latticeの観てきた!クチコミ一覧

1-20件 / 537件中
象

9PROJECT

上野ストアハウス(東京都)

2024/05/16 (木) ~ 2024/05/19 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

前説によると、つかこうへいが別役実を尊敬していてこの「象」からもたくさんパクっているという。この舞台はそれを強調してつかこうへい風の演出になっている。もっとも普通に演出した「象」を観たことがないのでどこがオリジナルでどこが「つか」風なのか正確にはわからないのだが、異常なテンションの高さ、ここぞと入るBGMはこの舞台特有なのだろう。

さすがに60年前の作品なのでリヤカーに乗ってムシロに座り背中のケロイドを見せてお金をもらうということのリアリティは失われている。若い人はケロイド以前にリヤカーもムシロも見たことがないだろう。題名の「象」はサーカスや動物園の見世物としての象なのだろうか「群盲象をなでる」の象なのだろうか。前者ならストレートに過ぎるし後者なら格好つけすぎだ。

そしてまたこの舞台は前述の通り「象」の中のつか的要素の研究なのだから反核や被爆者差別といったテーマに重きは置かれていない。そして別役作品と言っても初期のもので不条理劇ではなく電信柱も登場しない。兄が行こうとしている「あの町」がどこなのかが謎ではあるがとりあえず場所ではなく「見世物として輝いていた昔」だと解釈した。

観る人を選ぶ舞台で私は選ばれていないなあ。

いつか、ある夜。ノクターン。

いつか、ある夜。ノクターン。

演劇ユニット41×46

劇場HOPE(東京都)

2024/05/10 (金) ~ 2024/05/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

短編3作
・『フレンチとマニュアル』作:中川 浩六(三等フランソワーズ)
婚活で高級レストランに来た二人のあるある話。まあまあ笑えるのだけれど、ちょっと冗長で話の膨らみに欠けていた。ピアノの調律師とした設定をもう少し生かしてほしい。まあしかし、こういう特殊設定を追いすぎると作り物臭くなるので難しい。☆3

・『Fly Me To The Moon』作:館 宗武(演劇ユニット41×46)
アラサー?の女性バーテンダーの店にやって来た同年齢の女性会社員が恋の悩みを相談するという話。しっかりバーの道具を揃えてシェーカーを振るのは気分が出るのだが準備に時間がかかりすぎ。これも前の作品と同様に長さの割に話が膨らまない。こういう芸風の劇団なのかも。☆3

・『夜をほどく』作:畠山 由貴(劇団パーソンズ )
3姉妹が母親の葬式?49日?に集まって母を偲ぶお話。この作品も前2作と同じようなテンポで同じような振れ幅で進行するのだが、こちらが慣れたせいか話に心地良く乗って行けた。☆4

これにプラスして
・ギターの弾き語りが合間に入る
初回の登場で慌てたのかガット・ギターのチューニングをしないで出てしまった(弦を交換したばかりだったのかも)。そのまま強引に進めてしまう。勘弁してよ。次にアコースティック・ギターで再登場するとまたまたチューニングがボロボロ、オイオイ(怒)。今回は落ち着いて直していた。この人、アコギでストロークバリバリ(と歌)はうまいけど、指引きはまだまだ修行中。"Fly Me To The Moon"は歌がセリフと被って言いようのない不快な響きとなってしまうので、歌なしのソロギターを特訓で頼みます。☆3

総合すると☆3なのだが、話も役者も演出も私好みなので回を重ねて改善されて行く期待を込めて☆4

前説が録音だと拍手が取れないのでしらっとしたまま本編に入って行くことになる。下手でも生でやりましょう。折角の表現力錬成のチャンスなのにもったいない。録音の方は声優の杉咲杏奈さんだったけど、私を含む今日の観客には猫に小判。

Life is Numbers

Life is Numbers

劇団6番シード

萬劇場(東京都)

2024/05/02 (木) ~ 2024/05/08 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

