みさきみさの観てきた!クチコミ一覧

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タイム・フライズ

タイム・フライズ

ミュージカル座

THEATRE1010(東京都)

2011/12/01 (木) ~ 2011/12/06 (火)公演終了

満足度★★★★★

熱い時代の申し子たち
オープニングがめっちゃカッコイイし、流石にミュージカル座だけあって歌があまりにも素晴らしい。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


裏日記はこちら→http://ameblo.jp/misa--misaki/


平成生まれの哲平と大輔は就活するもなかなか決まらず、なんとなく過ごしていた。そんなある日、ひょんなことから平成から昭和にタイムスリップしてしまった二人は1968年、安保粉砕!権力反対!ベトナム反戦!!などとシュプレヒコールする学生運動の真っ只中に入り込んでしまう。

当時の世相や風俗を散りばめながらコメディタッチに描きつつも、昭和と平成、二つの時代の若者の姿を対比させて描いた熱く沸き立つようなミュージカルだ。一方でこの闘争に参加していた哲平と大輔は、若かりし頃の大輔の両親が、過激に学生運動を繰り返していたのを見つけて驚く。当時の両親がどんな思いで学生運動に参加したのかにも焦点を当てながら、ほっこりとした温かいエピソードも交える。

世の中の矛盾を感じて国を変えようとした彼らの行動をみて、平成生まれの哲平と大輔が感じたものは、自分達はあれほどの情熱を持って社会に立ち向えただろうか?ということだ。個人的には彼らのような恵まれた能力を暴力に使うのではなく自分が権力の一部になって国を変えたらどう?なんて安易に思ってしまう。

やがて平成の二人はタイムスリップして過去に行ったときと同じようにひょんなことから現代に戻ってくる。昭和の激動の時代を体験した二人は、少しだけ大人になった。今は平和だけれどちょっぴり生温い感覚も感じながら、哲平はNPOとしてアフガニスタンに活動の場を求め、そこでかつての学生運動のリーダーだった神崎に合う。大輔は「いつか小さな会社を持ってみたい」との夢を叶えた父の会社の跡を継ぐことに。

冒頭から平成の大学生コンビ(松原剛志、中本吉成)がコメディタッチで演出され楽しくてかわいくてとっても素敵だ。素晴らしい歌声と共に舞台全体が回転する鉄骨3階建ての舞台美術もド迫力だった。

笑いあり、涙あり、昭和な時代を感じて平成の時代を考える熱いHOTなミュージカル。
我が儘な巨人の足音【千秋楽当日券はキャンセル待ち】

我が儘な巨人の足音【千秋楽当日券はキャンセル待ち】

ノアノオモチャバコ

サンモールスタジオ(東京都)

2011/10/19 (水) ~ 2011/10/23 (日)公演終了

満足度★★★★

大人の童話
とにもかくにもノアノオモチャバコの描写が好きだ。その描写は劇団名と同じく夢見るオモチャバコなのだ。

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ダメ男・中村が今回の主人公。中村はテレビ製作会社に勤務する、覇気のない男だ。カレーに福神漬けが添えてなかったことで恋人・しのぶを詰ったことが原因となりしのぶに振られる。振られてからやっと今更ながらに彼女への想いがつのる中村ダメ男。笑

そんな中村が勤めるテレビ製作会社では「妻沼に現れる伝説の巨人の足」と称してVTRを撮っていたが局からVの契約解除をされ放送出来なくなった。
そして中村はその日から職場の全員が盗賊団ヴォルガになってる光景と、伝説の巨人が居る世界の夢を見始める。彼の観る夢の世界では、巨人の眠りを妨げないように神官が巨人の足を洗う事を義務付けされていたが、ある日、これを怠り巨人は目覚めてしまう。

巨人が眠りから覚めるとその振動で街は大地震が起こり滅びてしまう。だからこの街の勇士はヴォルガに「私たちの街の住民を盗んで欲しい」と頼むが、ヴォルガの長はこの申し出を断り「ならば巨人の足を盗もう」と強調する。

物語は中村の現実と夢を錯綜させながら現実社会と中村の心の内を風刺したような作品だった。つまり巨人の足跡は政治やら得体の知れない大きなものに屈服した人間の残骸で、それらが蓄積された垢なのだ。

そして中村は改めて感じる。恋人との関係も新鮮さを失い、なあなあになっていた事。始まりの頃や最初の想いが、次第に色あせてしまっていつしか恋人を邪険にしてしまっていたこと。これらに気付き後悔し去っていった恋人を取り戻すまでの物語だ。

