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黄金のコメディフェスティバル2014

黄金のコメディフェスティバル2014

黄金のコメディフェスティバル

シアター風姿花伝(東京都)

2014/09/18 (木) ~ 2014/09/29 (月)公演終了

満足度★★★★★

企画的に満点でしたヽ(´ー`)ノ
第2回との事ですが、
「コメディ」というテーマで演劇団体6団体が
それぞれに与えられた45分を使って短編芝居を行い、
それを審査員および一般観客で審査して大賞を決定するというこの企画。


まず、投票する為には全劇団観劇しなければいけないという
(当たり前ですが)このルールがいいですね。

自分のお気に入り団体だけ観劇して投票、
という偏った審査ではなく、
(心理的な公平性はともかく)
「全劇団を観劇した上で」投票する事になるという事は、

・ 各劇団に新たなファンの獲得チャンスを与える
  そして賞を狙う事により、更なる注目を集めるチャンスでもある

・ 観客側にとっても、新たな劇団を知るチャンスである

主催その他の方いわく「演劇自体は他と比べるようなものではない」
との事でしたが、こういう色々な劇団同士が自分達の
お芝居内容を評価/比較され、切磋琢磨しあう事は
劇団の為にもすごく良いのではないでしょうか?

また、CoRich感想投稿者のように舞台を観て批評する、
という人達にとっても、いつものように
1劇団だけを観ての感想ではなく

複数の劇団についてそのお芝居の内容を(出来れば)公正に審査し、
批評する、という事に審査のプロ(?)と一緒に参加出来るイベントというのは、
今後の観劇人生にとってのなんかの指標になるような気がします。

自分は今回の自分の感想と投票内容、
そして実際の各賞受賞劇団/演者さんについて
とても満足しています。
またこのようなイベントに参加したい、と思いました。

ネタバレBOX

各劇団感想おば。

●アガリスクエンターテイメント
『出会わなければよかったふたり』

本イベントの最初を務めるにふさわしい劇団、そしてお芝居でした。
脚本/演出家そして演者が仕掛けた1つ1つのネタが見事にツボにハマり、
会場中が爆笑爆笑また爆笑。

そうやって爆笑で終わらせるようで、最後に主人公の見せる優しさが
アクセントを加えるという笑い9割涙1割、
演出/脚本家の方が言っていた「コメディがやりたくて自分はお芝居を目指した」という
言葉にふさわしい見事な正統派コメディ演劇でした。


●バンタムクラスステージ
『シャンタンスープ』

コメディ5割にシリアス5割、「お笑い」の世界そのものについて
切り込んだ力作でした。
お芝居としては一番上手に喜怒哀楽の緩急を使い分けていたと思います。
(「笑い」の世界でありながら時に緊迫の空気を作り、
最後にはお笑いの世界の仲間たちの「友情」的なものまで生まれるという)

ずっと投票で迷った劇団でした。
最後は今回は「コメフェス」という事で票を外しましたが、
大阪から東京に拠点を移したというそのお芝居を今後も応援したいと思います。


●ゲキバカ
『ゲキバカ・ディスティニーランド』

難しかったですね。最初顔をゴルゴ13調にした主人公の登場から、
ちょっと「狙いすぎか?」という疑問がつきまとっていました。

物語途中も「とにかく高いテンションで」という
”テンションコメディ”とでも言うような笑いの取り方で
観劇3劇団目でちょっと疲れていた自分やその他の観客には、
この笑いについていくのは辛かったかなあ、
順番が早ければまた違った評価になったかなあ、と。

なんとか賞を取られた女優さんいわく「まだ演劇経験は浅い」との事。
お芝居の枠内に留まらないこの熱を、今後うまく放熱させる事が
出来るようになったらきっと面白くなる、とは感じました。


●8割世界
『ハッピーちゃん』

2度のダンスなど、演劇構成にこだわった劇だったと思うのですが、
ちょっとコント仕立ての笑いネタで、1つ1つのネタが引っ張りすぎたかなあ、と。
例.ハゲネタなど

ゲキバカさんと同様、このネタ振りについて行けるだけの体力があるうちなら
もう少し笑えたかな?と思いつつ、「構成の流れは良いのにもったいない」
と思わせられた劇団でした。


●おぼんろ
『U&D&O』

前説的に会場に現れた俳優が、「物語」に対する自分達の考え方などを伝える場面は、
4時間以上観劇を続けてかなり疲れた思考に対して、
一種の清涼剤のように良く響きました(いい事言うんだもの)。
目が覚めた感じがありました。

しかし、2人芝居の方、「自分の感覚を研ぎ澄ませて思い浮かべて下さい」という事で
かなり2人の言葉が紡ぎだす世界を想像し、その映像を眺めていたつもりですが、
「テーマ」が良く分かりませんでした。

そして「コメディ」路線からは完全にハズレていたかなあ、と。

観劇後のコメントなどでもやはりいい事言うんですよね、
企画/演出兼俳優の方。

次は何か「テーマ」を絞って2人芝居に挑んで欲しいなあ( ´ー`)
2人のパフォーマンス付き朗読劇的なものと考えれば
自分の好きなジャンルなので。


●ポップンマッシュルームチキン野郎
『殿(しんがり)はいつも殿』

休憩中トイレに行って帰ってきたらもう前哨戦が始まっていた。。。
鶏メイクをする役者がメイク担当に対して、
「俺の鶏に対してチキンのあいつが合わせられてないと思うんだ、
なんで鶏がチキンに合わせる必要がある?」
ともう笑いの攻撃が始まってました。

この時点で
”本舞台前の攻撃は姑息だけど観客を喜ばせるという意味で上手いなあ( ´ー`)”
と思わされましたが、この時点ではまだ今日はグーチームの
・ 正統派演劇
・ 「笑い」の世界をリアルに描くお芝居
2つで決まりじゃないかな?
と思ってました。

しかし、何よりも本日の観劇コース的にも殿(しんがり)で、
一番疲れた観客達を相手にする一番辛い立場なのにも関わらず、
本日の演劇で一番「吹き出してしまった」(前の席の人には申し訳ないですが)
爆笑の上限まで達するお笑いの上手さ、そして物語の奇想天外さと
見事なコメディ、完全に「笑い」で観客席を掌握しておいて

最後に悲しみ、そして愛と優しさをもって落とすという、
すばらしい物語の起伏。

やっぱりPMC野郎は単にブラックネタを盛り込む危険集団ではなく、
ちゃんと邪道に正統派お芝居で泣かせてくれる集団でした。

最後まで見ちゃうともう自分の中でランク変動激しくて、
投票直前まですごく葛藤させられましたが、
「PMC野郎がトップ」は外せないな、と完全に思わせられました。

※ 「ドキンちゃん」「瀬戸内寂聴」「資格のオーハラ」その他、
  危険なネタを沢山盛り込んでいる為、
  「優勝してもTVには出れないんじゃないか?」
  とずっと思ってましたが
  明日(9/29(月))の収録ではそこは一部回避策を盛り込むそうです( ´ー`)


●その他
歌のイベントがある事は自分は知らなかったけど、
いきなりアイドル登場はちょっと辛かったですね。
応援したり直視したりしようにも、想定外の出来事だったので( ´ー`)


●表彰式
最後の表彰式、審査員および観客投票によるいろいろな賞の受賞、
多少手心?(というか優しさ?)を持った賞もあったと思いますが、
今回のフェスに参加された各劇団が今後再びコメフェスその他への出場や
演劇への思いを新たに切磋琢磨してくれればいいなあ、と。
relife

relife

LOVE&FAT FACTORY

シアターKASSAI(東京都)

2014/07/23 (水) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

「犯人は誰だ!」的ドキドキミステリ
パンフに書かれたあらすじから
「死刑囚としての過去・消された記憶の行方」と
「真実の愛の形」的なものを組み合わせた物語になるのかなあ、
と想像してましたが、
(想像は当たっていながらも)
ある連続殺人事件の「犯人は誰だ!」的なミステリをうまく絡めていた為、
一癖も二癖もある登場人物について、
「この人は違うな?」
「この人の行動怪しくないか?」
と終盤までずっと自分なりに推理しつつ物語を楽しむ事が出来ました。

ネタバレBOX

(パッと見売れてなさそうな)アイドル3人組の前説から、
いきなり部屋で寝ている男とその隣にいる妻(恋人?)とおぼしき人物、
「記憶がない(昨日の、ではなく今までの)」という男に対して、
「昨日ベロンベロンに酔って帰ってきたのよ」、
と自分達が夫婦(恋人?)である事などを
それとなく納得させての物語スタート、と思ったら、


場面転じてゲスい敏腕プロデューサーに
先のアイドル3人組(パストラミ)の
プロデュースをお願いするマネージャーと、

ゲスいが故に3人それぞれの身体を要求するプロデューサー、
更には一番年下の未成年ながら自ら「アイドルになる為に」と
身体を差し出すリーダーなど、


案内パンフにあった人間関係構成図が段々と紹介されていきますが、
いきなりそこになかったはずの線が登場し始め
(妻と敏腕プロデューサーの関係など)、


ニュースで流れていた「顔面ミンチ殺人事件」を
追う刑事達の登場から更に物語が動き始めます。


・ 場面転換のテンポが(全部が全部ではないですが)
  基本的に良かったです。

  物語中(鑑識の人が愚痴ってましたが( ´ー`))、
  必要な小道具である椅子や机を自ら持ち込み
  場面を演じた上で小道具を片付けつつハケる役者と
  次の場面に入る別の役者達、

  シアターKASSAIは大道具、小道具をクルクルと
  入れ替えするのが難しい為、
  下手な?お芝居では場面転換ごとに暗転して
  いちいち総入れ替えを行ったりとする所を、
  前述のようにサクサク進行してくれた為、
  物語への集中が全く妨げられずに済みました。

・ 刑事が追っている以上、登場人物の誰かが関わっている(犯人?)であろう、
  「顔面ミンチ殺人事件」、
  通り魔的犯行かつ顔面をナイフでめった刺しにするという
  この恐怖の事件について、

  本劇の登場人物それぞれがそれぞれ一癖も二癖もあった為、
  「この人が犯人でもおかしくない!?」
  「この人はあいのりしての模倣犯になろうとしてるので違う?」
  「普通の人かと思ったら実はコイツも悪い奴?怪しくなってきたぞ!?」
  など、(今では珍しくなった)犯人が誰か分からない状態での
  ミステリ小説的な物語展開に、
  舞台観劇と同時に推理ゲームを楽しむ事が出来ました。

・ 「脳の記憶は消したが身体の記憶は残っている」という言葉に始まり、
  主人公が段々と元殺人鬼にして死刑囚「松本」であった事を
  断片的に思い出していく場面、
  (元殺人犯が今回も犯人、では普通すぎる物語になってしまう、と)
  「主人公は犯人ではない」とは思いつつ、
  最終的にこの主人公はどうなってしまうのか?
  序盤での「普通の人」としてのリサイクル人生(relife)を
  生きられるのか、
  あるいは殺人犯「松本」の復活になってしまうのか、
  物語の流れが非常に興味深かったです。

・ 殺人犯「松本」については、
  当時通り魔的犯行で被害者に致命傷を与えながらも、
  「自分が一番大切だと思う人に電話をかけ、その人が来たら助けてやろう」
  (致命傷なのでどちらにしろ助からないのですが)、
  というゲームを楽しんでいた、という過去から

  「愛情」が分からずにいたサイコパスな殺人犯、としての過去と
  終盤の妻とのやりとり、「松本」化してしまいながらも
  「(ナイフで刺して、愛を)試してもいいか?」と妻に問いつつ
  実際には自分を刺して自分自身の気持ちを確かめる、
  伏線からエンディングにかけて
  「うまくつなげてきたな」と思わせられました。

・ そもそも今回はボクラ団義中村さんの客演を観に行ったのですが、
  ボクラ団義での「善のおじいちゃん」や
  「悪役中高年(志士や悪徳政治家)」役とは大きく違う、

  本物語の中で「こいつが一番悪いんじゃないのか?
  (物語が悪い方向へ進む全ての引き金になっている)」
  ある意味主役すら食いかねない、
  エネルギッシュさとゲスさと弱い心も持った、
  敏腕悪徳プロデューサーを見事に演じてました。

  パストラミ3人が大接近してのアピールなどに対して、
  まったく表情を崩さず「くだらないね」と流す演技など、
  やはり演劇経験の長さ/深さが色々な面で生きてるんだなあ、
  と改めて感心しました。

・ 本物語の導入の更に前にあたるプロローグ
  (殺人犯「松本」改め人畜無害になった主人公が
  ヒロイン(妻)の家に来るまで)を
  無声芝居で演じられていたのが良かったと思います。

  家族といえる人を全て失った元アイドルが「金の力で」とはいえ、
  再び「家族」を得ようとする行為部分、
  下手に普通のお芝居で描いてしまうより、
  無声芝居で演じられる事で、実際表現されている内容以上に
  「きっとあんな事こんな事があったのだろうなあ」と
  想像力を膨らませるきっかけになりました。


自分としてはひさびさのドキドキ「推理劇」を組み込んだ
物語展開に本劇を心から楽しめた、と思います。


ただ、数点気になった所

・ パストラミのリーダーにして、
  「顔面ミンチ連続殺人事件」の犯人について、
  今回のプロデューサー殺人未遂の理由はともかく

  ・ どうして連続殺人を行うようになったのか?

  ・ なぜ、パストラミの缶バッジを毎回犯行現場に残したのか?

  などの部分について、出来れば物語中で描いて欲しかったなあ、と。

  本筋は「ここではない」っていう意味で
  蛇足にならないように削ったのかも知れないけど

  同様に

  ・ 元刑事で殺人犯「松本」の検挙を機に鑑識へ転属した
    (実際の刑事/警察機構でそんな異動が出来るのかはともかく)
    その理由(わけ)も知りたかったですねえ。

  その辺、ラスト前、あるいはラスト後のエピローグ的に語られたら
  (自分としては)更に良かったかなあ( ´ー`)

と、「この部分もっと深く観せて欲しかった」という部分はありましたが、
観劇中ずっとドキドキさせられたミステリ要素などが非常に
面白かったので★5つ、とさせていただきます。


PS.感想書き終えてご飯食べてて気付きましたが、
  「顔面ミンチ殺人事件」、最後の被害者はプロダクション社長だったような?
  となると、
  ・ リーダーは無差別殺人ではなく「パストラミ」の障害になる
    人物を殺していった?
  ・ しかし、分かりやすい繋がりが見つかれば
    すぐに犯人にたどり着いてしまうのでは?
  など、ちょっと振り返り考察も楽しめるのがいいですね。

縋り雨

縋り雨

牡丹茶房

王子小劇場(東京都)

2016/03/03 (木) ~ 2016/03/07 (月)公演終了

満足度★★★★★

「この方向のお芝居の一つの到達点」は言い過ぎでも「観て良かった」とは胸を張って言えます
事前パンフで主催が「女性の絶望を描いてきた」とあり
(何故か「退廃の美」という言葉と勘違いしてましたが)、

また本お芝居の始まりの印象からも、
「きっと説明通りのラストになるんだろうなあ」と
「その一方向にのみ突き進む舞台って最終的に面白いのかな?」と
少し疑念も持ちながらの観劇でしたが、

物語のスタートラインから段々と数限られた
登場人物達の事実/背景が浮かび上がり、

そして同じようで同じでなく、
救いようがないように観せては度々
「もしかして救われるのかな?」と
想像させられるようなギミック的要素もあり、

と2時間10分の大作でしたが
最終的にとても「楽しませて」いただきました。

今後、この方向のみでなく多方面のお芝居を作るなら
追っていきたい劇団かな?と思いました。

ネタバレBOX

【思った事】
事前パンフの説明、
お芝居始まりの女性3人の「母親を失った(事に起因する)」という同一の不幸、
舞台上に観える空気感から、

※ 舞台上の登場人物達の行動が裏目裏目に出て
  悲劇が更なる悲劇を生んで終わってしまう舞台の脚本/演出方法、
  名前なんて言うんでしたっけ?(チェーホフとかが得意とした一形態だったか?)

「悲劇の本質を見せる形で進んでそのまま終わるんじゃないかな?」と思ってました。

事実、女性3人を取り巻く登場人物と3つのグループの背景が見えていく中で、
「幸せになるきっかけ」となりうる人物が存在しないように見えたので、
きっと最初思った通りに「不幸に始まり大不幸に終わるのだろうなあ」と。


しかし、舞台上の役者陣について、
きっと「悲劇」という設定に向けてのお芝居をする、
と心に決めているからこそのブレのない演技と
そのひたむきさ(熱心さ)を感じ、

お芝居の世界に引きこまれ(共感、反感、嫌悪その他色々な感情で同調し)、
いつしか観劇の時間感覚を見失い、
「物語の盛り上がり的にそろそろ終わりかな?」と思ったタイミングでの、

(大きな波ではありませんが)
「もしかしたら、この物語に救いが登場する?」と
思わせられるような場面が何度かあり、
何度も色々想像させられては騙されて、が楽しかったです。

例.女子高生一家の不幸の源である「父親の暴力」に対して、
  漫画家志望が偶然にもその父親とゆきずりの情事を行う事になり、
  「ここで漫画家志望が父親を殺せばとりあえず女子高生は(ある意味)救われるかな」
  など。


また、物語についても

・ スタートラインの単純に「母親を失った3人の女性」という
  同一の不幸から始まり

・ その内容の違いと
  更には女子高生、カウンセラーの不幸に比べれば
  「自分の不幸は甘すぎる」と思ってしまう漫画家、

  しかし「それでも自分はやっぱり不幸なんだ(としか思う事が出来ない)」という
  2人との距離(2人への引け目?)を感じて
  段々と異常な行動

  ※ 女子高生の父親と知ってなお関係を持ち、
    「初めて満たされた」と。
    そしてカウンセラーの弟とも関係を持つ。

  を取って、同じ不幸を持った3人から2対1の別の立ち位置に立っていく。

  同様に女子高生:カウンセラー、カウンセラー:それをカウンセリングする漫画家志望、
  という移り変わりも興味深い流れでした。

という変化の過程について、
それぞれの心理状況を推測/共感しながら観劇していて、
なかなかに見えない各役の「心」の部分が動く作品だなあ、と。


何度か「ここで終わりかな?」と思わせておいて、
(その後更にその先の場面をを用意して)
引っ張った部分は「長すぎ」の感もありましたが、

最終的に、深い悲劇を抱えた2人は救われ、
浅い悲劇と思っていた1人が救われない、
という形、その状況がとても良かったです。

1.女子高生
  親子の関係を修復する為に病気の少女を演じ続ける事を決意する。

2.カウンセラー
  弟、叔父と通じ合う事が出来た、家族の形が復活出来た、と本人には信じこませておいて、
  弟、叔父のサイドからは
  「もう姉はまともじゃない、姉の言う通りに家族を演じてみせなければ本当に殺される」
  という恐怖支配。

3.漫画家志望
  ゆきずりの男たちとの関係を持ち続けた中で、
  誰の子か分からない子供をみごもったその後で、

  初めて同棲していた男性が「愛/結婚を誓ってくる」というタイミングの悪さ。

  そして、最終的に男性と別れ家も出て仕事もなく1人、
  「これからどうしよう」と立ち尽くす(だったかな?)の場面。


など、今まで色々見てきた
「笑った」「泣いた」「(アクションが)激しかった」「面白かった」「(テーマについて)考えさせられた」、
という爽快さなどで終わるお芝居とは一線を画した、
「気持ち良さ」とは違う何かで観客の心を刺してくるお芝居だったなあ、と。

※ 女子高生に対して父親がチーズケーキを買って帰り~の場面だけは
  一瞬家族の絆が復活するのか?と想像し涙腺が緩んでしまったかな。


・ 最後の最後の数度噛みがあったくらいで
  本当に集中してましたね、役者陣全員。


(良くなかったかな、と思った点)
・ 漫画家志望が女子高生の父親と偶然の出会いから関係を持つのはともかく、
  更にカウンセラーの弟とも偶然に出会って関係を持つ、
  というのは物語的に2対1の立ち位置を作るにしてもご都合主義的過ぎですかね。
  せめて、「漫画家志望がそうなるよう仕向けた」という物語を
  盛り込んで欲しかったかなあ、と。

・ 人数が少ない事もあり、役者陣が別役も同時に演じていたのですが、最初それが分からず、

  「カウンセラー宅に居座る叔父が漫画家志望と関係を持った?」
  と誤認してしまい、

  その後、漫画家志望が
  「不特定多数の男性とゆきずりの情事を重ねる事でのみ自分の心の空白を埋めていた」という
  これまでの登場人物(男性)全員が別役(ゆきずりの男)として登場しての
  心象風景的な描写で初めて
  「あ、別役をやってたのか」と理解したり、

  逆に漫画家志望が偶然女子高生の父親と会ったシーンは
  「あ、本当にこの人は女子高生の父親(役)の場面だったのね」と、
  更に物語が進んでから気づく、などこれまた誤認しかけてしまいました。

  可能なら人自体を、あるいは衣装ぐらいは分けた方が良かったかと。


途中まで、演技の良さや「悲劇の一方向」への観せ方の良さで
「☆4つかなー」などと思ってましたが、

後半でかなり物語に惹きつけられた上で単なる悲劇とは違った、
「優しさ」「狂気」など色々な結末を観せられた事で、

「こういう演劇には多分触れた事がなかったかな?」と思っていた自分には
とても「面白い」お芝居だったので☆5つとしました。
300年の絵画と鉄仮面の姫君

300年の絵画と鉄仮面の姫君

KENプロデュース

北沢タウンホール(北沢区民会館)(東京都)

