KAEの観てきた!クチコミ一覧

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4STARS One World of Broadway Musicals フォー・スターズ ワン・ワールド・オブ・ブロードウェイ・ミュー

4STARS One World of Broadway Musicals フォー・スターズ ワン・ワールド・オブ・ブロードウェイ・ミュー

梅田芸術劇場

青山劇場(東京都)

2013/06/15 (土) ~ 2013/06/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

本物のエンタメを堪能できる幸せ
この公演が発表された日から、今日の日をずっと待ちわびていました。

まさかこの方達の生の歌声を、東京にいながらにして、聴ける日が来ようとは、思いもしませんでした。

チケットを入手しても、夢を見ている心地でした。

でも、間違いなく、私の目の前に、「ミスサイゴン」のキム役だったレアさんや、「オペラ座の怪人25周年コンサート」で、我々を魅了してくれたシエラさんや、ラミンさんが、存在して、生歌を流麗な歌声で届けてくれていました。

奇跡のような夜でした。

我が日本ミュージカル界からは、誰より背が高い、見目麗しい城田さん。
3人の超ベテランと伍して、お見事でした。

客席に、本当にこの公演を観たくて、聴きたくて参集した客が満員で、1曲終わる度に、溜息と共に、賛美の拍手が鳴りやまない、素敵で、本物のエンタメに、心からの喜びと癒しの時間を頂き、幸せな気持ちになれたことに、感謝しかありません。

ネタバレBOX

「レ・ミゼラブル」や「ミス・サイゴン」などを、一部、日本語詞で丁寧に歌って頂けるプレゼントにも感謝しました。

照明に工夫があり、歌われる楽曲のミュージカルに合わせた照明器具の、長方形の梯子のような物体が、実に効果的に使われていました。

4人が、仲良さそうに歌っていたのも、大変好感が持てました。

歌唱の素晴らしさに加味した、こういう細部の観客視点の工夫が満載で、制作側の愛情を感じることができて、本当に珠玉の時間でした。

音楽監督の、ジェイソンさんの作品「ラスト・5・イヤーズ」からの楽曲も、私は、山本耕史さんの主演舞台で、耳馴染みのある曲でしたから、大変懐かしく聴きました。

こういう、本物の、エンタメを観る機会が失われない限り、私は、まだ、この日本の興行界に希望を持ち続け、元気でいられそうに思います。
この公演を企画して、実現して下さった全ての方に、心底感謝致します。
獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)

獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)

イキウメ

シアタートラム(東京都)

2013/05/10 (金) ~ 2013/06/02 (日)公演終了

満足度★★★

前川さんの変容を感じる
震災以前、イキウメの芝居は、大変センセイショナルでありながら、現実社会ではあり得ないようなSF的な世界を、あり得そうな世界に変換して見せる技術がずば抜けていました。

あり得ないような世界に生きる男女の恋愛模様にカタルシスを感じ、息の詰まるような感動を覚えたものでした。

でも、あり得ない程の悲劇的現実の非情さの前で、前川さんは、もしかしたら、戸惑いを感じてはいないでしょうか?

原発事故が、劇作家前川氏に、足枷を食めてしまったような印象を、震災後の公演を観る度、感じてしまいます。

演劇的カタルシスが薄まって、ある種の自信が揺らいでいるような、遠慮がちな劇世界が、何となく残念に思える作品でした。

ネタバレBOX

以前拝見した芝居の内容を膨らませたようなストーリー展開でしたが、以前の作品が、とても刺激的だったのに比べ、今回の作品は、作者の自由闊達な筆さばきが弱まった印象です。

それを見ると、恍惚として、笑ってしまう、麻薬のような光の柱や隕石のせいで、人間がどんどん命を失っていく現実。

2008年から12年までの、天文学クラブの二階堂と山田、二階堂の妹の3人を中心とした物語と、2096年に生きる、山田の曾孫を中心とした、二つの時代のストーリーが、リンクしつつ、進行しますが、この登場人物達の見分けも、いつもの芝居程、明確ではなく、時々、どちらの時代の場面かとしばらく迷うところも多々ありました。

日本各地が、光の柱に支配され、人口の少ない地方に、難民が集まって行く中で、山田は、生まれた土地を難民に譲り、自分は、二階堂の妹に求婚して、二人で、新天地を求めて、流浪の民になる。

そう理解したラスト場面も、よくよく考えれば、山田は、安井さんが二役演じている曾孫の方だけれど、伊勢さんの役は、二階堂の妹のみの表記しかなく、では、2096年に、山田が求婚した伊勢さんは誰?と、わからなくなった部分もあり、気持的にスッキリしませんでした。

時代を超えて、柱の大使として永遠の命を得たらしき、二階堂に対して、曾孫の方の山田が、「君とは血が繋がっている」的な発言をするのも、それは、単に彼の妹の曾孫だという意味か、もしくは、もっと別の意味があるのか?

とにかく、何かと難解で、わかりにくい作品だと感じました。

以前の前川作品は、SF的な世界を、具体的にダイレクトに信じ込ませてくれる、明快さと、大胆さが魅力でした。

見えない敵と闘う中で、結び合える、人間の絆や愛情を、実にストレートに感じさせて頂けることが、イキウメ観劇後の醍醐味でした。

そういう感動作は、もう観られないのかもしれないと、少し、落胆した分、個人的な満足度は、少なくなったのだと思います。
汚れた手

汚れた手

劇団昴

俳優座劇場(東京都)

2013/06/01 (土) ~ 2013/06/09 (日)公演終了

満足度★★★★

驚きの長さなのに、厭きなかった
サルトルの芝居を観るのは、初めてだし、外国の革命や内戦事情などに、疎いので、理解できるだろうかと不安でしたが、人間の本質を深く抉った内容で、私にも共感できる普遍性があり、飽きずに観劇することができました。

だけど、終わって時計を見たら、3時間40分近くの長い上演時間に改めて驚愕!