ストーリーは決して難しくない。極めて解りやすい。中村の心理の動きを捉えた作品だ。
それをノアノオモチャバコ風にアレンジして一見、難しそうに魅せる技が巧みだ。
間の悪い時にばかり電話をかけてくる中村父も中村にとってはダメ父だ。しかし、中村はこれらを土台に立ち上がるのだ。その希望に満ちた幕引きが清清しくて素敵だ。
無事終了いたしました。ありがとうございました!【眠るまで何もしない】

無事終了いたしました。ありがとうございました!【眠るまで何もしない】

タテヨコ企画

OFF OFFシアター(東京都)

2011/10/20 (木) ~ 2011/10/24 (月)公演終了

満足度★★★

濃密な夫婦
妻の死後一人で自宅に住む夫だったが、友人とのあることがきっかけになり、妻が元気だった頃の思い出として、この物語は動き出す。 最愛の人が元気だった頃、賑々しく友人や部下達が坂本家に集り、他愛もないおしゃべりをしていた当事。そして妻が少しずつ身体が病んで生気を失っていくさまを解りやすく描いた舞台だった。

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暗転が長かったのは物語を噛み締める意味において必要だったのかも知れないが、少し長すぎたように思う。序盤の描写は何が言いたいのかよく解らず後半になって、その伏線は回収されるも、本来の、芝居が始まった瞬間から観客を引っ張る力量や工夫がもうちょっと欲しかったところ。

また、歌手が坂本の妻に最後の歌を送るシーンがあったが、もうちょっと歌唱力が必要だと思う。物語の設定は歌手なのだから、やっぱ歌が上手くなくちゃ・・。苦笑!

舞台は決して楽しい舞台ではない。静かに粛々と脈打つ物語だ。そこには夫婦の愛しい時間だけが流れていく。夫婦とは何かを訴えかける舞台でもあり、涙ぐむシーンもあった。西山竜一の演技もしっかりと。
ユーリンタウン-URINETOWN The Musical-

ユーリンタウン-URINETOWN The Musical-

流山児★事務所

座・高円寺1(東京都)

2011/10/14 (金) ~ 2011/10/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

今村洋一と関谷春子がいい!
アングラミュージカル。
地球上の干ばつにより、節水を余儀なくされた近未来のある街が舞台。ここでは有料公衆トイレの使用を義務付けられており、立ちションなどをすると警官ロックストックらに逮捕され、誰もが恐れている「ユーリンタウン」(実はあの世)に送り込まれることになっている。全てのトイレを管理しているのはUGC社。この法律はUGC社長クラッドウェル(塩野谷正幸)が賄賂で作り上げたもの。

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貧民街の公衆便所NO9では今朝も、金がなくてトイレを使用できないホームレス達が大騒ぎ。そんな中、管理人助手ボビーの父親(大久保鷹)が我慢しきれず、立ちションをし、「ユーリンタウン」に送られてしまう。ボビー(今村洋一)は失意の中、美しい娘ホープ(関谷春子)に出会い、恋に落ちるも自分が今何をすべきかに気づく。それは自由を求めて「革命」を起こすこと。ボビーは立ち上がり、ホームレス達はこれに賛同し、街は大混乱となる。

ボビーがついにクラッドウェルらと対峙した時、ホープが彼の愛娘だと知るが、二人の思いはいっそう強くなるのだった。ホープを人質にクラッドウェルと交渉するボビーだったが、クラッドウェルの陰謀によってあっさりとボビーはうっしっしビルの屋上から警官ロックストックらに突き落とされてしまう。息をひきとる前にボビーはホープに宛てた遺言をリトル・サリー(坂井香奈美)に託す。それは未来に対しての希望や夢や自由の言葉だった。

これを受けてホープはボビーの意思を継ぎ、革命の主導者となり、父のクラッドウェルをうっしっしビルの屋上から突き落とし、晴れて自由を勝ち取るのだった。

UGC社を引き継ぎ社長となったホープは愛とか正義に有頂天になって、肝心の水を管理する能力に欠けていた為、水を枯れさせてしまう。人々は倒れ街は消滅しやがてホープ自身もカラカラに干乾びてしまった。というお話。

物語に悲壮感はない。全体的にコミカルにパッショナブルに進んでいくため凄く楽しめるエンタメだ。入場すると、女子警官ロックストックらがエロい格好で、トイレや携帯電話の諸注意や客席誘導をしてくれる。ちょっとした大衆キャバレー風の衣装だ。笑

