ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
TBS/ホリプロ/梅田芸術劇場
東京国際フォーラム ホールC(東京都)
2019/02/23 (土) ~ 2019/03/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
ロミオ=大野拓朗、ジュリエット=生田絵梨花、ベンヴォーリオ=木村達成、マキューシオ=平間壮一、ティボルト=渡辺大輔の回を観劇
歌良し、踊り良し、衣装良し、舞台装置良しで何の文句もありません。迫力のロック・ダンシング・ミュージカル・エンターテインメントは絶対のおすすめです。一押しは仮面舞踏会のシーンです。総勢30人くらいの群舞が圧巻でした。最後の墓地のシーンも最高に絵になっていました。両家の夫人のデュエットも素晴らしい…。
強いて弱点を探せば、強目の歌が多くて繊細さに欠けるところはあるかもしれません。セリフを歌うところが多目なので苦手な人もいることでしょう。
皆さん力強い歌で聴かせ所も沢山あって満喫できました。特に主役の大野さんがここまで歌えるとは思いませんでした。死のダンサーとのダンスシーンも美しい。乃木坂46の生田さんは独特の歌の癖が私は苦手なのですが、観客の半数が男性なのは彼女の功績が大きいのでしょう。期待のシルヴィア・グラブさんはちょっとアレ?な部分がないわけではないのですがやはり聴かせてくれます。他の女性陣、男性陣もうますぎて拍手の手が疲れるくらいです。
ロミオがあのロザラインもすでに振ってしまっているなど改変もチラホラ。また携帯で連絡を取り合っているかと思うともめごとの裁定は大公の独断だったりして時代はあいまいです(*)。まあ携帯メールはちょっとした伏線でもあるのですが。
最後は納得のスタンディングオベーションでした。
*説明を見たら時代は近未来でした。確かに最初に、通常爆弾ですが、第二次大戦中の爆撃の映写がありました。ということはマッドマックスや北斗の拳のような設定なのでしょうか。モヒカンの悪党どもは出てこないのであまり意味はありませんが。
唐版 風の又三郎
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2019/02/08 (金) ~ 2019/03/03 (日)公演終了
満足度★★★★
ストーリーはわき道が多くて分からないことだらけである。
先日の「世界は一人」も分からなかったが、あれは「分かる人だけ分かればよい」ということだった(のだと思う)。それに対して、こちらは沢山のイメージを観客の前に並べて「分からなくても誤解しても楽しめる」という作りになっている(のだと思う)。作者のサービス精神である。歌に踊りにナンセンス、どの観客にもどこかがヒットすることだろう。
私的には初めて実際のお姿を目にすることができた六平(むさか)直政さんの怪演を堪能した。「一番搾り」の鍋底大根のCMが懐かしい。中山美穂さん最高!そっちかい。
世界は一人
パルコ・プロデュース
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2019/02/24 (日) ~ 2019/03/17 (日)公演終了
満足度★★★
まいった。何が言いたいのかさっぱり分からない。
さすがに「鉄鋼の町に生まれた、吾郎(松尾スズキ)、美子(みこ/松たか子)、良平(瑛太)が成長して行く物語」であることは分かる。しかし、人の半生記としてわざわざ描くほどではない。もっともあっちこっちに話が飛ぶので私が把握できていないだけかもしれないが。3人は人間でなく何かのメタファーかとも考えたが思いつかない。「町の海は廃液で一度死に、浚渫することで蘇った。「その汚泥はどうしたの」「どこか安全なところに置いたよ」」というようなメッセージが繰り返されるので何かその辺にテーマがあるのかもしれない。最後に松さんが「世界は一人」と歌うのだが取ってつけたような印象を受けた。
松さんをはじめとする皆さんの歌は迫力があり、曲も初めて聞くはずだが耳にすっと入ってきて心地良い。これがあってようやく満足度は星3つになる。
ポスターは小が3種類、大が2種類も売っていた。
ウォーキング・スタッフ プロデュース アクターズエディション vol.1「虎は狐と井の中に(仮)」
石井光三オフィス
シアター711(東京都)
2019/02/16 (土) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★
人嫌いの24歳の青年、借金の型に派遣会社が用意したアパートに住み、工事現場で働くことに。8畳間に5つのベッド、部屋内カーストですさんだ人間関係。行政書士を目指していた彼もいつしかすっかり周りに染まり、住人は徐々に体と心を蝕まれていく…。