正直、途中でウトウトしてしまった部分もありましたが、観て良かったと思える公演でした。

主役のユゴー役の中西さんの台詞が、所々、明瞭に聞こえず、しばらくは、心が舞台に吸い寄せられずにいたのですが、エドレルが登場してからは、私も彼の言葉に感化され、説得力のある彼の台詞を通して、ユゴーやジェシカの気持ちが痛い程理解できて、心が痛くなったりもしました。

サルトルって、相当凄い人なんだと、実感した舞台でした。

ネタバレBOX

宝塚のレビューでお目に掛るような、大階段だけのセット。

でも、この空間を違和感なく、作品の世界に導く動きが随所に見えて、驚きました。

具体的な革命の内容には精通していない私でも、普遍的な、革命の矛盾や、人間の思想のあやふやさが、きめ細かく描かれた芝居で、至る所で、共感できる瞬間がありました。

人間は、思想や理念とは関わりなく、信頼に足る人物には、心惹かれてしまうという、心の襞が精密に描写されていて、ジェシカが、エドレルに惹かれて行く心情も痛い程わかるし、彼の暗殺を命じられたユゴーの苦悩と葛藤も、自分のことのように、胸に刺さりました。

ユゴーが、エドレルを殺した理由を、時代の変化の中で、自ら許容できずに、殺されることを選ぶラストシーンは、大変納得できる場面でしたが、最後に、ユゴーが、階段を転げ落ちて来る部分は、蛇足だったような気もします。
映画ではないので、どうしても、役者さんが、怪我しないように、自らを庇うような動きが見え、ラストの衝撃を持続させないようで、とても残念に思いました。
うかうか三十、ちょろちょろ四十

うかうか三十、ちょろちょろ四十

こまつ座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2013/05/08 (水) ~ 2013/06/02 (日)公演終了

満足度★★★

商業興行作品としては??
端的で、要領を得た芝居は、視覚的にも面白く、飽きずに観るのに、ちょうど良い作品でした。

まるで、「日本昔話」の舞台版のような趣。

鵜山さんの手に掛ると、とにかく、舞台作品としての、一定の体栽が整うことには、いつも感心するばかりです。

でも、観終わった後にすぐ頭を過った想いは、「これ、井上さんは、こういう形で上演されることを良しとされたのだろうか?という疑問でした。

たとえば、小学校の5,6年生対象の観劇会とかで、上演するような形なら納得できるのですが、商業的な興行としては、内容も、上演時間の短さも、あまり適切な作品とは感じられない気がしてしまいました。

ネタバレBOX

まるで、立体絵本の趣の舞台セットに、すぐに心が惹きつけられました。

昔話のような体裁の話でありながら、人間の自分本位の悪意なき罪を静かに訴えるような内容の物語で、「イソップ物語」のような示唆に富むストーリーでした。

キャストは、皆さん、適役で、特に、小林さんの演技は、この舞台には、ドンピシャだったと思いました。

福田さんも、「フラガール」の頃より、ずいぶん、舞台向きの女優さんに成長されたなあと感慨深い思いがありました。

ちかも、家族は誰もいない少女時代で、娘のれい同様、先代のお殿様に同じ運命を担わされたのかもしれないと思ったりしましたが、真相は如何に?

いずれにしろ、いろいろ深読みしたくなる舞台ではありました。
恐怖が始まる

恐怖が始まる

ワンツーワークス

劇場HOPE(東京都)

2013/05/24 (金) ~ 2013/06/04 (火)公演終了

満足度★★★★

芝居中、別の思考が駆け巡る
チラシを見ただけでは、どんな恐怖が描かれているのか、予測がつかず、チラシの右の雪だるまみたいな人物の意味するところも、わかりませんでした。

冒頭、出演者達が号礼のように口にする数字の意味も、固有名詞が話されないので、徐々にわかるようになるまで、時間を要します。

そして、この芝居の描く恐怖の輪郭がはっきりした途端、今度は、思考は、舞台上のそれではなく、私がこの芝居を観ている今この時にも、作業している方達へと飛んでしまいました。

この芝居を観ている、一般人の私に一体何ができるのかと、もどかしい思いが心に充満するばかりで…。

大変、うまく構成された舞台で、役者さん達の演技も秀逸なのですが、演劇として、この作品をどう捉えたら良いのかと、ある種の戸惑いも感じました。

アフタートークは、ゲストの劇団チョコレートケーキの古川さんの紹介に終始した感があり、まるで、チョコレートケーキの宣伝のような印象でした。
会場に来ていた客は、今観た芝居の話題を中心にした話を聞きたいのではと思うので、もう少し、そういう方向でのアフタートークであってほしかったと感じます。

ネタバレBOX

つい先日も、東海村の事故があったばかりで、本当に、この国の未来には憂えることだらけ。

自国の事故の尻拭いさえできない政府が、他所の国に、これを買わせようと画策する現実。汚染水や瓦礫の処理の問題、進まない復興支援…。
解決のつかない難問が山積みで、更にいつまた余震が来るとも知らないこの国で、オリンピックを開催しようなんて無謀な計画もあり…。
そう言った現実の脅威を心に置いたまま、この芝居を観ている自分の行動の意味づけに苦労しました。

現場で作業する男達と、その家族に焦点を絞り、登場する人物も、悲劇的なキャラクターにせず、演劇的に、興味を持たせるような、普通の人物像を造型し、観客に興味を持たせつつ、芝居を進行させて行く、古城さんの構成力の巧みさには舌を巻くのですが、過去の出来事ではないテーマだけに、何もできない自分に、無性に歯がゆさを覚え、演劇として楽しむ余裕はありませんでした。

前回の公演では、悩める母を好演された山下さんが、今度は、一転、原発作業員の夫を作業の犠牲で失う妻ながら、持前の明るさで、悲観的にならない健気な女性像を、巧みに演じられ、お見事でした。

ワンツーワークスは、役者さんのバランスが良く、いつも感心させられます。
ディズニーミュージカル「リトルマーメイド」東京公演

ディズニーミュージカル「リトルマーメイド」東京公演

劇団四季

四季劇場[夏](東京都)

2013/04/07 (日) ~ 2017/04/09 (日)公演終了

満足度★★★★

結果的には、ほぼ満足
映画を観ているので、ストーリーの展開の速度が緩やかな点に、最初は戸惑いました。

「ライオンキング」や「美女と野獣」や「アイーダ」に比べると、ダイナミズムではかなり劣る気はします。

でも、相変わらず、お元気な飯野おさみさんのステージワークは魅力的だったし、ヒロイン、ヒーローが、四季の公演には珍しく、観目麗しいキャスティングだった点も、嬉しく感じました。

海の中の人魚の動きが素晴らしい。

客席の子供達も喜んでいたし、これは観られて良かったと思える公演でした。

もっと、印象に残る曲がたくさんあれば、尚良かったのですが…。

ネタバレBOX

映画のように、いきなり魔女が出て来るわけでもなく、人魚のアリエルとエリック王子の出会いまでも、なかなか時間を要して、回りくどい枝葉末節なストーリー展開の遅さに、最初は少し、退屈しました。

