ksdの観てきた!クチコミ一覧

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海越えの花たち

海越えの花たち

てがみ座

紀伊國屋ホール(東京都)

2018/06/20 (水) ~ 2018/06/26 (火)公演終了

 作家は多くの時間と労力をかけて、綿密な取材とともに氷山のごとく膨大な
資料の丹念な読み込みを行うが、作品としてあらわれてくるのはその一角にすぎない
ということを重々承知した上でいうと、ストーリー展開は予定調和的で
テレビドラマ向きのスタイルになっており、陰影に富んだ演出も手堅くはあるが、
台本と演出との相性はいまいち。
 その分、それぞれの俳優の持ち味がうまく引き出されるようなつくりに
なっていて素早い場転への参加も含め出演陣の奮闘ぶりが際立っている
(半海さんの怪演も含めふり幅のある演技、桑原さんのはじけた演技などは
なかなかのもの。下ネタギャグはほとんど半海さんが一手に引き受けているが、
台本が生真面目すぎてゆとりがなく空回り)。

 背景の舞台美術の使い方なども秀逸。舞台空間全体に対して実際の演技空間が
比較的狭く空疎感というかスカスカな感じはあるが、これはこれで登場人物たちが
内面に抱える孤独感、疎外感、絶望感などを漂わせ訴えかけている気がしない
でもない。

 紀伊国屋ホールは座り芝居などをされると特に前方の平間の客席からは演技が
非常に観づらくなることがあるが、今回、装置の一部にもなっているある程度
高さのある可動性の台の上で主に演技がされていて客席からほとんどの演技が
観やすくなるよう配慮されているのも好印象(ただ、オープニングとエンディング
の特に下手側で、この演技台の高さがかえって邪魔をしているところもあるが)。

最後の炎

最後の炎

文学座

文学座アトリエ(東京都)

2018/04/14 (土) ~ 2018/04/28 (土)公演終了

 観ながら聴きながら頭をフル回転させてオーディエンス側が
各々のイメージを想起し膨らませてゆくことを強く求められる戯曲。

 惹きつけられる場面もありスマートな演出だが、意気込みが
盆に乗って空回りして一本調子になっている感は否めず、
次々と解き放たれ押し寄せるコトバ(特に、「私たち」のセリフ)の波に
対してイメージが追いついていかないところもあり、観慣れていないと
2時間強の上演時間の間しばしば襲ってくる睡魔と格闘せざるを得なくなる
スタイルの、でも、言葉に鋭敏な役者さんなどは気に入りそうな作品
(より深く鑑賞するにはリピート観劇が必要なタイプの作品。
現在芸劇ウエストで公演中の『Photo.51』も、劇構造や
戯曲のたち上げ方など同様の印象あり、フィーリングや感覚的に
ではなくきちんと鑑賞するためには最低限高校レベルの化学、生物学の
知識をもって臨むことが大前提となっている点を別にしても)。

 盆が終始廻る仕掛けは同じで面白いが、視点が逆転する豊洲の劇場で
上演中の作品群とは対極に位置する作品。

かさぶた

かさぶた

On7

小劇場B1(東京都)

2018/02/03 (土) ~ 2018/02/11 (日)公演終了

 タンツテアーター(Tanztheater)あたりを念頭におき、新劇の女性俳優たちが
演出者らと協同し、普段の公演では武器とする言葉を極力抑え断片的ながらも
演劇的要素を積極的に取り込んだ舞踊パフォーマンスで挑んだ作品で、
一義的な解釈を押し付けることなく観る側が自由に感じ想いを馳せる余地を
残してくれている、プリミティブで粗削りだが熱意に溢れた意欲作。
 同じ下北沢演劇祭参加でほぼ同じ上演時間、同じ体力勝負パフォーマンス
の作品ということでみると演劇的物語性と言葉の比率がグッと上がっているのが
サスペンデッズの再演公演『おせん』(すでに公演は終了)。パワフルかつ
スピード感漲るパフォーマンスでなかなかのもの。
 また、舞台床が客席最前列よりもやや低くほこりが立ちやすい仕様ということで
開演前のマスクの配布と脱帽のお願いのアナウンスも観客への気配りがあり好印象。