2014/09/13 (土) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★★

ミュージカルとしては発展途上、だけど舞台は最上級!
KENプロデュースさん、初のミュージカルとの事で
今までそれなりに歌もうまく面白かったミュージカルを観てきた自分
(全然初心者ですが)にとってツッコミ所は結構あったのですが、

まず舞台/お芝居として本劇が面白すぎる、
特に後半~終盤の流れは観客の「心」を完全に引き込んだと思います。

「感動」って言葉を最近使いませんが、まさに”感動”させられました。
ハートを射抜かれるいい舞台でした(´;ω;`)

ネタバレBOX

先に「ミュージカル」としての突っ込みどころ(覚えている所)

・ 序盤の合唱まではともかく、それ以降の歌とダンスの使い方について
  お芝居が延々続いた後に盛り上がりでちょこっと織り交ぜる、など
  ちょっと「ミュージカル」を名乗るには上手い構成だったとは・・・
  (この人をこの場面で歌わせる意味は?という場面もいくつか)

・ 初のミュージカル、そして座組メンバーもミュージカル初の方など
  多数(?)との事で、歌については上手い/下手が顕著に現れていました。
  ※ お芝居自体ではなく、あくまでも歌唱の発声が出来ているか、
    歌いながらの演技が出来るか、
     その後のお芝居に「歌い疲れ」(呼吸的に)がでていないか
    などの点で

  配役について、自分ははっきりいって(お芝居としての良さを除けば)
  合唱はともかく独唱するのは「(現時点で)歌がそれなりに上手い」
  メンバーに絞るべきだったと思います。
  (その演者自身に歌わせなくても、「ミュージカル」的に
  場面を表現する方法はいくらでもあったかと)

・ ほぼ全員でのダンスはちょっとまとまりに欠けたかと
  少数のダンスはいいものがあったのですが・・・


それらを突っ込んだ上で、本劇はお芝居としてとても面白かったです。

・ 序盤からの物語の流れ/構成

・ 後半主人公(?「砂漠の風」5人全員が主人公でしょうか)が
  「本当の愛」を知る場面

・ 数は多くなくともはられた伏線のその活かし方
  特に、実は元はキツネだったという仲間が最後、
  仲間たちを救った上でキツネの絵にされてしまい・・・
  という流れ

後半から終盤、いっきにすごい吸引力で観ているこちらの涙を誘いました。
(涙なしで舞台上を見つめる事が出来ませんでした。)


そして、終わりの演者紹介をしつつ、
更に物語の終わりがハッピーエンドであった事を伝えるシーン
(キツネの絵から仲間が救い出される場面)
「ここまで使ってくるかあ!」と拍手しながら
その上手さに驚きが隠せませんでした。

その上での合唱〆(しめ)もすごく良かったです。
(本劇では聴こえのとても良い「合唱」の方をもっと使うべきだったかも知れません。)


「ミュージカル」としてはまだまだこれからの劇団だと思いますが、
舞台としては最上級に面白く仕上がっていたと思います。

PS. トラブルで剣を落とした役者を別の役者がアドリブで上手くサポートする場面など
  役者としての上手さも感じました。
朗読劇 私の頭の中の消しゴム 6th letter

朗読劇 私の頭の中の消しゴム 6th letter

ドリームプラス株式会社

天王洲 銀河劇場(東京都)

2014/05/31 (土) ~ 2014/06/08 (日)公演終了

満足度★★★★★

1年に1度の定番、だけど「必ず泣かせてくれる」味がある
2014/06/06(金)19:00回
東山光明さん×高垣 彩陽さん回を観賞。
──────────────────
もう3年連続で観劇しているので、話の本筋は十分知っていて、
だからこそ序盤の笑いの場面から既に涙腺が緩みだしてしまいました
(パブロフの犬状態)。

でも、本筋以外の部分については、毎年いろいろ脚本を手直しされてるんですね。
物語自体の展開の仕方が「一昨年、去年と違うぞ!?」と、
本筋はきっと変わらない、と思いながらも
初めて聴く物語のように楽しむ事が出来ました。

きっとそれは脚本だけでなく、朗読劇を担当するペアそれぞれもまた
毎回異なるから、という事もあるのでしょう。

高垣彩陽さんは声優/アイドル活動以外にお芝居にも
結構力を入れているのをいくつかの舞台で把握はしていました。
また、その修練の賜物(あるいは声優自体=朗読劇のプロ?)
ともいえる良い演技をされていたと思います。

ただ、僕は東山光明さんに更なる良さを感じました。

最初、「私の頭の中の消しゴム」の男女ペアの男役を
少し笑いを取る為に「チャラく」演じられていたようで、

「今までにない形だけどどうかなー、物語のこれからの展開に合うかなー?」

と半信半疑でしたが、二人の馴れ初めから悲しい流れに展開していく中、
ハンカチで目をぬぐい、時に鼻まで垂らしての感情を込めての熱演ぶりには
観劇しているこちらも、もう主人公と同じ気持ちで
時に小さな事に喜び、
時に小さな(主人公にとっては決して小さくない)事に絶望し、
とまさに(自分が男だから、というのもありますが、男役の方に)
気持ちを引っ張り込まれてしまいました。

脚本も毎年の改変を経てなお「名作」であり続け、
そして、朗読劇の担当ペアそれぞれが変わるごとに
これまた違う「私の頭の中の消しゴム」を観せてくれる、
今回のペアも自分の中では最高の物語を魅せてくれました。


2014/06/08(日)12:00回
福山潤さん×山口紗弥加さん回観賞。
──────────────────
徹夜仕事明け、3階席真ん中(舞台からはかなり遠い)などから
朗読劇が始まったと同時に泣くほどすぐに感情移入するような
事はなかったけれど、毎年ながら福山潤さんの素に近い口調による
お芝居は観客の感情をひっぱるのがとてもうまいと思いました。

楽しい序盤から悲しみの後半、そして最後まで、
3階とはいえ真ん中席だったおかげもあるのかあるいは
(特に福山さんの)発声が良かった為か声がすごく良く聞き取れた事もあり
(前回ペアの観賞では1階間近席のわりに一部セリフが判別できず)、
眠気などすぐ覚めて素直に泣けてきて福山さんのお芝居の盛り上がりに
合わせて(自分では号泣レベルの)ハンカチが必要なくらいに涙が出た。
来年も福山さんに「私の頭の中の消しゴム」やってほしいなあ( ´ー`)


2014/06/08(日)17:00
田代万里生さん×沢城みゆきさん回観賞。
──────────────────
はっきりいって残念。
田代さん、沢城さんとも個々には本読みしっかりして
役づくりしてきたものと思われます(一番感情の起伏などセリフに生かしてたかと)。

本作はお互いがそれぞれの日記を読む形での掛け合い、
キャッチボールをする形で物語が進むのですが、
2人とも個々にはしっかりしているのに、

なぜか2人が組み合わされるとちぐはぐな印象を受けました(前半すごく)。


沢城さんパート→田代さんパート→沢城さんパート→・・・


でお互いの「読み(会話)」のテンポその他が噛み合っていない感じ。

もしかしたらですが、2人一緒に合わせの稽古をする
機会がほぼなかったのでしょうか?


通常の会話劇なら(沢城さんなど特に)即興でもうまく
会話のキャッチボールをこなすと思いますが、
本作のちょっと変わった特徴(ある程度長文を含んだ日記を読む)が入った時、
交互にそれを行った時お互いの「読み(会話)」について
その違和感が顕著にあらわれていたような気がします。


せっかくの1階ど真ん中の視野的/距離的に良席だった割に、
(それぞれが別のお芝居をしているかのような違和感のせいで)
自分は2人のいずれの演技にも感情を引きこまれませんでした。


しかし、中盤以降シリアスになっていくにつれ、
お2人とも(多分)前もって作っておいた「役」になりきり
(特に沢城さんは自分の声優としての芸幅/声幅も活かし)、
2人の「読み(会話)」もかみ合ってきて、最後には涙を誘われました。


沢城さんの朗読劇でよく「揃っての稽古があまり出来なかった」という
感想を聞きますが、それでうまく行った舞台はともかく
ちょっと今回は「もう少し2人で『合わせ』の稽古ができなかったのかな」
と残念です。

ネタバレBOX

2014/06/06(金)19:00回
東山光明さん×高垣 彩陽さん回を観賞。
──────────────────
ネタバレに書くような事は特にないのですが、

・ 序盤、東山さんの感情がこもりだすまでが少し長かったかな
  (笑いのパートでは、少し感情移入よりもウケ狙いに走っていたような)。

・ 高垣さんはほんと演技うまいな
  (少し噛んだっぽい部分もありましたが)
  (初の?)朗読劇であれだけうまくヒロインの心の
  明から暗からその苦しみからを演じ分けられるのは
  やはり声優業のたまものですかね?

という点ですかね。


物語自体を振り返ると
・ 10歳で母親(片親)に捨てられ人間不信(否、人生不信)に陥り、
  一匹狼で生きてきた建築業の男。

・ (男の務める)建築業の社長の娘として何不自由なく育てられたが、
  不倫した相手との別れを引きずっていた女。

・ 女は絵が得意で、色々な所で絵を描いている。

・ それぞれが最初いがみ合う形で出会い、やがて恋に落ちる。

・ しかし男の抱えるトラウマから2人が結ばれるまでは
  かなりの苦難の道が。

・ 自分にとって女をかけがえのない人であるという事を認めた男は
  女の親(社長)に結婚を認めてもらう為に「一級建築士」の資格を取り、
  やっと2人結婚しての生活が始まる。

・ 物語の展開中、たびたび女を襲う偏頭痛。

・ 男を捨てた母親が借金苦で追い立てられている、
  という事を知った女は、
  自分達の結婚を認めてくれた女の親と同様、
  男の母親も(どんな人間であっても)家族である、
  と男を説得し、自分たちの家を建てる為に貯めていた資金を、
  その借金返済にあてる。

・ 借金を負いながらも2人幸せに過ごしていたはずが…

・ 女の頭痛の原因はアルツハイマー病による脳に萎縮だった。

・ 女の奇行(病気のせい)が始まり、
  その原因が分からない男とその家族はとまどう。
  家族側、そして男の側とも「離婚」を考えるほどに。

  女自身も、意識が正常な時に自分の奇行を知り、
  どうして良いのかに悩む。

・ そしてとうとう病気の事を男と家族は知る。

・ 今までの女の苦しみを理解してやれなかった事を男は悔やむ。

・ そして、直る見込みもなく、新しい記憶から順に、
  そしていつか生活の為の行為すら忘れてしまう、
  という医者の説明にも諦めず、
  どんな苦労の中でも一緒に耐えようとする男

・ しかしいつしか女は男の事すら忘れてしまい、
  前の不倫相手の名前で男を呼び始める。
  苦しいがそれにすら耐えてみせる男。

・ ある日、いっとき記憶の戻った女は、
  自分の日記の内容から、
  どれだけ自分が男を傷つけてきたのかを知り、
  「愛しているからこそ」と置き手紙を残して行方をくらます。

・ そして男は数ヶ月、半年、女の誕生日を越え、
  「ただ会いたい」それだけを願い続ける。

・ ある日、女から一通の手紙が届く。
  意識がしっかりしていた時に書いたものであろう
  その手紙自体にまず男は喜ぶ。

  手紙の内容は、
  「男の事を愛している、
  だからこそ私の事は忘れて早く新しい人を見つけて、
  男は不器用だから最初は苦労するけど、
  きっと結婚に向いている、
  それは一緒になった自分が知っている」と。

  そんな事は考えられない男。

・ そして手紙の送り元から、女の居場所が
  静岡県の養護施設である事を知る。

・ 養護施設へ向かい、看護師の説明で知ったのは、
  ある日女の調子が良かった時に書いた手紙が
  あった事に気づき、看護師が手紙を送付した事、

  今では記憶はまったくなく、1日中寝ているか、
  絵を描いているか、で1日を過ごしている、という事。

・ 看護師から「ぜひ話しかけてあげてほしい」と言われ、
  男は女に話しかけるが、
  「初めまして」という一言に男はショックを受けてしまう。

・ しかし、女がスケッチブックを取り出し絵を書き始めると、
  その絵に描かれているのが自分の顔である事、
  スケッチブックのどのページにも自分の顔が描いてある事に、
  「新しい記憶から順に忘れる」というアルツハイマー病にあって、
  自分の事を覚えていてくれた事を奇跡として、
  男は涙する。

そして ~ Fin ~


この本筋に対して、細かいディティール部分などを
毎年新たに起こしている形のようです。

? 韓国映画原作だったかと思いますが、
  元からこういうお話だったのでしょうか?
  映画にもちょっと興味がわきますね。


2014/06/08(日)12:00回
福山潤さん×山口紗弥加さん回観賞。
──────────────────
福山潤さんの演技は、一昨年、去年と成長度合いは分からないけど、
素に近いお芝居で十分気持ちを引っ張られ、感動させてもらいました。

※ ただ、序盤に一部脚本上の(?)過剰演出があり、
  「この物語でそこまでして笑いを取りに行く必要はないのではないか?」
  と過去作品と比べると思いました
  (前回ペアの観劇ではアドリブかと思ってました)。


あと、山口さんの演技が(この方は演劇あがりなのだろうか?)
どうにもオーバーアクション(台詞の強弱つけすぎ、演技がコテコテすぎ)な
感があり、素で演じる福山さんとのコンビは合っているとは思えませんでした。

悲しみの場面で悲しみの演技をするのは分かりますが、
笑い、驚き、など序盤の明るいパートでその声の演技/リアクションの
オーバーぶりが目についてしまいました。

ただまあ、本劇はアルツハイマー病にかかるヒロインの方が、
喜怒哀楽(病気ゆえの理不尽な怒りなど)色々な演技を
求められると思いますが、その辺後半に移るに従って、
山口さんの少しオーバーな演技とマッチしてきた感はありました。

※ ★5つ変わらずですが、福山さん7割山口さん3割採点という所でしょうか



それにしても本当に感動させるけれども、男女ともに悲しすぎるお話ですね。

夫を傷つけたくないのに病気ゆえに傷つけつづけてしまっている事を
素に戻った時に知り、一緒にいる事をあきらめた妻。

アルツハイマー病の妻という、一緒に暮らすのはとても大変な状況でも、
愛一途に妻の面倒を見続け、妻の病気ゆえの奇行/言動などに
傷つけられてもそれを耐え、しかし妻の側の愛ゆえに自分の元を
去られてしまい、
更に再会した時には既に妻の中から自分の記憶は失われてしまっているという。。。

しかし妻の描く絵の中にはすべて自分だけが存在した、という悲しい感動の形。


物語としてはいいけど、自分の人生だったら悲しすぎて耐えられないな、
平凡に生きるのが一番いいや、と感情移入ついでに思ってみました。


PS.主題歌/曲を歌われているHoney L Daysさんのミニライブがありましたが、
2人のボーカルの片割れが先日の高垣さんとのペアだった東山さん
(しかももう1人も本劇に出演されているという)
に驚きました。
素人っぽさを感じたのもそのはず、本業は歌手さんだったんですね。


2014/06/08(日)17:00
田代万里生さん×沢城みゆきさん回観賞。
──────────────────
田代さんは最初、丁度前の回を演じた福山潤さんに近い張った声質で
演じ始めたので「素に近い演技をするのかな?」と思っていたのですが、

役についてかなり自分なりに考えてきたようで、
セリフの抑揚から何から、
結構「(自分なりに掘り下げた役になりきって)演技をしているな」
という感じでした。

同じく、沢城さんについても本をかなり読み込まれたのか
(あるいは「こういうキャラでいく」と決めていたのか)
自分なりのヒロインの設定を演じている感じでした。

先に2組の舞台を観劇していた自分にとっても、
かなり「キャラを作ってきてるな」と思わせ、
期待させられるものがあったのですが・・・


感想にも上げたように、2人の個性の出し方、朗読芝居の仕方が
うまく噛み合っていないような気がしました。
(本番2回以外でほとんど一緒に稽古できていない?)


その違和感のせいで、物語の冒頭から2人の恋愛が始まり、
そしてトラブルもあって結婚にたどり着くまで、という
中盤までのパートについて、どうも自分は気持ちを
(今までに観た2組よりも)引き込まれる事が出来ませんでした。

個々に見れば「いい芝居をしている」と思えるのですが、
なぜか2人芝居として観ると(??)と感じてしまうという・・・


中盤以降、シリアスなお芝居になるにつれ、
感情の込め方や2人の会話の微調整が出来てきたのか、
かなり朗読劇としてはかみ合ってきて良いものになってきたのですが、

今度は田代さんの噛み/トチリ(?)
(難しい単語などをさっと読み通せない、妙な間を作ってしまう)
が目立ち、最初思っていた「ちゃんと本を読んでいるな」という感じが、
勘違いで本当はあまり本を読み込んでいないのか?という
疑いに変わってしまいました。

そういうマイナス点が度々目立ってしまった事もあり、
前2組に比べ、せっかく「役を掘り下げてきている」のに
気持ちを持って行かれない、というちょっと残念な状況が
かなり後半まで続いてしまった感があります。

最後には、夫を傷つけたくない為に家を出る妻、
妻からの最後の手紙を元にやっと妻と再会できるが、
妻は既に夫の記憶を失っていた、、、しかし

という感動パートでちゃんと涙誘われましたが、
この2人だったらもっと観劇者を引き込めるお芝居が出来ると思うんですよね、
(普段SOUND THEATREなどで沢城さんの演技を見ている限りでは
沢城さんの本気はまだまだこんなものじゃないかと)
そういう意味で残念でした。

★だと4つかしら。
忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆

忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆

企画演劇集団ボクラ団義

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2015/03/11 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了

満足度★★★★★

再演は進化の可能性!!
本作品については初演を観ていた為、
物語の展開にも「あっと驚く」という事はないかな、
と観劇前から思っていました。

今回特に期待していたのは以下の点でしょうか。
・ あの人のあの役再演
・ 「ヤングチーム」側がボクラ団義その他
  ベテラン役者陣チームと比べ、どれだけ
  「まだまだ役者としてのレベルが足りないと感じるか」
  「逆にフレッシュな情熱を感じさせる事ができるか」


劇場で舞台セットを見て、
センターの高台が以前より高い事や
舞台セット全体があざやかになっている事など、
そういう面を強化しての再演なのかな?
とも感じました。


実際舞台が始まって、まず映像面での強化
(ここ数年ボクラ団義公演を観るごとに
OP映像などが格段に強化されている)について、
最前列だった事もあり全体を視野に捉える事が出来なかった為、

「これは生舞台で観るよりもDVD/ブルーレイなどの
映像媒体化されるのを待って楽しむべきなのだろうか?」など、

今回(序盤は)「生の迫力」を楽しむよりも
そういった一歩引いた気持ちで観劇していたような気がします。

その後、お芝居が進む中でも
一部役については初演のキャストとの見比べで
「発声などは初演時のキャストの方が良かったかな?」
など色々思いながら観劇しましたが、

途中途中で以前にはなかった「アレ?」と思う事がありました。

以前は物語の途中途中に
「なんでこの時この人はこの行動を取ったのだろう?」など、
説明不足や設定不足(あるいはわざと隠した)などによる「疑問点」が、

叙述トリックの名手であるボクラ団義主催にして
脚本/演出家久保田唱の舞台では常につきまとっていたのですが
(そのし掛けを「良い」と思うむきも
「トリックに走る為にこじつけている」と思うむきもありました)、

今回物語の流れが「かなり自然である」と感じました。


「こういう理由だからこういう行動を起こした」など、
初演では見えなかった「何故?」の穴が全て埋められていたように感じます。

そういった物語面の補正(進化といっていい?)のおかげで、
物語自体に仕込まれたさまざまなトリックについて、
そのほぼ全てに「こういう理由があったのか」のように納得しつつ、
見入る事が出来ました。


そして、物語がクライマックスに向かうにつれ、
序盤台詞回しに少々難を感じていたキャスト達も
皆お芝居にのめり込むように集中し、
最後には涙腺に来るものまでありました。


「再演」(Play Again)は、
1度脚本/演出し上演した舞台について、
更なる進化をとげるチャンスでもあるんだな、
という事を強く感じさせられました。


早くヤングチーム公演と見比べて見たいですね。

ネタバレBOX

【思った事】
・ 以前は森田涼花さんが務めた下忍の妹役を
  今回は今出舞さんが務められていましたが、
  序盤発声/滑舌に難があるように感じ、
  「初演の方が(森田さんも声は小さかったですが)良かったかな?」
  とも思いましたが、
  後半に入るにつれて演技がみるみるうちに
  良くなっていくように感じました。


・ 下忍仲間の「だんじょう?」(でしたっけ?)
  物語のキーマンとなるあの役、
  初演は塩崎こうせいさんが務められていたかと思いますが、
  今回のキャストの方も、
  ただ優しいだけでなくひとくせもふたくせもあるような
  「智者」的ないい雰囲気が出ていたと思います。
  (その分コスケ(?)が、情熱一本槍に
  つっぱしっているようにも見えてしまいますが)


・ ストーリーテラーとして常に舞台上で状況を見守っている3人
  (老人、若者、お江様)が、
  時に目の前で起こっている内容についてツッコミなどを入れたりと
  ただの傍観者、説明者ではなく、
  次元を越えて舞台に関わっていたのが良い演出だと感じました。

・ そして、沖野さんの織田信長について、
  初演では「ただただ狂気」という印象だったのに対して、
  今回は戦国時代の寵児として様々な苦難を乗り越え
  駆け上がっていく名将でもあり、

  そして「忍びを毛嫌い」し、
  後々「本能寺の変」を迎えるまでに(史実その他で)

  忍びの者および明智光秀、豊臣秀吉、徳川家康それぞれに対して、
  これはあまりにも不遜にして非人、
  「恨みをかって当然だろう」と思わせる行動の数々が
  (初演よりも)今回強く描かれていたように感じます。

  だからこそ、この展開に至った、という事が納得できます。

  今回、本劇を観劇している中、「大筋を知っていた」がゆえか、
  結構目の前で演じられるお芝居自体には
  心を引っ張られる面が少なく感じていましたが、

  徳川、豊臣、明智の3者での会談の場面だったか(?)、
  明智が織田信長のあまりの非道ぶりに怒りを露わにする場面、
  そこで自分の涙腺に涙の火(?)が灯ったように感じました。

  そこからは前半に張りまくった伏線の回収について、
  かなり物語に引き込まれていきました。

  その上、ラストに至るまで、
  今回は色々「優しさ」的に心に触れるオチを
  追加しているのがなんともいい感じでした。
  (下忍仲間がみんな生きていたという設定や
  茶々様にも事実を告げて生きてもらおうと行動する所など)


・ 織田信長が「本能寺の変」にて死ななければならない理由、
  これが「初演時一番疑問視されていた点」だったと思いますが、
  これについて今回は「ただ暗殺するのではいけない事」、
  「秀吉がその後天下をとるにしろ、信長の系譜を終わらせる事」、
  など、ちゃんと狙いがあってそうしている、
  その為に暗殺後だんじょう?は信長の自決までを演じていた、
  という事がとてもよく理解できました。


・ ボクラ団義といえば3時間近い長編が主ですが、
  その間に休憩を入れてくれた事は良かったと思います。
  (初演でも入っていたかしら?)

