな上手かったですね。 永滝元太郎の、所謂「ハッキリ
しない」感じが上手く出過ぎてて生々しかったです。 そして一々
面白かった(笑 役者陣、皆笑いの間の取り方が上手いね。
嫌らしくない笑いが良かったです。 
図書館的人生 vol.3 食べもの連鎖

図書館的人生 vol.3 食べもの連鎖

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2010/10/29 (金) ~ 2010/11/07 (日)公演終了

満足度★★★

巧みなシェフのフルコース
全四話、どれも起承転結がハッキリしているので、話にどんどん
引き込まれ、本当にあっという間の2時間10分でした。
どれも体感時間は短い位の感じでしたが、その中でも設定を
破綻させず、というか、一見ぶっ飛んでいる設定を納得させてしまう
劇団の手腕がとにかく凄い。

ネタバレBOX

四話のどれも良かったけど、強いていうなら2<3<1<4かなぁ。

1話目は自分の通う菜食主義の料理教室に通ううちに、ものの見事に
ハマり込み、肉を喰いたい夫までも肉に見せかけた菜食料理で徐々に
洗脳し出していく女の話。

もう少し引っ張れば良かったのにと。終わった時、余りの唐突さに
え?終り?とちょっとビックリした。というか、このテーマで一本
そのまま公演打てそうな。 内容も結構ダーク、というか、深いし。

2話目は大好き。 自分の必要とする分の万引きしかしない男と日がな
懸賞で生活する女との奇妙な同居生活。そこに、万引き素人達が
入り込んできて不穏な空気が…

さりげに昨今の社会問題なんかもちらちら見せつつ、最後はすごく綺麗に
まとまってた。 最後のオチは笑うけど、同時に心が温かくなりますね。
そしてメインを張る安田氏は一言発する度に何故か笑ってしまう。

3話目。「単一食」に目を付け、試みるうちに飲血で115歳の年月を
生きることに成功した男の話。

長寿を続けていくうちに、徐々に自分が人間離れした、なにか別種の
「生命体」、いや下手をするとそれにすら当てはまらない存在に
なりつつあることが、男の独白から微かに見てとれる。

「生命は有限」という、生物の絶対的な縛りから抜け出した時点で
既に男は少なくとも人間はやめてしまっている。肉体は生き物を
超越しているのに、意識はそれまでの人間の枠からどうしても
抜けきれない。 これは凄く恐ろしい悲劇です。

よく狂わなかった、という話なんですけど(現に一緒に飲血した
男の妻は半ば発狂状態に陥った揚句、禁じられた食物行為を
行って死ぬ)、結末はもうなるべくしてなる結果なんでしょうね。
切ない系SFを読んでいるような気持でした。

4話目。 正直、良く分かんなかった。
3話目の設定が何気に生かされてたり(笑ってしまった)してたけど
いかんせん短過ぎてあっという間。 伊勢佳世のキュートさが見どころ、
と勝手に思うことにしました(笑

次回作は「散歩する侵略者」ということで、驚喜乱舞ですよホント。
タンゴ-TANGO-

タンゴ-TANGO-

Bunkamura

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2010/11/05 (金) ~ 2010/11/24 (水)公演終了

満足度★★★

多分
鑑賞者の年齢によって大きく受け止め方が異なってくる作品。
今の10代~20代前半までだったら結構自分のことだと
感じるかもだけど、それ以降の世代になるに従って主人公
アルトゥルへの共感は難しくなっていくと想像されます。

私? 半々、ってとこですね…。

ネタバレBOX

初演がもう40年以上前の作品なのに、翻訳が良く出来ているのか
はたまたホン自体の生命力が強いのか。 むしろ、現代の若者像に
通じる、というか、ある種の人間に関しては通じ過ぎてる(苦笑

で、また台詞が凄く良い。 ちゃんと、普通の人間だったら、この状況に
こういう反応するよな、って感じの会話をちゃんと投げかけてきます。

最初から最後まで舞台が家の居間を中心にして引き起こされる
ことからも分かるように、アルトゥルの闘いは一家の中だけの
事なんですね。 行動を引き起こしているようで、実は起こせてない。
何の影響も無い、という事ですね、残念ながら。

家の中を覆う不真面目さと弛緩しっぷりに憤って、闘争を、革命を
宣言する彼は恐ろしく真面目な人間なんでしょう。それこそ
エーデックがいみじくも指摘したように「ちょいと神経質」だったのでしょう。

