獣の柱 まとめ*図書館的人生(下) 公演情報 獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.2
1-20件 / 23件中
  • 満足度★★★★★

    現実の世界では「柱」は見えない −− 現代社会の危うさ
    スケール感のあるSFタッチな作品。
    ストーリーが面白い。
    ぐいぐい引き込まれた。


    (また長々と書いてしまった……)

    ネタバレBOX

    SFっぽいのはイキウメらしいが、非常に身近な世界に生きる人々と描いてきたのとは少し異なり、非常にスケールが大きくなっていた。
    もちろん、世界規模の話ではあっても、そこに生きる人々の姿はしっかりとある。

    大きく時空を超え、とにかくその意味でもスケールが大きく。
    シーンの切り替えが鮮やかだ。

    この作品は、3.11がなかった世界の出来事として描かれる。
    2008年から始まり、何十年後か先まで続く。

    「ラッパ吹き」というキーワードが黙示録的で、スケールだけでなく、深みを増していく。
    どこか「宗教」の匂いをさせながらも、この作品は、現代社会の危ういところをえぐっているように感じるのだ。

    世界に突如として空から柱が降ってくるという、予測不能の災害が起こる。
    宇宙から落ちてくるのではなく、高々度の大気圏内に突如として現れた巨大な柱が降ってくるのだ。

    その出来事の本当の恐ろしさは、柱が降ってくることだけではなく、柱を見ると幸福感にとらわれて、何もできなくなることだ。
    つまり、目をそらすことさえできなくなり、食事も睡眠もできなくなり、そして衰弱し死に至る。
    柱は、災害の源なのだが、その我を忘れるほどの幸福感が得られるためか、「御柱様」と呼ばれるようにさえなる。

    「御柱様」は台風や地震などの天災のようではあるが、「柱」という建造物であるので、人為性が感じられる。2013年の、今となっては、原発事故を想起してしまう。
    つまり、原発は電気を通じて社会に幸福をもたらせていたのではないだろうか。原発自体にはいろいろ問題があることは薄々感じていたのにもかかわらず、その「幸福感(利益)」のみに目を奪われ。問題点から目をそらし、先送りしていた。それは劇中で「御柱様」から目をそらすことができなかったのと同じだ。

    「原発」と書いたが、単にそれだけではなく、経済や利益優先で進んできた世界と、言ったほうがいいだろう。

    人口がある一定の量を超えた場所に柱は落ちて来る。
    なので、「人類は増えすぎてしまった」「災害は天の意思である」というとらえ方もあろうが、それよりもニュータイプのような人たちの出現(柱を見ても目をそらすことができる人たち)が、一番のキーだろう。

    先の「原発」を例とすれば、「(福島の事故を)知ってしまった」人たちは、利益のみに目を向けるのではなく、それから離れて、考えることができるようになっていると思う。
    なので、ニュータイプのような人類の出現は、新人類の誕生というよりは、「現実を見つめることができる」人たちの誕生と言っていいのではないだろうか。

    「御柱様」以降の世界では、「御柱様」を崇め、宗教のように共同体の一部に取り込んでいる。
    (……このシークエンスは核戦争後の世界で、ミュータントたちがコバルト爆弾の弾頭を崇めていた『続・猿の惑星』を思い出してしまった……)

    その中にあって、言わば「王様は裸だ」と言い出てしまうニュータイプたちは、異端であり、その地を離れなくてはならない。

    何も知らずに崇めている人たちにとっては、排除すべき人たちだ。
    原発事業から大きな利益を得ている場所で「原発廃止」を言い出す人が、ニュータイプたちな重なる、と言っては深読みしすぎだろうか。

    原発に限らず、経済、利益優先で進んできた、この世界は、いつも何かの歪みも生んできた。
    切り捨てられてしまった人々、世界中に撒き散らされる害毒(物理的なものもあれば情報のようなものもある)、争い。そうしたものに目を向けて考えることが必要になりつつあるのだ、ということが示されているように思う。

    この作品の「御柱様」は見えるけれど、現実の世界の「御柱様」は見えない。
    それを見えるようにすることが大切なのかもしれない。

    劇中ではニュータイプたちは次々と現れていく。
    これは世界の再生の光なのだろうか。
    そうに違いないと、思った。

    役者さんたちは、みんなうまい。市井の人の、哀しみなども少ない台詞で見事に表していた。
    「御柱様の使い(大使?)」として、失踪した望(浜田信也さん)が現れるシーンにはゾクゾクしてしまった。
  • 満足度★★★★★

    さすが、イキウメ。壮大なSF叙事詩にびっくり!
    以前、短編オムニバスの「図書館的人生」で観た1エピソードだった、

    SF的テーマの本作が拡大していって、物語がこういう形にまとめるとは思わなかった!

