パーティーが始まる
TOKYO PLAYERS COLLECTION
王子小劇場(東京都)
2010/08/03 (火) ~ 2010/08/08 (日)公演終了
満足度★★★
若い時の思いが懐かしく蘇った
男女の差こそあれ、私も、20代前半で、シナリオの勉強に余念のない青春を過ごしたので、主人公の心の内の随所に、思い当たる、懐かしい感情が再燃されて、他人事には思えないストーリー展開に、無性に懐かしさが込み上げて来るようでした。
何と言っても、主人公の青年を演じた、渡邉とかげさんと、前園あかりさんの演技が、魅力的!!お2人を始め、総じて、女優さんが皆さん、好演されていました。
ただ、お1人、信じられないくらい滑舌の悪い役者さんがいらしたのが、致命的に残念でした。その方の所属劇団、未見で、拝見するのを楽しみにしていましたが、この方が御出演なら、やめようかと思うくらい、壮絶な滑舌の悪さで、驚いてしまいました。
あまり出番はないのですが、観客役の富永瑞木さん、15ミニッツメイドの時も素敵な女優さんだなと思いましたが、今回も、素敵な演技表現をされていて、すっかりファンになりました。
遊び人の代名詞として、ある歌舞伎俳優さんの名前が上がり、個人的には受けましたが、一応、結婚したばかりだし、これからは、遊ばないかもしれないのだから、この時期にはややエスカレートし過ぎな喩えではと思いました。お嫁さんがお気の毒な気がして…。
アフタートーク、上野さんがどんな方か確認できたので、おばさんは、早々に引き上げました。何だか、せっかくの舞台の印象が台無しになりそうな予感がしたので…。(餃子さんのレビューを読んで、やはり観ないで、正解だった気がします。)
これは、あくまでも、1観客の希望に過ぎませんが、アフタートークの内容は、本編の芝居に見合った雰囲気で、お願いできないかしらと思いました。
ネタバレBOX
電車の中で、毎日出会う、見知らぬ異性に対する妄想とか、たくさんの名作があるのに、世間知らずの若い自分に一体何が書けるだろう、それでも書こうとする意味はどこにあるのかという、内面の葛藤とか、勇気を出して、言えない言葉の数々とか、ありとあらゆる箇所に、自分の若き記憶と重なるところがあって、終始、自分の青春時代に、心がタイムスリップしていました。
「ショーシャンクの空に」も、ウデイ・アレンの映画も大好きだったし…。
上野さんは、息子ぐらいの年齢なのに、こんなにも感情移入できる自分が不思議なくらいでした。
とかげさんと前園さんの名演のお陰で、上野さんご自身に対する好感度もどんどん良くなっていたので、アフタートークは、あまり観たくない現実でした。
他の日は、知りませんが、今日の巨乳トークは、この作品の上演後には不向きな感じが、どうしてもしてしまいました。
弟が、好きな女性が携帯に出ないと心配になって、彼女の家まで走るシーンだけ、映像が使われていましたが、あれは必要なかったのではと思います。
(面白かったけど、やや他の場面とトーンが違いすぎて、不自然な印象がありました)
一番、グッと来たのは、幼い頃、絵本を読み聞かせてくれたのは、母親ではなく、より子叔母だったと、主人公が気付くシーン。叔母は、甥が可愛くて、ずっと読み聞かせを続けたくて、自分で、話を膨らませ、いつまでも、終わらないエンドレスな童話を話してくれたのに、実際は、叔母は、自らの命に、エンドマークをつけてしまったらしいことが、母親の台詞から推察され、その後に出て来る、主人公が、叔母の膝枕のような状態で、話を無邪気に聴いているシーンは、やるせなくなりました。
こういう、心象描写は、本当に、お上手な作家さんだなと、いつも感心します。
上野さん、女優さん選びの目も確かそうですから、次回も、楽しみになりました。
X day
地球ゴージャス
天王洲 銀河劇場(東京都)
2010/07/16 (金) ~ 2010/08/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
緻密な構成、脚本の岸谷さんに拍手!!
地球ゴージャスは、4回程、拝見しましたが、作品的には、今回が一番の秀作ではないかと思いました。
たった6人だけの主要人物の芝居を、作、演出も、出演者も、緻密に創り上げた手作り感溢れる舞台に、幕開きから、大変好感が持て、その気持ちがどんどんヒートアップして行きました。
映像とのコラボ的な舞台作りも、大変効果的で、全てが素敵でした。
期待したほど、歌はなかったけれど、中川さんや森クミさんの歌は、歌詞も良くて、胸に染み渡りました。
この作品、たとえば、クロムモリブデンとか、空想組曲とか、競泳水着とか、そういう、小劇場の精鋭劇団でも、競作上演してもらえないかとさえ思う程、小劇場演劇にも打ってつけの脚本のように思いました。
何気なさそうな台詞の中に、たくさんの人間の本質が浮き彫りにされたり、社会の仕組みの不条理さにはっとさせられたり、笑いと、人生の機微がうまくマッチングした、素敵な芝居で、期待していなかった分、とても満ち足りた思いで、劇場を後にしました。
こういうさり気ない台詞の中に、珠玉の言葉をそっとしのばせるって、なかなかできるものではありません。
終演後の場内アナウンスが流れても、鳴り止まない拍手が、観客の偽らざる気持ちを表していたと思います。
ネタバレBOX
最初に、全員での歌とダンスの場面からの幕開きは、それだけで、期待感が高まります。
この始まりの雰囲気では、エンタメショー的な構成かと思いきや、6人の各エピソードを、シュールなコント風味に進めて、あー、オムニバス形式なのかと、思うと、また、最後は、思ってもいない展開になり、登場人物全員が、どこかで、関連付いていたというオチになるのですが、この構成が、実に、巧みで、感心してしまいました。
どのエピソードも、気になるところで、一端話が終わるのですが、かといって、尻切れトンボな感じでもないので、このヒトの話はこれで終わりなのかと、納得していると、最後で、その各エピソードが、お見事な繋がりで、決着し、岸谷さん、そこらへんのプロの劇作家より、よっぽどストーリーの組み立てがお上手で、感嘆しました。
ストーリーを、見事に、肉付けして行く、映像も、本当に、素晴らしく、私が過去に観たどの舞台の映像より、それ自体が、独立した芸術に思えました。これは、完全に、ケラさんや、新感線のいのうえさんの舞台の上を行っていると思いました。
嬉しかったのは、初舞台から観て来た中川さんが、演者としても、驚くべき進化をされていたこと。滑舌の良さでは、ベテラン俳優さんも見習ってほしい程、完璧だし、彼が演じた役はどの役にも、命が宿っていました。
藤林さんの見事な中国人女性役、森クミさんの、精神科医の、心情を歌う歌には、感情移入して、目頭が熱くなりました。
フライヤーと、この題名が、こんな素敵な舞台を想像しにくくしていたように思えて、残念でした。
各エピソードのアクトシーンのタイトルに冠されている人物より、別の人物が主に書かれているような場面展開に、不思議な感覚を覚えましたが、これが、終幕に繋がる、伏線故だとわかった時、岸谷さんの職人はだしの脚本力に、唸り声を上げたくなりました。
本当に、久々、嬉しさに満ち溢れる、大劇場の作品でした。
できれば、リピーターになりたいくらいです。
ロックンロール
ホリプロ
世田谷パブリックシアター(東京都)
2010/08/03 (火) ~ 2010/08/29 (日)公演終了
満足度★
観客に不親切極まりない演出
呆れて、ものが言えなかった!