でもさ…

アラを罵倒するのは正直「無い」よ。 
頭でっかちで長々と長広舌をふるうだけのアルトゥルと比較して
ホントにアラは素直で良い娘なんです。 それだけにがっかりだった。

結局、「自立できない」「親離れ出来ない」子供の内弁慶、って感じの
内容でした。 恐ろしいほど、ある意味今の現代の若者の性質の
一部を抽出しちゃってて、そこが可笑しくも怖過ぎる。
「幼稚性」「異様に肥大した全能性」って、結構見る機会が多い性格だなぁ。。

森山未来は素晴らしい役者です。 アルトゥルを完全に「モノ」にしてました。
この作品、真面目にアルトゥルが演じられれば演じられるほど、異様さと
おかしさ、無様さが輝くのでその点申し分が無かったです。

毎回どこか抜けてておかしい片桐はいりのエウゲーニャとのコントじみた
会話の数々、正反対にみえて実はそんなにメンタリティ的には遠くない、
似たもの親子の吉田ストーミルとの大げさすぎて滑稽過ぎるやり取りも
ウケたけど。

アラと絡んでこそアルトゥルは輝きますね。
エーデックが気になるふりを見せるアラに対して、いきなりやきもち
焼いて癇癪を起したり、「脱いでもいい?」とか言い出して服を脱ぎ出す
アラに対して焦りながら説教をはじめたり。

この辺のアルトゥルが一番「良い感じ」でした。
素直になれない、子供っぽさが前面に出ててそこが微笑ましいというのか。

でも、アラはホントにアルトゥル好きだし、良い娘だ。

普通だったら、意味の分からない理論を延々開陳する男なんて
「キモイ」の一言で終わりなのに、話を最後まで聞いてやって
会話のキャッチボールはしてあげるわ、結婚は承諾するわ、
どうしようもなさ過ぎるアルトゥルに対しても「(今後の彼の
変化への)希望は持っている」っていうんだもの。

アルトゥルがもう少し早く素直になっておけば良い感じの二人だったのに、とそこが悔やまれるね。 何言ってるの、って感じだけど。。
ロドリゴ・ガルシア『ヴァーサス』

ロドリゴ・ガルシア『ヴァーサス』

フェスティバル/トーキョー実行委員会

にしすがも創造舎 【閉館】(東京都)

2010/11/20 (土) ~ 2010/11/24 (水)公演終了

満足度★★★

Versusの意味
Versus(前置詞)

1. (訴訟・競技等で)…対、…に対して

2. …に対して、比較して

観終わった後、この作品はもしかしたら作者ロドリゴ・ガルシア自身の
総決算的な意味あいを持つものなのではないか、とふと思いました。
事前情報で考えていたよりずっと詩的、かつ私的で、その背後に
彼、ロドリゴ・ガルシアという人間の一端が見え隠れするような気がした。

ネタバレBOX

社会批判、風刺に満ちた挑発的な過去作のタイトルの羅列から
今作もその系統かと思いきや、社会批判色は後退気味で、むしろ
相当に自分と他人とを深く見つめた作品のように思えました。

「対"自身"」(I vs I)、「対"他人"」(I vs other)…

衝動的で暴力的、どこか人間の当初とオーバーラップするような
原始的な振る舞いを見せる登場人物達の口、それを追うように
頻繁にバックに映写されるモノローグを通じて、作者自身、ロドリゴ
自身の肉声が迫ってくる。

その多くは、端的に言うと、
「愛は肉体的関係に終始するだけでなく、それだけの方が他の
何よりも上手くいく」
「芸術なんて、退屈で徒労に満ちた、暇つぶしにもならないもの」

といった感じの、どこか諦めや軽い絶望を思わせる、叫びというより
ぼそぼそとした囁きのよう。 その言葉自身に苛立つかのように、
役者達はお互いに意味の無い暴力を振い合い、痙攣し、暴れて
本を引き裂き、投げ捨てる。 

まるで、書物の知恵がクソのようなもので、暴力、攻撃が人間の
本性であることをみせびらかすように。

自分にどこか苛立ち、他人にも苛立ちを感じている。
海を越えても、同じ感覚を共有する人間がいることを発見し、
当たり前と言ってはそうなのですが、驚きを隠せなかったのです。