    さすが、イキウメ。

    最初の隕石を拾って・・・の話だけを観たのですが、それを「御柱様」に持っていくなんて、やっぱりすごい!

    当時の短編での「醍醐味」は、地方で拾った隕石の話が、一気に全国規模、新聞一面トップに載る渋谷駅前スクランブル交差点での大事件につながっていくところで、鳥肌が立ちました。

    その作品が、今回のものではもっともっと壮大な話になっていて、びっくりしました。


    ちなみに、当初「まとめ 図書館的人生(下)」というタイトルで、短編集ですよ、

    という印象がかなりマイナスイメージになっていてもったいなかった。

    その後、「獣の柱」のタイトルがついたようですが、こっちだけで十分です。

  • 満足度★★★★

    初 イキウメ
    初 シアタートラム。  場所がちょっとわかりずらかったので、 近くのお店の人に聞いちゃいました(^^ゞ   

    全体的には  とても良かったです。   演技に 引き込まれました! 

  • 満足度★★★

    前川さんの変容を感じる
    震災以前、イキウメの芝居は、大変センセイショナルでありながら、現実社会ではあり得ないようなSF的な世界を、あり得そうな世界に変換して見せる技術がずば抜けていました。

    あり得ないような世界に生きる男女の恋愛模様にカタルシスを感じ、息の詰まるような感動を覚えたものでした。

    でも、あり得ない程の悲劇的現実の非情さの前で、前川さんは、もしかしたら、戸惑いを感じてはいないでしょうか?

    原発事故が、劇作家前川氏に、足枷を食めてしまったような印象を、震災後の公演を観る度、感じてしまいます。

    演劇的カタルシスが薄まって、ある種の自信が揺らいでいるような、遠慮がちな劇世界が、何となく残念に思える作品でした。

    ネタバレBOX

    以前拝見した芝居の内容を膨らませたようなストーリー展開でしたが、以前の作品が、とても刺激的だったのに比べ、今回の作品は、作者の自由闊達な筆さばきが弱まった印象です。

    それを見ると、恍惚として、笑ってしまう、麻薬のような光の柱や隕石のせいで、人間がどんどん命を失っていく現実。

    2008年から12年までの、天文学クラブの二階堂と山田、二階堂の妹の3人を中心とした物語と、2096年に生きる、山田の曾孫を中心とした、二つの時代のストーリーが、リンクしつつ、進行しますが、この登場人物達の見分けも、いつもの芝居程、明確ではなく、時々、どちらの時代の場面かとしばらく迷うところも多々ありました。

    日本各地が、光の柱に支配され、人口の少ない地方に、難民が集まって行く中で、山田は、生まれた土地を難民に譲り、自分は、二階堂の妹に求婚して、二人で、新天地を求めて、流浪の民になる。

    そう理解したラスト場面も、よくよく考えれば、山田は、安井さんが二役演じている曾孫の方だけれど、伊勢さんの役は、二階堂の妹のみの表記しかなく、では、2096年に、山田が求婚した伊勢さんは誰?と、わからなくなった部分もあり、気持的にスッキリしませんでした。

    時代を超えて、柱の大使として永遠の命を得たらしき、二階堂に対して、曾孫の方の山田が、「君とは血が繋がっている」的な発言をするのも、それは、単に彼の妹の曾孫だという意味か、もしくは、もっと別の意味があるのか?