この作品を観て、まず思ったのは、同じ作者の「コースト・オブ・ユートピア」を演出した蜷川さんは、やはり【腐っても鯛】だなという認識。
あちらは自分は、全く持って何も知識のないロシア革命時代のお話でしたが、9時間以上、全く厭きる事はなかったし、人間ドラマとして、大変面白く観られました。
ところが、こちらはどうでしょう?
1968年の、ソ連のチェコスロバキアに対する軍事介入、私は、リアルタイムで知っています。ニュースで、ソ連の戦車を連日見て、どうしてこんなことになるのか、当時ずいぶん勉強しました。それ以前の「プラハの春」も、本を読んだり、ドキュメンタリーを見たり、それなりにかなり勉強しました。そして、この作品で流れるロックもほとんど聴いて知っています。
それなのに、この芝居、全く、理解不能でした。(いえ、表面上のストーリーは、もちろん理解できますが、深く、理解でき兼ねるという意味で)
あんな、何にも知らない、ロシアの芝居は、あんなに面白く観られたのに…。
原因は、明らかです。こちらの演出家は、上から目線で、その世界事情に詳しくない、日本の観客の立場なんて、全く意に介していないからです。
こういう、日本人には容易に理解し得ない題材の芝居を上演するなら、もっと、最初に、背景を説明するとか、少しでも、観客の理解を深める努力をすべきではないでしょうか?
アフタートークならぬ、ビッフォートークの必要すら感じました。
燐光群の芝居のように、出て来る語句の説明や、簡単な時代背景の説明文とかを配布すべき気がします。この登場人物が架空なのか実在なのか、モデルはいるのかとかの情報も、知りたかったと思います。
こんなただでさえ、わからない芝居の上に、市村さんの滑舌の悪さと、語尾が聞き取れない台詞の不明瞭さに、益々磨きが掛かり、1幕は、ほとんど意味不明。人間ドラマになりそうな、マックス夫妻のラブシーンも、最悪の演出で、重きが置かれず、ただただ、秋山菜津子さんの存在が救いの、芝居だったように思います。
もし、これから、ご覧になる方がいらしたら、チラシに書かれている宣伝文から想像する期待感は、(秋山さんの2役に対する期待以外)まず一度忘れて、この登場人物の背景を勉強されることと、1幕はわからなくても、2幕は、大分楽しく観劇できることに期待を繋いで、ご覧になることをオススメします。
ネタバレBOX
1幕は、とにかく、市村さんの台詞が半分も聞き取れない。2幕はそうでもなかったから、年齢の差を出すために、1幕は、台詞の言い方を工夫したらしいのが、裏目に出たのではと推察します。
癌に侵された妻との、男女の複雑な人間模様を、もっと赤裸々に表出する演出をすれば、普遍的な人間ドラマになり得るのに、どうやら、この演出家は、よほどラブシーンの演出が不得手とお見受けします。もう、秋山さんだったから、何とか、実のある女性を演じて下さったけれど、これが、演出家の言いなり女優ならどうなっていたかと、想像するだけで、絶句しそうでした。
武田さん、前田さん、上山さん、森尾さん、山内さんも、難解な芝居を、懸命に演じていらして、それぞれ好感が持てました。
2幕は、マックスの妻が死に、その妻役だった秋山さんが、今度は、娘役として、本領発揮の大活躍で好演されるので、舞台の雰囲気が一転。家族劇テイストになり、やっと客席に笑いも出始めてほっとしました。市村さんの台詞も、大方は聞き取れるし…。(笑)
でも、2幕が面白くなったのは、ひとえに、秋山さんの功績故。父と、娘と、初恋のヤンと、それぞれの人間関係を、秋山さんの好演のお陰で、やっと観客は、自分に引き寄せて、観劇できる体制が整った感じでした。
この芝居、肝心要のマックスとヤンが、何を考えてどう行動しているのかが、全く謎です。
あまりにも、意味がわからず、よっぽどパンフレットを買おうかとも思いましたが、こんなつまらない芝居のパンフレットを買う気はせず、家に帰って、「シアターガイド」を読んで、またビックリ!!
役を掴みかねて質問している武田さんへの演出家の返答振りにまた唖然としました。
この演出家の舞台を観る度、どうしてこの方が、こんなに大演出家として高名なのか、最大の謎です。
この芝居、やりようによっては、もっと日本人にも卑近な人間ドラマになる筈なので、もし再演があるのなら、今度は、鈴木裕美さんか、鵜山さんの演出で、観たいものです。
夕立【作・演出 赤堀雅秋(THE SHAMPOO HAT)】
劇団姦し
ザ・スズナリ(東京都)
2010/07/28 (水) ~ 2010/08/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
また素敵なユニット誕生!
3人の女優さんのユニットと言うと、真っ先に、るぱるが思い浮かびますが、またるぱるに匹敵するような素敵なユニットが誕生しました。
あめくみちこさん、かんのひとみさん、那須佐代子さん。いづれも、演技力に定評ある、中堅女優さん。
だけど、このお三人の相性があまり想像できませんでした。観るまでは…。
観劇して、ビックリ!!すごくピッタリの相性!!その上、今回の客演の、神保さんと清水さんが、これまた素晴らしい演技派なので、キャストは、皆さん特筆演技賞ものでした。
今まで苦手だった赤堀さんの脚本、演出も、共に素晴らしく、とてもクオリテイ高い、三拍子揃った、旗揚げ公演でした。
今日が、楽日でしたが、こんなことなら、もっと早くに観に来て、1人でも多くの方にオススメすれば良かったと、後悔しました。
、、
笑って、泣いて、切なくて、心に沁みる素敵な舞台作品でした。
ネタバレBOX
全く、性格も、置かれた状況も異なる、スーパーの女性パートタイマー、3人。
新井あきらは、5年前に、夫を交通事故で亡くした後、3人の子供と義母との生活を支えるため、昼はスーパーで、店長補佐のような仕事、夜は、近くのバーで、ホステスとして、働き、生計を立てている。
車敏子は、世話好きで、お人よしの独身女性。あきらを見兼ねて、自発的に、あきらの子供達の面倒を見たりしている。
最近、パートを始めた、万歳秀美は、同棲中のうだつの上がらない男との間に、子供を妊娠した様子で、将来のためにもと、パート勤めをしているものの、職場にも、店長代わりのあきらにも、何かと不満が尽きない。
そんな、性格も、生活も異なる3人の前に、お店の品を万引きした、裕福な歯科医夫妻の1人息子が絡んで、最後には、少しだけ、3人の女性が、お互いを理解し、共感できるようになるまでの、切なく、可笑しい人生模様が、何とリアルに描かれていたことか!!