舞台は生音楽と同時に始まるが、とにかくキャストが秀逸だ。舞台セット、衣装、そしてミュージカルとしてちゃんと成り立っており、キャストらの気迫がビンビン伝わってくる舞台だ。主役を演じた今村洋一と関谷春子が特に素晴らしい。歌も素敵だ。今村洋一は小劇場の舞台で何度も観ているが今回の舞台では水を得た魚のように益々、活き活きとしていた。関谷にいたっては、初見の女優だがポップでキュートな雰囲気を上手く演じていて好感の持てる女優だと思う。そして警官バレルの清水宏もいい。彼を何度も舞台で観ているが相変わらず客イジリのヒットメーカーでどこの舞台でも同じようにインパクトがあり演技力も豊だ。警官ロックストックの別所哲也もサービス精神旺盛で、観客を楽しませよう、楽しませようと努力していて、その使命感が素敵だった。

役者が吐くセリフにはハートに聞けとか、愛は信じるものとか、自由を求めてとか、ベタでしびれるセリフが羅列する。解りやすいエンタメだ。このちょっとクサイ、アングラ的なセリフで観客は感動し泣けるのだ。革命を象徴する自己批判や自由、人種差別や階級のセリフも盛り込み、全ての民は罪人。と括るところは中々上手い。一人がみんなのためにみんなが一人の為に革命し、自由を勝ち取り、やがて水不足で死んでしまう愚かな人間たちの狂想曲!笑

全席指定4800円 2時間40分 ミュージカルとしては破格でリーズナブルだ。観劇して大満足だった。お勧めの舞台。
エレジー

エレジー

(公財)可児市文化芸術振興財団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/13 (木) ~ 2011/10/19 (水)公演終了

満足度★★★★★

あまりにも素晴らしい!
会場に入ると個々の観客椅子にラップで綺麗に包んだ真紅のバラが置いてある。
およそ生まれてこのかた、真紅のバラなんてプレゼントされたことがないワタクシは、なんだかとっても嬉しくなった。そして平幹二朗主演の舞台を4000円というチケット代で観られるという設定も良心的だと思う。そのせいもあってか、この日はキャンセル待ちの観客が受付で列になって並ぶという反響振り。

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当日パンフは舞台上の登場人物が映されていたが、あちこちの劇場で置きチラシしてあったフライヤーに映ってる平はリア王の平。笑
手抜きにもほどがあるのだが、やっぱ4000円だから?笑

キャストは5人。今更ながら平幹二朗の厚みのある演技力に感動した。

偏屈でがんこな老父・平吉(平幹二朗)は凧の研究家であり、昔は高校の生物教師だった。現在の平吉の家は八年前に平吉が頭金を出し、息子の草平がローンを支払うということで買った古家だが、その後、草平は平吉の意にそぐわない女優の塩子(山本郁子)を伴い、家を飛び出す。平吉が死ねば、家は草平の手に入るため、家を離れた後も草平はローンを払い続けた。残酷で荒涼とした家族の姿は、草平の急死で浮上した残りのローンの支払い問題により、大きく変化することになる。

ある日、ローンの督促状を持って塩子が平吉の家にやってくる。対立する平吉と塩子の間に、やがて奇妙な愛情が生まれ、平吉の弟(坂部文昭)、塩子の伯母(角替和枝)、塩子に求婚する青年医師(大沢健)を巻き込んだドラマに展開していく。 という筋だが、この物語に登場する女性2人はノイローゼだ。一方で平吉はあるはずのない踏切が見えて、平吉の弟に鐘が鳴ってるから渡らないように注意を促す。この注意を弟はボケたと勘違いする。ちなみに登場人物の5人とも独身。


・・・というように物語全体が「老い」をテーマに孤独な老人がどう生きるかを見つめなおそうとした作品だ。老いて尚且つ、一人で暮らしてるような人間は知らず知らずのうちに自由な精神が宿ってしまうから、他人と暮らすこともおっくうになり、と同時に孤独も噛みしめるはめになるのだ。そうして一人で気楽に暮らしていると、いつのまにか周囲と適応できなくなり、本人にとっては周囲の方がねじくれているように感じてしまう。

一方で塩子と平吉は嫁舅以上の感情を持ち始める。終の棲家にもならんとする家を巡っての人間模様、失った息子への悔い、残された息子の嫁に対するほのかな恋心などを盛りつつ主人公・平吉の頑固で孤高なたたずまいが美しい。

