満足度★★★★★
言葉遊びが、本質を焙り出す見事さ
まず、会場に着いて驚いた。四季の劇場かと思った。
高校生らしき学生団体が、引率されて来ている。
ちょうど、あの事件が起きた頃に、生まれた世代。
こんな芝居を学校で観に来る時代になったかと、まず感激!
そして、野田さん!「ハイパー」で、もう才能が枯渇したかと心配になって、実は、恐る恐る観劇。
大丈夫でした!!やっぱり、野田さんはスゴイ!!
稀有な劇作家でした。
あの事件を、こんな舞台設定にして、言葉遊びと見せかけて、見事に、人間の本質を焙り出して行く才気に満ちた台詞選びの術。
そして、事件をただ踏襲するだけのドキュメンタリー的な芝居ではなく、きちんと、野田さんの劇世界に変換する作劇の妙!!
素晴らしい!!こんな劇作家は、やはり他にはいそうにありません。
役者さんんも、皆良かった!宮沢りえさんの台詞は、どうしていつも、あんなにストレートに、心にダイレクトに響くのでしょう?
スゴイ女優さんだといつも思う。
藤井さんの舞台も、観る度、思う。この方、本当に、才能ある俳優だなと。
野田さんは、いつでも、安定した女優さん振り。チョウ・ソンハさん、演技も動きも期待通り。銀粉蝶さん、やはり、適役。
古田さんも、役に合って、実に良かったし、橋爪さんも、「ハイパー」より、ずっと、橋爪さんであるべき必要性を感じた。
ただ、アンサンブルの役者さん達は、動きは、演出の言う通り実践できて、素晴らしかったのですが、まだ経験不足な方が多いせいか、台詞が明瞭に聞き取れない方が多く、その点は残念でした。
やっぱり、こういう、本当に頭脳明晰な劇作家の書く芝居は、脳と心を刺激してくれて、演劇の醍醐味を思う存分感じました。