反目するあきらと秀美の間に入り、やきもきする、お人よしの敏子役の、かんのさんのハラハラの気遣い振りが、妙に可愛く健気で、観ていて笑いながらも切なくなる。
秀美役の、あめくさんは、ウ゛ードビルショーではなかなか演じない役どころで、るぱるなら、岡本麗さんタイプの、独自性の強い女性を、とても小気味良い演技で見せて下さって、魅了されました。
あきら役の那須さんは、正義感が強く、逞しく生きているようで、気丈さの陰に、淋しい女心を隠している様を、哀切に好演されました。
ここに、裕福で、あまり問題意識のない、不思議感覚の万引き少年を、ユニークに演じた清水優さんと、穏やかな気性のあきらの義母と、万引き少年の厳格な祖母の、真逆の2役を、見事に演じ分けた神保さんの、演技派2人の客演が助け、それは、もう、おかしくも切ない、中年女性の心の声が、普段のリアルな台詞の中に滲み出る、素敵な素敵な佳品舞台。
3人が織り成す、何気ない生活の中の、珠玉の台詞に、何度も、笑わされ、泣かされ、感情を、すっかり揺さぶられ続けました。
秀美の思い出話や万引き少年の作り話に、誘発される、敏子の妄想の中の「真夏の夜の夢」の寸劇が、これまた秀逸でした。敏子は、2人のパート仲間には、決して、自分の感情を吐露することはないのだけれど、心の中では、様々な夢想をして、生きていて、つい、情に絆され、少年に騙されそうになるあたり、まるで、「女殺油地獄」の、殺される女を彷彿として、哀れでした。
赤堀さんが、こんなにも、女性の気持ちがわかる作家だとは、思いもしませんでした。
挿入歌の、ちあきなおみの歌や、秀美が、カラオケで歌う「セーラー服と機関銃」の歌に、自分の青春時代の思い出も喚起され、自分でも、思わぬシーンで、何度も涙を拭いました。
久しぶりに、全てに満足の行く舞台を拝見して、一度で、この、劇団姦しファンになりました。(でも、正直言うと、この劇団名には、やや異議ありですが…)
月いちリーディング/10年7月
日本劇作家協会
座・高円寺稽古場(B3F)(東京都)
2010/07/31 (土) ~ 2010/07/31 (土)公演終了
満足度★★★★
行った甲斐があった気がしました
息子の結婚式の当日でしたので、最後まで、行こうか迷いましたが、いつもより開始時刻が遅かったので、思い切って行ってみました。
今回は、第二回ということもあり、進行もスムーズで、デイスカッションは、リーデイングの時と、椅子の配置を変え、円形にして、挙手とかもせず、フランクに語り合う形になったので、一回目よりも、実のある時間が過ごせたように思いました。
何よりも、嬉しかったのは、今回の、対象になる劇作家の方が、担当劇作家のコメントよりも、一般参観の方々の意見を聞けたことを、心から喜んで下さっていた感触を得たことでした。
確かに、先輩劇作家の意見はとても参考になるとは思うのですが、劇作家としての生活が長い方の御意見は、やはりどうしても、劇作家サイドからの視点に立っての御意見になりがちだと思うのです。
新人劇作家は、そういう方の御意見を聞きたい一方で、やはり、実際チケット代を払って観劇をする一般のお客さんの自作に対する率直な意見も聞きたい筈だと思うのです。
そういう意味では、行って良かったと思いました。
次回は、もっともっと、観客サイドの御意見が活性化されるといいなあと、この企画の発展に期待したいと思います。
ネタバレBOX
行ってみるまで、今日の読み手は誰か知りませんでしたが、今回は、燐光群の役者さんの他、さとうこうじさん、何とサスペンデッズの早船さん、そして、この間ファンになったばかりの、オフィスプロジェクトMの小山さんも、出演されていて、何だか、無料で、こんな貴重なリーディングを拝聴できて、超お得気分でした。
今回、取り上げられた「防波堤のピクニック」は、作者が、茅ヶ崎ご出身ということで、地方都市に住む、鬱積した人間達の、心の襞がテーマのようでしたが、この作品、聴いていて、まず脳裏に浮かんだのが、テネシー・ウイリアムズの「欲望という名の電車」でしたが、作者ご自身も、主人公に、ブランチを重ねていらしたそうだと聞かされ、あながち、私の印象も、的外れではなかったようで、嬉しくなりました。
この会、会を重ねるごとに、より有益な会になって行きそうに思います。
次回は、是非より多くのコリッチユーザーの皆さんにも、御参観頂きたいなと思いました。
ブロードウェイミュージカル「ピーターパン」
ホリプロ
東京国際フォーラム ホールC(東京都)
2010/07/19 (月) ~ 2010/08/01 (日)公演終了
満足度★★★★★
たぶん18年振りぐらいの再感動
初演から、折々、何十回と観た作品ですが、この20年近くは、見過ごして来ました。
笹本玲奈さんと橋本じゅんさんを観たさに、久々行きましたが、やっぱり、こんなおばさんになっても、ワクワクするミュージカルでした。
たぶん、昔の子ども達以上に、子ども達の心的参加度が増していました。
児童虐待などで、悲しい運命を背負って育つ子供達が多くなった一方で、こうして、素敵な演劇体験をさせてもらえる子供達もたくさんいる、子供の格差社会の現実。
劇中の迷子達の運命に思いを馳せながら、昔よりも、ずっと、重い気持ちで、でもどこかに希望を感じながら、楽しく観劇できて、やはり行って良かったと思いました。
ネタバレBOX
本家の「ピーターパン」に御無沙汰している間に、ダステイン・ホフマンのフック船長が主役の映画や、ジョーニー・デップの、「ピーターパン」の作者が主人公の映画や、空想組曲や、少年社中や、とにかく、いろんなピーターパンものを観たため、一体どれがモトのお話かわからなくなっていましたが、今回の観劇で、一番衝撃だったのは、フック船長も、ウエンデイにお母さんになってほしくて、彼女を誘拐したのだとわかったこと。
昨日、たまたま、九州大学の、北山修氏の、セラピストになるための学生への講義をテレビで観たばかりだったせいか、誰にも、母親の存在が不可欠で、人間は母親によって、二者間の教育課程を通過しないと、うまく育たないという北山さんの言葉が、この芝居に重なり、胸が痛くなる思いでした。
松本さんの演出は、たぶん、そういう、今の人間社会の欠落部分に、静かな投影をしているのではと感じました。
笹本さんのピーターパンは、初めて観ましたが、とても良かったと思います。
タイガー・リリーが、初演の頃より、印象が薄れたように思いました。
この筋立てでは、彼女は別にあまりいる意味がないように感じたのですが、30年の間に、ずいぶん、この芝居のテイストも変容して来たのかもしれませんね。
ウェンデイが、家に帰った後、屋根の上に、そっと様子を見に来たピーターの存在を、客席の子供達が、必死に舞台上のウエンデイに教えようと大きな声で叫ぶことに、何よりも感動してしまいました。
孫が、5~6歳になったら、是非連れて行きたい、やはり名作中の名作です。
上等な、死因
弾丸MAMAER
あうるすぽっと(東京都)
2010/07/28 (水) ~ 2010/08/01 (日)公演終了
満足度★★★★
相当、才能ある作家とお見受けしました
この劇団は、前回の「喪服の時間」から、見始めたばかりですが、2作を拝見し、竹重洋平さんは、相当、筆の立つ作家でいらっしゃると確信しました。
この芝居のモチーフになった事故のことは、子どもの頃から、ずいぶん母に聞かされて育ちましたが、まさか、まだ生まれてもいない頃の、実際の事故から、こんな奇想天外なストーリーを生み出されるなんて、それだけで、もう感心してしまいました。
喜劇かと思いましたが、そうでもなく、なかなか示唆に富んだ内容でした。
ある意味、「ザ・キャラクター」にも通じるような、人間の不確かさとかがテーマだったように感じました。
ここの、役者さんは、前回公演でも思いましたが、皆さん、とても個性と目力と演技力があり、役者としてのオーラのある方も多く、観ていて、安心して、芝居に集中させて頂けるので、後1回くらい拝見したら、お気に入り劇団になりそうです。
ネタバレBOX
昔あった白木屋というデパートの火災事故が、モチーフになっています。この事故以降、女性は、和装でも、下着をつけるようになったとさんざん、母に聞かされていたので、私は、すっかりその言葉を信じて、恥じらいのある女性が、下着を身につけていなかったために、火事で命を落としたのだとばかり、思い込んで来ましたが、もしかしたら、この芝居で明かされた【事実】が、案外正解だったのかもしれないと、考えが変わりました。
昭和初期の雰囲気が、衣装にもヘアスタイルにも、きっちり時代考証されて、なかなか本格的で、感心しましたが、それだけに、最初の方の台詞で多様される「けど」という接頭語が、当時は使わなかったのではと思うのと、芥川の死は、当時の人なら、誰でも知っていたのではという、幾つかの不都合な部分が余計気になってしまいました。
もう少し、笑いがあっても良かった気もしますが、なかなか心理サスペンスタッチで、引き込まれて、観てしまいました。
前回と全く違うテイストの芝居だったので、次は、どんな球を投げられるのかと、興味が尽きない劇団です。
ザ・キャラクター
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2010/06/20 (日) ~ 2010/08/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
言葉遊びが、本質を焙り出す見事さ
まず、会場に着いて驚いた。四季の劇場かと思った。
高校生らしき学生団体が、引率されて来ている。
ちょうど、あの事件が起きた頃に、生まれた世代。
こんな芝居を学校で観に来る時代になったかと、まず感激!