  休憩直前に「盛り上がり場面」を入れた事、
  ブレイクタイムパンフレットとして現在までに
  分かった事などを示す事で、
  ・ 観劇者達を置いていかない工夫
  ・ 前半戦で物語に集中した気持ちを完全にリセットしてしまわない工夫
  がなされていたのがかなり効いていたかと。

  結構ボクラ団義の舞台感想といえば、
  「トリックの面白さ」か「2時間オーバーはツライ」かに
  二分されてしまう事が多かったように感じますが、
  今後もこのように、効果的に休憩時間を入れてくれると
  ボクラ団義お芝居のハードルが下がって、
  更なる観客が見込めるかも知れません。

  また、いつもなら観劇終了後のアフターパンフレットで
  「(本当の)事実」を改めて観客に理解させる」だけで
  終わっていましたが、
  ブレイクタイムパンフレットを使う事で、
  1.何も知らない状態
  2.今までに分かっている事
  3.真実
  のように、3段階で物語を楽しめるようになるかも知れません。

  今回は戦国時代の歴史を辿る流れがあったから
  こういう試みを行いやすかったのかも知れませんが、
  今後も続けていって欲しい試みだと思いました。


・ 本日3日目、との事でしたが、
  各役それぞれに長台詞が多い事もあり、
  ちょっと台詞トチリが多かったように感じました。

  噛みトチリぐらいは大した事ではないのですが、
  舞台自体の吸引力が落ちてしまうとツライものがあるかな、と。

  汗だくになって演じる役者皆様に「熱」は感じていたのですが、
  舞台上からの「吸引力」という感じ方はあまりしなかったんですよね。
  不思議だなあ。
  (知らず知らずのうちに客観視していたのかも知れません。)


・ 今後もどんどんPlay Againにて、
  進化した再演を期待したいと思います。


まあとにかく、二度観とヤングチーム公演が楽しみです。


PS.3月15日
どうしてここまで良く出来た舞台、役者の演技なのに
自分の感情引っ張られる力を感じたのは明智が「信長、討つべし!」と
立った場面からだったんだろう?
とずっと考えてましたが多分信長の暴虐武人ぶり、狂気
(裏では忍の画策あり)に見とれてしまっていて(客観視に近い?)、
感情ではその狂宴に母まで殺された明智が立つ瞬間に
気持ちがシンクロした、という感じだったのかしら?
あまり「見とれる」という感覚は持った事なかったので
「感情があまり引かれなかった」と捉えて、
☆4つにしてましたが
ネットでOP10分見ても「やはり秀作、名作」と思えたので
今さらですが☆5つに直しますm(._.)m
虹色の涙 鋼色の月

虹色の涙 鋼色の月

企画演劇集団ボクラ団義

相鉄本多劇場(神奈川県)

2014/01/11 (土) ~ 2014/01/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

公演期間中に進化する舞台に劇団の矜持を見せてもらいました
(本公演含め3回目の感想すいません、
感想ストッパーになってしまっていないかと
今回は感想あげないつもりでしたが、
あまりに衝撃を受けたのでやはりあげさせていただきます_(x x)_ )


東京→大阪公演中/後に急遽決まった横浜凱旋公演、
しかし大阪公演終了からこの凱旋公演までの期間が中途半端な長さである
(すぐというほど近くなく、しかし十分練習し直せるできるほど長い期間でもない)
と思われる上、ボクラ団義メンバーやその他ゲスト様それぞれ
次のスケジュール(別舞台その他の準備など)に入られているのを
ツイッターなどで知り、「今回の凱旋公演は(劇場がまた変わる事も含め)
元のクォリティに近いものを観せてもらえたらそれだけで御の字なのかな?」
ぐらいに考えていました。

しかし、「すべてはお客様の為に」をモットーとしている
ボクラ団義さんにはまたまた驚かされてしまいました。

私自身は東京で2公演観て舞台内容に大変満足させていただき
☆5つつけさせていただいていましたが
ボクラ団義さんは更なる妥協を知らない劇団でした。


(大阪公演を観ていない為、大阪、横浜どの時点で
このテコ入れ(?)が行われたのか分かりませんが)
演者さん自身が演じてみて/裏方さんが実際観てそれぞれ感じた事や
観客のアンケートの内容その他を反映し、
元の内容でも十分良い出来のモノだったのを
メンバーそれぞれ十分な練習期間が取れないであろう中でも、
更に改善/昇華させていました。
(具体的には若干不明瞭と思われた役の行動の動機付けや
その他分かりにくさの見られた(と思われる)部分などを
脚本/演技自体手直しされていました。)


元のクォリティどころか、更に良くなった舞台を観せていただけて
「横浜凱旋公演(チケット)取って良かったー」と感激させられました。


ほんとスゴイですね、元内容のレベルを保つだけでも
全然劇団のスタンスとして問題はないだろうに、

「元のもの以上のものを凱旋で観せる!」

しかも(大阪でもそうだったと思いますが)
劇場施設の広さその他の関係からも演技/演出、大道具など
公演自体の為に色々な手直しが必要になるでしょうに
(SPACE107に比べ相鉄本多劇場は少々狭い為、
その分ダンスその他から演技からを少しずつ
微調整していく作業が必要になったかと)、
その上での舞台自体の改善(昇華というレベルかと思います)、
とても素晴らしいものでした。


今までもとてつもなく凝りまくった設定/脚本を演じ、
しかもそれをちゃんと観客に理解させる、
というかなり高度な舞台をつくり上げる、
スゴイ劇団だとは思っていましたが、
こういう思ってもみなかったサプライズを知ると、
劇団としてのポリシー、矜持(?)を
本当に高いレベルに設定しているのだなあ、と
今更ながらに感心させられました。


ネタバレではないので表感想に長々と書いてしまいすいません、
今までも「ファン」ぐらいの気持ちは持っていたつもりですが、
観客として更に押したい気持ちにさせられました。

PS.あと、座布団はとてもうれしい心配りだと思いました。

ネタバレBOX

今回の観劇では、劇場自体が違う事、自分の観劇位置が俯瞰めだった事もありますが

・ イセの殺陣が以前より更によくなっていた

・ イセの情熱的な物語を表とするなら、ダークサイドに当たる
  カイの狂気が更に引き立てられていた

かと思いました。

そしてテコ入れ(というとまるでダメな所を直したような言い方になってしまいますが)として

・ アキカゼの死、一連の無声芝居部分の拡張がはかられた

・ (勘違いでなければ)サンゴの正義→欲への切り替わりがより明確になった

・ ジンがなぜ弟のサカイガワの手にかかって死ななければならなかったか、
  に明確な設定がついた

などの部分が非常に自分には分かりやすくなり、
今まで以上に物語が胸にストンと落ちる(腑に落ちる)感じがありました。

その他にも、旅立ちの際の帆の見せ方(イメージさせる形を取った)など
色々な部分に手が入っていたのかと思います。


【気になった点】
・ 1つだけ、アキカゼのナイフについての説明が増えていましたが
  「ナイフがない」の連呼、殺される場面でもなお
  「ナイフがない」の音響、あれだけ
  どこを補完する為だったのかイマイチ分かりませんでした。
  (最初、クッキーがアキカゼのナイフから船の模型を作る所につなげるのかと
  思いましたがそれっぽくもなかったような)
  
  ここだけ元の舞台よりコントチックになってしまっていて、
  笑っていいのか泣くべき所なのか迷ってしまいました。


・ 相鉄本多劇場は舞台/客席とも小さめで、スモークがけっこう回っていたのもあり
  SPACE107での観劇とはちょっと舞台上(景色)の見え方に違い(違和感?)を感じました。
  マイナスポイントという訳ではないのですが、
  DVD&Blu-ray化するのに、映像の鮮明さならSPACE107、
  でも物語はより昇華された相鉄本多劇場、とどちらを
  選択されるのかがすごく気になります。
  (大阪もありうるのでしょうが)


・ 相鉄本多劇場(あるいは大阪)用に新たに起こされた
  鉄の船(戦艦と言っていいのでしょうか?)、
  あの舞台の大きさでSPACE107よりも強固な鉄の船を
  観せていただけたのは良かったのですが、
  ちょっと先端の3パーツそれぞれがヘタった感じで
  「旅立ちの一番感動的な場面で、まさか倒れてしまうなんて
  アクシデント(笑いは取れると思いますが)はないよな!?」
  とそこだけ別の意味でドキドキさせられました。
  無事、17:00回の千秋楽をくぐり抜けられればよいのですが・・・


まだボクラ団義さんを観劇させていただいて1、2年ですが
2013年は本当にいい舞台を沢山観せていただき、
その上で2014年そうそう「劇団としての矜持」のようなものまで
見せていただけたので、今年の活躍に期待させていただきたいと思います。


PS.そうそうPlay Againも全部DVD/Blu-ray化されるのでしょうか?
  自分がワラワレのPlay Againから入ったもので
  ぜひ観直したいなあ、と
『ひとよ』★【横浜公演】6月6日・7日KAAT大スタジオ!★

『ひとよ』★【横浜公演】6月6日・7日KAAT大スタジオ!★

KAKUTA

ザ・スズナリ(東京都)

2015/05/21 (木) ~ 2015/05/27 (水)公演終了

満足度★★★★★

笑いと涙は両立出来るのか?⇒KAKUTAの回答「出来る!」
(タイトルがネタバレだったらすいません)
舞台セットはなんとも生活感の感じられる謎の事務所、
タクシーの配車センター(事務所)でした
(これは開演前に分かります)。

そこでの「一夜(ひとよ)」、いったい何が起こるのか?

開演前の暇なひととき、色々と想像してみたのですが、
開演早々からその後の展開まで、
自分の想像力のはるか上を行く物語が
狭い事務所を中心に繰り広げられました。

役者の軽妙なやりとりに「今回のKAKUTAは喜劇なのか?」
と思わせておいて、
練られた脚本は確実に胸に突き刺さっていく、
(^▽^*)と(´;ω;`)が共存し続けた、
舞台観客として幸せな2時間でした。

ネタバレBOX

あらすじ全部書くのもアレなので

・ かーちゃんは子供達を守る為に亭主を轢き殺し

・ しかし「殺人者の子供達」のレッテルを貼られた兄弟たちが
  幸せになれるほど優しい世界でもない訳で

・ そして15年が経ち

・ かーちゃんの友達だった女性は、亭主に死なれ
  痴呆の義母の毎日のイビリに耐え切れず殺人を犯し

・ シャブ中で家族に逃げられた元ヤクザは、
  10数年ぶりの息子からの連絡に喜び
  仕送りの為に運び屋に手を染めて

・ ジョニーデップが語る「ターニングポイント」は、
  それぞれが経験したただの「一夜(ひとよ)」の出来事だった

・ 子供達が自分の不幸を受け入れ笑う時、
  かーちゃんは自分の行為が「本当に正しかったのか?」と
  思い返して涙する

・ 笑いは絶えないのに、みんながみんな不幸を抱えたタクシー会社でのひととき

ただ「幸せ」になりたくて行った行為が「不条理」な結果を生み出して、
それでも人々はたくましくもそれにあらがって生きていく、

桑原脚本/KAKUTAワールドは今回も健在でしたヽ(´ー`)ノ


今日は雪山さんのトークショーがあったのですが、
メインのお芝居を笑いと涙で本当に堪能できたからこそ、
「マスクのお兄ちゃん」はキャストトークも非常に楽しめました。

ああ、幸せな時間だなあ( ´ー`)


PS.実際の所、冒頭でかーちゃんがあっけらかんと
  「父ちゃんを轢き殺してきた」と独白するシーンから
  既に自分の妄想力全開で涙がボロボロ出ていました。
  
  自分は「KAKUTA演劇を神格化してしまっているのか?」とも思いましたが、
  あの舞台上でのそれぞれ怪我をおっていた無言の兄弟達、
  そして現れたかーちゃんのあっけらかんとした
  独白から「今後」についての話からが、
  既に涙なしではいられない「不条理」な背景世界として
  自分の感じる心に刺さってたんですね。

  そこからいきなり15年ふっとんで、
  喜劇としてリスタートした時は驚きました、

  脚本/演出が「匠(たくみ)」だなあ( ´ー`)

PS2.2015/05/24(日)追記
  意図的なものだったか分かりませんが、
  ヤクザの子分の登場の仕方が「もしかして殺したはずの亭主?」とか
  タクシー運転手(ヤクザ兄貴)の電話が「裏で何か悪い事が動いている?」とか
  色々と観客の想像力を刺激して、ミスリードさせてくれたのも楽しかったです。
  (色々な方向性を想像するからこそ、事実が明かされた時
  「なるほどっ!」と驚くので)
THRee'S

THRee'S

ENG

笹塚ファクトリー(東京都)

2014/09/10 (水) ~ 2014/09/15 (月)公演終了

満足度★★★★★

すごい!丁寧!またすごい!
終幕後、演者全員勢揃いしてのご挨拶、
笹塚ファクトリーの閉館時間の都合もあり
すぐに全員ハケたのですが拍手が鳴り止みません
(自分も「これはWアンコール呼ぶべき」と拍手し続けました)。

いやー、お芝居途中に好感触を感じる部分は多々あったのですが、
ほんと終わってみるまでお芝居は分からない、
という好例と言える良作だったと思います。


ネタバレなしで何が書けるか(??)なのですが、
まずチケット購入時に貰っていたかっこいい1枚ものチラシの
劉備/関羽/張飛が実際に出揃った時、

今まで漫画、ゲームその他で色々と描かれている
3人が本当に現れたかと思うぐらい、
このお三方が適役すぎてなんだか不思議と涙腺が緩んでしまいました。


そして物語の描き方が非常に丁寧だと思いました。
黄巾党の乱から董卓の台頭、董卓征伐まで
いろいろと事象、登場人物も多く
複雑になりがちな部分や独自解釈その他を
うまく脚本/演出し役者陣もそれを見事に
演じて分かりやすく観せてくれたと思います。


そして何よりお互いを良く知る
脚本久保田唱&演出佐藤修幸コンビだからこそ、と言えるぐらい
「2人が力を出しきった作品なんだー!」
と大声で言いたくなるぐらいに感心させられ驚かせられの大展開でした。


2014/09/15(月)16:00 観劇二度目
───────────────────────
・ 三国志序盤を元に独自の物語を作るにあたっての、
  虚実の盛り込み方/事実の取捨選択のバランスの良さ
  (必要なものを必要なだけ、決して冗長にはなっていない)

  三国志を知らない人でも楽しめるし、
  知っている人は「ニヤリ」としてしまう場面も多々

・ 意味をもったダンス、映像などを上手く活用して
  早い段階から観客の気持ちを掌握

・ 場面場面の転換、シーンの差し込み方が上手い、
  観客の気持ちをお芝居から基本離さない
  スピーディーかつなめらかな展開

・ 各役者の技量の高さ(演技とそこへの感情の載せ方が上手い)、
  それぞれのキャラの個性の出し方が素晴らしい
  (他劇団公演などと比較しても若手から中年層まで
  本当に「芝居上手」が集まっているかと)

・ 体躯の大中小、殺陣の流派の違いなどを
  それぞれ出し合った夢の大立ち回り(まるで異種格闘技戦のよう)

・ それぞれの演者を知っている人をも驚かせる「配役の妙」

などなど、脚本/演出から実際のお芝居、照明/音響などに
至るまで演劇界屈指のドリームチームを結成した、と思いました。

これはひとえに演出兼総合プロデュース佐藤修幸さんの
DMF/ENGから他劇団客演などで得た
色々な素晴らしい繋がりを駆使したからこそ
生み出されたものと思います。

絶妙のバランスで作られてますね、THree'Sは。

ネタバレBOX

2時間45分の中で本当に色々な気持ちをいだきすぎて
全部は書ききれそうにないです。


1.「三国志」の雰囲気が出まくっている
  劉備/関羽/張飛に始まり董卓、曹操、袁紹(だっけ?)、
  その他多くの人々の、衣装からアクションからその他もろもろの
  演技までが見事に三国志序章の世界を表現していたと思います。

  衣装や武器も素晴らしい上、
  武器だけじゃなく武術も使う殺陣がこれまたかっこいい。

  猪突猛進の張飛や、そして何より関羽と呂布の大立ち回り
  (2人とも大体躯なのでこれがまた映える映える)、
  その他各演者陣の舞台段上1m以上の高さからの
  飛び降りを駆使してのやりとりも迫力でした。


2.思わぬキャスティングがまたいい(特に女性陣)
  光栄のゲーム三国志ではおじいちゃんだった董卓が
  本作ではめっちゃ若くてバイタリティに溢れ、そして悪で強い。

  不思議な力を持って台頭していく董卓、
  そして王允と董卓の2人が対極に並んだ場面が
  (2人とも星降る夜にタイムスリップしたものとして)なんとも印象的でした。


  また曹操も正義でありながらも、自らの野望を持っているのが
  表情から演技からに溢れてる。

  袁紹(だっけ?)のちょっと小物ぶりもイイ!

  そして何より、女性陣を大胆にキャスティングしたのが
  本作で何より素晴らしかったと思います。

  何進の妹かごう(でしたっけ?)に竹花さん、
  十常侍(字あってますか?)に客演多数で鍛えまくっている大友さん、
  今までのボクラ団義その他の作品でのキャスティングと違い、

  本作が三国志序章であり、
  ・ 中ボス
  ・ 中ボス
  ・ 大ボス(董卓)
  とゲームのように敵役が次々と控えているからこそ、
  単なる脇役ではなく重要な役回りを
  バイプレイヤーな女性陣に任せる事が出来る。

  観ていて、今までにない「面白さ、フィット感」を感じさせました。


  そして王允中村さんはもう「おじいちゃんのスペシャリスト」ですね。
  物語のストーリーテラーを年配の方が演じる事は多いと思いますが、
  実際若手の中村さんが安定の王允役、
  王允、シャンイン?(三田寺さん)、首切り役の3人が眺める形での
  物語展開とその説明について、観客席側からも
  非常に分かりやすく、そして共感しつつ眺める事が出来ました。



3.物語が非常に理解しやすく展開している(演じられている)
  先にも書きましたが、三国志序章とはいえ
  登場人物の多さ、それぞれの行動、出来事、
  そして独自解釈など色々な要素がありながら
  それを十分に丁寧に描いているからこそ
  混乱せずに観る事ができる。

  この優しさは重要だな、と思いました。
  ※ 特に本日子連れのお客さんが何人かいたので、
    「子供でも理解出来るといいな」
    と思っていたので( ´ー`)


4.思わぬ所でファンタジー
  始まりがファンタジーチックだった事を忘れさせるぐらい
  三国志の物語を展開させた上で、
  それほど大量ではなくも散りばめられた伏線が回収され始めた時、
  「ああ!そういえば最初ファンタジー展開してたわ!」
  と思い出させられるこの流れ、

  これは久保田唱さん脚本の頭脳パズルな面を見事に活かしている、
  それでいて三国志としての色も失わせていないのは
  自ら三国志大好きっ子(?)を名乗る
  佐藤修幸さんとの見事な連携プレーによるもの、と思いました。


ほんと物語に引き込まれた上で、
あっと驚くどんでん返しを用意して、
という展開、想像だにしませんでした。


? 董卓の逆さ字の「たくとう」って人は
  本当にいたんでしょうか?
  創作でもいいのですが、かなり気になりました。


ダラダラと書いてしまいましたが、
その他にも観劇中は色々な良さを感じていたのですが、
ちょっと思い出しきれません。

次の観劇(千秋楽)が楽しみです。
(その前にパンフレット読みが( ´ー`))


2014/09/15(月)16:00 観劇二度目
───────────────────────
・ 特に、董卓、張飛の衣装がかっこいい

・ 実際の殺陣だけでなく、
  立ち居振る舞いがかっこいい
  董卓が打撃後、スッと脚を引き姿勢を正す
  そのポーズは美しくすらある
  (身体能力の高さをうかがわせる)

  呂布は、当代最強を歌われるにふさわしい、
  (言葉忘れた)微動だにしない、剛の者にふさわしい振る舞い

  張飛は猪突猛進、剣と拳とで縦横無尽に暴れまくり、

  関羽は儀礼を重んじる中に呂布に負けないほどの
  剛の者である事を見せる、ダイナミックな剣使い

・ 二度観だからこそ分かる、表の演技とそこに隠された伏線(裏の意味)
  そしてお芝居自体の思わぬこまやかさ
  例.呂布が、貂蝉を董卓に斬られた場面、
    思わずそこに生まれる感情の動き

・ まずは壮大な世界観で観客を魅了し、
  そして最後には貂蝉と劉備、王允/イ・審判の悲劇、
  などにより急激に涙腺を刺激
  (本劇は感情劇主体とはいえませんでしたが、
  それでも世界観で魅了した上に
  悲劇、そして感動劇としての締めくくり)

ダディ・ロング・レッグズ ~足ながおじさんより~

ダディ・ロング・レッグズ ~足ながおじさんより~

東宝

シアタークリエ(東京都)

2014/03/01 (土) ~ 2014/03/22 (土)公演終了

満足度★★★★★

美しすぎる歌劇
3/01(土)。
ええと自分坂本真綾さんのファンクラブ入ってますが、
だから坂本真綾さんが「美しすぎる」っていう意味じゃないです。

(あしながおじさんの原作はほとんど知りませんが)
あしながおじさんによって高等教育を受けられる事になった孤児院の少女が、
おじさんからは返事はもらえないまでも毎回送る手紙の内容、
そしてそれに対するおじさんの気持ち、とってしまった行動など
全てが2人(坂本真綾、井上芳雄)のとてもきれいな歌
(単独、かけあい、ハーモニーなど)で綴られた、
本当にとても美しいミュージカルだと思いました。

コンサートと言っても通じるぐらい、会場中すばらしく声の通る
(自分はミュージカルを理解しきっていないのでこう呼びますが)
「素晴らしい歌劇」だったと思います。

3/4(火)18:30坂本真綾&井上芳雄合同FC回観賞。

前回はかなり前目の席だったけど今回は観客席一番後ろぐらいで
演者さんの表情も良く見えない距離。

しかしだからこそ歌の歌詞だったり
曲(舞台裏で演奏してるオケの皆さん)だったり
セットに合わせほどよく抑えた演出などを中心に
堪能出来た(とも言える)。

2度目でもやっぱり2人の歌のお芝居に惹きつけられ、
そしてやっぱり最後泣けました。


3/15(土)夜。

3回観賞して一番泣けた。
なぜか?