客席の子供達のことを考えても、もう少し、起伏に富んだストーリー展開の速度アップが必要に感じました。

大人の恋愛指南的な台詞にも、少し戸惑いを覚えた部分があります。
シェフが、魚を捌くシーンは、ともすると、ちょっとブラックな雰囲気で、子供達にどういう印象を与えるかと気になる瞬間もありました。

楽曲がそれほど印象に残らない分、かもめや蟹のダンスが愉快で、目を惹きました。

蟹のセバスチャン役の飯野さんが、縦横無尽に、舞台を飛び回り、その若々しさに、彼の初舞台から拝見してる自分の老いを忘れ、元気を頂きました。
かもめが、アリエルに歩き方を教えるダンスが、殊の外、愉快で印象深いシーンでした。

アリエル役の谷原さんは、容姿も声も美しく、可愛らしさもあって、役にピッタリ。王子役の上川さんも、歌声の伸びは弱いものの、如何にも王子の気品と美しさがあり、物語の設定を崩さない、主役お二人の容姿端麗さには、感謝したくなりました。

魔女アースラの衣装は、もう少し、紅白の小林幸子さん並に大袈裟だった方が良かったかも。

もっと、ブラッシュアップして、人魚姫と王子の心模様に焦点を当てた再演を期待したいけれど、それは無理な話ですよね?
明治座 五月花形歌舞伎

明治座 五月花形歌舞伎

松竹

明治座(東京都)

2013/05/03 (金) ~ 2013/05/27 (月)公演終了

満足度★★★★★

演目の配分が良い夜の部
自分のイージーミスのせいで、「将軍江戸を去る」は、20分遅刻し、二場の途中にようやく間に合いました。

勘九郎さんの血気盛んな鉄太郎の登場場面を見逃したのは残念でなりません。
で、そこでは、「中村屋!」の掛け声も発せられたのかもしれませんが、私が席に着いてからは、勘九郎さんが、青果の名台詞を朗々と発する間でさえ、常に、「高麗屋!」の掛け声ばかりで、これでは、知らない人は、勘九郎も高麗屋なんだと誤解するのではと思う程でした。

「藤娘」の七之助は、見た目は申し分ない美しさでしたが、まだ踊るのが精一杯と言った感じで、余裕がなく、腰をもう少し、落して踊った方が、座りが良い舞踊になりそうな気がしました。衣装の変化と共に、踊りの内容も変化して行くのがこの演目の醍醐味なので、今後に期待したいと思いました。

「鯉つかみ」は、暑くなってきたこの季節には、うってつけな楽しい演目で、あまり歌舞伎に詳しくない観客でも素直に楽しめる作品でした。
1階席の前方のお客さんは、何かと大変そうで、夜の部は、2階席にして、正解でした。

ネタバレBOX

「将軍江戸を去る」は、ちょうど、大河ドラマの今の放送内容とダブるし、普段は、退屈しそうなお客さんにも、受け入れやすい演目だったかもしれません。

何度観ても感じ入る作品ですが、今回の、染五郎さんの慶喜と、勘九郎さんの鉄太郎は、任に合った配役で、安心して拝見できました。染五郎さんの慶喜の、心の動きが客席にダイレクトに伝わるわかりやすさがありました。いつか、お二人の反対の役でも拝見したくなりました。

「鯉つかみ」は、力を入れずに、役者が演じ、それによって、客側も娯楽として楽しめる内容で、これからの歌舞伎には、こういう演目上演がもっと増えてしかるべきと感じます。

愛之助さんと鯉の格闘、大変愉快痛快でした。壱太郎さんの小桜姫も、愛らしく、恋する女の凄味もちょっと出して、好演されていました。
ラジオスターの悲劇

ラジオスターの悲劇

少年社中

吉祥寺シアター(東京都)

2013/05/08 (水) ~ 2013/05/15 (水)公演終了

満足度★★★★

役者の温度差を感じる
劇団の15周年記念第一弾公演だそうで、劇団の役者さん達の熱は、思う存分感じたのですが、反面、客演の役者さんとの温度差が出てしまった気もします。

一部の役者さんに、ミスキャストの感もありました。

二重構造のドラマ進行が、ラジオドラマの方は、結構面白いのに、本題の方の、ストーリーには、やや工夫が足りないようにも感じ、その点がとても残念でした。

主役のラジオスターを、日替わりゲストが演じるというアイデアはとても成功していたように感じ、楽日の三上さんの大熱演を観た限りでは、好感触で、楽しむことができました。

ただ、せっかく、ゲストが真面目に演じているだけに、コントのいじり的なアドリブ場面は、不必要な気がしたし、内容的にも、不釣り合いな印象を受けてしまいました。

ダンス場面は、高揚感があって、社中らしくて、好きでした。

ライター役の井俣さんに一際の存在感があり、嬉しく拝見させて頂きました。他に、堀池さん、岩田さん、山川さん、甘浦さんが、好演されていたように思いました。

ネタバレBOX

この公演を後援しているラジオ局で、昔、月~金の生放送のDJをしていたので、何だか、無性に、あのブースの風景が懐かしくてなりませんでした。

放送で喋る時は、カフの上げ下げをするのですが、ゲストだから仕方ないけれど、時々なおざりになっていたのが気になりました。ディレクターが、「ラジオの視聴者」と言ったのも、気になりました。ラジオなら、「聴取者」が正しい筈。

三上さんのDJは、声も素晴らしく、ラジオスターとしてのリアルさがあって、大変好演されていました。読むだけでなく、あんな重要な役を演じるなんて、宮沢りえさんに匹敵するぐらいの凄さだと感嘆。

「本音」と「建前」の双子の息の合い方に、拍手。料理長の「絶望のフルコース料理」の食材説明が、ナイスセンスで、受けました。

青年役の中村さんは、イケ面過ぎて、恰好が良く、生きる理由がみつからず、気弱になる青年という役どころを演じるには、やや無理が見えてしまった気がします。とても重要な役だけに、演じ手として熟練の役者さんにキャスティングした方が、この作品をもっと奥深くしたのではと思うのですが…。

森での青年の成長ぶりが楽しく見ごたえがある分、本題の、ラジオスターとライターの人間関係のエピソードに作者の手腕が感じられなかった点が、やや残念でした。

三大ミュージカルプリンスコンサート StarS

三大ミュージカルプリンスコンサート StarS

アトリエ・ダンカン

東急シアターオーブ(東京都)