【♣️クローバーside】
いやあ、欲張りが過ぎるでしょう。17人をちゃんと把握するなんて無理だよ。
古顔の皆さんは良いとして、若手の俳優さんは中肉中背で、ほどほどの美男美女では区別が付かない。前半で撒かれた伏線を後半で回収するのだが、「○○さんはいませんか」と言われてもそれ誰?ではピタッとはまる爽快感が味わえない。

フィクショナル香港IBM

フィクショナル香港IBM

やみ・あがりシアター

北とぴあ ペガサスホール(東京都)

2024/05/01 (水) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

お二人のお話はよくできていると感心するものの、劇中映画の「フィクショナル香港IBM」は見どころが分からず途中で飽きてしまった。

なかなか失われない30年

なかなか失われない30年

Aga-risk Entertainment

新宿シアタートップス(東京都)

2024/04/27 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

アガリスク、スピードが速すぎ、情報量が多すぎだよ。ちょっと取り残された感があったのがつらい。

いつもの1シチュエーションコメディだが、今回はタイムスリップ物である。4つの時代がそれぞれ問題を抱えながら一つの場所に集まる。そこをしっかりと交通整理して進行させる、いつもの匠の技がさえる。

強いて主役を上げれば伊藤圭太さんと淺越岳人さんなのだろう。その中でも淺越さんの不思議な魅力が全編に行きわたっている。CoRich舞台芸術まつり!2023春 演技賞(『令和5年の廃刀令』)受賞は言われてみれば確かにという不意打ち感があったが、今作は受賞記念的なこともあって台本でも特別扱いがされているのだろう。堂々の存在感である。CoRichの審査委員さすがの慧眼。

山下雷舞さんもようやくアガリスクの仲間と認められたのだろう。主役級の大役を与えられて全力で応えていた。

クールビューティー鹿島ゆきこさんは今回は見せ場なし。榎並夕起さんは他の舞台とか映画とかの役作りなのか、激やせに見えてちょっと心配。江益凛ちゃんは全編元気で普通で私は不完全燃焼。おっさん目線ではどこか不安定で守ってあげたいと思わせてほしいのだ。そして今回の推しは雛形羽衣さん。ちょっと軽目のキャラだが将来の目標は国連難民高等弁務官であるという。この国連難民高等弁務官というリズムの良い言葉で3割うまい(何が?)。

アフタートークに登場した鈴木保奈美さん、去年の「セールスマンの死」ではどうもしっくりこなかったのだが、このフリートークでは頭の回転の速さが分かってさすがだなあと感心しきりだった。適切な話を反応よく繰り出してきてよどみがない。中田顕史郎さんによるとシアタートップスのトップスはあのチョコレートケーキのトップスなのだそうだ。昔は1階に店があったという。

前髪(あなたに全て捧げるけど前髪だけは触るな)

前髪(あなたに全て捧げるけど前髪だけは触るな)

MCR

ザ・スズナリ(東京都)

2024/04/24 (水) ~ 2024/04/30 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

モラハラ、ヤクザ、ゲイ、殺人、お笑い、人生訓、その他いろいろ欲張って空中分解してしまった。

まあ、そうなのだけれど、サスペンス部は良くできていた(ネタバレBOXへ)。他の部分も振り返ってみると、ああそうだったのかと思うこともあるのだが効果は薄かった。

一番気になったのはヒロイン海里の人物像である。有名俳優さんならどなたを使うことを作者は想定しているのだろうか。魅力的な役作りに作者も役者も失敗していて盛り上がりに欠けていたと感じた。

ネタバレBOX

サスペンス部が良かったというのは
・刑事にじりじりと迫ってこられたり
・無意味と思われた盗撮騒ぎが最後に回収されたり
・うるさいだけの昔の仲間にも役割があったりする
ことである。
トライアル 2024

トライアル 2024

A.R.P

小劇場B1(東京都)