かんかんじいちゃん、

かんかんじいちゃん、

green flowers

シアター711(東京都)

2018/02/07 (水) ~ 2018/02/12 (月)公演終了

 古くからある銭湯が舞台というやや手垢の付いた題材ではあるものの、
人物造形にすぐれた安定感のある台本、巧みな俳優陣のキャスティングの妙
そして台本と俳優の立ち上げ方を心得た飽きさせない演出の三拍子が揃った、
幅広い層が楽しめる会話劇。

THE BEAUTY QUEEN OF LEENANE

THE BEAUTY QUEEN OF LEENANE

風姿花伝プロデュース

シアター風姿花伝(東京都)

2017/12/10 (日) ~ 2017/12/24 (日)公演終了

Should I be as I am, or shouldn't I be as I am ?
と心揺れる女性主人公モーリーンの行動の先にあるものは...
作劇の妙と切れば血の出る思いに裏打ちされた、シアター風姿花伝
という劇場名にあった序破急の劇的な展開をみせてくれる濃密な舞台作品。

かけおち

かけおち

TOKISHIRAZ

ザ・ポケット(東京都)

2017/08/01 (火) ~ 2017/08/06 (日)公演終了

 舞台版『かけおち』は、デフォルメされた人物設定や強引とも言える展開など
つか作品の特色が色濃く残っていて、9PROJECT 第3回公演で初めて観劇、
今回で二度目。

 大量のセリフを早口でまくしたて熱く激しい口調でがなり立てるだけが、
つか作品を引き立たせるすべではなく、台本構成と演出の工夫次第でそれとは
また違った切り口で作品のおもしろさや魅力を際立たせられることをみせて
くれる舞台。
 また、舞台面の高さを十分高くとっていて、座り芝居が多くなる後半でも
役者さんの演技がみやすくなっているところも観客の目線に立っていて好印象。

ネタバレBOX

 客席中央通路の活用などザ・ポケットの劇場空間の特性を活かした演出もよく、
中でも、舞台上のせつこ と客席後方踊り場の早乙女との、客席をまたいだロングレンジ
でのセリフの応酬は見応えあり。

グーグス・ダーダ なになにもなになにもない NO nothing nothing nothing

グーグス・ダーダ なになにもなになにもない NO nothing nothing nothing

果てとチーク

インディペンデントシアターOji(東京都)

2017/05/01 (月) ~ 2017/05/02 (火)公演終了

 ディスポーザブルチルドレン(disposable children)それに関連しての
リフォーミング(reforming)そしてポストドラマ演劇といったあたりを
大まかに押さえておくと、観劇の際の展望がかなり開けるはず。

ネタバレBOX

 ディスポーザブルチルドレンとリフォーミングについてはBS世界のドキュメンタリーで放送された「捨てられる養子たち(disposable children)」が参考になると思う。また、ポストドラマ演劇の方は入門として花まる学習会王子小劇場での上演作品であえてわかりやすい例を挙げるとすれば、DULL-COLORED POPが本公演と15 Minutes Madeの中で上演した「全肯定少女ゆめあ」あたりが参考になるかも。

「足跡姫」~時代錯誤冬幽霊~

「足跡姫」~時代錯誤冬幽霊~

NODA・MAP

東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

2017/01/18 (水) ~ 2017/03/12 (日)公演終了

 女歌舞伎から野郎歌舞伎への移行期に材をとっており、戯曲としては
( 近松の虚実皮膜論などをベースに、プレイハウス次回公演の大々的な
宣伝なども含め)力技でずいぶんいろいろ詰め込んできたなという感はあるが
出演者の熱演と相まってその分エンターテインメント性はぐっと高まり、
作者(達)の溢れる熱い想いが十二分に伝わってくる作品。
 さらにリファインメントがかかってくれば演舞場あたりで観てみたい
とおもわせる舞台でもあった。