2013/05/08 (水) ~ 2013/05/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

和やかで楽しいコンサートでした
井上さん、浦井さん、山崎さんと、どなたも初舞台から拝見しているミュージカル俳優さんなので、、半ば、身内意識的な思いも加わり、期待半分、心配半分で、観に行きました。

これを機に、3人で「Stars]というミニアルバムも出され、そのトリオとしてのコンサートなので、3人で一緒という形式の選曲、構成が多く、本音を言えば、もう少し、各自のソロを楽しみたかったという欲もありますが、結果的に、チームワークも良く、トークも愉快で、和やかな気持ちになれる素敵なコンサートでした。

歌手としての実力は、やはり、ダントツ井上さんですが、浦井さんの、人柄の出たフリートークが、とにかく愉快で、何度も笑ってしまいました。

最近の楽曲は、つまらないものだらけなので、是非、ヒットチャートを賑わせて、ミュージカルを観ない方にも、三人の存在を知らしめてほしいものだと思いました。

ただ、チラシやポスターの3人の写真の髪型のセンスの悪さには閉口しました。
衣裳のセンスも今一つ。3人ともせっかく素敵なのに、実物より悪く見えるこのフライヤーは、ファン層を開拓するには、逆効果だと思うのですが…。

ネタバレBOX

普通、コンサート形式のステージは、稽古も付け焼刃的な興行の方が多いように感じますが、3人でのユニット結成ということもあってか、舞台構成に、きちんと3人の配置や選曲に配慮工夫した様子が見て取れ、ダンスの振りも、息が合い、嬉しくなるほど気持の良いステージワークでした。

8日に発売されたミニアルバムのオリジナル曲も、それ程変な曲でもつまらない曲でもなかった点も、ほっとしました。

浦井さんのボケと、井上さんの突っ込みみたいな、和気藹々のトークに、理路整然とした育三郎さんの解説が入り、3人3様の絶妙なバランスの良さに、何度も顔が綻びました。

3人で歌うと、やはり、井上さんの歌唱力が群を抜いてるなと感じますが、このユニットは、大成功ではと思いました。

井上さんの「最後のダンス」、3人で変則的に歌う「闇が広がる」の構成の妙、3人のハーモニーが美しい「影を逃れて」、新訳の「明日に架ける橋」、「ディス・イズ・ザ・モーメント」などが、特に印象に残りました。

3人のスケジュールを調整するのはなかなか大変でしょうけれど、日本にもこんな素晴らしい実力のある、歌い手が存在するのだということを、世の中の人に認知して頂くためにも、是非、継続的に、このユニット活動を続けて頂けたらと、ファンとして、期待したいと思います。

明治座 五月花形歌舞伎

明治座 五月花形歌舞伎

松竹

明治座(東京都)

2013/05/03 (金) ~ 2013/05/27 (月)公演終了

満足度★★★★

頼もしい勘九郎実盛
どちらかと言えば、切られ与三の方がお目当てでしたが、作品の完成度は、実盛の方が勝っていました。

とにかく、勘九郎さんの実盛が、理想形に近く、あっぱれです。手堅い配役で、台詞も明瞭。近来の上演の中でも、わかりやすさの点では、群を抜いていました。何度も観ている演目ですが、仁左衛門さんの実盛以外で、泣かされるとは思いませんでした。

小万との経緯を物語る場面は、的確な表現で、観客の目を逸らせずに語る説得力があり、大変頼もしく感じました。

瀬尾役の亀蔵さんは、口跡も良く、今まで拝見したどの瀬尾役より、最期の場面に共感してしまいました。お若い頃から、父が注目していた役者さんでしたので、帰宅して、早速、仏壇の父にも報告したくらいです。

「玄冶店」の場が有名な切られ与三は、七之助さんのお富が美しく仇っぽいのはいいのですが、どうも、実のない、性悪女に見えてしまうのが惜しい。染五郎さんの与三郎は、見染の場の若旦那ぶりはいいのですが、やさぐれた後の強請り場での役作りは、まだ工夫が必要だなと感じました。蝙蝠安の亀鶴さんの軽やかな演技には、楽しませて頂きました。

ところで、この日、明治座のカフェで、河竹登志夫さんはお元気かしらとふと思い出し、帰宅後、自宅の書庫で、登志夫先生の著書を数冊立ち読みしていました。まさか、当日亡くなられていたとは!
虫の知らせだったのでしょうか?
これで、父のご友人は皆さん、父と同じ世界にいらしてしまわれました。
合掌。

ネタバレBOX

団体客も多かったものの、歌舞伎を楽しもうと集まった客層で埋まった客席は、開幕前から、大変気持の良い雰囲気でした。

ただ、お隣のお二方が、上演中に、役者や芝居の説明をしたり、幕間に、次の演目の内容を全部話してしまわれるのには閉口しました。

お富さんと、与三郎がどうなるか、誰は誰と実はこういう関係だとか、何度も観ている観客は当然知ってはいても、観る前に全てネタバレしてしまうのは、たとえ歌舞伎と言えども、ご法度でしょうと思うのですが…。

どちらの演目も、現代的に、ずいぶん、わかりやすい工夫や、観て楽しめる要素が増え、退屈しないことが、画期的な気がしました。
ただ、その分、歌舞伎狂言としての美が若干薄味になったきらいはありますが。

とにもかくにも、歌舞伎の未来にちょっと安心して、帰路につくことができて、何よりの喜びでした。

エレノア

エレノア

サスペンデッズ

駅前劇場(東京都)

2013/04/26 (金) ~ 2013/05/03 (金)公演終了

満足度★★★★★

早船色は健在
他の劇団のために書き下ろした作品だということで、何か制約を感じるかと危惧しましたが、全く変わらず、早船さんの、人間を優しく見つめる視点が利いている素敵な作品でした。

ただ、チラシの文章から受ける印象とは大分違う作品でした。チラシの雰囲気では、イキウメ的かと思いましたが、いつもながらの、どこにでもいそうな人物の、市井の出来事の断面を切り取ったような、スケッチ風の佳品。

登場人物全員の描き方が実に細やかで、これで、1時間半で、完結できる、早船さんの作家としての力量に、またしても、感嘆しました。

他への書き下ろしのせいか、伊藤さんや佐野さんの役柄が、いつもと違って新鮮でした。

客演の野々村さんの、確固たる存在感。一色さんの、まさかの声の説得力。
普通の主婦に見えたともさとさんの女の色気。明るく見えて、自らの性癖的性格に悩む和泉役の山下さんの健気さ。佐藤さんの、いつもながらの、安定感。伊藤さんも、謎めいた男の憂愁美が素敵ですが、ちょっと台詞が聞き取り辛かったのは残念でした。

役者さんは、皆さん、魅力的でしたが、中でも、いつもの役柄のイメージと違う、普通の人の好い男を好演された佐野さんの実在感には、感服しました。

個々の役者さんの体を通して、実在するかのような人物が生き生きと躍動する舞台に、何故か、嬉し涙がそっとこぼれました。

どんな有名な劇作家でも、これだけ、丁寧に、登場人物一人一人に光を当てて丁寧に命を吹き込める作家は、早船さんを置いて他に見当たらないという気さえします。何しろ、話にしか出てこない人物や、死者までが、生き生きと躍動してるんだもの。

ネタバレBOX

これと言ってドラマチックな出来事が展開されるわけではないのに、どうして、こんなに魅力的な舞台になるんだろう!

