荒野に立つ 公演情報 阿佐ヶ谷スパイダース「荒野に立つ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』発展系
    前作以上に夢幻性が増し、自由自在に時間・場所は役者達によって
    軽々と乗り越えられていく。 過去、現在。 学校から居間、浅瀬。
    殆ど説明無しに次々と変っていくので、役者よりも観ているこちらが
    何かに捉われているかのようです。

    必要以上に簡素な舞台装置に、支離滅裂とも思える台詞の応酬も
    『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』の発展系と思える作品ですが
    今回は前作よりも笑いが多くなり、テーマもそこそこはっきりは
    しているので、まだ観易い作品とは思います。 

    ネタバレBOX

    朝緒、伶音、美雲はそれぞれ別個の人物かと最初は思っていたけど
    後半に進むにつれて、『朝緒』という人格の中に生まれた人格か何かで
    本当は朝緒=伶音=美雲なのではないかという疑念が拭えないです。

    お互いに言及する時、その立場が実は近しいことに気がついたら
    一気に謎が解けていくような気がしました。 少なくとも朝緒=美雲
    ではあると思います。

    主人格である朝緒は過去、具体的には高校~大学までのひどい
    体験から、ボロボロになり、近所からは「侵略者」として
    みられているような、大型スーパーで日々無感覚、無感動なままに
    レジ打ちに従事している。

    彼女は別の人格達を形成し、自分の分岐点となった「あの時」に
    戻っていく。 その過程で無くしている「目玉」というのは、「真実の
    自分自身」であり、「その中に宿る希望」でしょう。 「真実」は
    自分の目でしか捉えられないものですから。

    朝緒は劇中で、依存が激しい、どちらかというと、自分を
    表現出来ないような人物として描かれているような感じ。
    その心情を、他の人格(伶音、美雲)が代わりに代弁したり、
    時には代わりの人生を務めたりしているわけですね。

    だから、この作品は朝緒が夢幻の夕闇、浅瀬から、厳しいけど
    先(未来)は見えないほど広がっている荒野を見出すまでの
    精神物語と、私は考えました。

    そう考えると、荒野が、自分達と身近な居間と繋がっていて
    またみんなで動き回るんではなく、「待つ」ことでそれを
    見つけたというのは非常に示唆的ですね。

    劇は、人を喰ったような、どうでもいいやり取りから、自在に
    哲学問答へ展開したり、時には長塚氏や役者達の日々の
    思いつきや呟きがそのまま台詞になったと思われる、捉えにくい
    ものです。 その中に、時々ハッとするような良い台詞が。

    俳優陣はみんな上手いです。 目玉探偵の片割れ役の
    転球さんは洒脱でカッコ良い。 中村ゆり、華があり過ぎる。。。

    初音映莉子も綺麗だったけど、上ずった、というか、若干
    焦り気味の台詞回しが少し気になりました。 演出?

    最後、荒野の中で朝緒が「失ったもの」を見つけ、ポケットに
    入れ、そして変らない、けどほんの少し音づいて感じられる
    「現実」に戻っていく展開は綺麗ですね。 人によっては
    感動モノです。

    ただ、そこまでの後半の過程はちょっとエピソードが
    多過ぎるので冗長、かも。 一時間が長く感じられたな。

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    2011/07/16 06:29

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