だが、平吉の頑固さ故に塩子からの独白を受け入れられなかった矢先、塩子は交通事故で亡くなってしまう。亡き息子の草平が何とか人の期待に応えようとするあまり、裏目に出てしまう人生やこれと似たり寄ったりの平吉の弟、相反する強い精神の平吉の生き様も描写しながら、笑いと悲しみの中で、親子や兄弟関係をはじめ様々な人間関係のゆがみが浮かび上がる。そして終盤は孤独な老人2人の姿を映して終わらせる。

舞台は笑いも随所に散りばめながら重厚で考えさせられる物語だった。角替和枝のトボケタ役も素敵だった。老人となった平のハマリ役な舞台だったが、現実に亡くなった息子・沖雅也との幻影と被ったような作品で平自身、想うところもあったに違いない。
それにしても素晴らしい舞台だった。
Kと真夜中のほとりで

Kと真夜中のほとりで

マームとジプシー

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/10/14 (金) ~ 2011/10/24 (月)公演終了

満足度★★★★

絶妙な心理描写
田舎街の中心にあるシャッター商店街や、そこから見える丘の上の家並み、そしてその先にある湖、これらの風景は3年前となんら変わらない。変わったのはKが突然として居なくなったことだ。Kの兄のかえでは、あれ以来、夜中になると街中を何かあるんじゃないかと思ってうろつく。同じように、Kの同級生や友人たちも夜中になると、うろつく。まるで絶滅する恐竜が広い草原をかつて自分たちが繁栄してた頃を懐かしむような悲しさだ。

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Kは3年前に湖のほとりに靴を残したまま失踪した。誰かが突然、居なくなるということ。それは衝撃のなにものでもない。彼らの記憶が消滅するまで、Kは彼らの中で生き続けているのだ。記憶の欠片は、大切な何かを求めるように揺さぶられて、今でも彷徨い続ける。

高校生であったKは多感な年頃で、何かに泣いたり、夜中に電話をしたり、誰かを訪ねたりと眠れない夜を過ごしていた。そんな妹の行動を何も知らなかったかえでは、街中に尋ね人のビラを貼り、彷徨う。そうして歩きながら湖にたどり着くのだ。他のみんなと同じように。

それでも朝はやってくる。しかしその朝は本当の朝じゃない。彼らの夜はずっと終わらないのだ。街はあらゆるものを飲み込み、猫の屍骸やゴミも飲み込み、汚いものも漂っている。そして歴史も。

昼間は普通に暮らしながらも、夜中になるとKを思い、Kとの思い出の儚さに憂い彷徨いながら、現実の悲しさに打ちのめされた孤独な人間の心理を描写していた。その表現方法は繰り返される言動と行動だ。

ワタクシは藤田貴大の本が好きだ。彼の描く世界はいつも一つだ。今回はKという失踪した少女を軸に彼女に関った人たちの心を描いていた。何度も繰り返される同じセリフと行動に、意味がないように思う方もいるかも知れないが、何度も繰り返されるその刷り込みで、じわじわ~っと彼らの心情が痛くなるほど響くのだ。
だから今回も、その痛みを察して悲しくなり、この舞台全体が放つ悲壮感にも似た後悔や、それぞれが抱えた想いが錯綜するのだ。

キャストらは、汗ダクダクで頑張っていた。序盤、その動きは無駄のように感じたが、ある瞬間から、彼らの動きが、彼らのもがく心の動きだと感じて、のめり込んだ。
ハアハア、ゼイゼイしながらセリフを吐くので聞き取れない部分もあったが、まあ、生身の「「人間だから」(みつお)笑
オレンジノート

オレンジノート

劇団TEAM-ODAC×演劇カンパニー曲者

六行会ホール(東京都)

2011/10/13 (木) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★★

想い
舞台は下町のチャイナタウン。町の中心にある教会に、一冊の古く汚いノートがあったことから始まる。このノートをオレンジノートと名付けた少女と青年の交換日記を軸に過去の彼ら達の思いや、青春が綴られていく物語だ。

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チャイナタウンをシマとする中国マフィア・リュウ一家と下町をシマとする日本ヤクザ・天竜一家はかつて町全体を揺るがすほどのシマ争いによる抗争をしてきた。しかし、現在のリュウ一家は細々と中華料理屋を営み、かつての勢いはなくなっていた。そんな矢先、天竜一家は機会があればシマを広げたいと目論んでいたのだった。