そして、野田さん!「ハイパー」で、もう才能が枯渇したかと心配になって、実は、恐る恐る観劇。
大丈夫でした!!やっぱり、野田さんはスゴイ!!
稀有な劇作家でした。
あの事件を、こんな舞台設定にして、言葉遊びと見せかけて、見事に、人間の本質を焙り出して行く才気に満ちた台詞選びの術。
そして、事件をただ踏襲するだけのドキュメンタリー的な芝居ではなく、きちんと、野田さんの劇世界に変換する作劇の妙!!
素晴らしい!!こんな劇作家は、やはり他にはいそうにありません。
役者さんんも、皆良かった!宮沢りえさんの台詞は、どうしていつも、あんなにストレートに、心にダイレクトに響くのでしょう?
スゴイ女優さんだといつも思う。
藤井さんの舞台も、観る度、思う。この方、本当に、才能ある俳優だなと。
野田さんは、いつでも、安定した女優さん振り。チョウ・ソンハさん、演技も動きも期待通り。銀粉蝶さん、やはり、適役。
古田さんも、役に合って、実に良かったし、橋爪さんも、「ハイパー」より、ずっと、橋爪さんであるべき必要性を感じた。
ただ、アンサンブルの役者さん達は、動きは、演出の言う通り実践できて、素晴らしかったのですが、まだ経験不足な方が多いせいか、台詞が明瞭に聞き取れない方が多く、その点は残念でした。
やっぱり、こういう、本当に頭脳明晰な劇作家の書く芝居は、脳と心を刺激してくれて、演劇の醍醐味を思う存分感じました。
ネタバレBOX
あの事件を、書道教室に設定にした、野田さんのアイデアに、まず心底感嘆しました。字を書き、写経する内に、刷り込まれていく危うい情報の怖ろしさが、ストーリー展開上、違和感が全くなく、だからこそ、他の芝居にも増して、野田流言葉遊びの術が生きて来る、素晴らしい構成術。
野原に置きざられた、中からは開けられない冷蔵庫とか、ギリシャ神話とかと結びつけるアイデアも、とにかく、他の作者には、思いもつかないような、野田さん独自の知恵の凝縮した、スゴイ作品でした。
あんな大それた事件を起こす集団だと認識していなかった、テレビの中のワイドショーメンバーの呑気な笑い声と、テレビ番組のリアルさにも、身の毛がよだつ思いがしました。
あの事件の生々しい記憶がやや風化し始めた折に、静かな怖ろしさの再体感で、気持ちがザワザワとしました。
血や、猛毒の薬は実際目に見えないのに、書道教室の床に流れた、夥しい墨汁の跡が、どんなリアルな小道具より、数等不気味に見えました。
フツウが、だんだんんと変容して行く様子が、本当に壮絶な感覚で、観る者の心に刺さる、衝撃の舞台でした。
重い気持ちを引きずって帰ろうとしたら、後ろから、「ねえ、あの弟役の俳優、良かったね。誰だか知らないけど…」という、声が聞こえ、かなり以前からのチョウ・ソンハさんファンとしては、大変嬉しい気持ちになり、少し、気持ちが明るくなれて、幸いでした。
反重力エンピツ(再演)
国道五十八号戦線
サンモールスタジオ(東京都)
2010/07/23 (金) ~ 2010/08/01 (日)公演終了
満足度★★★★
昔懐かしい演劇テイストでした
ずっと気になっていた劇団。15ミニッツメイドで、ちょっとがっかりしたので、あまり期待せずにまいりましたが、とても、興味深く、見入ってしまいました。
大変、面白かったと思います。
構成が、とても秀逸で、次の場面に期待を繋がれたまま、2時間があっという間な感じでした。
役者さんと役名が同一なのも、わかりやすくていいし…。
加賀美さん、坂本さん、ハマカワさん、藤尾さん、堀さんが、特に印象に残りました。
ちょっと哲学的で、スタイリッシュな芝居。何時もいつも観たいタイプの作品ではありませんが、たまには、こういうのもいいなあと思いました。
何しろ、自分の年齢を忘れて観られましたから…。
若い気分になれて、久しぶりに、学生時代を思い出してしまいました。
ネタバレBOX
自分の高校時代の、浅間山荘事件とか、赤城山のリンチ事件とか、いろいろ思い出してしまいました。
革命家の皆さんのストーリーの合間に、ちょうど良いタイミングで挿入される、伊神さんとハマカワさんの2人の会話シーンが、とても素敵でした。
一方で、同じように、まるで、写生するように、小説を書く、ハマカワとモデルを務める男性革命家。
入れ子構造で、同じようなシーンが対を成し、一体どちらが、現実なのか、終いには、確信が持てなくなりましたが、その匙加減が絶妙で、作者の頭脳明晰振りが、滲み出る秀逸な構成劇でした。
この世で、一番重いものの答えにたどり着いた時、親として、反省する気持ちがフツフツと湧き上がってしまいました。
久しぶりに、若さ故の秀作に出会った気がするお芝居だったように思います。
幸福な職場
劇団 東京フェスティバル
小劇場 楽園(東京都)
2010/07/21 (水) ~ 2010/07/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
まさに、心に優しいお芝居でした
この芝居が、コリッチで、とても高評価でしたので、当日券で行って来ました。
本当に、素敵なお芝居でした。
私に、こんな素敵な芝居の存在を教えて、楽園に導いて下さった、サーコさん、雨模様さん、みささん、たけさん、バートさんに、心から感謝致します。
今日、観に行こうかと思って、検索し、5月の公演も好評だった劇団だったとわかり、それならと、急ぎ、下北沢に向かいました。
本当に、観られて良かった!!素敵な心温まるお芝居でした。
脚本も良いし、役者さんもいい!!