昔の話ならヤクザに監視された現場で過酷な労働と容赦ない暴力というタコ部屋が定番だが、恐ろしいものの別世界の出来事である。この作品では普通の街の中で女性の管理人がときどき様子を見に来るだけで外出も自由という設定。外部からの攻撃がないので平和かというと今度は仲間同士がいがみ合うことになる。自分も何かの拍子に落ちてしまいそうという現実味を感じた。ただし仕立ては「怖いもの見たさのエンターテインメント」であって社会派的な香りは薄い。24歳の青年がどうなるかと思っていたら、この世界にどっぷりと浸かって行くのかと想像させるだけでとくに何かが起こるわけではなかった。
鏡の向こうのシェイクスピア・シリーズ「無限遠点」改題 『喜劇♥ロミオとジュリエット』
東京シェイクスピア・カンパニー
「劇」小劇場(東京都)
2019/02/20 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★
舞台はロミオとジュリエットが死んだ傍らでロレンス神父が泣き崩れているところから始まる。
そこに現れた悪魔から「お前がおかしなことをするからこんなことになった」と責められた神父は、将来協力することを条件に過去を書き換えてロミオとジュリエットが死なないようにすることを悪魔に依頼する。そして神父が気が付くと10数年が経過し、ジュリエットはあの薬の副作用なのかとんでもない××女になっていた…。
井村昴さんの凄みと軽みが同居する親分悪魔には感心するばかり。しんばなつえさんの手下悪魔のブラックなキュートさが刺さる。
メモ
・ロミオとジュリエットの娘の名はロザライン。ロミオがジュリエットの前に恋していた女性の名を転用した(のだろう)。
・キャピュレット家の跡継ぎの名はコジモ・ド・キャプレット。シェイクスピア関連にはない。あのメディチ家のコジモ・ド・メディチに倣ったのだろう。
・その息子はエドマンド。リア王に出てくるグロスター伯の次男に倣ったのだろう。
カーテンを閉じたまま
Ammo
シアター風姿花伝(東京都)
2019/02/14 (木) ~ 2019/02/19 (火)公演終了
満足度★★★★★
CoRichのランキング1位ということで観に行った。目利きの皆さんに感謝したい。ポルポトの芝居を演ろうという人の勇気には敬服するし、観に行く人が沢山いるというのも驚きだ。
こんなに洗脳の現場をリアルに描けるとは作者は一体何者なのだろう。実は昔、新興宗教かマルチ商法の幹部だったのではないだろうかと思わせるくらい凄みがあった。これは一本の演劇を作る過程を使ってポルポトの歩みを描いたものだが、逆にポルポトを使って演劇の作り方を述べたと読むのは門外漢の考えすぎか。
タイム・フライズ
ミュージカル座
光が丘IMAホール(東京都)
2019/02/16 (土) ~ 2019/02/19 (火)公演終了
満足度★★★★
瑞生桜子さんを聴きに光が丘へ。瑞生さんの歌が少なかったのは残念だが歌うまのミュージカル座の中に入っても一手間掛けた瑞生節は輝いていた。彼女は5年後にはソニンさんとのWキャストで帝国劇場やシアタークリエの常連になっていると私は信じている。
話の内容はタイムスリップと学生運動という二つの古着を切り貼りして新しい一着を作り出したようなもので新味はない。しかし学生運動のシーンは実にリアルで当時の記憶が蘇ってくる。アジ演説は今聞いても説得力があり、タイムスリップしてあの渦中に投げ出されたら熱心な活動家になってしまいそうだ(ならないけど)。
ポスター B2版(515x728)が500円は良心的。
*大学当局がバリケード内への呼びかけで学生のことを「生徒」と言っていたが、これはありえない。高校の紛争の話を誤用しているのでは。
「あつまれ!『くろねこちゃんとベージュねこちゃん』まつり」
DULL-COLORED POP
サンモールスタジオ(東京都)
2019/02/14 (木) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★
谷チームと百花チームを観劇
母親が延々と非難される。さてこれをどう収束させるのかと思ったらそのまま終演となった。どうにも救いのない話である。「これは何?誰得?」と悩んでしまった。
演出を好物とする人は絶賛するのだろう。ストーリー命の私にはどう解釈しようと気持ちの良いものではなかった。
マクベス Macbeth
TYプロモーション
三越劇場(東京都)
2019/02/14 (木) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★★