とどのつまり、ロドリゴ・ガルシアという人間は、どこか純粋で
傷つきやすく、芸術肌でありながら現実をよく知っている。
そんな社会的な人の一人なのでしょう。 だから、彼の、延々と
続くモノローグ、特に後半のそれは私の胸に微かに疵をつけていくような、
そんな気がしました。

「そんなのは嘘だ。みんな俺をなぶり殺しにしたいだけなんだ」

その一言をもって、この『ヴァーサス』は幕を閉じます。

だけど、そういうことを言う人間が、実はまだほんの少しの希望を
誰よりも隠し持っていることはよくあることです。
本当に諦念に満ちた人間はそういうことは言わないし、そもそも言えない。
そこに、私は作者の「芯」、「真摯さ」をはっきりと感じ取りました。

ただ、個人的には社会風刺色の強いロドリゴ・ガルシアの作品も
大いに気になるところでありますが。。 
母を逃がす

母を逃がす

大人計画

本多劇場(東京都)

2010/11/15 (月) ~ 2010/12/19 (日)公演終了

満足度★★★

変わらないけど変わった生活は続く
とにかく一番最初からケレン味とテンションの高さでは他を圧倒する
勢いで突き抜けていく。 この劇の楽しみ方は何も考えず、ただ目の前で
繰り広げられるネタの連打に身を任せる。 それに尽きます。

冷静に見ていると、何か疲れるので…ね。 というか、クドカンと
サダヲ、良々のゴールデントライアングルの息の合い方が過ぎてて
何度ツボ衝かれた事か。

ネタバレBOX

十年前に初演された作品の再演だそうですけど、多分初演は
もっと意味が分からなくて貧乏臭くて、ダークな雰囲気に
満ち溢れてたんじゃないかと想像。 ここはもっと黒くした方が、というか、
確実に当時はブラックに観せてたよな、と思える個所がちらほら。

今回はダークに展開するよりは笑いに振り切れてたけど、見様によっては
相当落ちるよなぁ。 トビラをモノにしようとする場面とか…!!

村の住人は皆無邪気でどこか大人じゃ無い感じ。 「純粋」が
真空パックされたまま、手つかずで残されているのがここクマギリ。
それはどこの、誰にでもある部分なので、最後「平凡な日常が
続いていく」というモノローグがものすごくささやかなのに忘れがたい。

松尾さん演じる狼中年が、村の危機に覚醒し、カンフーばりの
瞬殺技で一本さんを沈めた時は、ポージングの怪しさに笑った。
松尾さん、やっぱ役者の時が一番輝いてる。 体の動きが怪し過ぎる笑

でも、セルフ・カーテンコールの劇団員紹介が一番面白かったのは
ホントにここだけの話。 紙さんが綺麗過ぎでした。 惚れます。
愉快犯

愉快犯

柿喰う客

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2011/01/07 (金) ~ 2011/01/16 (日)公演終了

満足度★★★

人体スプリングのような
丁々発止の台詞のやり取り(というか、マシンガントーク)に合わせての
役者全員の全身バネさながらの動きが凄い。 おいおい、この動き、
激し過ぎるけどここで制御出来ちゃうって何? といった感じで、
伸縮自在、緩急自在の動きを十二分に堪能した舞台でした。
役者の衣装も少し奇抜で、でも洒落てて良い感じ。

ネタバレBOX

身体能力は凄いんだけど、肝心要の台詞の方が
あまり合わなかったかな…。 

身体の動きとセットで、発話や台詞も構成・演出されているのは
ハッキリしているし(そのおかげで役者の演技と重なって独特の
グルーヴ感が舞台上に生まれてました)、スリリングだったけど
いかんせんケレン味が溢れ過ぎてて。。 

後半、叫びが過ぎて耳が少し痛くなってしまった(苦笑 
最前列の人は大変だったろうな。

笑わせようとして相当滑ってたこともあったし、舞城王太郎ネタや
ジョジョネタまで頻繁に披露するのはちょっと…イタいかな。

舞台は、歌舞伎か何かのそれを模した恐ろしく簡素なもので、
去年観た「表に出ろい!」のセットを少し思い出しました。

場所によっては相当急だし、足の踏ん張りの意味で、役者への
負担は大きかっただろうなー。 と、コレは余計なお世話か?
THIS IS WEATHER NEWS

THIS IS WEATHER NEWS

Nibroll

シアタートラム(東京都)