 ただ、後半劇に拍車がかかったのはよいが、重層的になり過ぎた構成の下で
虚実が入り乱れめまぐるしく交錯する展開は、昨今では、ややわかりにくいか
(→幕間入れは適切。作品の作りはある意味シェイクスピアのロマンス劇に
近いのかもしれないが)。

ネタバレBOX

 劇場内に足を踏み入れると、盆の備わった緩やかな開帳場、下手やや中央寄りに(変形というか直角)花道、スッポンを含む切穴、下座などが設えられたまさに歌舞伎の舞台世界がそこにあります。
燦々

燦々

てがみ座

座・高円寺1(東京都)

2016/11/03 (木) ~ 2016/11/13 (日)公演終了

江戸のレンブラント
 お栄が応為と名乗るまでの物語で、観客にvividなイメージを喚起させる演出手法などを駆使していろいろな意味での光と影(光と闇)を描こうとする意欲に溢れてはいる。が、すでにfamiliarな題材で(『眩』との対比ということもあり)、戯曲における人物造形や内面描写の点で己の画風を追求模索し自問自答するお栄の心境のような印象が残る舞台。
上演時間は休憩なしの約2時間10分。

ネタバレBOX

 また、今回も、葛飾父娘以外は役者の方は一人何役もされており、
その中でも元梅沢劇団の速水さん扮する花魁は別格でいろいろな面で
突出していましたが、その分、かえってそこだけ浮いてしまっている
印象も受けました。
 この舞台以外にも応為を扱った作品は、矢代さんの『北斎漫画』、
杉浦さんの『百日紅』、カナダの作家キャサリン・ゴヴィエルさんの
『北斎と応為』(原題『The Ghost Brush』)などいろいろありますが、
最近の作品ではこの春に出版された朝井まかてさんの小説『眩-くらら-』は
その後の「吉原格子先之図」(本の表紙を飾っています)に到る六十代までの
応為を扱っており画に対する応為の一途さを見事に描き上げた力作です。
SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】

SQUARE AREA【ご来場ありがとうございました!】

壱劇屋

インディペンデントシアターOji(東京都)

2016/04/06 (水) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度★★★★

しなやかさ
キューブの各面が完成されるごとに謎が明らかになってゆく(作品としての)流れは、しなやかで躍動感にあふれたムーブメントと相まって、点から線へそして線から面へと見事につながっていたと思います。
 また、ステージゲストの方の話は時として芝居の進行の本筋から大きく逸脱することもありますがそれにも臨機応変に対応し流れに合わせて本筋に回帰できる柔軟性も備わっている劇団のようにも感じました。

深海大戦争

深海大戦争

パラドックス定数

上野ストアハウス(東京都)

2016/04/05 (火) ~ 2016/04/10 (日)公演終了

満足度★★★★

神vs.知性
 大義としての神を手にした抹香鯨一族と武器としての知性を手にした大王烏賊一族との北極海での最終決戦の結末はいかに。進化を大きなテーマのひとつに展開される物語(異種間だけでなく有機物と無機物の間でも共通言語で意思疎通できることが当然暗黙の前提になっていますが)ですが、キャラクターがより魅力的になり緩急が効いた台本と照明効果が抜群で、シェイクスピアの史劇的な雰囲気も漂う、見事なリターンマッチの作品になっていたと思います。
 上演時間は約1時間45分。

いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK『乱鶯 みだれうぐいす』

いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK『乱鶯 みだれうぐいす』

劇団☆新感線

新橋演舞場(東京都)