それぞれの暴力団の跡目継である二代目の息子たち、ヨンハと洋一は幼いころからの親友でもあり、お互いを信じ、いつか自分たちが組織のトップになったなら、こうした争いに終止符を打ち、平和な町を作ろうと考えていたのだった。そんな折、二つの組織を争うように仕向ける罠が待っている。

分裂する組織の中でお互い想いを寄せる敵対する組織に配属する男女は逢う事が叶わず、交換日記として、それぞれの想いを綴る。この日記から浮かび上がる抗争とこれを止めようともがくヨンハと洋一。しかし、ヨンハは敵の銃弾に打たれて命を落とすも、ヨンハの思いはオレンジノートに詰まっていたのだった。

終盤に描かれた友情のシーンで落涙した。物語自体はベタで解りやすい。しかし、泥臭い青春を生き抜いた若者たちの青春劇は、やはり心打たれるものがある。信じること。少年の頃からの友情を信じるという強さは、観ていてスカッとするのだ。

天竜一家のヤクザがめっさ、カックイイ!笑
コントンクラブ image5

コントンクラブ image5

K Dash Stage

本多劇場(東京都)

2011/10/13 (木) ~ 2011/10/23 (日)公演終了

満足度★★★★

おもちろい!
今年のコントンクラブは笑いのセンスが素敵だった。なんでも出演者14人でショートコントやショートストーリーを作り上げたらしく、ショートストーリーに至ってはちょっと感動した展開もあった。ムエタイレストランの店員チャンパに至ってはワタクシの好みのコメディでオモチロ可笑しく笑った、笑った!

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そして今年は女子がカッコいい。圧巻のダンスに加え、オムニバスギャグでも大活躍で、まさにエンターテインメント、魅せる舞台だった。更に、イケメン達とのコラボに、女性アクロバット集団G-Rocketsの知念紗耶らの絡みも絶妙で、全てに大満足の舞台だった。

終盤で演出家のリチャード・レインが東京ヴォ-ドヴィルショーの奈良崎まどかにセクハラした事件を、民事裁判中という事も取り上げていたが、マジなのかコメディなのかイマイチ霧の中。笑
今年は公演前にロビーで観客サービスがあり、出演者がパフォーマンスしていて、イケメンを間近に女子観客がドーナツ型に取り囲み楽しんでいた。こういうのっていいね♪
レオ&レオ vs 迷宮の写楽。

レオ&レオ vs 迷宮の写楽。

社会福祉法人トット基金日本ろう者劇団

シアターX(東京都)

2011/10/13 (木) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★★

初体験!
社会福祉法人トット基金って、たしか、黒柳徹子が書いた「窓際のとっとちゃん」の売り上げを全て寄付して立ち上げた法人ですよね。今回の舞台は明らかにろう者向けに構成された舞台だった。

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2本立て、2時間の第一部
【レオ&レオ】
レオナルド・ダ・ヴィンチと、そのろう者弟子・クリストフォロ・デ・プレディスとの出会いの物語。ダ・ヴィンチはプレディス兄弟と「岩窟の聖母」を共同制作するため、ミラノに行きます。そこでろう者の絵師クリストフォロに逢いました。彼が使う言葉はダ・ヴィンチ天性の好奇心を刺激されたのです。彼のお陰で「モナリザ」が描かれ「モナリザ」のモデルはおそらく、ろう者であった、という推論とろう者に対して希望を与える内容だった。

舞台は音楽なし、セリフなし、手話を解説する字幕が舞台後方の壁に投影される形だったが、舞台上に設置された絵画の枠が字幕に重なって見えなかった点と、物語の説明も字幕で説明された方が、一般の観客には解りやすかったように思う。何の知識もなく、いきなり観に来た観客は物語の筋が理解出来なかっただろうと推測する。


第二部
【迷宮の写楽。】
こちらは導入音楽もあり、吹替えセリフもあり、解りやすかったが、芝居と言うよりパフォーマンス性の強い作品だった。
謎に包まれた浮世絵師、東洲斎写楽。 写楽とは一体何者、どんな存在であったのか。 ろう者の優れた画家がいたという話が伝えられていることから、写楽をろう者と仮定しての舞台だった。その昔、現在のTUTAYAが浮世絵を売っていた版元だったことも描写し、TUTAYAと写楽の関係性や歴史を説明していたが舞台抽象的で、衣装も煌びやかで美しく、芸術的な作品であった。