原作に忠実な「マクベス」です。「メタルマクベス」でしか知らない方はこれを観てイメージを修正しましょう。
前回の「リア王」同様に戦闘シーンが横内シェークスピアの売りになっています。かなり長時間いろいろ形を変えて行われますが、マクベス軍は寝返りが多いという設定なので前半のアンサンブルの方々の戦いはどの軍とどの軍の戦いかが分からずイライラが募りました。小さな不満はたくさんありますが大きな不満はこれだけです。おそらく数年は再演が続くでしょうからどんどん改良されていくことを期待します。と言いながら中程度の文句をひとつ。魔女のセンターだけ声質が違うので怪しさが半減です。
会場には老夫婦の姿が多くみられました。三越劇場+横内正+シェークスピアだからなのでしょう。
ポスター B2版(515x728)が500円は良心的。
キューティ・ブロンド
東宝
シアタークリエ(東京都)
2019/02/11 (月) ~ 2019/02/28 (木)公演終了
満足度★★★
頭の中はファッションでいっぱいの女の子がハーバード・ロー・スクールに進学するボーイフレンドに振られたことで一念発起、猛勉強の末に合格し、独特の発想で教授を唸らせ、新しい恋も見つけるなど大活躍するミュージカル。
普通の男性には共感不可能のお話です。私も冥途の土産に一度観ておこうと足を運んだのでした。まあしかしおとなしく観ていると綺麗なお姉さんたちが歌い踊る華やかな舞台がなかなか楽しくなってきます。よほどのことがない限り2度目はないですがそこそこ満足はしました。女性の観客の皆さんは大満足だったのでしょう。終演後あちこちから「神田沙也加さん、可愛いね」の声が聞こえてきます。満員御礼も無理はありません。
さてその神田沙也加さん、歌はうまいけれど圧倒的というわけではありません。歌よりも、短い普通のセリフのニュアンスにしばしばハッとさせられました。唯一のベテランの長谷川初範さん、ハーバードの教授役ですが軽くて飛んで行きそうな舞台をしっかりと地面につないでいました。ところで私の今回の一押しはチア仲間の美麗さん。ベティ・ブープのような姿がとても可愛い。チラシの一覧写真よりずっと魅力的です。宣伝写真を変えるように事務所にお願いしましょうよ。
芸人と兵隊
トム・プロジェクト
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2019/02/13 (水) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★
老夫婦の漫才、若手の漫才、落語、若い女性の音曲の4つの演目から成る慰問団が中国大陸に展開する日本軍の部隊を訪問して回るお話である。時期は昭和16年の2月から10月、劇中でも日米開戦も近いと語らせている。
老夫婦を演ずるのは村井國夫さんと柴田理恵さん。ところどころに演目のダイジェストが挿入されるがほとんどは楽屋などでの6人の会話である。村井さんと柴田さんは本物の夫婦漫才師にしか見えない。村井さんは当然として柴田さんがこんなにも説得力のある演技をなさる方だとは知らなかった。他人を思いやる当たり前の言葉が深く心にしみる。
いろいろな観方はあるだろうが、私はこういう時代があってこのように生きていた人々がいたということをしみじみと楽しんだ。
会場は平均年齢65歳以上だろうか。満席とはいかないのが少しもったいない。
新国立劇場演劇研修所「るつぼ」
新国立劇場演劇研修所
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2019/02/08 (金) ~ 2019/02/13 (水)公演終了
満足度★★★★★
この作品は初めての観劇である。厳しい内容の3時間に疲労困憊で帰宅するとすぐ横になってしまった。前半は登場人物のすべてにイライラさせられ、後半では主人公プロクターに我が身を重ねるなど作者・演出家の意のままに泳がされた。ストーリーに集中できたのは俳優の皆さんが的確な演技を行っていたからだろう。
讃美歌には驚いた。美しい声で各パートのバランスも良く素晴らしい。この練習だけでも膨大な努力が必要だったと思われる。
死ぬ前に観ておいて良かったという作品であり、この公演は十分な感動を与えてくれた。
舞台『12人の怒れる人たち』
Alexandrite Stage
シアター風姿花伝(東京都)
2019/02/04 (月) ~ 2019/02/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
Rossoチームを観劇
文句を言いたいところは数多あれど、それを補ってお釣りがくるほど大小さまざまの工夫があった。ここでは良悪どちらも書かないので劇場で確認して欲しい。