2024/04/24 (水) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

[Team B]
久しぶりに完璧に楽しんだ。今年のナンバー1。
内容はコミカルな裁判もの。明るくさっぱりとした笑いで気持ちがすっきりする。ツッコミどころがあってもテンポが良いので首をかしげる時間を与えてくれない。ロジックも面白く、謎解きものとしても1級品だ。

あす月曜日の2公演には若干空きがあるという。観てない方はぜひ。

王様と私

王様と私

東宝

日生劇場(東京都)

2024/04/09 (火) ~ 2024/04/30 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

19世紀後半、ヨーロッパ列強がアジアに植民地を拡大していたころのお話。シャム(今のタイ)国王の子供たちの家庭教師となったアンナ・レオノーウェンズの回顧録が元になっている。それが小説となりミュージカルとなった。デボラ・カーとユル・ブリンナーが主演した1956年のミュージカル映画が有名である。主題歌の「シャル・ウィー・ダンス?」はだれでも知っている名曲だ。

内容を一言で言うと魔法を使わないメリー・ポピンズである。もっともこのメリーの基準は欧米は進んでいてアジアは野蛮だということで、それを何のためらいもなく貫き通しているのが心地良いくらいだ。まあそういうことを教えるために雇われたのだから当然なのだが、違和感がしばらく脳内にとどまった。

明日海りおさんの歌声はスムーズで解放感に溢れていてお話が進むにつれどんどん調子を上げて行った。北村一輝さんはあのくどさというか脂っこさというか、そういう持ち味を封印して頑固な国王をコミカルに演じていてちょっと驚いた。また、シャムの装飾や衣装が実によくできていて感動的である。迷いつつのスタンディングオベーション。

ろりえの復讐

ろりえの復讐

ろりえ

新宿シアタートップス(東京都)

2024/04/18 (木) ~ 2024/04/24 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

「ろりえ」って初めてで傾向が分からず、復讐のための伏線をバンバン張って最後に怒涛の回収という流れかと思いきや、全く違って大勢の若者が大はしゃぎするだけのお話だった。(私のような年寄りには)何の見どころもないのだけれど、最後の最後に突発する製作委員会3人衆の特大の悪あがきにノックアウトされた。そしてその後の娘の一言がツボで久しぶりに腹の皮がよじれるという感覚を思い出した。そこだけは☆4つ。

タイムトラベラー

タイムトラベラー

ミュージカル座

光が丘IMAホール(東京都)

2018/06/07 (木) ~ 2018/06/11 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

タイムトラベルものと言うと60歳以上なら「タイムトンネル(1966-67)」を思い出すだろう。トニーとダグの活躍を毎週ワクワクして待ったものだ。その第一回がタイタニック号であった。この舞台でもタイタニック号が1つのエピソードとして出てくる。「タイムトンネル」は大昔から未来まで行き宇宙人まで出てくるに及んでギャグドラマになってしまった。そんなにいくつも面白い話があるわけもなく30話も続いたのはすごいことだった。

さて、この「タイムトラベラー」ではタイムマシン製作者のイギリス人ジョン・テイラー伯爵が自分の家系を調べるために作ったという設定にしたので、時代は15世紀ヘンリー6世のころから現代までに限定される。そのおかげで(「タイムトンネル」に比べれば)しっかりと地に着いた話になった。過去を順に訪れてみると自分の祖先が結構立派なことをしているのに驚き、つい決定的なアドバイスを与えたりしてしまう。タイムパラドックスを一応気にしながらもどんどん影響を与えてしまうのはご愛敬。

祖先が皆、有名な事件に居合わせるというのはお芝居だから当然なのだが、これをどうやってエンディングに持って行くのかが現代に近づくにつれて心配になってくる。そこでジョンが明かしたタイムマシンを作った本当の意味を知って私は脚本のうまさに感動したのであった。