この舞台では字幕がすこぉ~しボケて読み辛かったのが残念だった。
Lock'n'Roll

Lock'n'Roll

大川興業

ザ・スズナリ(東京都)

2011/10/14 (金) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★★

暗いことは視覚で楽しめないということ
宇宙で目に見える物質はわずか約4%・・・なんつって大層な説明からなんとなく壮大な物語かな?なんて考えてたワタクシは見事に裏切られ、なんと、こぢんまりした舞台だった。

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物語の主人公は病院のベッドで身動きできないまま植物状態で横たわっている男だ。彼には別居中の妻と娘があったが、彼女らにも見放されている。そして男は他者からは既に死んでいると思われているが意識だけははっきりしている。しかし、病院のドクターも他の患者も、男の知り合いも、男が死んでしまったものとして会話は進行されていく。男の体は家族の意思により献体されるようだ。しかし、男の意識ははっきりしてるので、自分の置かれた状況に足掻き、葛藤し、今までの人生を振り返って後悔もするのだが、これらを全体的にコミカルに描写していた。

以上の物語だったら、特に暗闇にする必要はないと思った。眼の前の舞台上に、果たして役者が居るのかさえも見えない状況で、音だけが頼りなのだが、父親が少年にバットで殴るシーンでもバットの音はおろか、少年が打たれる悲鳴すら聞こえないのだ。あれ?これって演出が甘いんじゃないの?

また演技力の問題だと思うが迫力に欠けたし、壮絶なシーンでも、他人事のようで本を前にセリフを棒読みしているような状態。中盤まで役者の足音も聞こえなかったので、マイクだけは舞台上に設置し、裏の方で役者が台本見ながら言ってるようにしか感じられなかった。後半になって足音や、役者の顔の向きによって発声が変わっていたから、ああ、役者が居るんだな・・、とか思ったけれど。

またこういった暗闇舞台の公演は舞台セットはいらないし、衣装もいらない。ましてや役者が楽だ。「Lock'n'Roll」のタイトルにしてはロックな展開は何もない。もしかしたら、ベッドに横たわった男の気持ちになれよ、といった嗜好だろうか?確かに男は真っ暗闇の中で意識だけはあるのだ。ただ、観客を引き込む演技力がいまひとつ。
羽球魂

羽球魂

劇団EOE

千本桜ホール(東京都)

2011/10/11 (火) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★★★

菊池紗都が頑張る!
芝居が始まる前から客いじりサービスが行われる。直原役の菊池紗都が一本眉毛でおぼちゃまくんのように観客をもてなす。笑
いあいあ、これがことごとく可笑しいったりゃありゃしない。勿論、客席は暖まりこれから始まる舞台に期待しちゃうわけよ。

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成績もバドミントンも有名な名門女子高「山手女子大」と、お世辞にも成績がいいとは言えない三流大学「東京夢の島大学」の2校が合併し「東京山手大学」として新たなスタートを切ることになったバトミントン部の目標は「山手女子大」が代々守り続けてきた東都リーグ団体戦のシード権を守ることにあった。

しかし部員不足から男女それぞれの単体で団体戦に出場することが出来ない。そこで残るもう一つの策は「混合団体」だった。しかし、旧山手女子大の部員と、旧東京夢の島大学の部員とではやる気のベクトルが違いすぎる。果たして彼らは混合団体としてシード権を守れるのか?が今回の課題だ。笑

旧東京夢の島大学の部員達はシード権獲得をのっけから諦めムード。これに対抗し旧山手女子大の部員らのバトミントンに対する想いが熱い。スポコン魂と彼らの恋愛事情を絡めながら、お互いをしごき、戦いの精神的レベルを向上させていく物語だった。

なんとなく柿喰う客のスポーツ編のような感じ。キャストらのハイテンションでスピード感溢れる長セリフに圧倒された。特に塩川零役の平澤有彩のカツゼツが素晴らしい。そしてスマッシュフォームが美しい。バトミントン部員だったんじゃないか・ってくらい。
中島みゆきの導入音楽もいい。
「極めてやわらかい道」千穐楽!23日は13時開演!!当日券アリマス

「極めてやわらかい道」千穐楽!23日は13時開演!!当日券アリマス

ゴジゲン

駅前劇場(東京都)