2011/06/24 (金) ~ 2011/07/03 (日)公演終了

満足度★★★

アトム化する人間たち
不協和音と縦横無尽に舞台の端から端まで金切り声をあげながら
駆け回る踊り手たちを見ながら、つくづく表題にあるようなことを
思ってしまいました。 

最後辺りの展開は夢幻的でとっても美しく、激しくて、すごく
印象に残りましたが、全体の中でハッとさせられる部分が
他に乏しかったように思えたのが残念。

ネタバレBOX

バックのスクリーンに映し出される、ブロック状にデフォルメされた
人間が階段を転げ落ちたかと思うとバラバラに分散したり、

放り投げられた人間がまるでモノのようにおんどん落ちモノゲームの
ように積み重ねられるだけの存在になっちゃってたり、

まるで人間が無機質で、ただの「分子」の塊、アトム状のモノにしか
みえないような表現が一杯舞台に溢れてた。 踊り手も意志を持つ、
というより、本能と衝動に操られたような、エキセントリックな動きが
多いように思えました。

ただ… 映像や演出が無機的なのに対し、対比される人間が
余りに生々しく動物みたいなのが個人的には面白味を感じませんでした。
もっと無機的に、機械みたいに扱っても面白いような気が。
ただ、それも全くの好みでしょう。

違和感を覚えたのは、中盤辺りのインタビューっぽいパートと、
その後のスクリーン上の不思議な情報の羅列(人が一生のうちに
いえるこんにちはの数、みたいな)。

正直、ちょっと子供っぽく思えた。 振り返ってみると、踊り手皆で
手をかざしたりする部分とか、少し恥ずかしく思えるんだよな。
一年くらい前だったら、また別の印象を受けていたのかも。

人間落ちモノゲームが終わった後の、ピアノの不協和音に合わせて
踊るパートと、終盤付近の「刺すよ!」って一人が叫んだ後のパートが
とっても刺激的に思えました。 踊り手もなめらかな動きを
見せてくれ、底力を感じることも出来たし。

特に後者。 白い衣装に、白い光と黒い闇が反射し、収斂、そして拡散を
次々に繰り返していく中、どこか不穏な感じの曲に上手く合わせて踊る
人々の姿がとってもスリリングで興奮しました。照明も緑、赤、とどんどん
移り変わっていくんです、夢の中のようでとっても綺麗だった!!!
あそこがハイライトですね。
荒野に立つ

荒野に立つ

阿佐ヶ谷スパイダース

シアタートラム(東京都)

2011/07/14 (木) ~ 2011/07/31 (日)公演終了

満足度★★★

『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』発展系
前作以上に夢幻性が増し、自由自在に時間・場所は役者達によって
軽々と乗り越えられていく。 過去、現在。 学校から居間、浅瀬。
殆ど説明無しに次々と変っていくので、役者よりも観ているこちらが
何かに捉われているかのようです。

必要以上に簡素な舞台装置に、支離滅裂とも思える台詞の応酬も
『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』の発展系と思える作品ですが
今回は前作よりも笑いが多くなり、テーマもそこそこはっきりは
しているので、まだ観易い作品とは思います。 

ネタバレBOX

朝緒、伶音、美雲はそれぞれ別個の人物かと最初は思っていたけど
後半に進むにつれて、『朝緒』という人格の中に生まれた人格か何かで
本当は朝緒=伶音=美雲なのではないかという疑念が拭えないです。

お互いに言及する時、その立場が実は近しいことに気がついたら
一気に謎が解けていくような気がしました。 少なくとも朝緒=美雲
ではあると思います。

主人格である朝緒は過去、具体的には高校~大学までのひどい
体験から、ボロボロになり、近所からは「侵略者」として
みられているような、大型スーパーで日々無感覚、無感動なままに
レジ打ちに従事している。

彼女は別の人格達を形成し、自分の分岐点となった「あの時」に
戻っていく。 その過程で無くしている「目玉」というのは、「真実の
自分自身」であり、「その中に宿る希望」でしょう。 「真実」は
自分の目でしか捉えられないものですから。

朝緒は劇中で、依存が激しい、どちらかというと、自分を
表現出来ないような人物として描かれているような感じ。
その心情を、他の人格(伶音、美雲)が代わりに代弁したり、
時には代わりの人生を務めたりしているわけですね。