ミュージカル座は名前の通りに、素晴らしい歌声を聞かせてくれる。ダンスは現代的なキレッキレというものではないが、このステージにはピッタリのもので十分に盛り上げてくれる。フランスでのレジスタンス運動の場面では“「レ・ミゼラブル」のようでしょう”という煽りが入って、その通りで笑ってしまった。

珍しくポスターが売っていた。A2版(594x420)で500円。

最後に「タイムトンネル」が観たくなった昔の子供たちをがっかりさせることになるがDVDは英語音声版しかないのだよ。字幕もなし(泣)
*2023年に日本語音声版が出た(喜)

La Mère 母

La Mère 母

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2024/04/05 (金) ~ 2024/04/29 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

久しぶりに二日続けての演劇鑑賞。それも格調高そうな交互上演の2作品なので期待大だった。しかし昨日の息子の方はまあ普通だが今日の母にはガッカリ。演出の都合上内容が薄いのは仕方がないがそれにしてもこちらの想像を一歩も出ないストーリーには呆れてしまった。

まあこんなストーリーで商売が成り立つのはフランスの事情なのだろう。チェーホフの描く没落貴族の贅沢な悩みと同じだ。木戸銭を払うことのできる階層相手に商売をしているわけだ。日本のお父さんは家庭内の居場所は早々に失い、定年で会社という居場所も失うという悲惨な状態なのだが、彼らは演劇なんか観ないので芝居になることはない。そしてこんな母よりもっとたくましい(=鈍感ともいう)。

若村麻由美さんの熱演がかろうじて芝居の形を作っていた。それでようやく☆3つ。

Le Fils 息子

Le Fils 息子

東京芸術劇場

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2024/04/09 (火) ~ 2024/04/30 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

昨年だったか、隣の席に座った見知らぬ老婦人に話しかけられたことがあった。岡本健一さんの名前が出て、私が思わず「(彼は)若いのに…」みたいなことを言うと「違いますよ」と笑われてしまった。ええ?と思ってすぐ気がついた。私の中では彼はいまだに男闘呼組のギタリストなのだ(オイオイ)。その岡本さんも今では54歳、共演できる息子(岡本圭人)さんまでいるとは。

その健一さん演ずるお父さんピエール、繊細で尊大な息子テスラ(圭人)に思いっきり苦しめられる。そして離婚した元嫁にも悩まされ、夜泣きする赤ん坊の世話で寝不足になり、良好だった今嫁との関係もどんどん悪くなっていく。それに加えて職業は弁護士で大統領候補の政策案策定にも関わることを要請されているという。

いやあ大変だ。昭和の日本のお父さんならこんな息子は母親任せで知らんぷり(そして全責任を母親にかぶせる)か2-3発ぶん殴るとか押し入れに閉じ込めるとかで終わりなのだ。兄弟姉妹もいるので一人だけ駄々をこねても相手にされないし、近所にも子供がうじゃうじゃいて孤立しにくいという事情もある。しかし、欧米のお父さんはただひたすら家族を愛する。そういう相互依存の関係が悪いんじゃないのか、親も子も自分の中で完結してよというのが私の感想だ(異論多数は承知)。

素に戻るときが時々あったような健一さんに対し、常に小さな精神崩壊のエネルギーを放出している圭人さんの演技には怖くなることもあった。そして唐突ながら、影絵風な暗転が美しい。しかし、2018年にパリで初演、と新しい割に内容は通り一遍で深みに乏しい。そう感じるのはこういう若者のことに関しては日本がずっと先を行っているからだろう。

ボディガード

ボディガード

梅田芸術劇場

東急シアターオーブ(東京都)

2024/02/18 (日) ~ 2024/03/03 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

新妻聖子さん主演の回を観劇 65分+20分+65分

元はケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンの1992年の映画である。主題歌の I always love you、あの「アンダアー…」のフレーズは誰でも知っているだろう。この舞台でも新妻さんのエネルギー溢れる歌唱が楽しめる。ミュージカル版は2012年が初演でストーリーは映画版と重要な部分でも違っている。