2016/03/05 (土) ~ 2016/04/01 (金)公演終了

意気込みだけが空回り
 正統派時代劇をベースに新しい本格派時代劇の舞台をつくろうという意気込みは伝わってくるのですが、いかんせん実際との隔たりが大きく、構成バランスの不味さや人物造形の浅さなどどうも粗さが目につき、意気込みだけが盆にのって空回りしているような印象を拭えませんでした。

ネタバレBOX

 見せ場は最初と最後の25分ですが(舞台セットをスパイラル状に昇降させるなど回り舞台や照明の効果的な見せ方、殺陣全体のバランスはやはり抜群!)、その間休憩を含め約三時間はゆっくり丁寧にもってゆこうとしたのでしょうがそれがかえって裏目に出て気の抜けたビールのような味気ない間延びしたスピード感に欠けるドタバタ劇になってしまっていて、全般にわたってメリハリが効いておらず全体の構成バランスの不味さが目立っているように感じました。

 また、個々の人物描写が浅いので魅力を放たず物語の掘り下げが不足している台本の弱さ(小説家でもジャンルや長さで得手不得手があるように、高いエンターテインメント性と豊かな物語性が求められる今回の長編舞台時代劇の場合、江戸文化の造詣があまり深くないことも手伝って、鎌塚氏シリーズやHEADS UP!とは勝手が違ったようで、粟根さん扮する幽霊が登場したところでそれが決定的、ただ、きちんと幽霊をスッポンから登場させたり盗み細工の壁を黒衣の方が回していたりと妙に定石通りなところもありどうもちぐはぐな感じが目立つ)を新感線色溢れる演出の力で強引になんとかカバーしようとしている印象は拭えず(演舞場ならではの劇場としての特性を十分活かせていなかったのも残念)、台本と演出の相性もいまいちでした。

 ≪黒≫BLACKと謳いながらもいのうえ歌舞伎の、何某演芸場ではなく新橋演舞場での上演(この類の出し物だと規模の違いはあれ、何某一座といった大衆演劇の方が観客の心の琴線に触れるよっぽどいい芝居をします)、高い観劇料などいろいろな面を考えると、素人はともかく目の肥えたお客さんを納得させるのはなかなか難しいかもしれません。
兄弟

兄弟

劇団東演

あうるすぽっと(東京都)

2016/03/30 (水) ~ 2016/04/03 (日)公演終了

満足度★★★★

見事に再構築された舞台作品
 上巻の文革篇、下巻の開放経済篇と原作はかなりの長編で(舞台化ということでやや個々の人物描写が浅くなったり説明的になったりすることはどうしても避けられませんが)、それでもそのよさを活かしながらうまくエピソードを紡ぎ見事に再構築されていた脚本演出家の手腕そして堅実な出演陣の熱演が光る舞台作品になっていたと思います。
 上演時間は約2時間45分(途中休憩15分を含む)。

ネタバレBOX

 いのうえ歌舞伎《黒》『乱鶯』に登場する黒部源四郎の
「時流に乗れぬ者が滅びるのは世の常よ」のせりふではありませんが、
それをあたかも地で行くような物語(特に後半に)が展開しますが、実によく
人間の本質を突いているというかあさましいまでの人間の姿が描かれています。
 また、後半特に性的な描写が結構ありますが、そこはやはり演劇集団
「西瓜糖」の演出家の面目躍如ということでなかなかうまく演出されていた
と思います。

いつかの膿

いつかの膿

VAICE★

駅前劇場(東京都)

2016/03/01 (火) ~ 2016/03/06 (日)公演終了

満足度★★★★

人の心の奥底にあるもの
生きている人間の現在、その人間誰しもが心の奥底に抱えている欺瞞や傲慢さといったものが次第に露呈してゆく様が緻密に描かれ、緩急のバランスがうまくとれていた作品だったと思います。
上演時間約100分。