    とにかく、何かと難解で、わかりにくい作品だと感じました。

    以前の前川作品は、SF的な世界を、具体的にダイレクトに信じ込ませてくれる、明快さと、大胆さが魅力でした。

    見えない敵と闘う中で、結び合える、人間の絆や愛情を、実にストレートに感じさせて頂けることが、イキウメ観劇後の醍醐味でした。

    そういう感動作は、もう観られないのかもしれないと、少し、落胆した分、個人的な満足度は、少なくなったのだと思います。
  • 満足度★★★★★

    流石、外れ無し
    快楽と絶望と見えない未来への期待とが綯い交ぜになって、観る者の心をかきむしります。

    いつものイキウメにはない、小ネタが散りばめられていたのが新鮮でした。
    ともすると、単純な笑いのようにも思えるけれども、絶望のふちに追いやられた状況下では笑えないのだろうなどと思いつつ、3.11のとき、現地で生きることに必死だった人たちのことを考えさせられました。

    良い作品です。

    P.S.前川さん誕生日おめでとう(6/1)。

  • 満足度★★★★

    やはり面白い。
    恐ろしいほどの幸福感か…柱とはいったい何なのか。
    人々はどうすべきなのか。
    いろいろ考えさせられた。
    なるしー客演も楽しみだったけど、もっとコテコテに使うのかと思ったら、そうでもなかった。ファンには物足りないかも?
    でもあれはあれでいいような気もする。
    イキウメははずせないと改めておもった。

  • 満足度★★★

    観にいかなかったら、後悔した
    装置をもっと上手く使えるのではないかと劇中なんどか集中力がとぎれたものの
    器用な役者さんたちの技術が魅力的でした。

    話は簡単に租借したくない不思議な感覚を受けましたので、しばらく余韻を楽しみたいと思います。

    池田成志さん目当てで行きましたが、どなたにもおすすめします。
    ぜひご覧になってください。

    ネタバレBOX

    もっと装置と池田さんをきもちわるく使って欲しかった。
    照明の変化と
    装置の色味と衣装にこだわりは伺えたが
    2時間ごえの観劇には退屈にも思えた。

  • 満足度★★★★★

    これは凄いぞ
    イキウメは、一種SF的な仮設フィクションの世界を描くが、今回の設定も極めて興味深い。そして、それに動かされていく人々の描き方が巧妙で、2時間を少し越える芝居の中で、息をも継がせない展開と緊張感が見事である。このところのイキウメ作品では大窪人衛が面白い役割を演じているが、今回もなかなかの存在感である。ゲスト的存在の池田成志の演ずる役割も、彼ならではのものである。とにかくスゴイ舞台だった。

  • 満足度★★★★

    なぜか
    いつもイキウメさんの演劇には、勝手にダマされて、本当にそんなことがあるんだと真剣に思い込んだりしていましたが、今回はあまりにもスケールが大きすぎていつものように勝手にダマされることはありませんでした。この感覚の演劇はここでしか観れないだろうなと思います。

  • 満足度★★★★

    ハズレなし
    期待通りに面白かった。
    「柱」が何なのか、何のためにあるのか、過去と現在を行き来しながら観客を引き込んでいくのは流石。
    正にお手本のようなSF、だが、面白いという上質なものだった。

  • 満足度★★★

    恐ろしいですな
    現実に起こったらパニックになりそうです。

  • 満足度★★★★

    イキウメ
    イキウメというか前川知大の芝居は太陽以来見ている。去年、奇っ怪を三軒茶屋でも見たし、『The Library of Life まとめ*図書館的人生(上)』の続編だと思い込んでいた私には、話が随分ちがっていたのでちょっと戸惑った。
    大きい(テーマを扱った)芝居は日本には少ないと感じていたけど、このテーマは「大きい」ものに挑戦している数少ないものだと感心した。
    池田成志はやっぱり怪しい役やらせたら「3本の指」に入りそうなそんな人だけに話をどんどん転がしてくれて気持ちよかった。

    ネタバレBOX

    これだけ長期間の公演を打てるというのはすごい劇団だなと感心する反面、あまり笑って欲しくないところで「大声で笑う」方が近隣にいるため「興ざめ」となってしまった。
    確かに、わらいどころで笑う分には自由なんだけど、それが「物語への集中」をそいでしまいました。前日に「プルーフ」を風姿花伝で見たからということもあって、本来いい作品だったハズのものが「残念」な感じになってしまいました。
    「デウス・エクス・マキナ」が「隕石・柱」・「二階堂望」の2本立で登場するあたりは、ちょっと反則な気もするけど、それも含めて演劇の楽しさなんだとは思うので。
  • 満足度★★★★★

    変化
    「イキウメ」を知ったのはNHKのシアターコレクションでした。その時に見た「瞬きさせない宇宙の幸福」が長編で・・・。
    これまでいくつか観たイキウメの作品では、何かしらの「答え」を見つけ出す感じでしたが、今回は最後までわからない事があって考えさせられました。
    2年前の震災があったからこそ思う事があるのかもしれません。
    現在(2008~2012年)と未来(2096年)を軽やかに行き来しながら、確実にその役を演じる役者さん達が見事でした。
    「見える者」は異質か進化か・・・山田の『いってらっしゃい』が祝福の言葉になればいいなぁと思いました。