細かく言うと文句の山なのだが余計なことを考えず、ミュージックビデオでストーリーはおまけだと思っていれば結構楽しめる。オープニングから数曲は音量が大きすぎたがその後はバラードが増えて気持ちよく聞けた。

新妻さんはミュージックフェアで何回か見たことがあるもののあまり記憶に残っていなかったが今日は舞台の全部を持って行ってしまう人だと見直してしまった。新妻さん目当ての方には絶対のお勧めだ。

大谷亮平さんも寡黙で強くて女に優しいハードボイルドの主人公の雰囲気をこれでもかと何層にも上塗りしていて感心した。まあでもこの舞台では何でもそうなのだが分かりやすすぎる。

一つだけ文句を書けば、ダンサーの体型がばらばらで多くは締まりがないことだ。新妻さんの引き立て役では恥ずかしい。劇団四季なら絶対に舞台に立たせてはもらえないだろう。

カーテンコールは長めのライブで、観客の皆さん少し不満があるのかバラバラのスタンディングオベーション。それにしても長すぎるので最後の最後のバンドの演奏を半分にしてほしい。

509号室−迷宮の設計者

509号室−迷宮の設計者

名取事務所

小劇場B1(東京都)

2024/02/16 (金) ~ 2024/02/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

この韓国の有名建築家のことを私はまったく知らないので、一般的な独裁権力による弾圧の話になってしまう。そこが残念ではある。そして独裁者の弾圧というと北朝鮮がすぐに頭に浮かぶ。そちらも舞台になるようなら演劇界もバランスが取れていると感心するだろう。

役者さんの演技は皆さん的確だった。そこは星4つ。しかし設計に関しての話は不確かなものに不確かなものを重ねただけの妄想に思えた。

桜の園

桜の園

桐朋学園芸術短期大学

俳優座劇場(東京都)

2024/02/14 (水) ~ 2024/02/15 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★

[Cherry]
演劇ってやっぱり難しいのだなあとしみじみ考え込んでしまった。観る方でなく演じる方ね。これは指導教授が悪い。もっとストーリーに起伏があって分かりやすいものでないと大学二年生では無理だよ。

アンネの日

アンネの日

serial number(風琴工房改め)

ザ・スズナリ(東京都)

2024/01/12 (金) ~ 2024/01/21 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

男性糾弾のメッセージが飛び交うかと思いきやバランスの取れた学びの多い舞台だった。終活に励むような年齢になって女性の生理の勉強をしても学んだ知識を応用する機会がないのが残念ではある。

まあしかし「生理の負担(と出産の苦しみ)がない代償として神はいくつかの能力を男性から奪った。優しい心、他人への共感能力、協調能力、コミュニケーション能力…」と考えると少し男性にも同情の余地が出てくるような気がしませんか。…しないか、残念。

推しの瑞生桜子さんは透明感を保ちつつ大人になっていて、そのまま成長されることを願うばかりだ。他の7人の方々(ひとからげで御免)も役者さんってうまいものだと久しぶりの観劇に感心の連続だった。

おまけ:アンネ株式会社は、かつて存在していた、ナプキンやタンポンなどの生理用品を製造・販売する会社。1993年(平成5年)に東証1部上場のライオン&ユナイテッド製薬(日本)株式会社と合併した。
2002年(平成14年)ライオンが生理用品から撤退、エルディタンポンをユニ・チャームへ譲渡。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

赤と黒

赤と黒

梅田芸術劇場

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2023/12/08 (金) ~ 2023/12/27 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

スタンダールの名作「赤と黒」、貧しい家に生まれた主人公ジュリアン・ソレルが貴族社会を憎みつつそこにのし上がって行く物語。いつかは読むと誓っていたがもうそんなことはないと確信する今日この頃。昔の自分にはミュージカルで勘弁してもらおう。