ネタバレBOX

 小劇場楽園や小劇場B1の規模をやや大きくしたような感じで舞台に対して
客席が設置されており、観る位置によって受ける印象は少し変わるかも
しれません。

 立派なソファーから小さな椅子まで小道具の椅子がいくつかあり役者さんがそれぞれ芝居の間座る椅子を次々に移動するとともに3つのドアを出入りしてめまぐるしく立ち位置を変えてゆきます。もちろん、客席の配置の関係から観客に公平に役者さんの表情をみせる意味もあるとはおもいますが、その動きをみているうちに自分の居場所それも自分の身の丈に合った居場所を求めてさまよう孤独な人間の姿がそこにあるようにも思えてきて、実にいすの使い方が効果的な演出(ある意味役者泣かせの演出だったかもしれませんが)だったと思います。
『TUSK TUSK』(タスク タスク)

『TUSK TUSK』(タスク タスク)

あうるすぽっと

あうるすぽっと(東京都)

2015/12/10 (木) ~ 2015/12/13 (日)公演終了

作家の役割とは
 題名にあるように実際に"Tusk Tusk"というわけではないでしょうが、出演者演出家を含め皆さんが原作にがっちりと取り組み格闘した成果が大いに表れていた舞台でした。
 特にこうした題材の場合、問題を解決してみせることではなく今そこにある問題をていねいにすくいあげいろいろ手を尽くしきちんと正しく提示してゆくことが時として(劇)作家の大事な役割の一つなのかもしれないと思わせてくれる作品であったようにも思います。
 ただ、オープニングのところあたりには劇場側の姿勢にやや疑問を感じました。

ネタバレBOX

 すべての回がそうだということではないようなのですが、私が観劇した回でそうだったので述べさせていただきます。いろいろ演出的な効果もあったのでしょうが、オープニングでの出演者の方のあの茶化したような前説というか前口上はどうなのでしょうか。来場してくれた観客への感謝の意を述べるところは子供らしさがでていてとてもよいのですが、そのあとの開演前の注意事項の伝達のところが引っかかりました。形骸化しているとはいえ観客が安全に安心して快適な気持ちで観劇できるための、またいざ万が一なにかが起こった際の極めて大切なこと(まして通常とは異なる変形舞台で、初めてこの劇場を訪れる方も多くおられたと思います)まじめに伝えなければいけないことを主催のパブリックシアターとあろうものがあのような茶化したふうに伝えてよいものだろうか。3.11の震災直後でもはたしてあの軽いノリで伝えることができただろうか。最初はその場の雰囲気で聴いていたのですが、あとからよくよく思い返してみるとやはり、制作、演出家を含め劇場側の姿勢に疑問をやや感じざるを得ませんでした。

 また、アンケートの中にに劇場スタッフの対応の項目があったので、これについても述べさせていただきます。
 劇場内の方々の対応はとても素晴らしく、変形舞台にもかかわらず座席の位置をしっかり把握し座席への案内がきちんとされていました。しかしながら、私の場合を含めしばらく受付の様子を見ていて思うのには接客の顔である受付の方は頭数は多くても完全素人の対応でした。劇場のweb予約で代金支払済指定席チケット当日劇場受取で手順通りこちらの受付番号、名前をはっきりと述べたにもかかわらずわからない様子でさらにこちらの予約確認メールをみせてもあちこちばたばたとチケットを探しまわり挙句再度こちらの名前を聞き返し見つけたチケットを相手への日時、座席番号(指定席!)の再確認もせず引き渡す。仕方なくこちらの方で日時、座席番号を再確認する始末。相手の話をきちんと聞きもしなければ劇場のチケット支払システムもろくに把握していない模様で、観劇前の観客を不安や不快な気分にさせるなんてリスペクトのかけらも感じられない、接客ということがまったくわかっていない、来場に対する子供の感謝の挨拶をぶち壊す大人の対応でした。
 劇場スタッフの対応といってもどうもちぐはくした感じが否めませんでした。
再びこの地を踏まず

再びこの地を踏まず

文学座

紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA(東京都)