  • 満足度★★★★★

    警笛
    こりゃ傑作だね。この手のジャンルでは岩明均と双璧か。
    さめざめと泣いたよ。

  • 満足度★★★★★


    面白い。

    ネタバレBOX

    2008年の隕石落下の一年後、「柱」が都市部へ次々と落下する。隕石も「柱」も、それを見た人間に幸福感を与えつづけ、思考と動きを止めてしまう力があった。人が大量に死に、都市機能も麻痺し、難民が大量に溢れる中、山田輝夫(安井順平)や二階堂桜(伊勢佳世)は、「町」を作っていく。難民の量治(池田成志)がやってきて、二人は次の「町」を作りに移動する…。
    2096年、「柱」は、見えないように覆われ、月1で開放されるというふうに管理され秩序が保たれていた。「柱」の力が及ばない「見えるもの」である亘(大窪人衛)の存在に可能性を見出す、町長・森永(池田成志)や輝夫のひ孫の山田寛輝(安井順平)だったが、山田は「見えるもの」を好きなところへ行けと送り出す…。

    麻薬、安楽死装置と言われた「柱」が、数十年後には神様の如く祀られ、人はそこに幸せを求めにやってくる。なんのために、誰がという回答とか、どういう反応が体内で起こっているのかも探りつつ、今後をどうするかってとこに焦点されるつくり。大変に面白い設定に興味が尽きない130分。時を越えて生きている(と思われる)柱の大使である望(浜田信也)の存在とか、「見えるもの」の存在とか、好奇心をくすぐられまくった。

    「柱」がなんなのかってのはわからないけど、世界(作中だど日本描写がほとんどだけど)に変革をもたらし、ヒトを原始的(あくまで現代的なんだけども)な状況に追い込み、そこからのリスタートを予感させる作品だった。ちょっとした神話だなと。
  • 満足度★★★

    「異質なモノ」が「当たり前のもの」になる過程
    見る者を幸福の渦中に突き落としてしまう、謎の柱をめぐる
    人々の物語。というより、寓話に近いと思います。

    百年前と現在とで、人々の柱のとらえ方がまったく
    違っていることに、今自分が生きている現在でも
    同じことってあるんだろうな、とふと感じていました。

    ネタバレBOX

    なかなかに考えさせられるテーマを持つ作品でした。

    天から、神話の世界よろしく、人々に刹那の幸福を与える柱が
    落ちてからというもの、目にするだけでマトモな日常生活を
    送れなくなるような幸福感に包まれ続けるため、それまでの
    文明社会は崩壊、

    人々はそれこそ神話の世界のように都市部から田舎へ群れを
    成して逃げていくが、ある程度の人口が確保されると同時に、
    柱はそこにも落ちてくる。まるで「天の目」によって監視されて
    いるかのように…。

    百年前は災いを呼ぶ存在であったはずの柱が、現在では
    人々の悩みを解消させる神として、「ミハシラサマ」として
    信仰の対象にまでなっている皮肉、

    百年前、それを見越した、田舎の村の代表者が、逃げてきた
    研究者に柱を分析させる中で言い放った言葉、「悪い予感が
    する。今、君たちがやっていることは意味のあることだ。柱の
    存在についてはこれからの未来、何かイヤな感じがする。
    ヘンに特別な存在として認識されるのはよくないよな」。

    はたまた、柱が降る前に、同じ効力を持った隕石や変化した
    看板などの登場で警告がなされていたにもかかわらず、
    数少ない警告は無視され、黙殺されていた事実。

    そして、百年後の現在、「柱は人々に幸福を与えてくれる、
    尊い存在だ」という考え、というより思い込みが主流となり、
    誰もそれを疑わない、昔に村の代表者が懸念したことが
    事実となり、柱を見ることができる人、柱の神性を疑う人は
    村八分にされること。

    逆に、柱を乗り越えることが人類の発展と信じてやまない人も
    立場が反対なだけで、実は柱を信仰している人と変わらない、
    ということ。

    ---------------------------------------------------
    なんか、今の日本を深く考えてしまいそうな、そんな内容でした。