原作を短縮かつ改変した分かりやすいストーリー、分かりやすい音楽、溢れるバックダンスとバックコーラス。とくにコーラスが最高!単純に嬉しい楽しい。フレンチロックミュージカルということだが、昭和の昔にはフレンチポップスがたくさん洋楽トップ10に入ってラジオから流れていたりしたせいか年寄りの耳には非常になじみが良い。深さとか微妙な機微とかとは無縁であるので無心に楽しもう。フライングする人もなく見事に3rdコールで納得のスタンディングオベーション。

残念だったのはルイーズとエルザの歌がユニゾンだったこととオープニングの歌の出だしが地味でバンドの派手なイントロに高揚した気持ちが宙ぶらりんになったことである。

最初の3日間4公演はカーテンコールに撮影タイムがある。

ジャンヌ・ダルク

ジャンヌ・ダルク

キョードー東京/TBS/イープラス

東京建物 Brillia HALL(東京都)

2023/11/28 (火) ~ 2023/12/17 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

売り出し中の本格派若手女優、清原果耶の初舞台ということで出かけてみた。オープニングは暗い舞台の床が開いて白い煙と赤い光が漏れ出たところに彼女が舞台下から歩み出て来る。そしてわらわらと湧き出て来た兵士や農民でたちまち舞台が一杯になると、結構太くて低い芝居向けの声で彼女がセリフを発する。いやいや良い調子じゃないか。

脚本は中島かずき(劇団☆新感線)、演出は白井 晃で、100人にもなろうかという大勢の兵士が東京建物 Brillia HALLのさほど広くない舞台全体を躍動し、観客席の通路を走り回るのは本当に楽しい。

では彼女のまじめで繊細な持ち味と数頼みのド派手な演出の相性はどうだったのかというと……ごめんなさい、私の好みではなかったなあ。

ネタバレBOX

ジャンヌが実は国王シャルル7世の異父妹だったという設定はあんまりだ。そういうことなら沢尻エリカあたりを起用して異次元の作品にすれば良いのに。
ブルーストッキングの女たち

ブルーストッキングの女たち

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2023/02/24 (金) ~ 2023/03/02 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

お話はほとんど伊藤野枝物語である。野枝が九州の婚家を飛び出して東京に来るところから甘粕大尉らによって殺害されるまでを概観する。登場人物が皆さん濃すぎるので表面をなぞっただけでもこの長さ(75分+休憩15分+90分)になってしまう。

新国立劇場演劇研修所第16期生の修了公演。10月の試演会「燃ゆる暗闇にて」は盲学校の話ということで表情も動作もかなり抑えられていて正に研修というものであった。研修生には個性を発揮しないことが求められたのではないかと想像する。しかるに今回の修了公演では打って変わってキャラの濃い人々ばかりが登場する。研修生の皆さんは生き生きとして個性を存分に振りまいていた。

・らいてう(越後静月)美しい物腰が印象的。そのまま舞台でも映画でもTVでも通用しそう。それに髪型も着物もピッタリ似合っている。後半の出番がほとんどないのが残念。
・市子(米山千陽)華やかな空気をまとった女優さん。日蔭茶屋事件で実際は大杉は瀕死の重傷を負ったので、あの場面をもっと膨らませればぴったりの見せ場になった気がするがこれは演出の問題。違う芝居になっちゃうし。
・紅吉(藤原弥生)場の空気を舞い上がらせるムードメイカー役がぴったり。もっと出番が欲しそうだった。
・保子(岸朱紗)体が弱く病気がちで進んだ考えについて行けない人そのままであった。本当にそういう人かと思ってしまうのだがそんな人が演劇研修所に来るはずもなくこれは完璧な演技なのだ。
・野枝(伊海実紗)終始元気で明るく大役を見事に演じ切った。最後に憲兵に抗議するときの真剣な表情もすこぶる良い。
・島村抱月(松尾諒)メイクが完璧そして演技も完璧だった。
・辻潤(都築亮介)優しすぎる情けない男の雰囲気が良く出ていた。ただし普段の会話調でなくもっと演技らしさを感じたかった。
・荒畑寒村(笹原翔太)堅実な演技ですでにベテラン脇役の味があった。
・奥村博、甘粕大尉(宮津侑生)らいてうの夫で画家の優男と鬼の憲兵って、後で配役表を見て驚く。ミスプリじゃないのかと半信半疑だ。
・大杉栄(安森尚)男女関係においてのクズ人間ぶりが清々しく感じられるほど的確に演じていた。
以上16期生のみ配役表順