2015/11/06 (金) ~ 2015/11/15 (日)公演終了

満足度★★★★

人間とはいびつなもの。
 人物設定や劇構成にはいろいろあるかもしれませんが、作者の、人の見方捉え方がそのまま反映されているおもしろい評伝劇。
  人というのはいびつなもので、その度合いが大きいほど人間的な魅力も大きくなる。が、同時にそれに関わる人々も大きく振り回されることになる。そんなことを感じさせてくれる作品でもありました。
 上演時間は約2時間30分(途中休憩15分含)。

ネタバレBOX

 途中いろいろあるけれども全体としては人間を明るい面から捉えようとするマキノさんらしい描き方の作品だったと思います(もし例えば鐘下さんあたりが同じようなモチーフで描いたらどのような作品になるのだろうかとちょっと想ってみたりもしました)。また、耳で聴いていてやや難しい表現や専門用語(例えば、感作など)を含むセリフが少なからずあったようにも思います。ただ、「鬱勃たるパトス」(北杜夫ファンにはおなじみですが)にはにやりとしました。

 第一幕の舞台は伝研時代から渡米するまでの日本での生活を描き、第二幕はアフリカに渡るまでのアメリカでの生活を描いています。

 「研究というのは投機や賭けのようなものであたればでかい。同じ苦労するなら、思い切って大物にぶつからなきゃつまらん」といいきり、渡米後破竹の快進撃を続けるものの、人生を賭けた大博打に打って出て結局は負けてしまうのですが。

 「人の天分というものは人それぞれ違うものだ。人間というのは、その半分がまことであればそれでよいのだ。世の中というのは、五分のまことに、二分きょうき、あとの三分は、ちゃめで暮らすものだ(うろ覚えで正確ではないと思いますが)。」
という劇中のセリフが印象に残っており、これが作者の野口英世の見方を表していたのかも知れません。

地を渡る舟 ―1945/アチック・ミューゼアムと記述者たち―

地を渡る舟 ―1945/アチック・ミューゼアムと記述者たち―

てがみ座

東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)

2015/10/23 (金) ~ 2015/11/01 (日)公演終了

teamworkは健在ですが
 人物造形にふくらみが出て人間ドラマとしての幅が広がり戯曲がさらに深みを増しています。舞台そのものも極めて水準の高い作品であり、1945年から現在に滑らかに移行してゆく最後の場面はすばらしく、役者さん、裏方さんが舞台裏では大変ご苦労されていたと思います。
 ただ、可動性の高い舞台装置とマンパワーを駆使した新演出は一つの試みとしては面白かったのですが試行錯誤的で(決して悪いことではないのですが)全体的にどうしてもバタバタした感じが目立ってしまい、初演の時に感じられた躍動感と鮮明なイメージを呼び起こす舞台の冴えがかなり影を潜めてしまったような印象をぬぐえませんでした。
 また、制作の姿勢に疑問あり。
 上演時間は約2時間半(10分の休憩あり)。

ネタバレBOX

 新演出は、群像会話劇に、強いていうなら身体性の演劇的な要素も取り入れてみたいという試みのようで意欲はわかるのですが、発展途上にありぎごちなさとバタつき感が出すぎていたように思います。

 また、少しためらいがあるのですが、開演時間があまり守られていないようなので、一言書かせていただきます。

 観劇日は、開演時刻から約10分も待たされ、観劇への緊張感が下がり興がそがれた状態でようやく開演。事前に遅れるお詫びや説明もなし。また、その日はアフタートーク開催日でアフタートーク開始時に主宰の方がようやくとってつけたようなおざなりのお詫びのあいさつをされていましたが、あれでは時機が遅すぎる上、残られたお客さんにだけお詫びをするというお客さんへの公平性を考えると大変礼を失していたと思います。さらに、閉館時間がせまっていたことでトーク内容も急ぎ足で参加者が少し感想を述べるという中身が極めて薄いものでした。にもかかわらず、公演の宣伝については抜け目なく行うことは決して忘れない。
 必ず開演時間を守れといっているのではなく、どうしてもある程度遅れるのならば事前にきちっと遅延の説明を行うのが、時間を都合し芝居を観に来たお客さんへの筋であり礼儀だと思います。また、休憩が入る長めの上演時間、終演後にアフタートークがあることがわかっていながら、開演時間を大幅に遅らせたことも疑問です。 後でツイッターあたりでお詫びのことばをつぶやきお茶をにごしておけばいいだろうなどという安易な対処はもってのほかです。