    ラスト、柱を見ることが出来る子たちが、自分たちを利用しようと
    している大人たちの手を離れて、新しい世界に踏み出していこう
    とする姿は、

    この日本で、ひそかに芽生えつつある、新しい視野や考えを持った
    世代の台頭をひそかに感じたような気がして興味深かったです。
  • 満足度★★★★★

    イキウメの公演を見るのは震災後に観た『散歩する侵略者』以来だが、そこでは垣間見えなかった意識があるように思われた。
    イキウメのメンバーもよかったが、客演の池田成志さんがとてもよかった。

    ネタバレBOX

    これまでイキウメで観たのは話としてはウルトラマンで言うと実相寺(ウルトラセブン)ぽい感じで、宇宙人とか異能者がいて、それが既存の社会におかれてどうなるのかというのをとても整合的に考えているように見えた。今回の作品は謎の柱によって諸都市が崩壊した経緯と、そのあとに人々が形成した共同体が交互に描かれていた。異常な状況に適応した共同体から次の社会への萌芽がありつつ、様々な相克があって、そうした考察が現今の日本の姿とも重なって見えた。そうした意識において、これまでのイキウメの作品から「進化」(cf じべ。さんの観た)したものになっているように思われる。

  • 満足度★★★★

    更に進化したイキウメ?
    前回のように短編の再構成かと思いきや長編新作(だよね?)。
    聖書の引用なども含んだ「新種誕生」譚、従来のイキウメ味に笑いも織り込み、更に進化したイキウメ、な感じ?
    内容的に とり・みき を、語り口に小松左京を連想したりも。

  • 満足度★★★★

    全てを理解した訳ではないが面白かった
    都市部に降って来た巨大な物体、過疎地に降って来た隕石。宗教的なモチーフにも見えたそれは幸福の象徴か不吉な前触れか。
    近い未来と少し昔の過去を行き来し、放浪していく人々の姿に2年前の日本の出来事をつい思い出す。不思議な感慨が湧く面白い舞台だった。

    話を聞きかじっただけで、色々詮索して物事をあれこれ考えてしまう年代だが、この舞台については、ストレートに見たままの反応をする感受性豊富な子供達の方がもっと想像力を得られるのかも。
    部長と柱の大使、ラッパ屋さん、灰汁の強い役柄というか。とてもテンションが高く、異次元に連れて行ってくれて印象に残る。好演。
    約130分。

    ネタバレBOX

    一連作の完結編、と分類するのかな?
    高知県のとある田舎町に隕石らしきものが落下して話が始まる。
    その一部を手にした望達。興味本意で探っていたら隕石の被膜が剥がれ、それを目にした途端、思考が幸福感に占領されてしまう事に。外部からの刺激で一瞬で素に戻るが、その後も要所要所でそのやり取りがあったりしてそのやり取りは見てて面白い。
    それから世界中にその隕石が出現、幸福感から来る意識消失?により事故が多発。原因は突き止められそうなのに一個人達では追求までは困難、そのうちいつの間にか行方不明になる望。
    その後、人口密集地に巨大な柱が乱立し始め、世界各国と日本の政令指定都市等に散らばり町を覆い尽くす。
    生活の基盤が一変してしまった世界、柱が来てその場から逃げる人、火中の栗を見たくなる人、居住地を求め放浪していく人。2年前にも似たような出来事があったなと、ついつい思ってしまう。
    深刻な事ばかり考えて生きて来た訳ではないが、日々の暮しだけ考え、それだけでも充分幸せな生き方、生活だとラッパ屋夫婦や部長と桜の会話で示される。そのやり取りを見ているだけで、なんか泣きそうになった。歳だからなっ。

    容貌はそのままでも行動が別人になって現れた柱の大使の望に、終盤まで異論したいが上手く言えない部長のもどかしさは、望達見える者の言動や行動に触発されて変化したんだろう、プロポーズの場面、ちゃんと言えて良かったねーと素直にそう思った。その時の望の顔が柱の大使から、兄の望の顔になっていたのが余計に面白い。その後の「いってらっしゃい」の台詞の流れまで非常に素敵だった。
    暮らしていた土地を譲り渡し、新天地を探す選択をした部長達。自己犠牲心から出た行動ではなく、生きるの為の好転のステップと発想。
    明確な答えが出た訳ではないが、観終わって安堵感に包まれた。
    面白かった。

  • 満足度★★★★

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