明治座 五月花形歌舞伎 公演情報 松竹「明治座 五月花形歌舞伎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    頼もしい勘九郎実盛
    どちらかと言えば、切られ与三の方がお目当てでしたが、作品の完成度は、実盛の方が勝っていました。

    とにかく、勘九郎さんの実盛が、理想形に近く、あっぱれです。手堅い配役で、台詞も明瞭。近来の上演の中でも、わかりやすさの点では、群を抜いていました。何度も観ている演目ですが、仁左衛門さんの実盛以外で、泣かされるとは思いませんでした。

    小万との経緯を物語る場面は、的確な表現で、観客の目を逸らせずに語る説得力があり、大変頼もしく感じました。

    瀬尾役の亀蔵さんは、口跡も良く、今まで拝見したどの瀬尾役より、最期の場面に共感してしまいました。お若い頃から、父が注目していた役者さんでしたので、帰宅して、早速、仏壇の父にも報告したくらいです。

    「玄冶店」の場が有名な切られ与三は、七之助さんのお富が美しく仇っぽいのはいいのですが、どうも、実のない、性悪女に見えてしまうのが惜しい。染五郎さんの与三郎は、見染の場の若旦那ぶりはいいのですが、やさぐれた後の強請り場での役作りは、まだ工夫が必要だなと感じました。蝙蝠安の亀鶴さんの軽やかな演技には、楽しませて頂きました。

    ところで、この日、明治座のカフェで、河竹登志夫さんはお元気かしらとふと思い出し、帰宅後、自宅の書庫で、登志夫先生の著書を数冊立ち読みしていました。まさか、当日亡くなられていたとは!
    虫の知らせだったのでしょうか?
    これで、父のご友人は皆さん、父と同じ世界にいらしてしまわれました。
    合掌。

    ネタバレBOX

    団体客も多かったものの、歌舞伎を楽しもうと集まった客層で埋まった客席は、開幕前から、大変気持の良い雰囲気でした。

    ただ、お隣のお二方が、上演中に、役者や芝居の説明をしたり、幕間に、次の演目の内容を全部話してしまわれるのには閉口しました。

    お富さんと、与三郎がどうなるか、誰は誰と実はこういう関係だとか、何度も観ている観客は当然知ってはいても、観る前に全てネタバレしてしまうのは、たとえ歌舞伎と言えども、ご法度でしょうと思うのですが…。

    どちらの演目も、現代的に、ずいぶん、わかりやすい工夫や、観て楽しめる要素が増え、退屈しないことが、画期的な気がしました。
    ただ、その分、歌舞伎狂言としての美が若干薄味になったきらいはありますが。

    とにもかくにも、歌舞伎の未来にちょっと安心して、帰路につくことができて、何よりの喜びでした。

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    2013/05/06 23:24

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