 お客さんは時間を割き決して安くはない代金を払い劇場に足を運んでいる、お客さんあっての商売であるということ、サービスするところはサービスしきちんとすべきところはきちんとする、そのあたりのプロ意識というものをもっとしっかりともち一期一会の姿勢で臨んでいただきたいと思います。



夕陽伝

夕陽伝

ワタナベエンターテインメント

サンシャイン劇場(東京都)

2015/10/22 (木) ~ 2015/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★

相性抜群のエンターテインメント活劇
 日本の神話特に古事記のエピソードをモチーフとしたエンターテインメント活劇ですが、末満さんの脚本と岡村さんの演出の相性が抜群で、疾走感にあふれストーリ性豊かでありながらもせりふの思いが観る側にきちっと伝わってくるしっかりした劇構成、映像、音楽、魅せる殺陣満載のアクションのバランスが実によくとれていた作品だったと思います。上演時間は途中休憩無しの約1時間50分。

ネタバレBOX

 前回の「GARANTIDO」の公演もそうでしたが、今回も出演陣の熱演が光っており、なかでも大王役の山本さんの存在感と安定感は抜群でした。
 懺悔の時間などどうかなと思うところはありますが、せりふと身体表現でできるだけ思いを引き出そうとするところやオープニングとエンディングのアクションとダンスにのせた役者紹介などは、多くのつか作品の演出を手がけ長らくその薫陶を受けてきたいかにも岡村さんらしい演出でした。



島 The Island

島 The Island

キダハシワークス

芸能花伝舎(東京都)

2015/09/06 (日) ~ 2015/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★

人間の本質(とは何か)を対話を通して問いかけてくる作品
 息のあった俳優二人がみせてくれるテンポのいいコミカルな演技を通して、
人間の尊厳、真の優しさとはといったことを問いかけ考えさせてくれる、また、
会場にあわせた効果的な演出も光る作品になっていたと思います。
上演時間は休憩無しの約100分(演出家の短い前説付き)。

ネタバレBOX

 対話を通して人間の本質、本性を問いかけてくる印象的な作品としては、
例のあれを扱ったTRASHMASTERSの「そぞろの民」、
視聴覚を鮮明に刺激してくるSIS companyの「RED レッド」が
現在上演中です。

ポンコツ大学探険部

ポンコツ大学探険部

ラッパ屋

紀伊國屋ホール(東京都)

2015/06/27 (土) ~ 2015/07/05 (日)公演終了

満足度★★★★

人生に迷えるすべての人への応援歌
 大学の寄付金集めの90周年記念式典とパーティーに参加するために集まった探険部OBと現役部員が繰り広げるあれやこれやといった一夜の物語ですが、セリフのうまさに加え構成が実によくできています。
 ほろ苦さを含んだ泣き笑いの連続の中に人に向ける優しく温かい眼差しを感じさせてくれ観る者の心をencourageしてくれる久々ににラッパ屋本来の持ち味がよく滲み出ていたというからしさが戻ってきたのではという作品になっており、鈴木節が大いに炸裂していたと思います。上演時間は途中休憩無しの約2時間。

ネタバレBOX

ポンコツ大学の正式名称はおそらく日本駒込通商大学だと思います(劇中でこのように言っているように聞こえたので)。
また、ガールズトークなど笑いどころ満載の舞台になっています。

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