なかなか、ない劇団です。
それだけに、ちょっと残念に思ったのは、この劇団関係者のお身内と思われる方達の観劇マナーの悪さ。と言うより、普段小劇場観劇などあまりなさっていないので、子どものピアノ発表会等のスタンスでの御観劇だろうとは思うのですが、始まりのアナウンスの後、音楽がF・Iしても、大きな声で私語を止めず、舞台が終わっても、観客の余韻を阻害するように、すぐさま、舞台と関係ないおしゃべりを始められるのには、やや閉口しました。
終演後も、一般客の足を止めるように、出口を塞ぎ、「○○ちゃん、良かったよ」なんて嬉しそうに話されていましたが、この劇団、こんなに素敵なお芝居をなさるのですから、もう、これからは、一般のお客様もどんどん増えるのでしょうし、是非、お身内のお客様に、観劇マナーをそっと、囁いて頂きたい気がしてしまいました。
ネタバレBOX
この会社のドキュメンタリーを観ていない私には、もう始まりから、全ての展開が興味深く、本当に、ドキュメンタリーを観るかのように、舞台に、全神経が集中し、特に、大森専務が、知的障害者である、聡美の色の識別はできる点に注目しての、実験場面では、どうか上手く行きますようにと、祈るような気持ちで、舞台の成り行きを見守ってしまいました。
聡美役をやった古地香織さんの、嘘を感じさせない秀逸な演技には、心から敬服しました。私の周囲には、とてもたくさんの障害者の御家族を持つ家庭があり、私自身も、役員をした幼稚園や学校で、度々、知的障害者の作業所訪問をして、一緒に、作業をした経験が数多くあるので、古地さんは、本当に障害がある方なのかと見紛う程に、障害者の特徴を、ご自分のものにされて、生きた聡美を演じていらっしゃるのがわかり、彼女がいたからこそ、この舞台が、嘘でない世界の構築を成し得たのだと、思います。
大森さんも、久我さんも、原田さんも、住職さんも、キャスト全員、まるで、本物のようで、本当に、素晴らしい劇団だと、ただただ感服するばかりでした。
脚本も、奇をてらったりせず、ストレートで、実に、清々しい展開。暗転も、前場面の余韻を感じるのに、程好い時間で、とても効果的な転換でした。
ストーリーにはそれ程関係のない住職を登場させた点も、この芝居に、人情話的な、温かみのある奥行きを与え、観客のクスっと笑いを誘う意味でも、とても成功していたと思います。
それだけに、惜しいと感じたのは、聡美を雇用しようと決めた後、大森が、養護施設の佐々木先生に電話して、その旨を伝える場面。あそこだけ、舞台空間を、会社と、養護施設とWで使ったのですが、これは不必要だったと思います。その前に、観客は雇用を決めたことを知らされているので、暗転後は、すぐ、聡美の正式雇用後の場面で良かったのでは?
終始ドキュメンタリー的だったのに、あの場面だけが芝居じみて感じられ、興を殺いだ感じがありました。
サーコさんも書いていらしたように、創意工夫をする人がめっきり少なくなってしまった、今の日本社会の現実をちょっと悲しく感じたりもしましたが、今でもこういう人間的な職場が実際に存在することがわかっただけでも、嬉しい体験でした。
何度も、目頭が熱くなる、本当に、様々な方に目にして頂きたい上質な、温かい舞台作品でした。おススメ下さった方にも、この舞台の関係者の皆さんにも、本当に、感謝したい思いでした。
Goodwill~王子支店~
spacenoid
王子小劇場(東京都)
2010/07/20 (火) ~ 2010/07/25 (日)公演終了
満足度★★★★
人情喜劇でした
何となく内部告発モノなのかと思っていたら、さにあらず。
職場の人間関係に焦点を当てた、ハートフル・コメディ的で、楽しく拝見することができました。
いつもの王子小劇場とは異なる舞台空間も新鮮で、グッドウイル王子支店の従業員と、お友達感覚で、観劇を楽しめる空間作りが成されていたように思います。
役者さんのレベルも一定で、すんなり劇世界の一員になれて、不満を感じる要素がなかったのも、嬉しい気持ちになれた要因でしょう。
また、観劇席に、コリッチの有名ユーザーの方が座っていらして、その方が心から楽しげに御観劇のご様子を拝見できたのも、嬉しい観劇に、おまけの喜びを追加して頂けた要因となりました。
誰もが、楽しく観劇できる演劇って、本当に大好きです。
この芝居を観る決断に一役買って下さった、我が同期生、照明の井坂さんに感謝です。
ネタバレBOX
最初の、支店長の1人芝居部分では、こんなに楽しい芝居になるとは予想がつきませんでしたが、その後、従業員が1人2人と登場する度に、楽しさが加速して行きました。
会社本体は、相当悪どいことをしていても、現場で働く人間は、それなりに、良好な人間関係を築けて、小さな喜びを見出し、精一杯生きている様子が素直に伝わり、とても、心地良くなる劇世界が展開され、この劇団が、これで解散ということが、初見の私でさえ、残念でならない気持ちになりました。
我が家の役者稼業の息子は、一時、宮浦状態だったこともありますし、彼は、フルキャストに登録し、引越しと言われず、行ってみたら、引越し作業だったとか、港の作業で、さんざん東本のようなベテランさんにこっぴどく絞られたりしたと聞いていましたから、何だか、必要以上に、感情移入して観てしまいましたが、息子も、こういうバイト現場でずいぶん人生修行ができたという話だったのが、この芝居で実感として理解できて、嬉しく感じました。
ただ、終盤がややもたつき気味だったのが、残念でした。本社から、営業停止の連絡が来た後、次の場面で終わりかと思ったら、それから、幾つか場面転換があり、やや冗長に感じました。営業停止の連絡が入って、暗転後は、一場面で完結した方がスッキリしたように思います。
Re:カクカクシカジカの話
非戦を選ぶ演劇人の会
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2010/07/20 (火) ~ 2010/07/21 (水)公演終了
満足度★★★★
行って良かった!