Rossoチームは男性4人女性8人の構成である。8号が女性であることがRossoチームの売りであるが8号は公正で柔軟な人物なので女性であっても意外性はない。しかし3号は頑迷固陋な中高年男性でしかありえないと思われる役である。ここを若い女性としたのには新鮮な驚きがあった(この辺も女性に対する偏見なのだがそれはおいておく)。そしてこの難しい役を永咲友梨さんが見事にこなしていた。あの、ああそれを言ってしまっちゃったか!的なシーンは拍手をしたくなった。もちろん、このシーンは8号の栗原みささんとの息の合ったコンビ技である。
6号でクラブホステス(キャバ嬢かも)の西原杏佳さんもお父さん達にはうれしい存在だ。
ストーリーの大筋は原作通りなのでどなたにも大外れにはならないはずだ。「12人の…」ファンの方はRossoチームはmustである。
なお Rossoチームは2,3,4,6,8,9,11,12号の8人が女性であり、Bluチームは2,6,9,11,12号の5人が女性である。1号以外は皆さん若い俳優さんである。
プラトーノフ
ホリプロ
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2019/02/01 (金) ~ 2019/02/17 (日)公演終了
満足度★★★★
内容を一言で書けば「4人の女性と美青年プラトーノフの愛と破滅の物語」ということになるのだろう。
わかりやすいストーリー展開、はっきりとした人物像で理解に何の苦労もない。だがわかりすぎることによって凡百の不倫ドラマと何が違うのかという素朴な疑問が湧いてくる。
私の知っている唯一のチェーホフ劇である「ワーニャ伯父さん」と同様にロシア帝政末期の没落中の貴族がメインの登場人物である。「ワーニャ…」では彼らの日常の生態がテーマだったが今作ではそこを掘り下げる様子はない。私の結論は「違いはない」である。これは野球のグランドであって、観客はグランドそのものではなくプレーヤーの妙技を楽しむのである。
そうとなれば楽しむ材料には事欠かない。
藤原竜也さんはあの華奢な体のどこにあんなエネルギーがあるのか驚くばかりだ。最後まで感心して観ることができた。後半はらくだの長袖シャツと股引という下着姿である。いかに彼であっても見るに堪えない。しかしそれが楽しみというファンも多いのだろう。嬉しくてたまらないという笑いが続いていた。
浅利陽介さん、私にとっては「相棒」に少し前から参加している変な奴だが、調べてみると子役からずっと活躍中のベテランなのだった。切れの良い演技で序盤の舞台を仕切っていた。昔なら一心太助か森の石松が似合いそう。
神保悟志さん、「相棒」をはじめ他の番組でも飽きるほど見ているはずなのにキャスト表を見るまでわからなかった。扮装が凝っているためなのだが声でわかっても良いはずなのにちょっと悔しい。
4人の女優陣の素晴らしさはもちろんであって省略する。
Le Père 父
東京芸術劇場/兵庫県立芸術文化センター
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/02/02 (土) ~ 2019/02/24 (日)公演終了
満足度★★★★
CoRichの説明「記憶や時間が混迷していく父の視点で観客が物語を体験していく、という斬新な手法で描かれた哀しい喜劇」の通りの体験ができた。
それ以外は老人問題最先端の日本に生きる我々には何も得るところはない。別に何か解決策を示唆しているわけでもないし。
(追記:問題解決には役に立たないということで、演劇としては普通に楽しめました。)
それよりも若村麻由美様の美しさを穴のあくほど見つめることができたことと橋爪功さんの老練な演技に間近で接することができたことが嬉しい。
夜が摑む
オフィスコットーネ
シアター711(東京都)
2019/02/02 (土) ~ 2019/02/12 (火)公演終了
満足度★★★★
俳優さん良し、舞台セットを含めた演出良しでオープニングも良し。
笑いが止んだ後半の緊迫感は最高に良し。
ただし、クラゲの話で主人公が知らせて回るところに違和感あり。彼が皆のためを思っての行動なんてしないと思う。クラゲなんて出したのが失敗。普通に主人公が抗議に行って変人扱いされることを描けば良いのにと書くと「君は演劇的表現というものがわかってない」と言われそうだがそれはその通りで反論無し。
前半の昭和の笑いの小ネタ連発はリトマス試験紙だと解釈した。私はクソ面白くもないネタに大笑いする2割くらいの観客にかなりイラっとした。それは私が主人公側にいるということなのだろう。そして舞台にシンクロして観客同士のトラブルが発生する…なんて作品もどこかにありそう。
PARTY PEOPLE
艶∞ポリス
駅前劇場(東京都)