きっと、登場人物への作者の命の吹き込み方が的を射ているからだと思うのです。

早船さんは、どんな端役に至るまで、彼らの人生を丁寧に脳裏に構築して、誰ひとり、いい加減に描くということをしないんでしょう。

こういう劇作家の真髄を、有名劇作家にも是非見習ってほしいものだと、切に思いました。

私は、そうでもないけれど、間違った方の道を選択してしまった人間が周囲にたくさんいるだけに、夕子の台詞には、一々頷いてしまいました。
自分の思うように、周囲の人間が行動しないと、苛立ってしまう、和泉の性格的な癖にも、自分にもそういう面が多々あるだけに、肩を叩き合いたくなるくらい、共感していました。

不倫相手への思いを断ち切るために、好きでもない男と結婚した美幸は、現在の夫を好きになろうと努め、出戻りの義姉にも、懸命に気を遣って、普通の良い嫁になろうと努力します。でも、女には、皆魔性が備わっていて、そのことは美幸が一番自覚しています。不倫相手を駆け落ちしても、きっと、また彼女の心は、別の男を求めるのでしょう。

そういう、舞台上の1時間半では描かれない、登場人物の、生きざまが全部推量できるだけの内実のある作品は、本当に、類稀で、心から、早船さんには敬意を払うばかりです。
横濱短篇ホテル

横濱短篇ホテル

劇団青年座

紀伊國屋ホール(東京都)

2013/04/19 (金) ~ 2013/04/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

小粋で、誰もが楽しめる芝居
どうしようかと迷った末、予約した舞台でしたが、本当に観に行って良かったと嬉しくなる作品でした。

まるで、ニールサイモンの芝居のように、小粋で、アフター5に、中高年カップルが、映画感覚で、気軽に観るのに相応しい感じの作品でした。

マキノさんは、引き出しが多いから、この手の芝居は、お上手だなあと、改めて感心しました。きっと、青年座との相性も抜群だと思います。

あるホテルの1室で起こる短編芝居は、先日も、ある劇場で拝見したことがありますが、その作品に比べて、練り上げられた構成の妙が、気持良い舞台作品でした。

那須さんが退団されてしまった今、椿さんは、私にとって、青年座一、魅力的な女優さんです。何か、あの男前なところが好き!
出番の少なかった、加門さんも、ダンディで素敵!
横堀さんは、軽佻浮薄ならぬ、軽妙洒脱な演技が、相変わらず、魅力的!
香椎さんの、見せる演技には、新鮮な驚きで、先が楽しみな女優さん。
小暮さんから、津田さんへの流れは、キャスティングの妙を感じ、大成功だと思います。
大家さんは、役によって、荷が重いのではと感じさせられることもある役者さんですが、今回は敵役で、はまっていました。
映画監督役の、小豆畑さんには、何故か、養成所時代の8割世界の鈴木雄太さんの演技を思い出させられました。
若いカップルを演じた、須田さんと田上さんも、コンビぶりが、しっくりして、好配役。

とにかく、全編を通じて、マキノさんの作劇センスと、宮田さんの上品な演出のマッチングが絶妙な作品。主要人物二人の役を、お一人の女優さんで通さなかったのも、大成功の要因ではと感じました。

あまり、難しいことを考えたり、現実に即して、嫌な気分になることなく、こうして、気持良く笑える芝居を観られるのは、何よりの幸せです。

特に、「人間観察」の、加門さんと、加茂さんのシーン、すごく好きでした。

青年座のフレンド会員でいて良かったと、心から思いました。(青年座は、全員の役者さんに実力が備わっているので、演技面でも、本当に、安心して観ていられる貴重な劇団だと、再認識しました。)

ネタバレBOX

たぶん、私が、幼少時に、何度か訪れた思い出のホテルが、舞台だと思います。
ホテルのセットがそれらしく、始まりから、好感触の幕あきでした。

女優志望の、ハルコ役の香椎さんは、最初、たどたどしさが残る演技で、おやっと思わせておいて、後半、役柄上、実にリアルな豹変ぶりで、客の目をも釘づけにするお見事な演技力。彼女のハルコの演技に説得力がないと、それ以後の6篇の芝居が全て成り立たなくなる、最重要な役どころを、真摯に演じきられたことに、拍手を惜しみません。

次の場面の「人間観察」では、ハルコの友人のフミヨが、ハルコの名前だけを口にするだけなので、これは、主人公がリレーして行く類の作品かと思いましたが、あにはからんや。
主軸の登場人物である、ハルコと、フミヨの友人関係と、その周囲の人びとが、長年の時の流れの中で、織りなす素敵な小品芝居の結集でした。

近頃の芝居に、珍しく、誰も悪意の人間が登場しないのも、観ていて、心地よい作品です。

最後の、ハルコに対するフミヨの複雑な思いが語られる「ネックレス」には、ある、演劇部が前身の劇団Jの、あのお二人や、今は、劇作家と放送作家の道に分かれた、N社のあのお二人の、才気溢れる、女性演劇人の相互関係を彷彿とさせられたりして、クスッと笑ってしまいました。何となく、劇作で、モデルにされたのではと、感じました。

個人的には、一度離婚したフミヨと洋介が、ひょんなことから復縁に至る「離婚記念日」が、殊の外、おしゃれで、ニールサイモン風な芝居の味わいがあり、素敵でした。だけど、洋介は、ペンション経営はどうしたのか、ちょっと気がかり。そこも、台詞で、ちょろっと教えてほしかった。(笑)

千秋楽でなければ、もう一度、誰かを誘って、観に行きたくなる芝居でした。
おのれナポレオン

おのれナポレオン

東京芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2013/04/06 (土) ~ 2013/05/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