2011/10/06 (木) ~ 2011/10/23 (日)公演終了

満足度★★★★★

書きの苦しみ!笑
脚本家というのは書くのが苦しいのだろうか?およそ作家に程遠い位置にいるワタクシは書くことを商売にしていない次元なので、そういった苦しみは解らない。当日パンフの 松居大悟の言葉は、書くのが限界だったが今回の本は自分に素直に作れた、とあった。松居はめちゃくちゃ陰の人間っぽいから、自分を押し殺して、陽気な台本やポップな内容に仕上げようとすると恐らく免疫という危険分子が松居自身をプレッシャーに追い込むのだろうか?笑

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そんな 松居大悟 の描く世界はストーカーだ。彼らが姫と言っている対象はピンサロに努める大橋紀美子という30を過ぎたブスらしいが、彼らの中では姫なのだ。その姫を守ると称して、彼女の行動や買い物を全てチェックし、ゴミ袋から姫の捨てたゴミを収集する。姫の現カレを王子として崇め奉る彼らは、姫の元カレたちだ。笑

彼らは変態じゃない。彼らは独自の国家を作り姫を守るも姫に干渉しないという、これまた独自のルールを遂行する、云わばヲタ集団だ。だから姫を共有し守るという姿勢が彼らの趣味みたいなもので、常時、姫を監視し、だけれど干渉せずに、常にワーワーと騒いでる男たちだ。つまり姫の近くで姫を覗き見できる彼らのアジトは、俗に言う秘密基地みたいなものだ。

同じ目的を持ち、同じ空間を共有する彼ら自身は案外、楽しいのだろうな・・とも思う。この時点で孤独感はなく皆で遊びに興じる格好だ。そして誰もが恋の仕方を解らず、自分の中で姫を過大妄想してしまう。秘密基地に居る間は彼らは孤独でもなく、また変態でもない。彼らの国ではこれが普通なのだ。そのうち抱きしめられる、という行為を経験しない彼らは、自分を抱きしめた相手に恋してしまう。相手が男でもだ。ハグ。なんて素敵な行為だろう。だから愛情に飢えていた彼らはハグされ恋に落ちてしまうのだ。笑

こうして、小さな国家の中に居る彼ら住民は、家族のように緩やかに穏やかに独自の精神世界で遊びまわるのだが、ここに訪れたチンピラも、その世界の虜になってしまう。少年時代のような世界に。間違った遊びはどんどん拡大し、やがて、自傷する男、逃げ出す男、姫に刺される男などが出てくる。そして、姫自身の自殺をきっかけに、この危険な遊びは遂に解散し、ちりじりに散っていくのだが、そういった後の不条理を伴う空虚感は松居の本の素晴らしいところだとも思う。

ワタクシ自身は存外陽気な人間だ。だから内に篭るという感情も、勿論、引き篭もるという行為も解らないが、誰かを思い詰めて鬱になる感覚は解らないでもない。面白い作品だと思う。また登場するキャストのキモい演技力も流石だ。松居の世界感を表現する次の作品も楽しみだ。次回も、観客まるごとブチかまして欲しい。笑
正劇ラグナロク

正劇ラグナロク

劇団Please Mr.マーベリック

戸野廣浩司記念劇場(東京都)

2011/10/13 (木) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★★

コミカル系
ストーリーはワーグナーの歌劇「ニーベルングの指輪」とFF、ドラクエなどRPGの設定によく使われる「北欧神話」をもとに構成したもので表現方法はストレートプレイとのことだが、シリアスではなく、どちらかというとコミカル。黄金の指輪を巡る、神と巨人と人間と小人の物語だ。こう書くと、なんとなくロード・オブ・ザ・リング?なんつって想像する方も多いと思うが、そう、そのミニ版みたいなヤツだ。笑

以下はネタばれBOXにて。。

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あらすじの前半は劇団で既に説明UP済みなので、後半から。
アルベリヒがラインの指輪に死の呪いをかけたことから、この指輪の主人は次々と死んでいく運命にあった。やがて巡りめぐって英雄ジークフリートの手中に納まった指輪だったが、森に住む大蛇の血を浴びて不思議な力が宿ったジークフリートにはこの指輪の呪いが効かないのであった。

しかし誰もが欲しがる指輪のせいで疑心暗鬼な争いは絶えず、ジークフリート自身も背中の急所を刺されて殺されてしまう。そうして最後に指輪を手をしたルーネは欲深い人間の浅ましさと俗世を憂いてライン川に身を投げて死んでしまうのだった。
こうして指輪は元の持ち主の川底に住むラインの乙女たちに戻ったというお話。