実行委員からの嘆願メールに、重い腰を上げて、行きましたが、正直、大変驚きました。
どうも、メッセージ色の強い、プロパガンダ的舞台を想像していましたが、きっちり、演劇として、面白い作品に仕上がっていました。
今までは、永井愛さんや、渡辺えりさんだの、ベテラン劇作家が書いていたこのメッセージ演劇を、今回は、戯曲セミナ卒業生でもある、若手にバトンを渡したことが、好結果に繋がったようにも思います。
一部の「Re:カクカクシカジカの話」は、若いに似ず、相当筆力あると定評の相馬杜宇さんの作、チャリT企画の主宰楢原拓さんの演出で、この2人が、実に驚くべき、力を発揮されていました。
リーディングだということを忘れるぐらい、とても演劇チックな展開で、芝居の出来としても、決して他に、引けを取らない舞台になっていたのは、本当に驚きでした。
この作品で、錚々たる大ベテラン俳優に囲まれ、驚くべき役者根性で、主役を好演された小山貴司さん!!一目惚れしましたが、丸尾さんの劇団の所属俳優さんでした。彼を知っただけでも、行った甲斐あり、でしたが、2部でも、知らなかった現実をずいぶん聞かされたり、3部では、つくづく演劇界の損失だと痛感させられた、井上作品にダイジェストながら、触れたりできて、本当に思わぬ感動舞台となりました。
今日は満席でしたが、昨日はかなり入りが悪かったようで、こんなに良い舞台なら、もっと人に薦めておけば良かったと後悔しました。
ネタバレBOX
1部は、教授にレポートのダメだしを受けた大学生のマサトが、期限付きで、核の問題を調べて行き、当初はネットで調べていたのが、最終的には、自分の目で、たくさんの資料を読み進めて行く内に、自分自身の見解にたどり着くまでのお話。主役の小山さんや、チャリT企画の役者さん以外は、ほとんど見知ったベテラン役者さんの揃い踏み。これだけのオールスターキャストは、かつて観たことないかもしれません。
中でも驚いたのは、演出家青井陽治さん扮する教授の美声。そう言えば、青井さんて昔は四季で役者さんもなさっていたのですね。
核抑止論派は、黒の衣装、非核論者は、白の衣装で、動きもついて、朗読劇に感じる面映さは全くなく、これは演出の楢原さんの手腕かと、改めて、彼の演出力に感服しました。
皆、役を演じる中にあって、実際の被爆体験のある、鈴木瑞穂さんだけが、御本人の役で、語られるのが印象的で、やはり圧倒的に、説得力を増しました。
核を持つべきではないという、最初からのこの芝居の上演目的がありながら、この作品を、1人の大学生の成長物語として、しっかり骨組みを建てた、相馬さんの脚本力にも脱帽しました。
実際被爆経験者にじかに話を聞きに行こうと、大学生のマサトが、朝鮮国籍の恋人と、広島の原爆ドームに行くと、それまで、白と黒の衣装に分かれていた登場人物が、皆色とりどりの衣装に着替えて再登場するラストシーンが、とても秀逸で、目頭が熱くなりました。
2部は、えりさんと永井さんの司会で、ドキュメンタリー映像作家の鎌仲ひとみさんの映像作品の予告編を観てのトーク。この鎌仲さんが、語る、日本の知られざる現状に、背筋が凍る思いがしましたが、時間的には、この程度が無難だった気がします。これ以上、語られると、あまりにも、観客の意識を故意に誘導してしまう危うさを感じもしましたので。
映像の字幕が、1部のセットの椅子で見難いところがあったのが、残念。準備不足だったと思います。
3部は、戯曲セミナー卒業生で、井上ひさしさんに師事した石原美か子さんと、長田育恵さんの構成による、井上戯曲の追悼朗読。これが、また、井上作品常連役者さんの勢揃いで、珠玉の井上さんの名科白が、ダイジェストで、読み継がれて行く、贅沢な構成。
どれも、心に響く科白ばかりで、改めて、偉大な作家を失ってしまったという喪失感に、胸がいっぱいになりました。
ただ、教え子の、個人的気持ちが入り過ぎた感があり、もう少し、短く構成した方が、より、井上さんの思いを伝えたように思いました。後10分短くまとめた方が、より感動が濃くなったように思います。
「井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法」の文章が、重く静謐に胸に響き、自分で、読んでみようという気にさせられました。
わが友ヒットラー
Project Natter
ザ・スズナリ(東京都)
2010/07/14 (水) ~ 2010/07/19 (月)公演終了
満足度★★★
浅野さんがいい!
レームとシュトラッサー、あまり耳馴染みのない名前だと思ったら、まだヒットラーが、完全に権力を手中に治める以前の話だったのですね。
自分の勉強不足のせいで、そのあたりの関係性がイマひとつ掴めなかったため、1幕はやや退屈でしたが、2幕の丁々発止のやり取りは、大変興味深く観ることができ、結果的に、それ程、長かったという印象はありませんでした。
浅野さんは、いつもながら、その役をしっかり生きて舞台上にいらっしゃいましたが、ヒットラー役の役者さんの演技は、あれで良かったのかと、やや疑問を感じました。
「サド公爵夫人」と対を成す作品として、三島は書いたそうで、確かに、構成的には非常に似通っていましたが、私としては、「サド~」の方が、スリリングで、好きな作品でした。どちらも、1幕は冗長ですが、2幕になると、面白くなる点も似ていました。
ネタバレBOX
最初のシーンは、ヒットラーも、レームも、シュトラッサーも、後ろ姿で、舞台奥に向かって、演説している演出ですが、この時の、ヒットラーの演説にかなり疑問を感じました。もちろん、彼が全権を掌握する前の演説ですから、我々が知っている演説程、人心を惹きつける喋り方ではなかったのかもしれませんが、それにしても、口調が間延びし過ぎて、何だかヒットラーと言うより、昭和天皇のようでした。
また、途中から、クルップに呼ばれて、レームとシュトラッサーとの、それぞれの2人芝居になる部分、相変わらず、ヒットラーは後ろ姿のまま演説を続けますが、この後ろ姿に、ヒットラーらしさが皆無なのも気になりました。
それにしても、三島の台詞劇の膨大さと言ったら、これはもう物凄い量の台詞で、これを淀みなく喋るだけでも、この出演者には敬意を表したくなります。
所々に、胸に沁みる台詞もたくさんあり、さすが、三島作品という、満足感はありましたが、1幕が終わり、休憩案内が聞こえた途端、客席から、一様に「フウー」というため息の合唱が起こった時には受けました。
演じる方も、観る方も、相当根気はいる芝居でした。
じゃじゃ馬ならし
Studio Life(スタジオライフ)
博品館劇場(東京都)
2010/07/08 (木) ~ 2010/07/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
観て良かった!!
正直、この年齢でスタジオライフに行くのはかなり勇気がいります。
この劇団のファン層は、独特なので…。
でも、倉田さんの骨太な作品作りのファンだし、今回は、山本さん御出演なので、久々勇気を出して、行きました。
行って良かった!!
何しろ、以前から、その演技力の虜になっている、林勇輔さんが大活躍される舞台で、スタジオライフの演技派俳優、石飛幸治さん、山本芳樹さんと、役者力のある方が、メインの役のため、久々、ハラハラせずに、スタジオライフの世界を満喫することができました。
いつもながら、倉田さんの演出は、巧い!!