最前列だったから。

※ ただ単に坂本真綾さんとか井上芳雄さんとかの
  ファンだから近くで見たいって事じゃなくて
  前2回の観賞では
  ・ 2人の歌の素晴らしさ
  ・ 物語の感動
  はあったものの、大劇場ゆえの舞台との遠さに、
  2人の熱意/熱さがまったく(という事はないか)
  伝わってこなかった。
  本当に遠く観客として観ている感じ。

今回、最前列で2人の歌に乗せてのお芝居(主に表情芝居)が
観れて、それにより楽しい場面、悲しい場面、それぞれでの
2人の歌と演技に込めている気持ちが伝わってくるように、
こちらも気持ちを乗せて観賞する事が出来た。

だから、最初から最後まで2人の物語
(主にジルーシャからの手紙)が展開する度に
何故か笑いと共に涙が出た。

またその結末にはボロボロと泣けた。


本当にいいミュージカル、歌劇だと思う。
(出来れば毎年公演してほしいぐらい。)


だからこそ思うのが、大劇場は難しい。
今日の自分と同じぐらい舞台上の2人に気持ちを
引っ張られたのは、だいたい前から何列目ぐらいまでだろう?

ある程度の距離が発生してしまうと、表情が見えず、
(アクロバティックに)身体を使う舞台でもない為、
共感性が薄くなる、と自分は思います。


かなりの集客が見込める事からの大劇場舞台でしょうが、
これが小劇場で演じられたらそれこそ会場全体の人間の気持ちを
鷲掴みに出来たのではないか、と思うと、
「有名俳優/歌手/声優の舞台も難しいもんだな
(ファンに出来るだけ観てもらおうと思えば思うほど、
会場が大きくなりファンとの(気持ちの)距離が離れていく)」
と感じました。

まあ、遠くから観てもこの歌劇の素晴らしさは☆5ついってる
事には変わりないんですが( ´ー`)

いやあ、ファンクラブ入って1年待って良かった。。。

ネタバレBOX

3/01(土)
────────────────────
書架というか図書館のような古い本が本棚に詰まったセットの中、
(待遇も良いとはいえない)孤児院で過ごす最年長の
少女ジルーシャ(坂本真綾)に対して、

「書いた作文が面白かった、この少女は文才があるので高等教育(大学)へ
行かせてぜひその能力を磨いて欲しい」と援助する約束をするが、
ただしいくつかルール

・ 自分に礼を言うな

・ 自分の事を知ろうとするな

・ 毎月自分に近況の手紙を送れ

・ ただし返事はしない

などを設け、と素性を明かさずにチャンスだけを与えた篤志家ジャービス(井上芳雄)。


ジルーシャは帰りの車に乗る篤志家の背中、ライトで照らされた長い足の影から
「ダディ・ロング・レッグ(あしながおじさん、というよりあしなが蜘蛛)」
というアダ名をつける。


当初は単に「面白い物語を書ける小説家が生まれればそれでいいし、
そうならなかったとしてもそれ以上の事には興味がない」という風で
善意でもない、単なる変わり者として援助を行っていたジャービスに対して
毎回毎回自分の近況その他をとても興味深い手紙として送り続け、


※ 返事はしない約束でしたが、ジルーシャが病気で臥せり滅入っている時、
  ジャービスは花束を贈り少女に「ダディは私を見守ってくれている」
  というイメージを植え付けてしまいます。


ジャービスに「なんとかジルーシャという少女に会ってみたい、
しかし自分で設けたルールをどうしよう、
そうだ、少女のルームメイトは自分の遠縁に当たるので
その知り合いとして会いに行く、という形を取ろう」
とジャービスはジルーシャに近づき、


※ ジルーシャはジャービスをルームメイトの嫌味な上流階級少女の遠い親戚、
  ただしこの人だけはちょっと変わり者でいい人らしいと認識している。

※ また、ジルーシャはダディの事を老人で白髪あるいはハゲの人と思っている。


そしてジルーシャに恋に近い気持ちを持ってしまったジャービスは、
ジルーシャが他の男子と仲良くなる機会などを手紙で知る度に
「篤志家の秘書」の名の元に「そこへ行ってはいけません」などと
横槍を入れて邪魔をする、という子供のような行為を行う事になる。


そんな2人の関係(ジルーシャは毎月ダディに手紙を送り、
手紙に返事はしないがルームメイトの知人としてかなり近くに現れる)が
温かく続いて行くが、


ジルーシャが他の男子と仲良くなるのにヤキモチを焼き過ぎ、
知人としてジルーシャを怒らせてしまったジャービス、

そして「本分に立ち返り、自分はこの娘を見守る事にしよう」と
その距離を置く事になる。


そして大学卒業の日、ジルーシャは
「ジャービスとも仲違いしてしまい、自分には誰も卒業を喜んでくれる人が
いない、ぜひダディに会いに来て欲しい」とせがむが、
知人ジャービスとしては現れられても結局何も明かせないままで、
ジルーシャは「ダディは来てくれなかった」と悲しむ事に。


そしてジルーシャは大学と自分の努力で学んだ文才を活かして
小説を出版社に売り込み、自分のいた孤児院の理事になる事が
出来るまでに成長する。


そして、ジャービスは(ダディではなく)ジャービスとして
ジルーシャの元へ現れ結婚を申し込むが、ジルーシャは
「自分が親の顔も知らない孤児院育ちだと知ったら
ジャービスはきっと後悔するかも知れない」とその申し出を断ってしまう。

この全てをジルーシャはダディ(=ジャービス)へ手紙として送ってしまう。


そしてダディ=ジャービスであり、ジルーシャの想いの全てを本当は
知っているジャービスは、ダディとして「1度会おう」とジルーシャと
とうとう対面する事になる。


・ ジャービスが自分の手紙を読んでいた事に怒り、

・ ダディの知り合いだと思って怒り、

・ そしてダディが老人ではなく若々しいジャービスであった事、
  それを隠して自分に会いに来ていた事に1度は怒るジルーシャ、

しかしそんな事もまた許して結ばれる2人。


まさに自分が聞きかじりで知っていた「あしながおじさん」のお話でした。




で、すごいのがこの物語が全て
・ ジルーシャからダディへの手紙、という歌

・ ダディ(ジャービス)の反応、という歌

など、歌に継ぐ歌、歌、歌で演じられている事。


坂本真綾さんの歌声の綺麗さは知っていましたが、
それに応じる井上芳雄さんもこれまた張りのある良い声で
真綾さんの問いに返す、といった形で
2人のハーモニー、かけあい、などが歌で綴られます。


はっきりいって「ここまで全てを歌で表現する」
ミュージカルは観た事がありませんでした。

※ 演劇の合間に歌が入るのではなく2人の歌に聴き惚れる事で
  物語が進んでいく、という形。

自分、実際はこのミュージカルを観たいが為に
坂本真綾さんのファンクラブにまで入りました。
(前回買おうとしたらとんでもない早さでSOLD OUTし、
ファンクラブ会員しか無理なのかな?と思ったので)

坂本真綾さんの歌も好きは好きですが、
元々長年の歌手活動の歌のほとんどを知らないので
そもそもはファンクラブまでは考えてませんでした。。。




いやあ、でも本当にファンクラブに入ってこのミュージカル公演を
見る事が出来て良かったと思います。

最後に2人がキスしてしまう所はちょっと「うわっ!」と照れ(*ノωノ)と
男としての悔しさ(それは鈴村健一さんが思うべきものか)なんかも
ありましたが、この2人とそのバックで演奏を続けたバンドメンバーの皆さんの
舞台は本当に素晴らしいものでした。


自分、ミュージカルには詳しくないのですが、
「団体で演じるもの」というイメージがあるので、
これは「ミュージカル」というより「歌劇」と言った方が良いのかな、
とか意味ない所で悩んだりもしてしまいました。


前半1時間ちょい、休憩20分を挟んで後半も1時間ちょい、
合わせて2時間半ほどの長丁場を、「歌」で全て表現しきった
このメンバーのお芝居は本当に素晴らしいと思います。


いやあ、この歌劇にたどり着けて良かった、
という実感がすごく湧いています。

PS.坂本真綾さんのファンって男よりもアラフォー女子とかが多いんですかね、
  今日の会場を見ててそう思いましたが・・・
  まあ、だからといってどういう事もありませんが( ´ー`)


─────────────────────────
3/4(火)18:30坂本真綾&井上芳雄合同FC回観賞。

「さて2回目はどういう観方(観劇の仕方)しようかなー」とか
思ってたら今回は最後方席と言っていいような席だったので
坂本さんも井上さんも表情はよく見えない。

そういう意味でも
「せっかくのミュージカルなんだから(1回は)
演者さんの演技よりもその歌と歌詞、生オケ演奏、
そして演出面に集中して観賞しよう、と決めた。

・ 歌については(ムード的に)「明るい場面」「暗い場面」などで
  (印象はガラッと変えて演奏してるが)使いまわされる曲
  (それに対して歌詞の方はその場面のお芝居に合わせ変更したもの)や、
  本当にキーとなる場面でだけ演奏するメイン曲/歌詞だったりと
  メイン曲と汎用曲とが使い分けられてるのかな?という印象を受けた。
  (実際CD予約したのでそういう構成だったか後で確認しよう。)

  歌詞の方は場面を表すセリフ的なものと
  原作のテイストとも言える英単語/フレーズを組み合わせたもの
  (チャリティー(義捐/支援)など)と、
  よく聴いてみるとお芝居の進行として以上に
  なんだか味のある内容が多かった。

  それも単に1人で歌い、2人で歌い、ではなく、
  1人が歌ってその合いの手を2人目
  (主にあしながおじさんジャーヴィス(井上さん))
  が入れたり、と中々技巧に凝った歌い方も多く見受けられた。


・ 演出面は、まずセットが少女ジルーシャ(坂本真綾さん)の日常を表す
  前側と、その後ろ書庫/図書館といった趣のあるジャーヴィスの事務所。
  そこに対してスポットライトで2人のシーンの切り替えをしたり、
  窓を開けると夏の日差しがあったり、
  舞台上に配置された数多くのトランク/箱を
  時にベッド、時にトランクそのもの、時にテーブル、時に山、
  など色々なものに見立てるという面白い試みがされていたり。


※ あと、初回演者さんに集中するあまり見逃してしまっていたのが、
  ジルーシャの手紙一通一通をジャーヴィスが本棚のいたる所に貼っていく場面。
  前回は中盤の休憩でスタッフさんが貼っていたのかと勘違いしていたが、
  進行に合わせ1枚1枚ジャーヴィスが貼っていたのだった。
  (スタッフさんも貼っていたようだけど)


全体俯瞰で(舞台全体を視野におさめ)、その歌詞の内容を
(一部聞き取れない部分もあったが)理解しつつ観劇すると
初回の2人の歌劇そのものに感動していたのとはまた違う、
演者として各役の2人の心情面が
(歌詞やその歌い方/感情の込め方、また演奏のされ方などから)
分かってきて、少し違う楽しみ方が出来た(と思う)。


前半1時間20分ぐらい、後半1時間20分ぐらい、
と2時間40分ぐらいの構成のほぼ9割が歌で構成されているこの舞台、
終演後のトークショーで聞いた所によると、
2人そろっての練習はそれほど出来ていない(個人練習がほとんど)、
だったらしい。

それにしては(井上さん?真綾さんだったか?)が言っていた、
「初演時は2人の歌の終わりがずれたりと色々合わせきれなかった面もあるが、
今回はそういう部分がこなれてきたのかピッタリ合うようになった。
これで4日目、まだまだ舞台は続くのできっともっと2人の息も合うようになる。」
との事だったが、本当にすばらしく2人の歌とその掛け合いが
見事に合っているな、と思った。


あと井上さんが「ジャーヴィスも思えばかわいそうなんですよ、
お金持ちの名門貴族に生まれたからといって、
名門貴族ゆえの義務として福祉その他を行わなければいけない立場にあった」と。

だから、あしながおじさんの始まり、ジャーヴィスは
(義務として)支援はするが自分の事は勘ぐるな、関るな、
と9箇条を設けてジルーシャに対して壁を作っていたのか、と
なんとなく当時の貴族の生活が理解できたような気がした。


もう1回観るけど今度はどの辺の席かな、
1回は完全に目をつぶって歌と演奏に聞き入るのもいいかな、
と思う(ただ、周りの雑音(ビニールがさがさやって飴食ってたりと)も
かなり聴こえちゃうんだよなあ…自分神経質なのかしら)


────────────────────
3/15(土)

今回ネタバレないので感想は表にあげてしまいました。

なので、気にした点といえば、

2人の協奏(曲)、そして競争、
最前列で観賞する際
・ 2人がそれぞれかぶせて歌う時どちらを見ればよいのか
・ 片方が歌い片方が歌に合わせたお芝居をする時どちらを見ればよいのか

近すぎるがゆえに迷う場面が沢山でした。


表情劇や小芝居では井上芳雄さんに一日の長があるな、
と思いましたが、
ジルーシャの全ての手紙を歌い切る坂本真綾さんは
「これこそ一流の歌手!」と思わせるものがあり
(井上さんの歌もすごく良かったですが)、
この2人の共演あってこそのこの舞台なのだなあ、と。

また、近くから観てやっとセット上の気付かなかった演出に
いくつも気づきました。

・ ダディロングレッグズを見た時、ジルーシャに光が差し
  それがダディならぬジルーシャ自身の影をあしながおじさん状態に
  していた事

・ ロックウィロー農場の場面、2人が窓を開けますが、
  同時に書庫の本棚の後ろにも
  ロックウィロー農場の風景が広がっていた事。

その他もろもろ。


3回の観劇で真ん中、一番後ろ、一番前、と
観劇を楽しむ為の全ての位置で観れて良かったな、と思いました。


ああ、幸せ( ´ー`) ファン以外のみんなにもこの気持が伝わるといいなあ・・・
シカク

シカク

企画演劇集団ボクラ団義

サンモールスタジオ(東京都)

2014/12/18 (木) ~ 2014/12/28 (日)公演終了

満足度★★★★★

栗田「まあ!これはただの『会話劇』なんかじゃないわ、『ボクラ団義の会話劇』なのよ!」
山岡「ああ、これをそんじょそこらのスーパーで並んでる会話劇と
  一緒にしてもらっては困る。
  これはあの企画演劇集団ボクラ団義が丹精込めて作った、
  ロジカルミステリの傑作会話劇なんだ!」
と美味しんぼネタは置いておいて・・・


編成:竹石さん、沖野さん、大神さん、平山さん


何を書いてもネタバレになってしまうので内容には触れられないのですが、


普通、(特に少人数の)会話劇と言うとその登場人物達の
言葉のキャッチボールの楽しさ、悲しさ、怒りなどの感情劇とその深さと、
その裏に刺し込まれた脚本/演出家のメッセージ/テーマに対して
共感出来るかどうか、で面白さが決まるものと思ってました。


しかし企画演劇集団ボクラ団義の「ほぼ4人芝居『シカク』」の会話劇は、
いつものダイナミックな殺陣その他がなくても
見事に観客の感情・思考をがっつり掴んで自由自在に動かしまくって、
というロジカルミステリ脚本の第一人者久保田唱と
情熱のベテラン役者陣が揃ったボクラ団義だからこそ、

そしてならでは!と言いたくなるほどに
「思考迷路」(攻殻機動隊の用語( ´ー`))に
陥りそうなくらいに心を物語に動かしまくられた、

「ハイパー脳トレ(アクションなし版)」とでも言うべき
見事な会話劇(会話物語とでも言うべき)でした。


あとこちらに書ける感想として、
前公演「耳があるなら蒼に聞け!」の時、
初めてのスタンプラリーイベントという事で
5回までは観劇してみたのですが、

何度観ても「名作である」とは思うものの、
1週間1ヶ月1年と間も空けずに連続で観劇していると、

何回目かで「伏線回収などの面白さ」を越えて、
同じネタを繰り返し観ている事により
感動度合いが減ってしまうのを正直感じていました。

※ はっきりいって「同じお客さんに10回観劇させる努力より、
  新しいお客さんを開拓するのが正道なのでは?」と思いました。


しかし、今回のスタンプラリーイベント(再観劇のお誘い)は、
それとは一味も二味も、その意味が異なります。

スターシステム?(看板俳優を中心として、脇役もバイプレイヤー(脇役としてのベテラン)を配置した形)の
構成を中心にいつも編成してきたボクラ団義、

正直「この俳優さんのもっと深いお芝居を長く観てみたい!」と思っても、
それは「客演舞台でどうぞ」という形になっていたかと思います。
(まあ集客の為には観客を呼べる看板俳優を中心に据えない訳にもいかないのですが・・・)

しかし、役者ファンというより劇団自体のファンの自分には、
全役者の芸幅とその力量が見れない
(脇役の方は出る場面やその背景設定などが限られていて表に出てこない)、
というのは非常に残念でした。


特に最近ENGのTHRee'sで

※ あのお芝居は人が主役というよりも
  「三国志序章 新案」とでも言うように
  物語自体が主役という形式だった事もあり

ボクラ団義のベテランから若手演者までが
「それぞれの場面まるごと」をもらって
そこでかなりいい演技をしていたのを観て、

「ああ、こういう舞台が観たかったんだよなあ」
と(お父さん的心情で)涙腺を緩ませてしまいました。




そして今回の「シカク」、
「耳があるなら蒼に聞け!」の時、
「次は会話劇かつ4人芝居」という情報にも驚きましたが、
その4人を劇団員フルアサイン(竹花さんはお怪我の関係で今回は残念でしたが)と聞いて

「これこそ劇団員というより劇団自体のファンである自分や
その他の観客が何度でも色々なキャストで観劇したい、
全劇団員フルコンプリートする為に再観劇したくなるタイプの舞台、
そしてスタンプラリーが活きる舞台だ!」と思いました。

また、ゲスト様についても
ボクラ団義本公演でも何度も絡んでいるベテラン演者陣
(中野さんはENG THRee's共演ですが?)の出演に、
これまた観たかった組み合わせ、と期待させられました。


残念でならないのが、こんなにレベルが高い舞台だと知っていたら
もっと早くフライヤーでキャスト編成を確認して、
全キャスト登場回をフルコンプリート狙えば良かったかな、という事です。

※ 正直、「4人の会話劇」と聞いた時から
  普通に会話劇をやっちゃって、
  感想「突拍子もないタイトルの割に案外普通でした」という事に
  ならないか心配で様子見の4回予約でした。

とりあえず、予約間違いで押さえられなかった一部演者様の舞台は
この感想書き終わったらすぐ予約します。


表感想がこんなに長くてすいませんm(_ _)m

ネタバレBOX

※ 今まで感想は1舞台に対して1投稿にしてましたが、
  やっぱり何度でも観ているものについては
  その回その回で感想があるので
  (特に今回のようなキャストの異なる芝居では)
  別々に感想を上げる事にします。


2014/12/18(木)19:00観賞

編成:竹石さん、沖野さん、大神さん、平山さん

・ 舞台開始の白幕裏、影絵での暴行シーンから、
  もうボクラ団義マジックは始まってたのかな

  あそこで「あれ?暴行してるの沖野さん?」と沖野犯人説、
  が頭の片隅に置かれました。
  それがまさかここまで動くなんて・・・

  ある意味沖野さんは犯人でしたが、物語としては被害者でもあるんだなあ・・・


・ 会話劇というと=静の舞台
  というイメージでしたが、本当に(いつも以上に)
  動きまくる物語でした。

  アクションがない、間と闇を有効活用していた事などから、
  物語自体の展開の多さがよく感じられました。

  最初、暴行事件、彼氏との突然の別れ、はあれども最後新しい彼氏と
  楽しくバーベキューする、愛のある終わりを迎えたのか、
  と思わせた次の瞬間

  男B沖野さん「死んだのは俺だった!」(彼女に殺されたのは俺だった、だっけ?)