ネタバレBOX

冒頭、市子のセリフに「青鞜社なんかに出入りしていてはいけない、と梅子さんに叱られた」とあって、私の頭にまったく無関係に存在した津田梅子と平塚らいてうの対比に俄然興味が湧いてきた。

らいてうも野枝も結婚は二人の問題であって国家に承認してもらうものではないとして(当初は)届を出さないのだが100年後の今では同性の結婚をも国家が認めよという意見が優勢になっている。

大杉・野枝夫妻の長女の名前は野枝が「魔性の女」と呼ばれたのを逆手にとって魔子と名づけられ、その後に眞子と改名された。夫妻の子供は5人もいる。野枝は28歳で亡くなるまでに計7人の子供を産んだ。

以下、その後が印象的な二人をフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』から引用する。

甘粕 正彦(あまかす まさひこ、1891年〈明治24年〉1月26日 - 1945年〈昭和20年〉8月20日)は、日本の陸軍軍人。陸軍憲兵大尉時代にアナキストの大杉栄らを殺害した甘粕事件で知られる。事件後、短期の服役を経て日本を離れて満洲に渡って関東軍の特務工作を行い、満洲国建設に一役買う。満洲映画協会理事長を務め、終戦の最中に現地で服毒自殺した。

神近 市子(かみちか いちこ、本名:神近 イチ、1888年6月6日 - 1981年8月1日)は、長崎県出身の日本のジャーナリスト、婦人運動家、作家、翻訳家、評論家。ペンネームは榊 纓(さかき おう/えい)。1916年の日蔭茶屋事件で一躍著名になり、大杉栄に対する殺人未遂罪で2年間服役した。戦後に政治家になり、左派社会党および再統一後の日本社会党から出馬して衆議院議員を5期務めた。
君は即ち春を吸ひこんだのだ

君は即ち春を吸ひこんだのだ

新国立劇場演劇研修所

新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)

2023/11/07 (火) ~ 2023/11/12 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

一般に芸術作品の素晴らしさとその作者や演者の人間性とは無関係だというのが私の基本的なスタンスなので、「ごんぎつね」に感動してこの舞台を観に行ったわけではない。実際、この舞台で知ることができる限りは新美南吉の人生に特段興味深いところはない。結核を患った人々の悲しい暮らしそのものである。そしてまた検索してみると、南吉にはこれ以前に2人の恋人がいたり、中山ちゑとの間も冷めてはいたが死に際しては号泣したという記述があったりして舞台から受ける印象とはかなり異なる。そういうわけで、一般にこういう事実とフィクションの混ぜご飯はどうも好きになれない。

プロデューサーの狙いを勝手に想像すると、この時期に日本的な暗くて狭い演劇を一度押さえて置くということなのだと思う。そして2月の修了公演で明るく分かりやすい有名作品で締めくくるという作戦なのだろう。

役者さんで気になったのは第一に父親役の樋口圭佑さん、頑固な職人そのものだった。実は40過ぎのおっさんではないかと疑っていたのだがカーテンコールで間近に見るとハニカミ屋の好青年だった。お母さん役の小林未来さんも若さがときどきにじみ出てしまうが秀逸。恋人役の根岸美利さんの小悪魔的だが純情なのよという内面の設定に、ボディラインを強調した衣装をプラスするというサービス精神にはひれ伏すしかない。

このページのQRコードです。

拡大