エンタメ作品の観点なら、上出来
三谷作品は、結構好きで、かなり拝見しているせいか、三谷さんのドラマの構築法が、大分予測がつくようになってしまっていて、謎解きという観点で観ると、最初から、筋書きを予想できてしまいましたが、芝居の出来栄えとしては、かなり満足度の高い舞台で、安心しました。

何しろ、演劇人として、プロ中のプロだけが結集している舞台ですから、観ていて、安心感があります。

劇中、ナポレオンの台詞にある、「お客を緊張させてはいけない」という演技の基本姿勢を、このキャスト陣は皆さん、実践して下さっているので、久々、客席でゆったりした気持ちで劇を楽しむ余裕がありました。

近年の三谷作品の中では、私には出色の舞台だったと感じました。特に、演者としての野田さんの起用は大成功だったと感じます。

チェスの知識が皆無なので、チェスをもっと知っていたら、更に楽しめたのではと、残念。

個人的に、素人は、過去の有名人の死因には、疑問を抱いて、調べたりしない方が、無難だという、レクチャーを授かったような気もしています。

ネタバレBOX



ナポレオンの死因に疑念を抱いた人間が、彼のセントヘレナでの最期の真相を探るべく、関係者にインタビューに回るという構成で、劇が構築されているので、最初は、各人の一人語りの長台詞が続き、このまま、動きの少ない芝居が続行するのかと思いきや、内野さん扮するハドソンの告白シーンから、一転、動きのある回想場面に転換し、鮮やかな変化がありました。

最近の三谷作品は、有名どころがたくさん出演される割には、まとまりのない、軸が見えない舞台が多かったので、今回もそうかなと、あまり期待せずに行きましたので、逆に、これだけ、まとまりのある作品を見せて頂けたことに、感謝してしまいました。

野田さんがかつて作演された「赤鬼」にも似た手法の、いわば謎解き劇の体栽ですが、残念ながら、最初に天海さんのアルウ゛ィーヌが、聞き手に、やけにワインを薦めるところから、既に結末が予想できてしまうし、一番目立たない存在の、浅利さんが実は、重要な役どころであることも容易に想像がつきます。

三谷さんの古畑ファンでしたから、あー、これは、藤原さんゲスト回の手法だとか、津川さんの回にそっくりとか、余計な邪念が、謎解きの楽しさを奪った面も多々ありました。

でも、とにかく、キャスト陣が皆好演され、これだけの面子が丁々発止で、台詞を発している舞台には、なかなかお目にかかれないだけに、生粋の演劇ファンには、たまらない魅力ある舞台だったことは間違いありません。

最近の安部総理の台詞もさりげなく、盛り込まれていたりして、機知に富んだ小粋な作品だったと思います。

野田さんに遠慮してか、いつものように、三谷さんの場内アナウンスや、三谷さんの存在の表出がなかった点も、新鮮に感じました。

それにしても、砒素の効力に関して、ずいぶん知識が増えました。ずっと飲まされていると、便秘になるなんて、初めて知りました。怖い、怖い!!
パパのデモクラシー

パパのデモクラシー

劇団東京ヴォードヴィルショー

座・高円寺1(東京都)

2013/04/04 (木) ~ 2013/04/14 (日)公演終了

満足度★★

期待が高過ぎたのかも
この作品、永井さん作、鈴木さん演出ということで、大好きなお二人の女性演劇人のタッグに、胸躍らせて観に行ったのですが、少々と言うか、正直かなり期待外れでした。

たぶん、初演はもう20年近く昔だったんでしょう。

その当時なら、斬新な切り口の芝居だったのかもしれません。

ですが、今の日本の、憂える現状満載の時期に観るには、少々、まどろっこしさを感じてしまう内容でした。

役者さんも、役のヒントが少なくて、役作りが難しかったのではと感じます。

ただ緑川を演じたあめくみちこさんは、いつにも増して可愛くて、素敵でした。

ネタバレBOX

とにかく、舞台運びがのんべんだらりとし過ぎて、高揚感を感じません。

客席は、開演前に流れた過去の流行歌を全て歌える私でさえ、若い方ではと思える、高齢者だらけ。この観客層なら、東宝争議に加わったとされる映画俳優の名前を列挙されても、懐かしさを感じ、彼らの実態を知っている世代だから、すんなり、芝居の世界に入って行けるでしょうが、若い観客には、耳馴染みないのではと余計な心配をしてしまったりしました。

全般に、こんな調子で、戦後の事情に疎い観客には、ピンと来ないことが多すぎるように感じました。その時代状況がわからないと、ただただ気持ちが置いて行かれるばかりです。
この芝居を観て、今更、井上ひさしさんの偉大さがわかりました。

人物個々の描き方には、あまり難はないのですが、舞台に描かれていない、それぞれの関係性が、どうもあやふやで、作者が何を描きたかったのかが不明でした。

「こんにちは母さん」のような秀作を書いた永井さんも、昔は若かったのだなと感じました。

特に、佐藤B作さんが演じた千代吉という人物が、どういう人間なのか、全く推測できませんでした。知恵遅れなのか、そうでなく、ただ性格的に幼いだけなのか?養子というけれど、どういう経緯で、あの家にもらわれたのか?父親との関係はそれまでどうだっったのか?
そういう細部の説明が全くないし、かといって推理するだけのヒントもないので、最後の場面の千代吉の父親への台詞が、全く、心の琴線に触れず終いでした。
鉄火のいろは 【観たい!コメントorツイッター呟き で特製バッチプレゼント☆】

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蜂寅企画

ウエストエンドスタジオ(東京都)

