獣の柱 まとめ*図書館的人生(下) 公演情報 イキウメ「獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    前川さんの変容を感じる
    震災以前、イキウメの芝居は、大変センセイショナルでありながら、現実社会ではあり得ないようなSF的な世界を、あり得そうな世界に変換して見せる技術がずば抜けていました。

    あり得ないような世界に生きる男女の恋愛模様にカタルシスを感じ、息の詰まるような感動を覚えたものでした。

    でも、あり得ない程の悲劇的現実の非情さの前で、前川さんは、もしかしたら、戸惑いを感じてはいないでしょうか?

    原発事故が、劇作家前川氏に、足枷を食めてしまったような印象を、震災後の公演を観る度、感じてしまいます。

    演劇的カタルシスが薄まって、ある種の自信が揺らいでいるような、遠慮がちな劇世界が、何となく残念に思える作品でした。

    ネタバレBOX

    以前拝見した芝居の内容を膨らませたようなストーリー展開でしたが、以前の作品が、とても刺激的だったのに比べ、今回の作品は、作者の自由闊達な筆さばきが弱まった印象です。

    それを見ると、恍惚として、笑ってしまう、麻薬のような光の柱や隕石のせいで、人間がどんどん命を失っていく現実。

    2008年から12年までの、天文学クラブの二階堂と山田、二階堂の妹の3人を中心とした物語と、2096年に生きる、山田の曾孫を中心とした、二つの時代のストーリーが、リンクしつつ、進行しますが、この登場人物達の見分けも、いつもの芝居程、明確ではなく、時々、どちらの時代の場面かとしばらく迷うところも多々ありました。

    日本各地が、光の柱に支配され、人口の少ない地方に、難民が集まって行く中で、山田は、生まれた土地を難民に譲り、自分は、二階堂の妹に求婚して、二人で、新天地を求めて、流浪の民になる。

    そう理解したラスト場面も、よくよく考えれば、山田は、安井さんが二役演じている曾孫の方だけれど、伊勢さんの役は、二階堂の妹のみの表記しかなく、では、2096年に、山田が求婚した伊勢さんは誰?と、わからなくなった部分もあり、気持的にスッキリしませんでした。

    時代を超えて、柱の大使として永遠の命を得たらしき、二階堂に対して、曾孫の方の山田が、「君とは血が繋がっている」的な発言をするのも、それは、単に彼の妹の曾孫だという意味か、もしくは、もっと別の意味があるのか?

    とにかく、何かと難解で、わかりにくい作品だと感じました。

    以前の前川作品は、SF的な世界を、具体的にダイレクトに信じ込ませてくれる、明快さと、大胆さが魅力でした。

    見えない敵と闘う中で、結び合える、人間の絆や愛情を、実にストレートに感じさせて頂けることが、イキウメ観劇後の醍醐味でした。

    そういう感動作は、もう観られないのかもしれないと、少し、落胆した分、個人的な満足度は、少なくなったのだと思います。

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    2013/06/03 02:06

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