いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK『乱鶯 みだれうぐいす』 公演情報 劇団☆新感線「いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK『乱鶯 みだれうぐいす』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 意気込みだけが空回り
     正統派時代劇をベースに新しい本格派時代劇の舞台をつくろうという意気込みは伝わってくるのですが、いかんせん実際との隔たりが大きく、構成バランスの不味さや人物造形の浅さなどどうも粗さが目につき、意気込みだけが盆にのって空回りしているような印象を拭えませんでした。

    ネタバレBOX

     見せ場は最初と最後の25分ですが(舞台セットをスパイラル状に昇降させるなど回り舞台や照明の効果的な見せ方、殺陣全体のバランスはやはり抜群!)、その間休憩を含め約三時間はゆっくり丁寧にもってゆこうとしたのでしょうがそれがかえって裏目に出て気の抜けたビールのような味気ない間延びしたスピード感に欠けるドタバタ劇になってしまっていて、全般にわたってメリハリが効いておらず全体の構成バランスの不味さが目立っているように感じました。

     また、個々の人物描写が浅いので魅力を放たず物語の掘り下げが不足している台本の弱さ(小説家でもジャンルや長さで得手不得手があるように、高いエンターテインメント性と豊かな物語性が求められる今回の長編舞台時代劇の場合、江戸文化の造詣があまり深くないことも手伝って、鎌塚氏シリーズやHEADS UP!とは勝手が違ったようで、粟根さん扮する幽霊が登場したところでそれが決定的、ただ、きちんと幽霊をスッポンから登場させたり盗み細工の壁を黒衣の方が回していたりと妙に定石通りなところもありどうもちぐはぐな感じが目立つ)を新感線色溢れる演出の力で強引になんとかカバーしようとしている印象は拭えず(演舞場ならではの劇場としての特性を十分活かせていなかったのも残念)、台本と演出の相性もいまいちでした。

     ≪黒≫BLACKと謳いながらもいのうえ歌舞伎の、何某演芸場ではなく新橋演舞場での上演(この類の出し物だと規模の違いはあれ、何某一座といった大衆演劇の方が観客の心の琴線に触れるよっぽどいい芝居をします)、高い観劇料などいろいろな面を考えると、素人はともかく目の肥えたお客さんを納得させるのはなかなか難しいかもしれません。

    0

    2016/04/02 02:40

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大