だから、この作品は朝緒が夢幻の夕闇、浅瀬から、厳しいけど
先(未来)は見えないほど広がっている荒野を見出すまでの
精神物語と、私は考えました。

そう考えると、荒野が、自分達と身近な居間と繋がっていて
またみんなで動き回るんではなく、「待つ」ことでそれを
見つけたというのは非常に示唆的ですね。

劇は、人を喰ったような、どうでもいいやり取りから、自在に
哲学問答へ展開したり、時には長塚氏や役者達の日々の
思いつきや呟きがそのまま台詞になったと思われる、捉えにくい
ものです。 その中に、時々ハッとするような良い台詞が。

俳優陣はみんな上手いです。 目玉探偵の片割れ役の
転球さんは洒脱でカッコ良い。 中村ゆり、華があり過ぎる。。。

初音映莉子も綺麗だったけど、上ずった、というか、若干
焦り気味の台詞回しが少し気になりました。 演出?

最後、荒野の中で朝緒が「失ったもの」を見つけ、ポケットに
入れ、そして変らない、けどほんの少し音づいて感じられる
「現実」に戻っていく展開は綺麗ですね。 人によっては
感動モノです。

ただ、そこまでの後半の過程はちょっとエピソードが
多過ぎるので冗長、かも。 一時間が長く感じられたな。
11のささやかな嘘

11のささやかな嘘

ジェットラグ

銀座みゆき館劇場(東京都)

2011/07/15 (金) ~ 2011/07/18 (月)公演終了

満足度★★★

人間の「本当」は分からない
説明から、結構「切ない」系の話を想像していただけに、
良い意味で裏切られるような話の展開。

サスペンス色少し強めの「人間劇」で、キャラの立った
主要登場人物たちが次々と繋がり、また、進行するに
つれて、さらりと隠された真実が明らかになっていく。
その見せ方が職人的で、上手いホンだと思いました。

ネタバレBOX

デビュー作『麦茶』以降、文芸誌への連載も度々中断、結局死ぬまでの
10年間後に続く作品が出なかった作家の死後、49日。

作家の家を訪れるは、家庭も会社も顧みずにただただ作家の
才能にだけ賭けてきた担当編集者、

最近ちょっとだけ付き合いのあった競合他社の女性編集者、

大学時代の友人で、1000万以上の借金を作家に貸していた男、

作家と昔付き合っていた、どうもわけありな感じの女 等々。

誰もかれも「作家に貸しがある」と訴え、その思い出なんかを
語ってくれたりするものの、既に作家はあの世の人。
真実は闇の中。 誰の言っていることが本当なのか、
最後まで分からない。 そのスリリングさを楽しむ劇です。

サスペンス要素強めなので、ネタバレは出来ませんが一つ。
「真実は闇の中」。 これはラストシーンに一番上手く生きてきます。
そして、おそらく『真実』だと考えられるのも。

ラストシーン、最後の台詞と演出が本気で怖くて鳥肌立った。。。
自分の周囲が-3℃になったような。 最高のどんでん返しでした!
11DAND

11DAND

こどもの城劇場事業本部

青山円形劇場(東京都)

2011/10/19 (水) ~ 2011/10/23 (日)公演終了

満足度★★★

子どもが笑う、心も喜ぶ
サッカーのゴールネットを模したと思われる床面に、あちこちに散らばる
水色を基調とした小道具の数々。これから何が始まるのか期待するのは
十分の演出。

舞台は1時間10分。この限られた時間の中、お客さんを喜ばせようと
体をはって動き回り、声を発する近藤氏の姿は潔さに満ちて、凛々しさを
感じさせるものでした。

ネタバレBOX

最後の、ハナレグミの、懐かしくも少し切なめな曲に合わせて
軽やかに舞う近藤氏の姿が綺麗で、今でも浮かぶよう。
エンターテイメントに徹したせいか、正統派な踊りの方は少なく、
もっぱら小道具を駆使した芸能が目立ちました。

ただ、そのアイデアが面白く、また本人が「真面目にふざけて
楽しんでいる」のが周囲に伝わる為、お客さんの反応も凄く良く。
特に、家族連れで来ていたうちの子ども達がげらげら笑っていたのは
本当に印象に残りました。近藤氏、嬉しかったんじゃないかな…。
その様子を目にし、耳にすれば、誰でも心喜ぶ場だったというと思いますね。

前半はまず肩慣らし感が否めなかった感じですが、後半、相当に
楽しかったです。自分を武器に、人を楽しませることに徹する姿が
眩しかったです。

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