2019/01/31 (木) ~ 2019/02/11 (月)公演終了
満足度★★★★
舞台上のほとんどはお金持ちの応接間であって、下手端に貧乏画家の3畳間がある。この金ぴかの応接間は調度品もしっかりしていて大変力が入っている。オープニングのシャンパンタワーのプチ・イリュージョンも素晴らしい。一瞬のことに膨大な努力をするって痺れる。
ストーリーの全体はあまりピンと来なかった。お金持ちのパーティーなのにホスト一家3人以外は全員貧乏なので話がみみっちい。せめてお金持ちを装っていることにしてくれないと豪華な設定の意味がない。一方で貧乏画家は「貧すれば鈍する」の見本のようであって観ていて楽しい。しかし彼はお金を何に使っていたのだろう。画材なら彼女に内緒にする必要はないと思うのだが。
この舞台の素晴らしいところは個々のキャラである。多様な愛すべき人物が書き分け演じ分けられている。ストーリーから何かを得ようとせず、そのときそのときの小さな笑いに身を任せているのが良いだろう。
夜曲
アカズノマ
新宿村LIVE(東京都)
2019/01/31 (木) ~ 2019/02/03 (日)公演終了
満足度★★★
横内謙介による1986年の戯曲。何度も上演されている。2017年12月には音楽劇としても上演された。
1986年というと新聞勧誘員がいろいろ問題を起こしていたころで、ほとんどヤクザの副業とみなされていた。どうしてそれが主人公なのか?そして放火魔であるという。全くわからない。まあ放火についてはいろいろと事情があるのかなあと想像されて若干免罪されるのだが。新聞勧誘員という設定はどこで必要なのか結局分からず。
そんなことで悩みながら観ていたのだが、皆さん若いのとファンタジーものなので学園祭のように感じてしまって物語に入り込めない。面白さを感じたのは半分も過ぎてからである。「正義を守る者は他の誰よりも血にまみれている」というセリフもあって嬉しくなるが、声を気張ってもやっぱり説得力は感じない。もっとも終わってみると何となく全部があるべきところに収まって余韻に浸ることができた。
暗くなるまで待って
日本テレビ
サンシャイン劇場(東京都)
2019/01/25 (金) ~ 2019/02/03 (日)公演終了
満足度★★★
事故で視力を失った若妻・スージー(凰稀(おうき)かなめ)と3人の犯罪グループ(加藤和樹、猪塚健太、高橋光臣)とが麻薬入りの人形を巡ってアパートの一室で騙し騙され、そして闘う。1967年にはオードリー・ヘップバーン主演で映画化された。
最初は3人を夫の友人や刑事だと信じていたスージーが次第に彼らの本当の姿に気づき、一計を案じる。題名からもわかるように、それは夜になって電燈を消した真っ暗な部屋で対決することだった。うまく主導権を握ったと思ったそのとき、大きな見落としが明らかになる…。
シリアスなサスペンスだと思っていたら、最初に登場する犯罪グループの様子がどうも柔らかい。やがて登場した主役の凰稀さんの声が少しアニメ声で動作がかなりコミカルなことで、この舞台の性格付けがわかった。あれまあ、そっちだったかといささか落胆した。まあ映画もYouTubeムービー(400円)で観るとそれほど怖くは作っていない。映画は最初に人形に麻薬を隠すところから始まり、場所も場面も沢山変わり、わかりやすいが冗長でもある。この舞台は固定場面であって余計な部分がそぎ落とされてすっきり、しっかりとした印象である。比較的若い俳優さんで固めていることを好ましく感じる方にはお勧めである。
この作品でも電話は鬼門だ。犯人が公衆電話を使うところで「3人もいて誰も携帯を持っていないのか」と不思議がる若者もそろそろ出てくるだろう。さらに写真家の旦那が赤い灯りの下で写真の現像をしている場面もほとんどの人には意味不明であろう。しかし、この灯りがないとクライマックスは長時間真っ暗になって映画にも舞台にもならないのである。
ところで映画のマイク役のリチャード・クレンナって「ランボー」(1982年)の上官のトラウトマン大佐じゃあないですか。芸風は同じで何か嬉しい。
わが家の最終的解決(再演)
Aga-risk Entertainment
恵比寿・エコー劇場(東京都)
2019/01/25 (金) ~ 2019/01/29 (火)公演終了
満足度★★★★★
扱いの難しい題材をコメディーにしようとする度胸・自信に驚き、実際に完成させてしまう力量に感嘆してしまう。しかし世代なのか私の性格なのかこういうテーマには身を正してしまって笑いは控えめになった。
アガリスクも4回目でファミリーも含めた出演者の見分けが容易にできるようになったせいか(内容よりも)各役者さんの演技が印象に残ったので簡単に記しておく。初回のせいか何人もセリフを噛んでいたのがちょっと意外だった。