  と物語が思わぬ方向へ展開し
  (手袋は確かに気になってましたが、今が丁度冬だったのであの伏線は読めませんでした)


  今度はヒロインとの仲がずっと偽の恋愛だった、演技されていた、という話から
  失明自体が嘘、犯人を探している、という話へ。


  この頃に気になりだすのが、
  あくまでも男A竹石さん(彼氏)、男B沖野さん(犯人)、女平山さん、
  の3人(の三角関係)が目立ち、
  「恋の話である」と何度か繰り返される台詞からも、
  これだと男C大神さん(ヒロイン兄)は目立たず、
  「シカクじゃなくてサンカクなんでは?」

  と思わせておいて(きっとこれも久保田唱流人心操作術なんでしょうね・・・見事に騙されました)


  更にヒロインと兄、そしてヒロインの過去の悲しい物語、
  更には犯人が「犯人ではない(心臓の記憶に操られていた、かつレイプはしていない)

  と動き出して、


  現在~未来のバーベキューまでの間のいくつかのシーンが何度も
  リプレイされる度に
  観ているこちらの感情と思考を
  ・ 恋の話?
  ・ 殺された?
  ・ 犯人探し?
  ・ 過去の悲しい記憶と兄妹のいびつな関係、
    そしてヒロインの本性(復讐心)
  ・ でもみんな「生きる」決意をした?
  と何度も何度も自由自在に思考操作されてしまいました!

  最近ご無沙汰だった事もあり、
  「ああ、これぞボクラ流ロジカルミステリ
  (演劇スタイルは今回は会話劇ですが)」
  と、ちょっと懐かしさも感じました。


・ 最後の締め、男B沖野さんがヒロインを助けようと(実は自殺しようと)川へ飛び込むシーン、
  その叫びを男A竹石さんが
  「生きる資格じゃなくて、あいつは(ヒロイン兄の記憶も蘇った)俺には死角はない!と叫んだんだ」
  という言葉が胸にグサリと刺さりました。


・ かなり小さめの劇場(椅子も小さい)でしたが、
  演出方法が面白いものばかりでした。

  白幕の影絵による暴行シーンに始まり、
  いつものような映像、
  プロジェクションマッピング?(でしたっけ?あの箱に映像投影する技術)、
  群舞的なダンス、
  そしてヒロインの失明した世界を表す為の真っ暗闇での会話劇、
  最後の群青色の川を表す天井落ち、
  などなど。


喉を痛めてしまっていて咳をして舞台の邪魔をしてしまうのが大変申し訳ないのですが、
ぜひ出来るだけ出演キャストをコンプリート出来るよう
更に観劇数を増やしたいと思いますm(_ _)m
舞台 新耳袋3

舞台 新耳袋3

タンバリンステージ

ザ・ポケット(東京都)

2014/04/02 (水) ~ 2014/04/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

怖くて面白い、怖面白い(こわおもしろい)作品(それも物凄く)
4/4(金)観劇。
ボクラ団義久保田唱さん作/演出+団員多数出演という事で、
僕自身まったく不得意なジャンルである
「オカルト/ホラー系ミステリ」の舞台に初めて手を出してみました。

原作小説「新耳袋」は超有名らしいですけど
そもそもこのジャンルを避けてた自分は全く知らず。
(耳袋(みみぶくろ)と耳朶(じだ)を間違えてたくらい。)

このジャンル、自分の人生でほんと数回ぐらいしか手を出した事がありません。
(多分「世にも奇妙な物語」が自分のハードルの限界(だと思ってました)。)

それでもラジオその他で久保田さんが
「自分自身怖いのが苦手だからただ怖くはしない」と
言ってたので信じてみたら

「なにこれ超怖い!」

「スゴイじゃなくて凄い!」
って凄惨な方の漢字を使いたくなるような怖さの残る作品でした。

(終わった後原作者木原先生と演者数人の笑いあり恐怖ありの
トークショーがありましたが、自分は今観たばかりの物語の
実感が頭よりも身体に残っていたのか小刻みに震え続けていました。)


しかし、メインは恐怖体験話ながらも
各演者のキャラ(役どころ)がほんと全員立ってる上に

シンプルなセットに対して音響/照明などの演出も凝りまくっていて、
そして物語自体もスゴク(こっちはカタカナ)面白くて
小ネタで笑わせ、泣かせ、そして癒やし(これは自分の勝手な感性?)まで
含んでいて、本当に盛りだくさんな恐怖体験でした。
やっぱり怖い(((( ;゚д゚))))

久保田さん作品といえば初見で驚き、二度見で更に驚かされる、
そんな噛みごたえがあると思っている自分は、
ツイッターでネットの評判を聞いてすぐ追加予約しましたが、

今日観たこのお芝居をもう一度観れる
(しかも今日がかぶりつきで明日は全体俯瞰)という事で、
「いやあ、今回かなりの当たり作品で二度見出来るなんて
これまた最高だな!!」と怖いながらも思います。

ほんと怖いんだけど面白い、怖面白い(こわおもしろい)、
としかいいようのない作品、

ジャンル初体験、という事もありますが、
☆でいったら5つじゃなくて6つか
それ以上の体験をしたと思います。
───────────────────────
4/5(土)18:00観劇(ソワレ、でいいんだよな)

ネタバレ以外の特記事項としては、
今日はちょっとミスが目立った(昨日はミス0ぐらいに思えたけど)。

軽い噛みぐらいならともかく、
一度演者さん2人の会話で完全に(どちらかの)セリフが
(頭から)飛んだようで、下手すると舞台が壊れる
(+観客側も集中切れる)かと
ちょっと違う怖さを味わった。。。

まあ、その後挽回出来たので問題なしかな。

ネタバレBOX

4/4(金)観劇。
──────────────────────────────
新耳(3/3)袋なのに獅子(4/4)の日!
関係ありませんね。


オチで救うのがボクラ団義、
オチで救わないのが新耳袋、
この言葉を書きたくてずっと帰宅中頭の中で復唱してました。


ネタバレでしかも今回物語がすごく濃厚/濃密な感じで展開したので、
感想だけを散文詩(感想ポンポン書くのは散文詩って言わない?)的に
書いちゃいます。


どの物語にもオチに必ず泣きや救いを持ってくるのが
企画演劇集団ボクラ団義の舞台公演だと思ってます。


しかし、今回他劇団参加した作/演出久保田唱さんは
どの物語にも救いじゃなくて「救われない…」を持ってきた
(というか原作者木原さんが、ですかね?)。


1.ある女性のマンションでのエレベータ恐怖体験から
  そのマンション内で起こっていた連続失踪→殺人事件を
  発覚させ解決した、と思わせて最終的にそれだけで
  物語は終わらず女性(姉)でなく妹を救えなかった、という事件
  (いったいあのマンションには更なる何があったんでしょう(((( ;゚д゚)))))


2.海岸崖での恋人同士の痴情のもつれによる

  彼→彼女の突き落とし事件、

  から始まる彼女の霊の登場、
  そして突き落とし事件の真相、

  更にそれでも成仏しない彼女について

  「彼女は彼に伝えたい事があるのでは!」
  という希望的観測(?)に基づいて
  上司の指示を振りきって独走したヒロインに対して、

  事実は彼女に取り憑き死に至らしめた霊と全く同じで
  (同じ感情を持っていたからこそ取り憑かれた)、
  彼女自身も自分の彼に対しての浮気の疑念と恨みつらみ、
  裏切りに対して共に死のうとしていたのを、
  (先に同じ場所で殺されていた霊に)
  邪魔された事、そして彼と浮気相手に対しての怒りから成仏しなかった、
  という救いようのない事件


3.ある家に同居する姉妹夫婦に対して、
  転落死殺人の被害者女性の霊の理由不明な呪いによる
  「男達」(亭主/同居人/子供)の呪い殺し(呪殺)、
  そしてそんな被害者女性の霊にも救いを、
  と願ったヒロインの衝撃のラスト


ほんと、本来なら本舞台を観て「スッキリした!」とは
まったくいかないオチの連続だったと思います。


でも物語として面白い、各演者のお芝居が面白い、
小ネタで笑わせられ、小ネタに驚かされ、小ネタに泣かされ、
そして癒やしまで感じてしまったという。。。
その上で骨太の本筋が面白いからこそ、最後まで集中して観れた(ハマれた)、と。
(新耳袋は今回初めて観劇しましたが、
この絶妙な配分があったからこそ、新耳袋3は
心に残る名作になったのだと思います。)


・ 三田寺さんの生前説(「せいぜんせつ」じゃなくて「なままえせつ」)に
  「萌え」という感情をひさしぶりに感じました。

・ 進撃の巨人林野さんの寡黙なようでいて、
  ボケの多い特殊課警視キャラに笑わされた上で、
  霊に対してのヒロインへの警鐘に
  色々なものを考えさせられました。
  (結局の所、この世に怨念を持つ霊と分かり合うなんて無理だ、
  という締めなのでしょうか?)

  同時にストーリーテラー的な立ち位置でもあり、
  「新耳袋」(小説)に対して
  「本には”扉”はあっても”出口”はない」
  が印象的でした。

・ ヒロイン木本さんの「オカルトを否定」しながらも
  それを実際体験して捜査を進めていく自分(その熱血ぶり)、
  そしてそれぞれの霊達に対して上司の静止を振りきってまで
  「善意」でもって向かっていって
  それが全て裏目に出てしまうという
  恐ろしくも悲しい物語展開に恐怖と涙しました。

・ 恒松あゆみさん(警視正)の役柄ゆえの落ち着きと
  美声に癒されました。

・ 沖野さんの独特すぎる霊媒体質キャラに笑わされ、
  引かされ、驚かされました。

・ 三田寺さん&ヤマケンさんコンビの喫茶店での
  三田寺さんの萌えメイドぶりにこれまた癒されました。

  三田寺さんと沖野さんの「ホットティー or コーヒー」についての
  やりとりに笑わされました。

  何作品か三田寺さん観てますが、「こんなに可愛いのか!!」
  という驚きを持ったのは本作が初めてですね。

  そして、コーヒーへのこだわりすぎるまでのこだわりと
  いつまでも塗りたてペンキの匂いの残る店、
  のその理由がやっぱり新耳袋。。。

・ そして、演者全員の笑いの小ネタに笑わされました。

・ 霊とそれに関る人たちの物語と衝撃の展開に
  驚かされ、恐怖させられました。

  ※ すごいのは観客への恐怖のあたえ方、観せ方が1つじゃなく
    いくつものバリエーションに富んでいた事です。

  (あれ?さっきと同じ事書いてるな)

  1.では、マンション殺人事件でそもそも
    存在しない地下へ降りるエレベータには
    女性だけでなく男性も乗っていた、という事、
    それが伏線となり
    事件解決と思わせておいて
    更なる霊事件で妹が殺されてしまう、という後引きの悪さ。

  2.では、霊に取り憑かれ彼を殺そうとした為、
    彼に崖から突き落とされた女性、
    しかし実は霊に取り憑かれる以前から
    彼の浮気に疑念を持ち、彼を殺そうとしていた、
    そして霊になった後もその浮気相手である仕事の同僚の元を
    49日間ずっと離れなかった、という物語の締め方

  3.では、たまたま姉妹夫婦の同居人が、
    殺人犯に殺された女性が「彼(殺人犯)」にあげようとしていた(?)櫛を
    拾ってしまったが為に

    殺された女性の霊を呼び寄せ、
    単に男というだけで旦那、同居人と次々と呪い殺され(呪殺)、

    ※ 同居人が実際霊に飛びかかられ殺される際の照明演出
      (あの演出の呼び方は「フラッシュバック」で良かったんですかね?
      あるいは「フラッシュライト」?)
      がすごく怖かった。
      本物の怨霊のようでした。


    それに対して、殺された女性の霊の気持ちを理解しようとするヒロイン、
    その善意につけ込んで女性の霊はヒロインに取り憑き
    「本当の思いの丈」を振りまき、
    彼を最後に殺した女性をも殺そうとした所を
    霊媒体質の沖野さんに止められる。

    そして、更に物語は進み、
    ヒロインは捜査一課へ戻り更に出世するが、
    「オカルト」の存在を認め、
    「また特殊課へいつか戻りたい!」と警視に伝え、
    物語としての(一応の)ハッピーエンドを見せるのか、

    と思わせた所で、更にオチのオチに、
    姉妹の子どもたちもその後殺されていて、

    更にはヒロインのバックに入っていた櫛、

    そしてヒロインに襲いかかる(本当に恐怖の)怨霊、
    という救いようのないオチ、締め

・ 物語の恐怖とその他のネタ比率、
  8:2ぐらいですかね、
  しかし、苦手だと思っていたジャンルも
  物語が良く出来ている上で
  演者、演出も良いと
  「面白い物語」として観る事ができた事に驚きました。
  
  怖いんだけど面白い、また観たくなってしまう、
  ほんと何度も言いますが
  怖面白い(こわおもしろい)
  物語でした。

  最初は物語自体は恐怖もの、という事でそこにはほとんど期待はなく、
  久保田さんの伏線たっぷりの脚本/演出と
  その回収の流れさえ観れれば良いかな、
  程度に思っていたのですが、
  見終わった感想としては

  「今年度No.1作品」
  「☆をつけるなら5つじゃなく6つ以上」
  「ジャンルに関わらず良いものはやはり良い」

  という事を見せつけられました。

・ DVD買おうっと( ´ー`)


以上、散漫な感想でした。
明日も楽しみだーヽ(´ー`)ノ
───────────────────────
4/5(土)18:00観劇

・ 二度見して思ったのは、1日目は「全部いい!」の一言で
  アンケート終わってしまったが、全体的に何よりも
  お芝居ならではの「音」全般(BGM、SEそして演者さんの大絶叫)、
  それに合わせての暗転がとても怖さを煽ってるな(上手い)、と思った。

  2度使ってたけど、2度とも(知ってても)
  身震いするようなシーンだった。
  (木本さんも言ってたけど)


・ 物語として、上司の静止を振り切ってまでの
  ヒロインの善意と熱意が
  逆に負の連鎖を産んでヒロインを苦しめていく展開は
  シュールというかダーク、まさに救いのない怪談話だと思った。


※ 前回の感想で1つ間違えてたけど、「櫛」じゃなくて「髪飾り」、
  それを崖から突き落とされ殺された彼女が呪いを込めて
  彼(犯人)宛てに流したものが渡りわたって
  彼女自身を呼び出し悲劇を生み出していたのだった。。。


・ 恐怖とその他の比率8:2とか思ってたけど、
  展開を知った上で恐怖慣れしてくると
  久保田さんの「ただ怖くはしない」の説明通り、
  結構笑いと癒やしも織り交ぜていたように思えた。

  特に各編の始まりは必ず喫茶店から展開し、
  三田寺さん+ヤマケンさんの癒やしキャラが
  絡んできてたし。

・ トークショーで沖野さんが言ってたけど、
  芝居の流れで自分メインのパートじゃない時の行動は
  アドリブで色々やっていた、との事。

  以前もヤマケンさん竹石さんそれぞれが
  色々久保田さんのメイン脚本の範疇外で
  「観客を楽しませる工夫」を試していた、
  という話を聞いたけどやっぱり
  その脚本任せでなく「どこまでもお客様を楽しませよう」と
  更に上を目指すスピリットはとても重要だなあ、と思った。

・ トークショーで三田寺さんのトーク時以外の挙動を観ていて
  お芝居含め「天然キャラ」なのか、
  と何か納得した。
  今度発売するDVD第二弾、というのがHな感じでなければ
  ぜひ購入したいなあ、癒やしだなあ( ´ー`)

  あと、恒松さんの癒やしボイスな朗読会もぜひ行きたいなあ。


最後に
新耳袋1、2では、怪談ものを取り扱うTV番組やお芝居特有の
トラブルが本当にあったらしいけど、
このまま何事もなく千秋楽を迎えられますように(-人-)

そしたら4も観に行こうっと。
ロストマンブルース

ロストマンブルース

SANETTY Produce

笹塚ファクトリー(東京都)

2015/05/26 (火) ~ 2015/05/31 (日)公演終了

満足度★★★★★

秀作会話劇、そして「歌」へのこだわりが素晴らしい
GENKI Produceさんの初演は
「久保田唱のロジカルミステリ」の観劇作法として
1.隠されていた謎に驚く
2.冒頭からいくつも仕込まれた伏線の回収を楽しむ
と、2回観劇しました。

しかし今回のSANETTY Produceさん版では、
「既に謎を知ってしまっている」という事で、
まずチケット発売時1回予約しました。

もう1回観るかどうかは「その後の情報公開次第かなー」と
思っていたのですが
(前の感想にも書いたのですが)
・ 数名の役者達が別舞台参加から
  本舞台まで残す所わずか10日のタイミングで合流、
  という事実を知る。
・ 同様舞台直前のタイミングで体調不良で役者が降板。
などから、舞台としてそもそも成立しない可能性を考え、
「とりあえず1回でいいや」と思っていました。

しかし、いざ観劇してみると、
まず役者自体の演技について問題など全くない上に、

(自分にとっての最大の楽しみである「謎解き」はともかくとして)
会話劇としてのテンポの良さ、
初演と比べて「音楽」への強いこだわりなど、
あくまでも「別プロデューサーによる作品」である事が
強調されていて、非常に楽しめました。

そして、これだけ良く出来ている舞台なのに、
「体調不良による役者降板」が響いたのか、
平日から千穐楽までまだまだ席が残っている、との事。


「もったいないな」という気持ちが非常に強かったので、
千穐楽日を急遽予約しました。
(笹塚ファクトリーの良い所として、
どんな席でも舞台自体は見やすい、というのもあったので)




今回の観劇では「純粋に会話劇」として楽しんでみよう、と
いう視点で観ましたが、
・ ロッカーあさくらの荒々しさ
・ ライブハウス「シェリー」に集う様々な人々
の会話の掛け合いの中に
・ 激しさ
・ 巧みに組み込まれた笑い
・ 隠された真実に近づくにつれての悲しみ、各役者の情熱の高まり
・ 静寂の上手い使い方
・ ストーリーテラーとしてのマスターの語り
など、会話で物語を作っていく面白さがあふれている上に
ライブハウスならではの「歌」への強いこだわり(くりゅうさん?)、
が出ていて非常に良い作品だなあ、と
観なおしたからこそ分かる良さに気付かされました。


元々が良い作品を、新しいプロデューサーの色で見事に再構築した、
SANETTY Produceの今後に期待です。

ネタバレBOX

【思った事】
1つだけ
・ ストーリーテラーとしてのマスターが語る、
  「ライブハウス」が消える時、についての話
  あさくらが永遠に忘れない限り、
  ライブハウス「シェリー」は永遠に不滅なんだな、
  と自分なりにそのメッセージを受け取りました。

2015/06/10(水)
PS.書き忘れてましたが、ネタばらし後の暗転で、
  ロッカーの髪が白くなってますよね。

  他の人も言ってましたが勘違いでなければ、

  前半.ロッカーの世界(20うん年前)の視点の時は黒く、
  後半.実際の世界(2015年)の視点の時は周りと一緒に歳を取って白く、

  なってるのかな、と思うと芸が細かいなあ、と。

  ロッカー役沖野さんご本人この舞台後に髪を切ってる事からも
  かなり髪を痛める方法を使った?のかと思います。

  舞台公演前半に比べ、後半になるほど髪が傷んでか、
  前半と後半での差が見比べにくくなってた気はしますが、
  役の為に身体を張るのはやはしすごいですね。

チャペック博士の子供たち【アンケート即日公開!】

チャペック博士の子供たち【アンケート即日公開!】

劇団バッコスの祭

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2015/05/29 (金) ~ 2015/06/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

「ロボット」と「人間」、そして「人間」と「地球」
フライヤー内容では、
あまり役に立たなそうなロボット達の、
「博士が帰ってこない、さあどうしよう?」という
なんとものんきな説明のみでしたが。


いざ舞台が始まってみると、
クセのあるロボット達、
そして博士の子供(人間)との笑える
会話の中に少しずつ少しずつ、

「鉄腕アトム」の頃から語られている(更にずっと昔から?)
「人間」と「ロボット」についての
普遍的なテーマが織り込まれてきます。


喜劇調に進む物語に大きく笑わせられながらも、
ついロボットや人間が発した台詞の内容について
「考えさせられてしまう」場面も多々、
そしてつい涙腺を緩ませられる場面まで。
(これ以上はネタバレか…)


小さなテーマと大きなテーマ(物語本編本筋)、
本劇団の作/演出の方は本当に
「でっかいテーマをぶつけたい!」という気持ちを持ちつつも、

観劇する側に対して「ただの重い想いの押し付け」に
なってしまわないように、
喜劇調かつハッピーエンドを目指しながら
軽妙に「テーマ」を盛り込んでいく、
という巧みさがあると思います。


そして、役者陣についても全員が全員演技上手とは言えないけれど、
そこはまだまだ発展途上、それぞれの役を喜怒哀楽の感情を
見事に出しつつ演じていく姿に好感が持てました。


カフェ公演で四角い部屋の1つの角が舞台となり、
そこに向かう2つの面に観客席が配置されている為、
観る位置を変えるとまた違った役者の表情などが楽しめるかな?