2013/03/27 (水) ~ 2013/03/31 (日)公演終了

満足度★★★

いつもの中尾脚本の切れがないのが残念
蜂寅は御縁あって、旗揚げからずっと見守ってきた劇団。

ですから、思い入れも相当です。

それだけに、今回の作品は、期待が高かった分、自分にとっては、非常に口惜しくなる舞台でした。

まず、開演から相当経っても、舞台が温まらない苛立ち。ストーリー上、火消し十番組を組の面々は、必要なかったような気もしました。

蜂寅の殺陣にはいつもワクワクさせられるのですが、今回は、殊の外、ストーリー上、必須な殺陣でないシーンも多く、蛇足にさえ感じる部分もありました。

舞台終盤になって、ようやく、いつもの蜂寅の高揚感が漲った感じを受けました。

中尾さんは、時代劇作家として、類稀な実力をお持ちと、日ごろ期待度が高いだけに、今回の舞台は、やや拍子抜けでした。

更に、験算を積んで、出演者にも、華がある俳優さんが加わって下さったら、もっと魅力ある劇団になるに違いないと、次回公演に期待したいと思いました。 

出演者の髪型にも、更に工夫をお願いしたいと思います。

ネタバレBOX

もしかしたら、中尾さんに、どなたかがいらぬアドバイスをなさったのではないかとさえ思えました。

いつもの中尾脚本の切れがなくて、以前拝見したゲキバカの時代劇のような雰囲気が随所にありました。

死んだおふじの遺志に誘われて、火消しの物語を紡ぐ絵師という設定はいいとしても、編集者まで登場させる入れ子構造は、あまり効果的には感じられませんでした。

どなたかも書いていらっしゃいますが、この時期、紅葉が舞うというのも、どうも時期的に違和感を感じます。

そして、これは劇団のせいではないかもしれませんが、ずっと台詞かと思う程の声で何かをしゃべっていたおじさん客、途中で仕事に遅れるからと退席するにも関わらず、中央後方の席に陣取って、芝居の最中に、中尾さんに、「私、仕事で抜けますので、出たいんですが」とか言って、舞台を遮って帰る不届き者の女性客などのせいで、せっかくの舞台進行にもかなり、水を注されて、お気の毒でした。

一番乗りで、劇場に行ったら、劇場前には、蜂寅の看板もポスターもなく、自転車がたくさん停められて、歩くスペースもなく、私が、この劇場に行くのが初めてなら、絶対、みつけられない状態でした。スギ薬局の手前と覚えていたので、寸でのところで引き返し、中で、受付準備をされてる方に、「ここは、蜂寅の公演ですよね?」と確かめて、ようやく開場を待つことができましたが。
音楽劇 スマイル・オブ・チャップリン SMILE of CHAPLIN

音楽劇 スマイル・オブ・チャップリン SMILE of CHAPLIN

チャップリン・ザ・ワールド製作委員会

赤坂ACTシアター(東京都)

2013/03/27 (水) ~ 2013/03/28 (木)公演終了

満足度★★★

短編舞台と言うより、寸劇的
作りは悪くないし、出演者も、適材適所で、好感の持てる舞台でしたが、音楽劇の方が、どうも付け焼刃的な雰囲気で、特に、2幕の「マイ・マン・フライディ」は、チャップリン主体ではなく、彼の日本人秘書だった、高野虎市が主役の舞台で、ちょっとここで上演するには違和感を感じる作品でした。

ミニコンサートの司会を担当した、若いお二人が、意外にも好印象で、彼らの歌が一番受けていたかも。

一幕ごとに、10分の休憩が2度入りましたが、トイレタイムには不十分だし、ここは、短編舞台2作は続けて上演し、20分の休憩後、趣を変えて、コンサートにした方が良かったのではと感じました。

ネタバレBOX

高野さんの遺品の展示会があったそうで、そこで、グッズを買われた方には、チャップリンのお孫さんがサインされると説明がありました。でも、チャップリンのお孫さんのサインをどれだけの方がありがたがるのか、ちょっと疑問。出演者のサイン入りの方が良さそうに思いました。

いつも思うのですが、彩乃かなみさんの透き通った歌声には心が癒されますね。そうそう、彩乃さんが演じた夏川静江さん、父と大変親交があった女優さんだったので、懐かしく思い出しました。先日、夏川さんからの父への手紙を読み返したりしたもので…。来日したチャップリンと会われていたとは初耳でした。

チャップリンの秘書だった高野さん、初めて存じ上げましたが、杉原ちうねさんみたいに、この後、有名人になられそうですね。数年後には、日本人で、高野さんを知らない人はいないって事態になりそうな予感がしました。
三月花形歌舞伎

三月花形歌舞伎

松竹

新橋演舞場(東京都)

2013/03/02 (土) ~ 2013/03/26 (火)公演終了

満足度★★

美しい二人椀久
歌舞伎をあまり踊り主体で観に行くことは稀ですが、夜の部のお目当ては、染五郎さんと菊之助さんが二人で踊る「二人椀久」で、これを観たさに出かけました。

お二人とも、お母様譲りの端正な顔立ちでいらっっしゃるので、薄暗い幻想的な舞台に、幽玄美を放たれた舞踊で、心酔しました。

「一條大蔵譚」の方は、染五郎さん初役ですし、今までのどの大蔵卿より、阿呆の作りに、まだ工夫が必要な感じを受けました。
場転の時間の長さも、今までで一番。スタッフの仕事ぶりに、素人感が見えました。

それにしても、3階席、ヨーロッパからのお客様が多く、私の前に座られた男性が、完全に前のめりでご覧になっていて、舞台が全く見えず、どうしたものかと思案していたら、遅刻のお客様を案内して客席誘導の女性が通られたので、帰り道を押しとどめ、身振りで、懇願したら、即、外国語の絵入りの前のめリ禁止ボードを提示して、忠告して下さったので、助かりました。
機転の利く案内嬢に感謝!

終演時刻が、7時台で、遠方に帰られる、年配のお客様にはいいかもしれませんが、それなら、チケット代は、もう少し、安くしてもいいのではと感じます。
いつもより、演目が少ないのに、代金が一緒というのには、少し、不満が残りました。

ネタバレBOX

とにもかくにも、染五郎さんが、何の後遺症もない様子で、舞台に立たれていたことに安堵しました。

「一條大蔵譚」は、勘三郎さん、吉右衛門さん、仁左衛門さん他、たくさんの大蔵卿をこれまで拝見していますが、染五郎さん、初役ということもあり、まだ阿呆を演じる場面に硬さが見えました。ここがスムーズな役作りでないため、本心を表す場面との相違が客席を沸かすまでに至らず、残念でした。
お京の壱太郎、鳴瀬の吉弥が手堅い演技。松録の鬼次郎は、他の役作りでお忙しかったとは思うものの、もう少し、気持ちも入れた演技をして頂きたかったと思います。

「二人椀久」は、母が、私の息子達に踊らせたいと常々言っていた演目なので、余計、お二人の幽玄な舞が心に沁みました。

大向こうからの掛け声が、ほとんど「高麗屋!」ばかりで、7回に一度ぐらい「音羽屋!」と聞こえました。まあ、主役は染五郎さんですけど、菊之助さんが主で踊る時まで、「高麗屋!」と掛るのは、違和感がありました。
八月のラブソング

八月のラブソング

加藤健一事務所

本多劇場(東京都)