今時の女性には、反感買いそうな「じゃじゃ馬ならし」を、最初と最後に、オリジナルのエピソードを付けることで、見事に、現代女性にもそっぽを向かれない作品に再構築していて、さすがでした。
今まで、いろいろシェークスピア喜劇を観ましたが、案外、これが一番、その時代の空気を再現しているのではとさえ思いました。
この舞台で、益々、林さんのファンになりました。ベテラン女優さんにしか見えません。歌もとてもお上手。林さんの歌うシャンソンとか、無性に聴いてみたくなりました。
ネタバレBOX
開演ギリギリに、博品館の1階に着いたら、そこに、おばさん姿の石飛さんがスタンバってて、ビックリ。
私の乗ったエレベーターには乗らず、どうされるのかと思ったら、開幕して出てらした石飛さん、「中国の団体にぶつかっちゃって、間に合わないかと思った」と、アドリブ。そうでした、私の乗ったエレベーターに、どやどやと中国の観光客が乗って来たので、本番目前だと言うのに、遠慮したんですね。
こういうアットホームな感じが、この劇団のいいところ。
「じゃじゃ馬ならし」だというのに、最初は、その石飛さんの猫おばさんと、林さんの売れない女優の場面から始まります。
この林さん扮するリージー・ディクソンという女優のキャラクター設定がとても素敵で、林さんだけでなく、このリージーのファンにもなってしまった私は、終演後、彼女と別れるのが、とてもお名残惜しく感じました。
「じゃじゃ馬ならし」って、夫が、じゃじゃ馬の妻を調教するのに成功するというお話だから、今の女性が見たら、冗談じゃないわと思うような芝居ですが、それを、この猫おばさんと女優をストーリーテーラー的に配することにより、実は、調教されたと見せかけて、男をうまく操縦するという女性目線のストーリーに作り変えていたところが、お見事でした。
歌は、いつも歌謡曲チックで、イマイチな感じではあるものの、メンバーの踊りが楽しく、その中でも、やはり山本さんの魅力が充分発揮され、ファンとしては、大満足でした。
キャストは、ほぼ好演でしたが、3人の他は、客演の、坂本岳大さん、穂積恭平さんが印象に残りました。別チームで、ぺトルーチオ役の曽世海司さんが、今日は、女優をコケにするプロデューサー役で、ちょこっと御出演でしたが、その僅かな出番で、存在感を残し、さすがでした。
この方、「トーマの心臓」で、初めて拝見した頃は、苦手な役者さんでしたが、近年観る度、演技派になられて、今ではすっかりファンになりました。
まだまだ、当分、勇気を出して、スタジオライフには通うつもりです。
ファウストの悲劇
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2010/07/04 (日) ~ 2010/07/25 (日)公演終了
満足度★
私的には、蜷川芝居過去最悪作品
以前、私の酷評の書き方が過激過ぎて、感動された方を御不快にするのでは、と、御意見頂いたことがありますので、先に「、ごめんなさい」とお詫び致しますが、これは、あくまでも、私の感じ方で、この芝居に感銘を受けた方に、異を唱えるつもりは全くございませんので、御理解頂ければ、幸いです。
もう、何と言うか、まるで、演出家の独りよがりな贅沢三昧の余興に、3時間弱、延々とお付き合いさせられたような気分でした。
とてもとても、ひたすら残念でなりません。
キャストと言い、制作費と言い、あまりにも無駄遣いに過ぎる気がします。
肝心の「ファースト」のお話は、ほとんど何も胸に響かないままでした。
客席を過度に使い過ぎなのにも、疑問を感じました。
あれでは、1階席のお客さんは、舞台に入り込めないのではないでしょうか?
何だか、アイデアだけが先行し、内実が伴わない舞台で、かなり落胆しつつ岐路につき、もう蜷川さんの芝居は観なくてもいいかなと思い始めています。
ネタバレBOX
萬斎さん、もちろん、朗々と響き渡る声で、気持ちは良いのですが、台詞回しが、とにかく一本調子で、緩急もなく、萬斎さんがお1人で台詞を言う間、何度も睡魔に襲われました。
勝村さんが御出場だと、目が覚めるのですが…。
歌舞伎役者が、「ファースト」を演じているという解釈はできず、何だか、洋風料理を、無理矢理、和食器に乗せたような違和感がずっとありました。
何故、歌舞伎仕様にしたかの意図が、全く解せませんでした。
ちょっと前までは、やたら、石とか、何でもかんでも落下させるのが続きましたが、最近は、鏡の多様ばかりだし…。
アイデアの種も尽きて、じゃ歌舞伎でというような安直な発想に感じてしまいました。
キャストも、大変メンバーが揃っているのに、使いこなせていなくて、きちんと為所のあった役者さんで、好演ぶりが感じ取れたのは、勝村さん、白井さん、長塚さんぐらいだったのも、残念でした。
ファーストが、旅に出て、様々な経験をするといったイメージが、この舞台からは全く湧かず、ずっと彼の書斎で展開しているような、広がりを感じない舞台でした。
以前、白井さんが演出された「ファウスト」の方が、何十倍も、イメージの奥行きを感じさせてくれる舞台だっただけに、白井さん、この舞台に御出演されながら、どんなお気持ちだろうかと、気になってしまいました。
たぶん、半分以上、客席を多様するので、キャストに傍に座られたりする観客が、舞台に集中できなさそうで、大変お気の毒でした。
今日程、M2階にして正解だったと思ったことはありませんでした。
萬斎さんの首が、本物そっくりで、これが一番感嘆しました。
モスリラ
ナノスクエア
神楽坂セッションハウス(東京都)
2010/07/16 (金) ~ 2010/07/19 (月)公演終了
満足度★★★
結果的には行って良かったものの
実は、行って、チラシで、本日の配役を知った時は、すごくショックでした。
お目当ての、田中さんも桑原さんも出ていない日!!!
知らなかったあ!!
よくよく見れば、小さくトリプルキャストとは書いてあったけれど、どこにもキャスト表載ってなかったので…。
まだ、お知り合いの阿部さんの御出演の日で、助かりました。
3人の朗読劇。今日は、宮原さんのアキラ、佐藤さんのなつき、よしつぐさんの守でした。
初日だし、演技経験も少ない組み合わせのせいか、最初は、え、【これで入場料を頂いてはダメでしょレベル】で、正直帰ろうかと思った程でしたが、徐々に、皆さん、役に入り込め始めて、最終的には、泣いている方もいるくらい、なかなかの感動作に仕上がって、ほっとしました。
脚本が、なかなか良くできているので、これ、田中さんと桑原さんの日なら、相当見応えある作品になりそうでした。
ネタバレBOX
「モスリラ」というタイトルの意味は、途中でわかりますが、その花以外に、蝶やブランコが象徴として登場し、私は、むしろ、「ブランコ」という題にした方が、効果的ではと感じました。
劇構成は、なかなか巧みで、最初の2人の小学生時代のエピソードが、あんな形で帰結しようとは、かなり後半になるまでは読めませんでした。
なつきの父親のシャンソンの歌声、重要なキーポイントなのに、どうしても、日本人歌手とは思えず、白けます。せっかくよしつぐさんが御出演なのだから、彼に歌を吹き込んでもらえばよかったのではと思いました。
佐藤さんは、雰囲気もあり、この役にとても合って、好演でしたが、よしつぐさんは、かなり緊張されたのか、始まってしばらくは、まるで、国語の授業中、指されて、教科書朗読している生徒のようでした。
宮原さんは、見た目も素敵で、雰囲気はあるものの、大事な台詞になれば成る程、噛みまくり、せっかくの劇世界の構築が振り出しに戻るところが多くて、残念でした。
この組み合わせで、4200円は、いくらなんでも、高過ぎます。
小学生の守の書いた詩を朗読する箇所が2箇所ありますが、阿部さんの最初の読み方では、この作品を台無しにしてしまいました。
後半は、あんなに、お上手に読めたのですから、単に緊張故とは思いますが、こういう形態に不慣れな役者さんを朗読公演に出演させる場合は、まず客席の形態で、何度もシュミレーション稽古をされるべきだと感じました。
できることなら、田中さんと桑原さんの日に、リベンジしたくなりました。
エネミイ
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2010/07/01 (木) ~ 2010/07/18 (日)公演終了
満足度★★★★
演出の手腕が冴え渡った舞台
この作品、蓬莱さんの脚本が一定レベルに達してはいるものの、もしこれが、裕美さん演出でなく、キャストもこのメンバーでなかったとしたら、結構退屈になり得る要素の強い作品だったかもしれません。
何しろ、1幕終わりまでは、スケッチに終始し、ドラマはちっとも動き始めないのだから…。
1幕が眠くならずに済んだのは、ひとえに、裕美さんの演出力と、キャスト陣、特に、高橋由美子さんの力演に助けられた感が強くします。
最初、由美子さんの演技が誇張されすぎている印象を受け、間もあまりにもわざとらしく、いつもの裕美さんらしからぬ演出だと、腑に落ちない思いがしたのですが、これは、1幕で、観客の気持ちを逃がさないための計算された演出なのではと、幕間前に、わかった気がしました。
キャスト陣、皆好演でしたが、この舞台の殊勲賞は、何と言っても、高橋一生さん。彼がこの役でなければ、蓬莱さんが描きたかったテーマは、きっと浮かび上がらなかったと思います。本当に、素晴らしい演技でした。
ネタバレBOX
裕美さん演出の舞台は、いつも、セットも小道具もリアルなモノが多いと思うのですが、この舞台は、他は皆リアルなのに、一つだけ、息子がやっているゲームの映るテレビだけが、透明なテレビ状の形態で、ただテレビゲームの音だけは、リアル以上のリアルさで、客席にまで、響き渡っていました。
この演出が、実に、秀逸!この作品のテーマを見事に具現化する効果的な小道具となっていました。
つまり、主人公の青年が戦っている【敵】は、実体がなく、音だけで、彼の心を攻撃して来るのです。
三里塚闘争を闘った、中年男性3人ではなく、この作品の本当の主役は、今を不安と焦燥の中で生きる、コンビニバイト店員のこの31歳の青年だったと思います。
作者が、自分とほぼ同年代の、一生さん扮するこの息子を真の主役にしたことで、この作品が、嘘臭くなく、観る者の胸に迫る佳作に成り得たのだと思います。
彼が、任されている、バイト先のシフト決めの難しさを、体を震わせながら、慟哭と共に、訴えた時が、たぶん、一番、観客に、この作品のメッセージが伝わった瞬間だったのではないでしょうか?