と思いましたが、明日で千穐楽かつ満席状態との事。
ふむぅ・・・


PS.感想書いてすぐ表に出てしまった為、
  舞台後にくれるというアフターパンフレットを
  貰い忘れてしまいました。
  何が書いてあったんだろうなあ・・・気になるなあ・・・

ネタバレBOX

【思った事】
※ 1つ1つの台詞自体に小さな「テーマ」が盛り込まれている為、
  そのすべてを記憶はしきれませんでした。
  その中でも気になったものを。


・ ロボットには「心」がない。
  設定された情報から、与えられた場面に対して
  「心」があるかのような対応/反応をしているだけ。

  という所から、人間だって同じような経験を繰り返して
  「心」を獲得している、
  だとしたらロボットにも「心」はある(獲得できる)のでは?
  という話の流れが自分の心に刺さりました。

  「心」なんてない、と言いながら戦争ゲームの
  仲間であった女性に恋をしていて、
  「実は人妻だった」という事実にショックを受ける戦闘ロボ、
  笑わせられつつ考えてみると深い話だなあ、と。
  (「それ、心じゃん!」と突っ込みたくなるような( ´ー`))


・ ロボットに仕事を奪われた元社長、
  最初ロボットなんて憎い!という所から始まり、

  たまたま妻が買ってきたメイドロボの
  「好きになってもらうには、どうしたらいいですか?」
  という問いかけに、

  ロボット全員が憎い訳じゃない(自分を失脚させたロボだけが憎い)、
  そしてロボットはなんでも人間の言いなりで
  自分の気持ちを表に出してくれない(だったかな?)、
  だから嫌い、

  という本音を晒していく流れ、
  そして最後に就職が決まった事をメイドロボと一緒に喜べるまでになる、
  この流れが涙腺を緩ませます。


・ 冒頭、お掃除ロボがゴミを拾いながら
  「こうやってゴミを拾っていけばきっと世の中はきれいに
  ・・・ならない(人間が地球を汚染し続ける限り)」という
  「真理」にいきなりたどり着いてしまったかと
  思った所でバッテリー切れ。
  
  そして毎回毎回すぐバッテリーが切れてしまうポンコツ、
  という笑い設定のようでありながら、
  実はその理由が本物語の一番の根幹であり大テーマである、

  アイザック・アシモフのロボット三原則の
  「1.ロボットは人間を傷つけてはならない」を
  拡大解釈する事により生まれる「マイナスワン」という思想、

  全ての生物を生かす為には地球を汚染し続ける
  「人間」こそが有害な存在である、

  ならば緩やかに「人間」には滅んでもらおう、
  という流れに繋がっていたとは驚かされましたΣ(゚Д゚


・ あと、「心」が欲しい、というロボットが、
  写真のような絵は描けるけど、
  心を打つような芸術的なものが自分には作れない、
  という話から、
  「人間っていずれロボットにとって変わられた時、
  ”芸術”(感性/創造力)の部分以外ロボットに勝てないんじゃないか?」
  という話が、思わず納得させられてしまうものでした。


・ 戦闘ロボの戦場での1人芝居、
  「確率2%!ならやる価値はある!」のネタが、
  まさか最後にお掃除ロボがたどり着いた結論、
  「人間が50年以内に自分の欲よりも、地球の汚染について考える可能性」
  と掛けられていた所が、

  「ウマイ!」と思わせられてしまいました。
ゴーストライターズ!!

ゴーストライターズ!!

企画演劇集団ボクラ団義

SPACE107(東京都)

2014/02/28 (金) ~ 2014/03/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

超パワフルコメディ演者陣&脚本パズルの天才久保田さんのすごさに感嘆
2/28(金)夜。
ボクラ団義さんひさびさの完全コメディ(SF要素あり)との事で
一体全体どういうものになるのだろう?と観劇しましたが、
表方裏方ボクラ団義メンバーとゲストキャスト全員の
身体を張ってのお芝居/笑いネタ/ダンスその他に
もう「パワーコメディー」(本気で笑いを取りに来ている)と
いってもいいような舞台でした。
しかし、単に笑い要素だけで終わらせないのもこれまたボクラ団義、
自分にとっていつも以上に2度観、3度観が楽しみな作品になりました。


3/2(日)昼
「もう一度見る前に聞こうゴーストライターズ!!の裏話」回観劇。

2回目なので初見の驚きではなく「全てを知った神の視点」(のつもり)で観劇。

のつもりだったけど、
・ 前回はかぶりつき(舞台直近)席でその瞬間注目すべきメイン
  (スポットライトの当たった)演者に集中してたのに対して、

・ 今回が舞台全体を視野に捉えられる席だったのもあり、
  垂れ幕演出の全体映像や、前回自分が観ていた場面のその裏側
  (スポットライトの当たってない場所)では、
  こういう小芝居(もちろん悪い意味じゃありません)が行われていたのかー、

とまたちょっとボクラ団義のお芝居の細微へのこだわりに感動。

あと物語を知った上で観ていた事もあり、場面場面を単なる笑いネタとしてよりも
泣ける話へのつながりを想像してしまった事もあり、
常時笑い半分泣き半分の気持ちで観賞してました(涙腺かなりゆるみまくり)。


「もう一度見る前に聞こうゴーストライターズ!!の裏話」で
聞いた話で驚いたのが、ボクラ団義のお芝居は
脚本/演出が久保田唱さんといっても、すべての小ネタまでを
久保田さん1人で決めてる訳じゃなく、各役者それぞれが
自分に割り当てられた役に対してその背景設定などを深堀りし、
必要に応じて色々な追加設定や小ネタ/小道具などを
自分達で追加していっている、というお話。
特にヤマケンさんの今回の追加ネタについては、物語をより引き立てるもので
「この上手さはヤマケンさんのアイデアだったのか」とこれまた驚き。

単純に天才脚本/演出家に頼ってるんじゃなくてメンバー全体脳を活かした
劇団だったんですね、ボクラ団義。


3/7(金)夜観賞。
3回目でもまたまた「おっ、こんな所に伏線が!」「こんな所の小芝居が!」と
色々な事に気付かされた。覚えておいてお家で感想書きたいなあとも思ったけど、
劇に集中してたら忘れちゃいました。

メインストーリーに対して大きく影響する要素ではないけど、
ここもつながってると知るとちょっとうれしくなる、そんな細部のこだわり部分。
なんだか同じ観光地へ行く度毎回新しい小さな発見にうれしくなる、
そんな演劇ですよね、ボクラ団義さんは。


3/9(日)12:00観劇

最終的な感想は大山小山色々な山場がいくつもある、
(沖野さんが良く使う言葉)「ボリューミー」なお芝居だな、という事。

笑いに泣きに驚きにといくつもの山場が
(ただ単に連続して平坦になってしまう事なく)
うまく起伏や強弱がつけられた上で
観客に「あっ!」と言わせるタイミングで仕掛けられているという。

まさに「笑えるコメディ」でそして「楽しめる物語」でした。

最後の最後の千秋楽夜回まで、頑張ってください。

そして今回本当に長丁場「今公演はまことにまことにお疲れ様でした!」と
言いたいですね( ´ー`)

ネタバレBOX

(同じ人の感想ばっかり投稿するとCoRichがあまり有用じゃなくなる、
という話があったので今回から感想は1投稿にまとめます。複数追記する形で)

2014/02/28(金)夜
───────────────
前説4人はちょっと人出過ぎで収拾つかなくなってたような(??)


で、本編。

ボクラ団義ひさびさのミステリ要素なし?のSFコメディ、
パンフに「何も考えずに観て」とあったので
出来るだけ何も考えないように(無理だけど)観劇開始。


冒頭のダンスで大泉議員の突然の死が描かれた後の議員事務所、
まだ何も知らない政策担当秘書(沖野さん)、
事務所所員(今井さん)、そして公設第二秘書になったばかりの
大泉議員の馬鹿息子(すいません、竹石さん)。


この部分、間近で観せてもらったおかげもあるんだろうけど、表情劇がまずすごかった。
最近シリアスめな演技の多かった沖野さんのひさびさの完全な笑いキャラも面白かったし、
竹石さんのボンボンの息子な公設第二秘書との各人との絡みがとにかく面白い。

超ハイテンションで仕事しようと政策担当秘書に絡んではあしらわれ、
事務所所員にからんではまたあしらわれ、
この3人のやりとりがしょっぱなの5分ぐらい延々と繰り返していくんだけど、
それぞれの演技(特に表情)、あしらい方などが見事コメディのお芝居してたと思います。


観てるこちらも
「このテンションでここまで笑い取りに来る=今回は完全にコメディ一色で来る!」
とミスリード(?と考えちゃっていいのか?)されてしまいました。




しかし、公設第一秘書高柳(城咲さん)と湯谷秘書(中村さん)、
上総秘書(大音さん)が現れ、大泉議員が亡くなった事を知ってから

・ マスコミにその死をしばらく伏せる必要がある

・ 書いていた小説についてもゴーストライトなりなんなりで
  なんとか死を隠し通す

・ その為に亡くなった大泉議員の元へ行ってはいけない

という約束事を決めるまでの流れ、
そういった事に反発する息子(竹石さん)、娘(遥香さん)に

「アレ?どうやらやっぱりシリアス系ドラマに入るようだぞ?」

と思ったら、幕開けまさかのタイムマシン&どっちみちさん登場。
(パンフに記述ありましたがまさかこんな早くに
「とっても大好きドラ○もん」なタイムマシンが現れるとは思いませんでした。)

どうみても怪しい物体でしかないタイムマシンとどっちみちさんについて、
不審がるメンバーに対してタイムマシンのすごさを力説する高柳秘書(城咲さん)。

この力説ぶりがまた力(りき)入りまくってて、
やっぱり完全コメディで行くのか、と納得し

それからのタイムマシンを使った計5ネタ?の流れや
ボクラ団義メンバー&ゲストキャスト陣の身体を張ってのダンス/殺陣
(まさか今回も殺陣があるとは)の流れに、

「今回は本当に笑い一色で行くんだな、本気で笑い取りに来てるし面白い」と思いつつ、
「だけど自分はいつもの深みのある物語のボクラ団義が好きなんだよなー」
と少しだけ反発する気持ちがないでもなかったような。


と思っていたら、やはりそれだけでは終わらないのがボクラ団義。


序盤より娘が歌をやめた理由など、小さく張られた伏線はともかくとして、
完全に笑いのネタとしか思っていなかったタイムマシンの各人のネタが
単なる「(使い)捨てネタ」ではなく、ちゃんと物語に関わってきて
大泉議員の意を汲んだ娘のゴーストライトを助けるキー要素になってくるとは。。。


娘(遥香さん)がゴーストライトを決心し、その役に立つ為に各人も
再びタイムスリップする場面でのダンスシーンで、
各人ほとんどが天を仰ぐそぶりをしているのを観て、
「ゴーストライトは失敗してしまったのか(??)」
と思ったら
「ゴーストライトは見事成功、小説もちゃんと掲載された」
と、ここで大団円を迎えるかと思ったらまさかの大どんでん返し。


マスコミに大泉議員が既に死去している事や
なぜか死後発表された小説の事などをバラし、
贈賄その他すべての罪をなすりつけるとは、
悪い人達は本当にひどい事を考えるなあ、と思いつつ、
「もう逆転の目はないのか?」と思ったら、

ここで再び各人のタイムスリップがキーになってくる、
そしてそれまで謎のタイムマシン開発者だったどっちみちさんが
まさかこの物語の一番のキーマンだったとは・・・


大泉議員と娘:歌う舞:油小路秋元夫妻と未来の死に目の場面では、
それまでパワフルとまで言えるコメディ展開してきた物語の流れに反して
急に涙腺が緩んでしまってまいりました。
(ツイッターで京佳さんに「笑いと泣きのパーセンテージは?」と質問して、
「半々ですかね」と言われていたのを思い出しました。)


そして、それぞれのタイムスリップを活かして
1つずつ最悪の状況を脱していく場面
・ 上総秘書の「賄賂はいけません」
・ 湯谷秘書の「あまり策をめぐらせるべからず」
・ 財務省のお母さんからの田上議員の不正の事実受け取り。
・ それらを持って、事務所所員が惚れたADさんの時間帯へLet'sGo!

いやー、2度もタイムスリップパズルを物語のピースに当て込んでくるとは
脚本の久保田さんがすごい。
もうここまで来ると「何も考えないで観る」なんて無理で
脳が活発に活動開始しちゃって強い興奮状態でした( ´ー`)


その間にも、自分の死を避けるべく高柳秘書(城咲さん)が
ヘルメットにグローブでなんとか野球部の連中のテロ?を防ごうとしてたりと
コメディ要素はちっとも減らない。


最後までコメディとして、そして立派に物語として楽しませていただけました。


最後の最後、「必要なものはすべてそろった!」という場面で閉幕したかに見せて、
突如タイムマシーンに乗ってる丸井光越秘書、
そう、彼が望まずおかしてしまった殺人を未然に防ぐという、
最後のオチに「これまたやられたー!」という気持ちにさせられました。


やっぱりコメディですから、善人みんな幸せになれる終わりがいいですよね、ほんと。

PS.あ、あと横浜凱旋公演に続き、前席の座布団サービス
  ありがとうございます。おかげさまで完全に観劇に集中できました。


3/2(日)13:00
───────────────
今日思った事。
・ 前回かぶりつき席から今回全体俯瞰(舞台全体が視野に入る)席での観覧で、
  更に色々なものが見えて、毎回新しいお芝居を見ているかのよう。

  出来る事なら毎公演、かぶりつき、真ん中、一番後ろ、と3段階で観てみたいですね。

・ まだ3日目ですが沖野さんその他の方の声(喉)がちょっと荒れ気味に、
  (確かに台詞量も多いし、笑いを取りに行く大声量場面が多いのはツライのかと思いますが)
  まだまだ続く長丁場、体調管理お気をつけください。
  (まさか風邪ではないですよね・・・役者さんは毎回大変だあ(((( ;゚д゚)))))

・ ボクラ団義メンバーとゲストキャストさんの垣根がとれてきたのか、
  序盤そのかけあいなどのつながりが良くなってる(更に息があってきてる)、
  といい方が目立ったのですが、
  その後ちょっと台詞のトチリ/ミスも目立ったかと
  (緊張もそろそろ取れてくる頃なのでしょうか?)。

・ 「単なるコメディではない」という事を念頭に置いた上で演じられる
  お芝居を観ていると結構泣かせる場面も多いと思いました。

  特に大泉議員(過去、ゴースト)と舞(現代)のやりとりは本当の父娘のよう、
  そしてどっちみちさん化する前の油小路夫妻と未来、
  そこへどっちみちさんがチュッパチャプスをそっと置いて消え
  それを油小路夫妻が拾う場面はかなり泣けました。

・ 自分、團さん回しか観れてないのですが、舞(過去)の高山さんの歌が
  初回よりも上手くなって(声も出て)いるように思えました。
  舞台は日々成長ですね。




「もう一度見る前に聞こうゴーストライターズ!!の裏話」
(覚えてる限りでは)

・ 城咲さんは舞台稽古開始前に初演版「ゴーストライターズ!!」をかなり観賞した上で、
  その台詞まで全部覚えて来たというほどの熱の入れよう。
  TVでは単にイケメンおもしろタレントさん、というイメージでしたが
  すごくストイックで真面目で(更にシャイ)な人なんですね。

  しかしその後渡された脚本と過去版の差異に苦しみ、
  芝居中初演版の台詞を言ってしまったり、というまさかのうっかりも。

・ タイムマシン&どっちみちさん初登場時、どっちみちさんの「怪しい人ぶり」を
  アピールする為の自転車でのスタンディングポーズ登場、
  自転車を持ち込む事は山田さんのアイデアだとか。
  そして未だに久保田さんのOKはいただけてないとか。。。

  更に常時チュッパチャプスを身につけていて、
  それを油小路夫妻/未来の場面でも使うようにしたのも
  山田さんのアイデアだとか。
  チュッパチャプスは未来の好物で未来の事を忘れない為に、
  ずっと身につけている、という背景を作ったという・・・
  (なかなかの頭脳派ですね、ツイッターではゴリラ呼ばわりなのに。)

・ 舞(現代)の團さんと舞(過去)の高山さんは実は年齢は逆で
  高山さんの方が年上だったとか。

  團さんは自分が成長した姿を演じるにあたり、どうやって落ち着いた演技をしようかと
  (周りのハイテンションコメディの演技に巻き込まれないようにするのに)努力し、

  逆に高山さんはどうしても出てしまう落ち着き/アイドルとしての大御所感を
  どうやって若く見せられるようにするかに悩み、
  若い娘に度々絡んでくれる城咲さんとのトークを利用して
  初々しさを出す事に成功したとか。

・ 広哉が倒幕の時代に飛ばされた際に慌てて出してしまった女性ものパンティは
  竹石さんのアイデアで、
  「ちゃんとそれにも理由(父を亡くした悲しみから来る背景設定)があるんだー!」
  と訴えつつも、大泉議員(矢内さん)に「お、俺のパンツなのか!」と突っ込まれて
  しどろもどろになってしまったり、
  何故かパンティが初回後、1枚から2枚に増えていたり。。。

・ 女学生本郷さんの永吉さんは、まだストーリーについて何も聞かされてない
  時に、沖野さんからいきなり「僕のお母さん役だから!」
  と言われ、びっくりどっきりどう演じればいいのか悩んだとか。

など、おもしろネタどころを色々聞けました。
(15分のアフタートーク、毎回設けて欲しいぐらいですね、
おもしろ話が出るわ出るわ(´∀`*))


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3/7(金)今日は観劇した訳じゃないけど思った事を追記。
今回感想数が本当にすごい。

で、他の方の感想で
「エンディングの丸井光越が、大泉議員の暗殺を止めて本物語すべてを0に戻す所、
そもそも暗殺が分かった時点でこうしていれば良かったのでは?」
という事だったのですが、

・ 当初ゴーストライターズは大泉先生が病気で亡くなったと思っていたので
  その時間に行っても助けられない、と考えていた。

・ OMTの関係で行きたい時間に行けない上1度行ったその時間以外へは行けない

(暗殺が分かった時点でもうゴーストライターズには
それを止める術はなかった。)

という事で、(丸井さんがどこまでタイムマシーンの話を聞けていたのかはともかく)

あの最後の場面でタイムマシーンに座っていた丸井さんは
「先生を救える可能性の為に」タイムマシーンに乗ったというより、
単に元SF研究会としての興味でタイムマシーンに乗った、という印象でした。
(決死の覚悟というより、単に「(誰もいないうちに)タイムマシーン乗っちゃえ」
という)

そしていざタイムスリップしてみたら、
なんと大泉先生が暗殺されるその瞬間で、
つい「ちょっと待ったーーーーーーー!」と叫んでしまった、と。


こういう観劇後しばらく経っても色々考察出来ちゃうのがまた面白いお芝居の良さですね。
他の方の感想が沢山あるからそれがきっかけでまた色々想い出したり考えたり出来るし。
ほんと1人じゃなくて、他の観劇者と語り合ったりしてみたいものですわ( ´ー`)
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3/7(金)夜観賞。

メインストーリーはちゃんと1回目でカチッと全てのピースがハマりながらも、
2回目、3回目と観に行くと更に知らなかった物語のサービス的な
ピースに気付かされる(小伏線や小芝居や)、
そんな細部にまでこだわった演劇なので
1回観るだけでももちろん楽しいけど、複数回観るとなお楽しい、
そんな気持ちで観れるお芝居でした。


今回もまた気づいた色々な事を感想に書きたいとは思いつつも、
笑いと涙を誘う物語に集中してるとそんな事も忘れてしまいました。

例.油小路さんとその妻の会話で大泉舞さんの話が出た時、
  妻「まだ引きずってるの!」
  という辛辣なつっこみが実は亡くしてしまった娘未来が
  舞の歌が大好きだった、しかしそれを油小路さんの過激取材のせいで
  聴けなくしてしまった事に対してつなげってくるとか、
  1回目だと物語の進行順序上伏線という事に気づかず
  そのまま単なるお芝居としてその場面を観てしまいましたが、
  すべてを知った上で見直すと、
  「ここからもうメインストーリーへの呼び水のような
  お芝居が始まってたんだなあ」とちょっと感激。


  あと、各人のセリフで「どっちみちさあ~」とか出る度に
  どっちみちさんが「おう」とか返事してたり。


あと思ったのですが、毎回お芝居に一部ゲストキャストさんを当てはめますが、
それがまた物語の内容/性質に見事に合ってる方々なのも
ボクラ団義さんかなあ、とそんな事を考えました。

ゲストキャストさんの人気による集客的な強みもあるとは思いますが、
今回の「ゴーストライターズ!!」にしても
本当に(劇団自体は若手(20~30代後半)主体のボクラ団義に対して)

見事今回の物語に必要なキラキラ眩しいピースを追加してくれる、そんな感じでした。
(前田さん&京佳さん回はスケジュール合わず観れませんでしたが)
城咲さん、團さん、高山さん、矢内さんなど、
見事に今回の物語/配役にマッチしていたかと思います。




で、今回は「久保田唱さんのゴーストライターズ!!一問一答」回。
先行予約開始時、このイベントを我先にと予約しました。

ぜひ、毎回毎回ほんとに物語と演出の細部にはこだわりまくった上で
叙述トリックで観客を騙し、そして脳を混乱さえた上で
最後の最後で「すべて謎は解けた!」と言わんばかりに
(3000ピース以上の)パズルを完成させる、
そんな舞台脚本/演出の魔術師といえる
(ラジオ、TVでは団員から”鬼”と言われてましたが)
久保田さんの話はぜひ聴いてみたかったです。


で、本日当日のツイッターを見てたら
「一問一答がどうやら観客との質疑形式らしい」との事。
(それまでは事前に質問をアンケート同様書いて提出しておく
形かと思ってました。)