2013/03/08 (金) ~ 2013/03/24 (日)公演終了

満足度★★★★★

戸田さんの魅力が、余すところなく発揮される舞台
何もかもが、譬えようもないくらい素敵な素敵な珠玉舞台。

お二人の共演は、「ランフォーユアワイフ」以来の観劇ですが、あの爆笑コメディとは、全く雰囲気の異なる、大人のファンタジーといった趣の、極上の二人芝居でした。

鵜山さんの演出だけあって、舞台装置も、照明も、舞台内容と見事にマッチングして、大人の絵本を見ているような夢の世界のようなラブストーリーでした。

戸田さんの魅力が、最大限生かされている芝居で、同性の私でさえ、うっとりしてしまう素敵さに満ち溢れていました。

私も、死ぬまでに、もう一度、こんな風に心を通わせられる異性に巡り合いたいと痛切に思いました。

ネタバレBOX

ある意味、「セイムタイムネクストイヤー」にも似た、若くない男女の、心の交流を美しく描いた大人のメルヘンのような芝居でした。

二人が出会った8月のたった一月のエピソードが、適度なバランスで、構築された脚本も秀逸なら、それを演じる、加藤さんと戸田さんの、役者としての技量、魅力。簡素で小粋なセットと、照明の美しさ。鵜山演出が冴えわたる舞台は、戸田さんの女優としての魅力を最大限生かす役どころで、歌やダンスのシーンが、より素敵なストーリーの調味料として、大事な要素を加味しています。サーカスでの舞台の様子を戸田さんが再現するシーンの美しさと言ったら、私の60年近い観劇歴の中でも、ベスト10に入る名場面。

戸田さんと加藤さんが、チャールストンなどを楽しげに踊る場面は、何故か無性にこみ上げる感情があり、涙が流れました。

男性の妻と、女性の一人息子の死を語られる場面の、説明過多にならない、程の良さは、秀逸で、だから余計に、涙を誘われます。

戸田さん演じる女性が、同業の夫の愛人に芸を仕込む気持ちを回想して吐露するシーンは、以前、戸田さんが一人芝居で演じた都蝶々さんともダブる部分があり、こういう複雑な女性心理を演じられる、戸田さんの演技力に感服と畏敬の念を感じました。

ずっとずっといつまでも、眺めていたい舞台でした。
連続おともだち事件

連続おともだち事件

クロムモリブデン

赤坂RED/THEATER(東京都)

2013/03/06 (水) ~ 2013/03/20 (水)公演終了

満足度★★★★

国芳の再来かと思う青木さんの才
クロムは、「空耳タワー」から、連続7作目の観劇になると思うのですが、いつも感じるのは、現代社会の闇や裏事情を、ポップにコミカルに、デフォルメして、活写する、青木さんの劇作家・演出家としての、ずば抜けた技量の確かさです。

まるで、国芳の浮世絵が動いているような感覚。

これを、作者で演出家の思い描いた通り、体現できる役者さんの技量も、負けず劣らず。

これだけの劇団は他にないんじゃないかなと、観る度思います。

ただ、今回の作品は、内容的には、少し不満が残りました。

もっともっと、クロムらしい突き抜けた終わり方にしてほしかったような…。

ネタバレBOX

お一人様が好きなアリヒロの所に、突然押しかけレンタルフレンドとしてやって来るマコト。一方的に、レンタルフレンドの効用を捲くし立てる冒頭から、すっかりクロムの魔法に掛り、心地よい感覚になりますが、ここでちょっと残念だったのは、マコトが持参した、お試しキャンペーンのカタログ。表紙に、2011~2012と印字されていました。舞台設定が、2013年であることは、後の台詞でも明確なので、ここは、2013までにしてほしかった。

レンタルお友達ショップを壊滅させようと目論む、メンタルお友達ショップ、世田谷の仲良しハウスのシラヌイ役の幸田さんが、今回もダントツ面白い!!
彼女の台詞の間の確かさには、いつも大笑いさせられます。

ただ、クロムは、デフォルメしたオーバーアクションや、劇画的な表情など、計算され尽くした独特の演技が魅力なのに、今回、客演俳優の素が出てしまうグダグダシーンが一瞬でもあったのは、クロム色を薄め、やや拍子抜けしました。

レンタル組とメンタル組の攻防戦紛いの終盤も、それで終われば良かったのではと思うのに、ナズナの父親である元校長の自殺の理由等、クロムらしからぬ、取ってつけ感のあるオチは、あまりこの劇団には、馴染まないと感じましたし、テルマ(さとうひろみ)とウツキが幼馴染だった偶然は良いとしても、シラヌイと、ウナギモトまでが旧友だったとする必要性も感じず、少し、設定に鼻白む部分もありました。

せっかく、日本の現実をここまで、ある意味、写実化して、舞台に乗せているのだから、変に、情緒的にしない方が、説得力があって、スッキリとした後味が残ったように思いました。
ウェディング・シンガー

ウェディング・シンガー

東宝

シアタークリエ(東京都)

2013/03/01 (金) ~ 2013/03/20 (水)公演終了

満足度★★★

トリオの相性が良く、それなりに楽しい
今まで、初演も再演も興味がなく、拝見したことはないのですが、今回は、ウエディングバンドのトリオが、新納さんと吉野さんなので、初めて観に行きました。

内容は、予想以下でも以上でもなく、時間があって、出演者に興味がある方以外に、わざわざお勧めしたい程の作品ではないものの、期待通り、3人の相性が抜群で、楽しく拝見することができました。

リンダ役の徳垣さんのインパクトが凄過ぎて、ビックリ。

ロージー役の初風さんは、泉ピン子さんそっくりでした。

ホリー役の彩吹さんは、いつも私が拝見する時は、色気がある役をなさることが多く、今回も、それがちょっと腑に落ちませんでした。

ネタバレBOX

時代設定が、まだアメリカの景気が絶好調の頃なので、今観ると、何だか逆説的な印象を感じてしまって、複雑な気持ちになりました。

金持ちのグレンが、いつか身を滅ぼすことがわかるだけに。

飯島早苗さんの訳詞が、何だかとっても変と言うか、やけにダイレクトな歌詞なのは、意図的なのかしら?だとしたら、それはそれで、結構面白く拝見はできました。

初演再演観ていないのに、言うのもおかしいけれど、ジュリアは、今回の高橋さんが一番良かったのではと感じます。

山田さんの演出ミュージカルは、深みはないけれど、とりあえず、ハッピーな気分になれるところがいいですね。

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