一生さんのあの演技がなければ、伝えられなかったメッセージかもしれません。
今も尚、活動を続けている2人の男性のキャラクターには、若干疑問もありましたが、彼らを主役にしなかったことで、あまり表面化せず、全体として、虚構らしからぬ実在感が、登場人物全員に宿されていたように思います。
最後の、母親の、全てを悟った上での、解決策は、発想と言い、梅沢さんの飄々たる演技と言い、申し分ない場面でした。
最後まで、観ると、1幕のただのスケッチ風の場面や他愛もなさそうな台詞に、全て重要な意味があったとわかる、結果的に、大変秀逸な戯曲でもありました。
2番目、或いは3番目
ナイロン100℃
本多劇場(東京都)
2010/06/21 (月) ~ 2010/07/19 (月)公演終了
満足度★★★★★
ケラ流チェーホフ風味劇、最高でした
ここでの評判があまり芳しくないので、心配しつつ観に行ったところ、何と、私には、過去観劇ナイロン中、最高の作品に感じられました。
とにかく、この劇団、役者力がスゴイ!!
客演の小出さん、谷村さんも、映像畑の役者さんとは思えない程、他の出演者に引けを取らない芝居をされていましたし、脚本と役者さんの息の合い方が絶妙で、3時間半、ただの一度も退屈に感じる部分がありませんでした。
擽るような台詞の中に、人間の本質やその性格を見事に表出して行くケラさんの脚本が秀逸で、心で、何度も唸り声を上げてしまいました。
キャストは、全員、本当に素晴らしく、こんなに、出演者全員に賛辞を送りたくなる芝居は久しぶりな気がしました。
だけど、個人的に残念だったのは、お隣が、何故か1幕と別のカップルになってからの、2幕目。お二人が、どうでもいいような箇所でも、あまりにも大笑いし続けるので、それまでの自分ペースでの観劇が阻害され、そちらに気が取られてしまったこと。でも、これは、自分の運の悪さなので、致し方ありませんが…。
ネタバレBOX
ずっと、微笑ましく笑って観ていたら、いきなり、壮絶な暴力シーンになった時は、一瞬、えー、ここからはそういうテイスト??と不安になりましたが、最後まで、観ると、人間の繋がりと、チェーホフ劇のような、不幸に絶望することなく、前を向いて生きて行こうという終わり方で、とても清々しい劇後感でした。
もう、本当に、芸達者揃いで、幸せな劇団だなと痛感しましたが、中でも、イヌコさんと松永さんの絶妙双子姉妹には、笑いつつ、感嘆してしまいました。もう、このお2人の秀逸演技、絶対、終世の記憶に留めたいくらい!
大倉さんのおじいさんにも、大笑いさせられつつ、哀愁を感じました。
擬似家族だった、みのすけさんの父の情が切なくて、不覚にも涙は出るは、小出さんの迫真演技にゾッとするはで、感情の動きが忙しく、とても退屈する暇はありませんでした。
冒頭の、映像的なキャスト紹介も、どなたが何の役かが、如実にわかり、劇団のコアなファンでない観客には、大変親切な計らいだと思いました。
セット、照明、音響が素晴らしいのは、相変わらずで、大満足でした。
真夏の迷光とサイコ
モダンスイマーズ
青山円形劇場(東京都)
2010/07/08 (木) ~ 2010/07/18 (日)公演終了
私には理解不能みたいです
いつも、蓬莱さんが、他劇団に書き下ろす作品はこぞっていいので、自劇団もいいだろうと期待しつつ、もう5回ぐらい、モダンスイマーズを観に行きましたが、どんどん、私には不向きだという実感が募るばかりで、今回をもって、モダンスイマーズは、単位未取得のまま、中退しようと思いました。
蓬莱さんが、何をどう描こうとされているのか、今回程、理解不能な作品はありませんでした。
そして、いつもわからないながら、魅力を感じていた、津村さんが御出演でないので、私には、救いどころがなく、途中からは、YOUさんの心地良い声に耳だけ傾けつつ、対面で御観劇の、私が御贔屓のある女優さんばかりに見入っていました。
真夜中のパーティー
ネルケプランニング
PARCO劇場(東京都)
2010/07/04 (日) ~ 2010/07/19 (月)公演終了
満足度★★
どうにも退屈でした
亡父の遺言のような、「いづれ観ろよ」の言葉に押され、観に行きましたが、残念ながら、退屈で、特に、2幕は眠くなってしまいました。
やりようによっては、問題作になり得る脚本であることは間違いないし、きちんと、この人間ドラマを演じきれる役者を集めていたら、もっと深い芝居になっただろうと思うのですが、何しろ、9人のキャスト中、まともに役を生きているのはお1人だけで、後は、そこそこ、それらしく演じられる方が数人のみで、特に主要メンバーの役者力があまりにんも足りないために、2時間半、舞台に客席の気持ちを集中させるだけの会話劇のレベルには到底到達できずにいました。
初演の頃の舞台をご覧になった方に、比較しての御意見を是非伺ってみたいものです。
ネタバレBOX
ずいぶん昔から注目している内田滋さん、益々素敵な役者さん振り、嬉しく思いました。
主人が、以前仕事上かなり力を入れて応援していた徳山さんが、魅力的な役者さんに成長され、個人的にも嬉しい発見でした。
右近さんが、笑いを取って下さって、退屈な空気に風穴を開けて下さって、助かりました。
1幕の前半は、ほぼマイケルとドナルドの2人芝居なのですが、お2人の表現力に差があり過ぎて、芝居が咬み合わないまま、延々と続くので、物語の世界に気持ちが入って行けず、イライラが募りました。
役者以前に、演出が、この作品の本質に到達し得ていないのではと感じられてなりませんでした。