通勤電車で色々物語を想い出し妄想し、
「あー、これとこれとこれとこれとまだまだ聴きたい事たっぷりある」
と思いつつもメモも取れない状況なのでなんとか4つ、
質問を決めて会社で仕事そっちのけですぐ
テキストにまとめて印刷しておきました。


でも、公演後のイベントも演者さんみんな+久保田さんが勢揃いするのを
見ていて、「めっちゃ緊張して質問なんて出来ないかな」と思ったのですが、
他のお客さんがそれほど質問する雰囲気ではなかったので
勇気を振り絞って挙手させてもらいました。

竹花さんにマイク借りつつ、2回も質問しちゃいました。

・ 最後の最後、オチのオチで丸井さんがタイムマシンに
  神妙とも言える表情で座っていましたが、あの時その心情は
  「大泉議員の暗殺を止めに行くつもりだった」
  「元SF研究部としてタイムマシンをどうしても試したかった」
  など、一体彼は何を考えてタイムマシンに乗ったのでしょう?
  ⇒
  久保田さん
  あの時丸井は「自分はこれから警察に自主したりと色々あるけど
  とりあえず今事務所には誰もいないし、
  タイムマシンがぽつんと置いてあるしでこんな自分が
  タイムマシン試しちゃってもいいのかなあ?」
  とかそんな事を考えていたとか。
  だから、ちょっと遠慮がちにボタン押してたんですね( ´ー`)

  そして丸井の行き先についても本当は決まっていなかった
  (他のゴーストライターズと同様)、とか。

  しかしもっと驚いたのが、
  この丸井さんのオチのオチ(大泉さん暗殺を止める事で、
  今回の物語自体が大泉さん生還という形で初期化されるか、
  あるいはタイムパラドックスで最終的にまた暗殺ルートヘ
  戻ってしまうのか)など観客にその終わりの先について
  色々考えさせる深い締めが、
  実はお芝居稽古中には存在せず、舞台開演の直前に思いついて
  付け足したものだったとか。

  「虹色の涙 鋼色の月」が横浜凱旋公演した際、
  色々な部分に観直しをかけられていたのもそうですが、
  本当に観客に与える面白さに対しては
  妥協を知らない劇団/メンバーなんだなあ、と。
  (沖野さんの言う「全てはお客様の為に」のスピリット、
  実践してますよね。)


・ 深層心理を読み取ってOMTの力を集め、
  タイムスリップした先が女学生時代の母親の元だった、
  という桐谷秘書。

  彼の深層心理のマザコンぶりは、
  若い頃のお母さんに会いたいとか
  いったいどういうものだったのでしょうか?
  ⇒
  久保田さん「彼(沖野さんではなくあくまでも桐谷秘書)の
  マザコンぶりはともかく、その行き先が
  女学生時代だったのは、彼自身の女性に対する好みに
  起因しているものと思われます。」

  これはその場での即興回答だったのかも知れないけど
  沖野さんがいじられまくって爆笑の渦でした。

  いやあ、振ったネタをこんなに大きく拾ってもらえると
  素人ながらめっちゃ嬉しいもんですねえ( ´ー`)


とにかく、最高に楽しかった。

で、前から思ってたけど、ボクラ団義公演、大神さんのビビットカフェ、
と同様に脚本/演出家久保田唱さんのトークショーも
ぜひイベント化しないかなあ、と本気で思いました。
多分自分ら観客もそうですし、同じ舞台その他の脚本家さん達も
気にしていると思います、久保田さんの動向その他。


────────────────────────────
(観劇前ですがまたまた思った事)
・ 本劇およびボクラ団義舞台では一部の役の方にとても
  個性的な名前をつける事がよくあると思いますが
  (今回でいう油小路さんやどっちみちさんなど)。

  物語が山場を迎え油小路さん一家+どっちみちさんの涙を誘うシーンなど、
  そういう部分での印象を劇中分かりやすくする為の
  「キーワード」的な使い方をしているんですかね?

  あとで物語を振り返る時、「いやあ、どっちみちさんの本当の目的や
  油小路さん一家とともに死にゆく未来を見送るシーンが泣けた」
  など、観客自体にそのシーンの印象を更に強く心に残させ
  イメージさせる為、とか。

・ あとどっちみちさんは未来に大泉舞の歌を聴かせる為に
  2010年に向かおうとしたが失敗して2014年に到着し、
  「それでは2010年に向かうOMTを持った人を探そう」
  として今回大泉事務所に接触してきた、
  など、物語のネタが本当に深く絡み合っているなあ、と
  いう事をこれまた想い出しました。
────────────────────────────


2014/03/09(日)

【思った事など】
・ 今回の劇はジャンルがコメディという事で
  ボクラ団義さんのお芝居で自分がこれまで観劇してきた
  ミステリやファンタジーとは違い初回でネタバレを知った後でも

  「またあの喜劇パートで大笑いさせてもらおう、その上で泣かせてもらおう」

  という気分で何度でも通う気になれました。
  (今までは初回でネタを知り、2回目3回目で細部を見直す、
  という感じで良くて計3回観れればいいかな、ぐらいに思ってました。)

  あとロングラン公演の中で素敵なイベント回を
  何度も設けてもらってたのでそれが観たかった、
  というのも観劇回数が増えた理由かと。


・ 2回目3回目と観劇していると、
  実際「ここでネタをぶっこんでくるぞ!」という箇所で
  自分は笑いつつもまわりの観客の反応も気になるんですよね。
  (このネタに笑ってくれるか、あるいはスルーされてしまうのか、って。)

  かなりみんな「ゴーストライターズ!!」に仕掛けられた
  笑いネタに爆笑してくれてたのがなんだか我が事のように
  嬉しい気分でした(舞台上と観客の一体感を感じられるからでしょうか)。


・ ただちょっと休日かつ千秋楽回という事で客層がいつもと違う感じでした。

  特にマナーの悪い人が少し多かったかな、と思いました。
  (ツレ同士の私語や舞台上のネタに本当につっこみ言葉を投げてたり、
  荷物の紙やビニール袋などをずっとガサゴソいじってたりと。)

  自分は楽しい舞台を観て聴きたいんであって、
  あなた達の雑音を聴きたい訳ではないんですよ、と。
  (まあ、これは劇団のせいでは全くありません。)

  ※ CoRichだからこそ指摘したいのですが、
    私語が多いのはほとんどが壮年および年配の方だったかと思います。

    ここCoRichで色々感想読ませてもらったり参考にさえてもらったり、
    尊敬してる方達もまた年配の方が多いので、
    同じ年配でもこういう観劇マナー守れない人達もいるのか、
    とちょっと残念な気持ちになりました。


・ 今回のメイン曲(ローズインメニーカラーズさんの「幽霊」)以外にも
  オープニングから各箇所でかかるBGM曲が結構ツボでした。
  (芝居やダンスと非常のマッチしてたかと。)

  その上で舞台上の芝居と各BGMが見事にリンクしてる部分があり面白かったです。
  ───────────────────────
  ゴーストライトの為、各時代の人達の力を借りようとするが
  思ったようにいかず、BGMの「なんとかなんとかノー!」という部分に
  合わせ天を仰ぐゴーストライターズメンバーや、

  (どういう場面だったか忘れてしまいましたが)
  ローズインメニーカラーズさん自身の「幽霊」(歌付き)が
  かかっている場面での舞台と歌とのリンク。

  あとはもちろん舞が唱う「幽霊」の時の無声芝居で、
  物語の起伏に合わせ歌のボリュームも強弱させたりと見事にリンクしていたかと。
  ───────────────────────


※ 公開初日~千秋楽お昼回まで4回観ましたが、一番お芝居の
  精度的に良かったのは初回だったのかなあ、と。

  (呼吸が合ってきた、歌がうまくなった、
  など回数を重ねるごとに良くなった面も多いのですが)
  2回目、3回目と数を重ねるごとに、緊張感が薄れてくるのか、
  2週近い長丁場にメンタル的、体力的に疲れてきたのか、
  演者全員のセリフのトチリ、ミスが目立つようになってしまいました。
  (+最後は照明その他演出担当の方まで、
  タイミングを間違う場面を見かけてしまいました。)

  (まあ普通にお芝居観てて許容できる範疇ではありましたが)
  初回を観た自分は得をして、ミスの多かった回を観た人は損をした、
  そんな考え方もできちゃったので、
  今後うまくお芝居の質を毎回保てるようになるといいなあ、と思います。
黄金のコメディフェスティバル2015

黄金のコメディフェスティバル2015

黄金のコメディフェスティバル

シアター風姿花伝(東京都)

2015/08/20 (木) ~ 2015/08/31 (月)公演終了

満足度★★★★★

(自分的に)組み合わせではチョキチーム、最有力はアガリスクエンターテイメントさん
黄金のコメディフェスティバル2015、
自分はこれで2年目、
今年も千穐楽にしてぶっ通しスペシャルに参加。

結果発表にて、
最優秀作品賞はアガリスクエンターテイメントさん、
最優秀俳優賞は福地教光さん(バンタムクラスステージさん)、
どちらも順当な所ですね。

まあ、去年よりもどんどん賞を増やして
どのチーム、どの俳優/女優にも賞をやろう、
という形になった気がしますが、
それが小劇場演劇の世界にとっていい方向に働くといいですなあ( ´ー`)

あ、もちろん丸1日楽しみきれたイベントなので
☆5つで来年もぜひ観劇したいです。

ネタバレBOX

【思った事】


■グーチーム
●Peachboys『大奥の奥』
開演前に前説で「ぶっちゃけ下ネタです」と
ぶっちゃけてくれたのまでは良かったけど、
大事な物語とお芝居がどっちも雑で、
ガンガン投げられる下ネタも
単に小学生の会話のような冗談レベルにしか受け取れず、
はっきり言って笑えませんでした。
これも笑いの1形態なのかも知れませんが、
「演劇」である以上お芝居として成立させた上で
下ネタをガンガンぶっこんで欲しいものです( ´ー`)


●バンタムクラスステージ『クロッシング・ハニーズ』
バンタムさん元々の色であるハードボイルド/ガンアクションな感じを
今回は完全に表に出してきましたね。

ショッキングな場面から始まり、シリアスさもありつつ
そこにガンアクション(ギャングアクション?)ならではの
笑いの込め方をしてくるという。

お芝居としては一番上手さがあったと思います。

コメフェスぶっ通しで観た場合、同じような笑いが続かないように、
という一種の清涼剤/箸休め的な存在でもあります。
今年は優秀賞/最優秀俳優賞まで取るという躍進ぶりですが、
来年以降もどんどんコメフェスに出てほしいです。

※ ただ、昨年のコメフェスで感想の多くに
  「コメディ作品のみでの選考を求める」と
  いうクレーム的なものがあり、
  その対象の一つとなった演劇でもあるのかなあ…
  (笑い自体は去年の方がぶっこんでた感じしますけどね。)
  他の観劇者がどうとらえたかはわからないなあ・・・


■チョキチーム
●劇団鋼鉄村松
去年も参加してましたよね、頭がちょっと薄い村松さん。
去年は全く芝居/笑いとも評価出来るレベルにない、と思ったので、
今年もはっきりいって期待してませんでした。

しかし、始まりからもう面白い!
結構ブラックな合衆国と連邦双方が核を向け合う冷戦状態から始まり、
核ミサイル発射ボタン人間と大統領の表情劇、
ボタンを押したくてウズウズしてくるバカ大統領、
そして、「驚いて」、、、ただそれだけで核ミサイルを
連邦へ向けて発射してしまった大統領
(このキャラ好きですわ、僕は気に入った俳優に投票しました)。

それを知り色々と対策を打とうとする連邦側。

SDI(戦略防衛構想)とSOD(ソフトオンデマンド)を勘違いして、
アダルトビデオを真面目に見たり、
(「下の口から機密情報がただ漏れよー」、こういう下ネタは大好きです(´∀`*))

そして、「滅びる前に合衆国への復讐を」と
連邦書記長に合衆国への核ミサイル発射を迫る面々、
それに対して「大統領の滑稽さ、人間らしい一面」を
見てしまったからボタンを押せないという書記長。

大統領本人との電話会談で
大統領本人に「いいから押せよ!俺らだけ生き残るなんてやだよ!」
というように言われても、
「美しかった連邦の事を忘れないでくれ」と
書記長が語る場面は涙腺ゆるみました。

コメディとして、自分は今回の6作品中○(二番手)評価でしたね。


●スズキプロジェクトバージョンファイブ『隠ザクローゼット』
ある部屋にいた、誰にも見えない謎の男の存在に始まり、
そこへどんどんと集まってくる面々、
そして「男は幽霊らしい」、
「男の部屋のあるモノを探している」という流れになって、と
どんどんとシチュエーションコメディとして面白くなっていく
(昨年のアガリスクエンターテイメントさんに近い雰囲気を感じました)。

最後には男は意識不明の重体だがまだ死んでいない、
という事から、その彼女が部屋で男の無事を祈る場面で
かなり涙腺を緩まされて終わるかとおもいきや、
そんな彼女すら捕まえていく刑事。

と泣かせかけてそれでも無理矢理笑いに向けた、
そういうポリシー的なもの、嫌いじゃないですね。

上手さはこれから、でも笑わせる気は満々、準備も万端、
といった感じでしょうか?


■パーチーム
●モーレツカンパニー『にこにこたまたま』
演劇人だけあって、その演劇の場を舞台にする、というのは
これからの展開にすごく期待が持てたのですが、
無口くん⇒イケメン君
のキャラを立たせるだけで、後の物語が上手くなかったかなあ、と。
(元スターを始め他のキャラの立て方がよろしくない…
適当すぎる所で切り上げちゃった感じで)

ラストの舞台上収集がつかない場面を演じている場面、
本当に観客側の気持ちも収集がつきませんでした。
(笑いの入れ方に「上手さ」がないから、笑いようがない。)

女子高生が「演劇って、コメディって楽しい!」と締める場面、
実際この劇で女子高生はそんな事言わないんじゃないかな、
と残念な気持ちに。


●アガリスクエンターテイメント『七人の語らい/ワイフ・ゴーズ・オン』
前説での「海外の名作シチュエーションコメディを演じます」に始まり、
2人の妻に男が右往左往、までは
去年の演目にかなり似てるなあ、そしてアメリカンコメディの
コテコテさが前に出すぎで、
去年感じたアガリスクエンターテイメントならではの
「巧みさ」がないな、と残念な気持ちを持った所での、

大どんでん返し!

いきなり笛を吹いて
「今の場面、”シチュエーションコメディ”の定義からすると無理があるのでは?」
と駄目だしを始める面々。

そう、この作品はモーレツさんと同様、「演劇」、それも「シチュエーションコメディ」
自体を題材にしたものでした。

当初、「よくもまあ、海外の名作をぶった切るもんだ・・・」と感心していたら
その設定自体が嘘だった、との事。

大トリにして「シチュエーションコメディ」についてその定義を語り、
その定義にそぐわない自分達の演技すら切って見せる、
いやあ、すごい発想の転換だなあ、と。

はっきりいってここまでの6劇団で初めて噴き出して大爆笑してしまいました。

※ 去年のPMC野郎を初めて見て感じたのと同じ感覚。

今年は完全にアガリスクエンターテイメントさんだな、
「そうじゃなきゃ審査に問題あるわ」とまで思いました。

もちろん自分は評価◎1位に入れました。

観客賞、最優秀演劇賞とも受賞されて、まさに
TV放映を始めこれからノリにノってくる劇団だと思います。

※ 去年も「正統派コメディならアガリスクエンターテイメントだろう!」
  と感想がかなり荒れたんですよね。




【その他】
表にも書きましたが、各審査員それぞれが賞を用意するなど、
賞の大盤振る舞い状態、
プロデューサー登紀子さんへの表彰は良かったですが、

自分としては「どうかなあ?」と思うようなお芝居(劇団)についても
ガンガン賞を上げていくのが、
各人各劇団「それをウリ(?)にしてもっとガンガン演劇を頑張ろう!」と
前向きな方向に生きるならいいのですが、
思わぬ慢心(達していないにも関わらず、褒められて上達を怠る)に
つながらないかが心配です。


そして「黄金のコメディフェスティバル」での受賞をたよりに
その劇団を観劇に行くお客さんを失望させる事があっては、
来年以降の「黄金のコメディフェスティバル」自体の存在意義にも繋がってしまうかと・・・
かべぎわのカレンダリオ

かべぎわのカレンダリオ

バンタムクラスステージ

シアターKASSAI(東京都)

2015/05/14 (木) ~ 2015/05/25 (月)公演終了

満足度★★★★★

あなたはA⇒B派?僕はB⇒A派(観劇順です)
Bに引き続きA「マレーネの晩秋」観劇。

フライヤーか何かに載ってて気づいたんですが、
A110分、B70分だったんですね。

作品自体もゲームで言えば
Aが本編、Bはファンディスク的なものと感じました。


で、観る順。
(自分はB⇒A順だったので想像ですが)

A⇒Bが本来正しい観賞順(#1、#2ですし)
(A本編を見て、気に入ったらBであの人達のその後、を更に楽しむ形)

B⇒Aは本来邪道なのでしょうが、自分はこれが逆に効きました。

Bで表の顔と少しだけ裏の顔を眺めた人物達について、
Aで知らなかった事実(伏線的な要素)を
どんどん驚きながら回収していくという。

だから「A⇒B⇒A」って言ってたんだな、あの人。
(両方の楽しみ方が出来るから)。

※ 「かべぎわのカレンダリオ」で絶対にやっちゃいけない観劇方法。
  Bだけ観て「こんなものか」と判断してAを観ない。

  Aを観て同じ判断を下すのは仕方ないですが、
  Bはあくまでファンディスク、
  本編Aを観ないと観劇者として「完全燃焼」出来ず、
  「かべぎわのカレンダリオ」の面白さとカッコ良さ、
  作/演出の観せたかったものが正しく伝わらず、
  正当な評価が出来ないんじゃないかしら。


で、感想。
A「マレーネの晩秋」はBとは打って変わって
光と闇、表と裏の世界が交互に映し出される
かなりシリアス、ハードボイルド(?)寄りな世界。

(ネタバレは避けるとして)
メイン役から脇役までしっかりとした背景と感情の機微が
設定/表現されている、
非常に細やかさを感じさせる脚本/演出、
そして何より各人の演技
(特に大人でダークなカッコ良さの表現)が素晴らしい。

メイン役はもちろんサイドの方の思わぬ一言や行動に
漢(おとこ)と女、それぞれの美学が込められている、
とても豪華なハードボイルド世界でした。
(ある意味古き良き時代のルパン三世も入ってるんですよね( ´ー`))


で、裏世界(マフィアの世界)から表世界(映画館スタッフと観客達)からの
切り替わり、起伏と緩急のバランスが見事で
恐ろしいほどの緊迫感を味わった後に、
ほどよいゆるさで笑わせてくれる、
かなり観客の「感情操作」が上手な舞台でした。


※ ただ、シアターKASSAIの前席のパイプ椅子。
  2劇続けて観劇したらどんどんどんどん
  お尻が痛くなってきてまいりました。
  しかも椅子の足がゆがんでいるのか
  ちゃんと固定されておらず、
  体重移動させると音が鳴ってしまって・・・
  (座布団しくなど工夫はしてくれていたのですが)

ネタバレBOX

【思った事】
ほとんど感想は表に書いてしまいましたが、

※ ちなみにカレンダー(カレンダリオ)は
  主役の殺し屋兼映画館の会計士の名前です。
  感想書いてて「こりゃ観てない人は意味分かんないな」と思ったので説明おば。


・ 「かべぎわのカレンダリオ」という言葉の意味が分かりました。
  かっけー、ハードボイルド小説の主人公って感じですわ( ´ー`)


・ この舞台(A、B)は、単に映画館での出来事ではなく、
  「映画」というものを物語の重要なキーワードとして使っている。

  ・ マレーネがカレンダーに好意(「おじさま」としての)を持つのも「映画」つながり。

  ・ 引退したマフィアボスの「映画」にかけた想い。
    そして、カレンダーが「映画」に詳しくなった理由。

  ・ マフィア兄の妹との真実のつながりを示す父の「映画」。

  ・ 神父の「何故あの娘(マレーネ)を殺さない?」の問いに対する
    カレンダーの答え。

  なんか、趣味「映画」ってだけでカッコ良く思えてしまいそうです( ´ー`)


・ 思わぬ裏設定(事実)
  ※ 多すぎるので覚えているものをいくつか

  ・ 映画技師と見習いはカレンダーが殺し屋である事を知って、
    なおかつ殺した死体の処理に手を貸していた(ちょっと怖い・・・)。

  ・ あの口うるさいだけのマネージャー(?)が
    マレーネの父(元マフィアボス)に娘の警護も
    任されたマフィア(?)だった。


・ 「ボス」と呼ばせた男が生み出す舞台上の緊張感がすごい。
  映画館の温かみのある場面を一転して
  マフィア達の恐ろしい世界に変えてしまう
  あの力に溢れた演技は素晴らしい。
  (そしてそれを途中退場させてしまう脚本がすごい、「アッ!」と驚く。)


・ 同時に映画館場面でほのぼの、笑える空気を作ってくれる
  各映画館スタッフ陣とぽっちゃりの観客さんのやりとりが素晴らしい。


・ カレンダーが「映画に詳しい殺し屋カレンダー」になるまでの過去が深い。


・ マフィア兄の、妾の子としての母親の死への復讐に始まり、
  カレンダーの過去から自分と重なるものを見出し、
  カレンダーの心を掌握しようとする行動。
  そして、父達が作った「映画」を観ることで
  義理の妹と自分との関係に対して生まれる葛藤の表現が演技含め見事。


・ (名前分かるので出します、「サイショさん」)
  単なる「ボス」の手下に始まり、
  かつて自分が子犬の件などでマフィア兄と
  非常に親しくしていた事を思い出し、仕える事を決意する。

  そして物語最後、映画館の抵当権書類をマレーネに渡し、
  マフィア兄の近況と
  「カレンダーはきっと戻ってくる」と予言して去っていく、
  マフィア手下はテライケメン( ´ー`)


・ マフィアから足を洗い、酒と映画の毎日を過ごす
  元マフィアボスに少々愛想をつかし、
  その上元マフィアボスの(かつてのマフィアとしての)
  面影を見た事からマフィア兄に協力する殺し屋「ピアス」。


その他多くの役がみんながみんな
ハードボイルド的(?)に「かっこいい」存在でした。


? 分からなかったのは、
  カレンダーが元の人格「ダンテ」だった頃、
  妹を亡くした事を何故元マフィアボスのせい、として恨んでいたか。
  (結局助からなかった、とかそういう事じゃなかったんですかね、
  直接的に元マフィアボスの何か悪の手が伸びたんですかね。)

  そして何故その記憶を失ったか。


バンタムクラスステージさんをコメフェスで初めて観た時、
「僕らの本来のスタイルは結構シリアス目な作品なんですよね」
と言っていたのですが、
その意味/劇団の本来の作風が非常に良く分かる良作でした。

ただ、観劇順情報は欲しかったなあ。
(Bだけ観て帰る、をやってしまう可能性があったので・・・)

PS.他の方の感想を読んでいて「ああっ!」と驚いてしまいました。
  AとBって同時間軸内の物語だったんですね。
  どうりで「同じ芝居」が入ってる訳だ。。。

  自分はてっきり、Aが終わった後戻ってきたカレンダー達の日常が
  Bだとばかり思ってました。。。まだまだ観劇眼が足りないなあ(´;ω;`)

ゴベリンドン

ゴベリンドン

おぼんろ

吉祥寺シアター(東京都)

2015/05/21 (木) ~ 2015/06/07 (日)公演終了

満足度★★★★★

初めて「参加」するタイプの舞台
(まずこれは表に書いておこう)
昨年のコメフェスでの主催の前説で「言葉で世界を紡ぎだす」、
「語り部」としての上手さに惹かれるものを感じ、
その上でのCoRichアワードでの人気ぶりにかなり気になっていた劇団でした。


しかし、最近Twitterで回ってきた、
本公演のCoRich「観たい!」に投稿された
「かつてファンだったのに役者からとてもひどい対応を受けた」という内容。

それを読んだ自分は
「そういうスタンスの役者がいる劇団は嫌だし、
自分もそういう目に合うのも嫌だから観劇やめておこう」
と敬遠していました。

しかし、ベテラン観劇者含む多くの方々の
「『おぼんろ』を知らない事は演劇ファンとして損である」という感想。


それを読んで、
「(事実は知らないですが)ネットのマイナス投稿1つで
自分にとって”何か新しいもの”に触れるかも
知れない機会を捨てるのはもったいないな」と
とりあえず1回は観劇してみる事にしました。


吉祥寺シアターに着いて、
「あ、ここは倉庫型劇場で、
高さなどあまりに広い舞台スペースのせいで
舞台と観客との距離感がありすぎ、
全然役者の感情などが伝わってこなかった、
ちょっと自分は苦手な劇場だったな・・・」と
過去1度観劇していた事に気付きました。


などのマイナス要因を胸に抱えていたのですが、


1.「溢れるほどのホスピタリティ」
開場時、まさか舞台開演前の一番集中したいであろう時間に
主催が入り口で観客全員と握手し、
場内では役者陣がそれぞれ
「ゴベリンドンは初めてですか?ならこちらの席がいいですよ」と案内し、
更には知り合いだけでなく知らない1人客に対しても笑顔を向けて、
これから始まる物語の世界について楽しそうに語って歩く面々。

聞いていたマイナス評価と全く逆の観客を大切にしようとする行為の数々、
(元々このスタイルでやられているのかは知りませんが)
この雰囲気自体がまず自分の観劇経験の中で初めて知る空気でした。
(人見知りな自分でさえも、つい開演前から楽しくなってしまう、
舞台自体へのワクワク感も増していく、
そんな空気を実際舞台に立つ役者陣が率先して創りだすとは・・・)


そして、

2.「見事すぎる劇場空間の使い方」
スペースが広すぎる、高すぎる、事を良い方向に活かし、
全方位に観客席を配置し、また開演後も舞台上のみならず
観客席の端から端までを動きまわり、

まさに役者の息遣いが観客に伝わる、そんな近距離での
「語り部」5人の夢の空間でした。
(観客を「参加者」と呼ぶ、その理由をまさに体感しました。
あれは「舞台を眺める」ではなく、
一緒に「参加」している空間で起きる「出来事」そのものでした。)




そして何よりも、
主催が始めに語る「昔おばあちゃんから聞いたお伽話の世界」、
そう、「お伽話」そのものでした。

お芝居といえば役者がセリフと所作/表情や身体での表現などで
演じるものが中心となりますが、

おぼんろはその「語り部」として物語についての語りを使い、
「参加者」側の想像力を試し、
そして「参加者」の心象風景として物語の世界を描き出します。

語られる物語自体についても、笑い、涙、驚き、謎解きなど
色々な要素の詰まった、とても素晴らしいお伽話でした。

本劇に「参加」出来た事が自分にとって幸せです。

ネタバレBOX

【思った事】
表に書きまくったのであまりないのですが
・ 舞台空間の上部スペースまで上手い使い方をしていた。

・ 背もたれのない座席はちょっと途中背中が痛くなった。

・ 劇場全体を使った全方位演劇(観客席の自分の後ろでもお芝居が行われる)の為、
  様々な方向に首を動かしましたが、
  さすがに真後ろを観るのは苦しかった・・・
  (だけど、そのセリフ(語り)だけで、状況がつかめたので
  全然「話に置いていかれる」事はありませんでした。)

・ 序盤、ちょっとセリフが聞きづらい面がありました。
  発声なのかなんなのか???

・ 照明効果、音響効果とも使い方がとても上手かったです。

・ 物語本筋との関係を匂わせずに語られたいくつかの事象
  (鍛冶屋の話、蝶のさなぎの話、など)が
  終盤に向かうに従って重要なキーワードになっていく、
  展開のさせ方が非常に上手いと思いました。

・ 舞台開演に際して、主催が「想像力を働かせる為のレッスン」を
  観客に行っていましたが、
  ぜひ次観劇する時は、最初から最後まで目をつぶって、
  「語り部」達の語る内容だけで自分の脳内に物語を描いてみたい
  (朗読劇を聴く時はいつもそうやっているのですが)、
  そのくらい「台詞」ではなく「語り」が上手だと思いました。

・ 終演後、主催が自分達の最終目標として
  「シアターコクーンでの上演」をかがげていましたが、
  本物語を観た後だからこそ、
  自分も小劇場演劇の観客であり応援者だからこそ、
  「その夢を応援したい!」と思いました。

・ わずか5人で演じる舞台とは思えないほどの
  物語の広がりでした。
The ONE

The ONE

SOUND THEATRE

東京グローブ座(東京都)

2013/03/16 (土) ~ 2013/03/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

安定の沢城みゆき
沢城みゆきは可愛いなあ( ´ー`)

というのは単なる自分の趣味なので置いておいて「声優界、演劇界でもあれほど真面目で練習熱心な娘はいない」と太鼓判の沢城さんが選んだ朗読劇、という事である程度の確信は持っていたものの
・主役の藤岡さん知らなーい(沢城さん、平田さんは自分の中ではめっちゃ有名人)
・ひさびさの生伴奏付き朗読劇
という事もあり、、、

演奏が始まりそれにのせて藤岡さん、平田さん、沢城さんの3人朗読が始まったけど、序盤演奏が声を食ってしまっていた(音が大きくて声が聞き取りきれない)部分があり、「これがまさか最後まで続くのか!?(集中どころか舞台として成立しないΣ(゚Д゚」と不安がよぎったんですが、結局このような事態は冒頭と中盤のほんの数分の演奏盛り上がり部分だけで他はちゃんと演技に集中できるぐらいのほどよい演奏でした。

で、作品として
・朗読劇という事で声のプロフェッショナルの2人はもちろん主役の藤岡さんもかなりの演じよう、序盤でこの物語は泣き話ではないのだろうと思ってましたけど、終盤かなり泣き入りました(落とし方が非常に良い)
・東京グローブ座は立地はともかく施設としてかなり立派で音響・ライトなどの効果も良好、バンドが並んだりとスペースがない中簡単なセットに対してうまい照明効果などの使い方をしていて感心
・脚本的にもかなり良し(自分、不勉強の為日本史まったく詳しくないんですが、幕末から明治初期、新撰組の時代から倒幕、明治政府樹立後斎藤一が警察隊に入るあたりまで(るろうに剣心でもそうなってるけどこれって史実でしょうか?)を時代背景としたオリジナルストーリー)
・日本の話だからと日本の曲にこだわらず、場面に合わせていろいろな演奏がこれまたよし (カルメンとかでかかる曲ってなんだっけ?)
・1人剣術士の演舞よし(※最初はとまどったけど、後で「真意」とでもいうものが理解できた(というか自分が思い込んだだけかも知れませんが))
・好きな人にはたまらない演者さん達のアフタートークショー付き
という事で単なるBGM付き朗読劇ではなく、エンターテイメント朗読劇、といって良いレベルの出来かと思いました。

最初から終幕までめっちゃ演技、お話、演奏、演舞、すべてに集中できて
充実した時間を過ごせました。

「サウンドヒストリー」シリーズ、もう何作かやってるらしいけど、次回も絶対行きたいです。

ネタバレBOX

(ちょっと物語全部は書き切らないのとオチを言ってしまうとアレなので箇所箇所を)
明治政府樹立後、元新撰組三番隊隊長斎藤一(藤岡さん)はその名を隠し、
明治政府が設立した警察隊に入る。そこへ沖田総司の姉沖田みつ(沢城さん、創作?)と、それを呼び出したかつての坂本龍馬の腹心陸奥宗光(平田さん、実際の人物?)が現れる。

陸奥「北海道五稜郭に新撰組の亡霊が現れ明治政府の人間を斬りまくったあげく五稜郭を占拠してしまった。このままでは争いが広がりやっと終わったはずの血で血を洗う幕末へ逆戻りしてしまう。そもそも本物の新撰組かどうか素性を確かめる為に土方歳三などの顔を知る2人のどちらかに北海道五稜郭へ来て欲しい」との事。

沖田総司の最後を見とった姉みつは「死んだ沖田総司に再び会えるような気がする」とすぐにこれを了承、一方斎藤は・・・

という流れなんですが、演奏部分は序盤の声を食っちゃった部分を除いて「良好」という事で置いておくとして、まず舞台上部に刀を持った武士が現れ、演舞(1人だから殺陣ではない?)を披露、「こういう形でたびたび現れて明治時代以前の武士の時代の空気を出すのかな?」と思ったら以降いっこうに現れない(この時点でこの人の空気(というか演出意図)が読めない)。

で、斎藤はというと、妻と子をもうけて生活するも、新撰組で唯一生き残り(他は消息不明が何人か)、かつての敵であった明治政府側の犬として働く屈辱の暮らしの中酒浸りになり、思い出すのはかつての新撰組沖田総司(沢城さん2役)、土方歳三(平田さんニ役)、その他の仲間たち。
そしてそれらがイメージさせる「桜の亡霊」という言葉。

明治初期と新撰組時代を場面転換しながら物語が進むんですが、平田さん、沢城さんがそれぞれ2役をうまく演じ分けているのに対して、斎藤一の藤岡さんが明治初期と新撰組で同じキャラの為か、何か朴訥というかいまひとつ感情を出せていない感じが・・・

そうこうしながら陸奥、沖田みつ、斎藤の三者が船で北海道へ渡ろうという所で暗転し、拍手喝さい。「あれ?まさかこの中途半端な場面で終わり?」と一瞬先日観た舞台の恐怖が蘇りかけたけれど単なる途中休憩でした。

ここまでの場面で採点するなら、演技(この時点では2声優のみ評価)、演奏、舞台セット、武士の演舞は不明で「70点がいいとこかな?」、「今後実際どう展開していく?沖田総司、土方歳三などの亡霊が現れるオカルト的展開かな?」と想像しながら待ちます。




で、後半開幕直後、まず驚かされたのが、再び舞台上部に現れる武士、両横に竹が伸びてたので「・・・まさか?」と思ったら演舞の中でいきなり竹をどんどん斬っちゃいます!まさか真剣だとは思わなかったので、今まで単に演舞として観ていたものがいっきに「この武士ホンモノの刀振ってたのか!(((( ;゚д゚))))」という恐怖とともにいろいろ想像を引き立たせる舞台装置的存在になってしまいました。(血は出ずとも触れれば指が飛ぶ刃物をあんなにうまく扱っていた、うわー、まさに武士だー、と(実際剣術家などの人かと思ったら役者さんだった模様、すごいなあ))
後半になって五稜郭の新撰組?に近づくにつれ、この武士の場面も増えていきます(武士の日常の佇まいからなにから。もしかして近藤勇局長の立ち位置を演じてたのかな?)



ここでまず自分のこの舞台を見る目が変わって来ました。新撰組といえば人斬り集団、と言われつつ、舞台上では隊士達の平和な日常を多く演じていた為、喜劇的なイメージもあったのですが、この辺りからいっきに幕末の血で血を洗う日常の空気が演技にも現れ始めます。そして、沖田総司の結核がひどくなっていく様も・・・

このタイミングになって斎藤さん(藤岡さん)がだんだん当時の感情(沖田総司が調子を崩していく、それを心配する土方歳三、の2人に対しての気持ちの荒ぶりよう)を思い出したかのように演技に熱を込めてきます。
「あ、この人演技が下手(朴訥?)なんじゃなくて、政府の犬として自分の気持ちを殺した所、また新撰組入隊当初のクールで通っていた所から始まってだんだんと新撰組末期の悲しい場面の感情へ移っていく部分をずっと表現しようとしていたのか」と、いやはや演者さんをちゃんと観れていないなあ、と深く反省。


その後、北海道へ到着してすぐに猛吹雪に遭う場面と新撰組時代の桜舞い散る場面をイメージとして重ねてきたり、五稜郭を占拠していた新撰組の正体について配役の妙をうまく使ってきたり、また「桜の亡霊」といったフレーズもここでうまく繋げてきたり、「あ、こことこことこことこことここがみんなつながるんだ」とミステリほどではないにしても、うまく話を作ったものだなあ、と感心してしまいました。


その上で中盤ポロッと出した伏線をうまく回収する形で沖田総司(またそれを演じた沢城さん)ならそうするんだろうなあ、とこれまた涙をさそったりとほんとうまい形で話をまとめました。

※後半かなり端折りましたがほんとよく出来た脚本とそれを演じる役者さん、そしてそれに良く合う音楽と演舞、舞台セット・効果など、今まで朗読劇はそれなりに観てきましたが、ここまで突っ込む所なしのよい物語になっているのは驚きです(単に自分が歴史を知らないだけで周りの歴女さん達はツッコンでたのかも知れませんが・・・)


で、アフタートークの中で沢城さんが「今まで演劇では沢山練習してその中で色々な人とお食事したりする機会などがあったんですが、今回朗読劇という事で~」みたいな話をしていた所で、(演劇中テンションの高い役という事もあり、平田さんが4、5回噛んだ箇所以外かなり演技にも熱入ってたし十分練習されてたのかと思ってんですが、実は(個人練習はともかく)本人的には十分というほどの練習ができていなかった、と思っている?それにしてはよく演じてたなあ」とこれまた感心。(まあ本当は十分な練習をされている方がありがたいんですが)



そういう意味で声優さん+役者さんの演技の妙と音楽、そして演出の妙、脚本の妙を楽しませてもらえたいい朗読劇だったと思います。


これこそ「声優だからって舞台をバカにしていない!ちゃんとプロとして仕事してるんだ!」って言えるものだと思います。
あー、明日で千秋楽というのが早すぎる、ぜひもっと色々な人に見てもらえたらなあ、と思いました。
Get a Life(ご来場ありがとうございました!)

Get a Life(ご来場ありがとうございました!)

613

劇場MOMO(東京都)

2014/07/16 (水) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★★

起承転結の起伏で見事な感動劇へ
日本国民総メンタルケア時代、
心の病気にかかったりカウンセリング技術に興味もったりという人は多いかと。

下手にそれらの知識をかじってた自分は起承の段階で
「心療内科として全然リアルじゃない!
というかブラック心療内科としてはリアル過ぎ」、
と脚本/演出/役者さんの演技すべてに
全く気持ちをのせられませんでした。

しかし(想像すれば分かる展開でしたが)いざ転じて結ぶ段になると
物語の王道といえる展開と演者の気迫のこもった演技とに
涙腺が開き涙を引き出され、それが閉じる間もなく次の涙へとつながり、

序盤の設定はすべて後半の感動を引き出す為のギャップとしての
誇張表現的なものだったのかと
脚本/演出の巧さと役者さんの「いい熱」に
はっきりいって感心してしまいました。


最近★5つのオンパレードだけど、
まあ自分がいいものもらったのは確かなので
まあいいかと( ´ー`)

ネタバレBOX

カウンセリングの基本は
「無理に聞き出さない」
「共感する」
「否定しない」
「自分の意見を押し付けない」
相手に相手のリズムでその気持ちを言葉や行動として吐き出させ
(吐き出さない事もまた相手の意志表示として認め)、
その中から悩みの解決策を共にさぐっていきましょう、という技術。


カウンセリングの仕事の忙しさにかまけて、
何度も自分に悩みの相談をもちかけていた後輩を放置し、
後輩はとうとう自殺、
そのトラウマからカウンセリングの仕事を辞めた過去を持つ主人公。

しかし、再び彼は(元いた)心療内科、カウンセリングの現場に復帰するが・・・

過去の仕事ぶりはかなり評判が良かったはずの彼ですが、
舞台が始まってみればこの医局、彼を含め
「無理やり話を聞き出そうとする」
「自分の意見をおしつけようとする」
「患者の感情を見ず、自分の感情ばかり表に出す」
などダメダメなカウンセラーばかり・・・

そしてそれを「自分で成長しなさい」とばかりに放置する上司。


はっきりいってカウンセリング/心療内科に関わり、
それらについての勉強もしていた頭でっかちの自分からすると、
「いや、こんなカウンセラーや医局、ダメだから!プロ失格だから!」

リアリティ0(ブラックとしてなら100%でしょうが)、
と感じてしまい、

早い場面転換の中、要所要所で各人良い事を
言っていたりはするのですが、

起承の段階ではまったく気持ちをのせられませんでした。

※ お芝居自体笑いその他を多く織り交ぜたものではない為、
  それこそまったく感情をゆさぶられず、
  ただ「観る」に徹してしまいました。


しかし過去のカウンセラー仲間に昔貸した
自分の学習ノートを返してもらった事をきっかけに
「カウンセリング」の本質を思い出す主人公。

そして転じて結ぶ展開にあたり、

・ ガン患者の終末医療の中、ストレス解消の為の
  カウンセリングを担当していた主人公は、
  とうとうガン患者の本当の気持ちである、
  「死にたくない!妻を悲しませたくない!」を吐き出させ、
  それに共感しつつもただ事実を本人に認識させる事で、
  ガン患者の抱えていたストレスを発散させ

・ 拒食症に悩み足繁く病院に通って来る患者に対して、
  「今の行動をやめましょう!」と意見の押し付けをしてしまい
  患者から「担当医を替えて!」と言われていた女性カウンセラーは、
  主人公のアドバイスから、
  それでも自分の元へ足繁く通う患者の本当の気持ちを捉え一緒に悩み、
  一緒に考えていこうという形で患者の心をつかむ事に成功し

  ※ カウンセラーは本来「相手の事は相手の事」と患者に共感しつつも
    一緒に悩んではいけない、一定の距離を置かなければいけないのですが
    (そうしないと自分もメンタルをやられる為)

と転結で見事に「真のカウンセリング」に成功します。


このガン患者が自分の本音を叫ぶ場面、
それをカウンセリングルームの外で待っていた妻にも聞かれるのですが、

主人公、ガン患者、ガン患者の妻とそれぞれの演技が急激に熱をおび、
その上前半からのギャップが見事に効いたのか、
とても大きなショックを自分は食らってしまいました。

いっきに涙腺が緩み目は涙に潤んでしまいました。


そして主人公の悩みが1つ解決したと思ったら、
次は別の(女性)カウンセラーの悩みも連鎖的に解決していく、

「何故そのような行動を取るのか、その理由を考えよう」
という主人公のアドバイスを見事に活かし、

そして更に患者にもその親が取る行動

※ 「毎日親と自分のお弁当を作れ!」と厳命していた

について、
「その理由を考え、聞いてみよう」と
患者の意志を尊重した形でのアドバイスを行い、
それが受け入れられていく、
という流れに

涙が乾く暇がないぐらい気持ちを引っ張られてしまいました。

そして、
「かつて放置し自殺してしまった後輩」と同様に
今回またも放置してしまいかけた恋人に対しても、
主人公が見事に締めくくります。


ここまで来ると、序盤全てを否定していた自分が嘘のように
このお芝居に引き込まれてしまいました。

序盤のブラック展開は、
後半の感動を生み出す為のスパイス的な要素として入れられていたのかなあ、
と。


今回のお芝居は、出演されている役者さん自身から誘われてのものでしたが、
思わぬ拾い物をした気分です。

ひさびさの正統派感動劇を観せてもらったと思います。

このページのQRコードです。

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