終盤にこの物語を締めくくる人間の営みに対するバイブルのようなセリフが投げかけられる。このセリフが実に素晴らしい。脚本 歳岡孝士。 良く練りこまれて秀逸な本だ。きっとコミカルな描写を入れずストレートプレイできっちり演じたなら重厚な舞台になったはずだ。しかし、舞台はコミカル仕立てに演出されており、この部分が軽薄な感覚に受けてしまう。

またキャストの演技力に差があったのも残念だった。ゴッドランド王グンターを演じた渡辺真大のキャラクターが実に楽しい。不思議な魅力のある役者だ。
ぼくはだれ

ぼくはだれ

RISU PRODUCE

シアター711(東京都)

2011/10/06 (木) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

流石はプロ集団!
2009年に行なわれた第19回下北沢演劇祭の際に上演した作品の再演。この年の同じ舞台を観ていることから懐かしさでひとしお。
また同年の7月に大阪で行われているロクソドンタフェスティバル2009にも参加し参加団体24団体の中、見事グランプリを受賞し同時に最優秀脚本&作品賞の三冠賞を獲得した作品でもある。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

裏日記はこちら http://ameblo.jp/misa--misaki/

ワタクシにとっては再演による観劇だったが、すこ~し脚本をイジッタようで、初演よりはずっと解り易かった。しかし、初演の作品はそれはそれで衝撃的な舞台だったし、今回もストーリーは覚えていたが、まったく新鮮で技能的な舞台でもあった。
プロ集団!と名乗るだけあってキャストらが演じる緊迫感は客席を飲み込み、コホン!と咳も出来ないような状況の中、確かにズシン!!と心に響いた問題作でもあった。

ストレイトプレイ会話劇。
強盗放火殺人事件の被疑者として逮捕された主人公と、刑事達との11日間の攻防。
作品はかなりリアルに作られており、専門用語も飛び出す。この劇団の持ち味は序盤に観客の全てを目の前に強引に引き込む力があることだ。今回も浜谷康幸が演じる刑事が被疑者に本気でビンタをハルシーンで度肝を抜かれる。浜谷の巨人のような大きな手でだ。苦笑!

こういった場面を見せつけられると、役者同士の本気のぶつかり合いがこれから始まる舞台の物々しさを予感させるに充分な演出だ。8人のキャストで繰り広げられた取調室での攻防劇だが、8人全員の演技はお見事で大迫力だ!

強盗放火殺人事件の被疑者として逮捕された亀谷被疑者は潔白を主張するも、これを真っ向から「人殺し」と決め付け暴言を吐く刑事が居た。この刑事が奥田刑事だ。

妻と子供を殺害された過去を持つ奥田刑事は被害者意識が強く、過去の事件を未だに許せなかった。その為、犯人逮捕に執念を燃やし、その執念はやがて自白の強要や密約、脅しなどで無実の人間を有罪にしてしまうのだった。

刑事達と犯人との取調室での攻防や被疑者と弁護人のやり取りに緊張感が走り、一瞬たりとも目が離せない舞台だ。まるで映画を観ているような綿密なやり取りに、緊迫感が走る。

本の練度も秀逸で隙がない。また、それぞれのキャストがこの役を演じる為に生まれてきたように思え、まったく違和感がない。刑事との密約によって被疑者の証言が二転三転する感情の襞のぶれも良く理解できて、素晴らしい舞台だった。その証言の反転に翻弄される弁護人。被疑者を助けたい、と心から思う弁護人は被疑者と刑事の密約を知って、刑事に嵌められた事を悟り、愕然とする。証言を何度も変える被疑者に対して弁護人は呟く。

「いったい、貴方は誰なんだ?」

また一方で、殺された家族の復讐の為に殺人を犯した犯人と刑事との攻防では、刑事の人間らしさが垣間見られて、素晴らしい舞台だった。犯人の心情もしかり。
前回同様、感動で震えた。

また、終焉後に松本匠が「小劇団というのは中々恵まれないものでして・・、それでもこの舞台をご覧になって、来てよかったと感じて頂ければ幸いです。またこれをきっかけに、舞台で何かを感じ取って頂きましたら、他の小劇場の舞台も是非に観てください。」との実に誠実なコメントがありました。お人柄を感じさせるコメントでした。

現在、同作品がドラマ化へ向け、企画が進行中でもある。とのこと、こちらも素晴らしいですね。
マジックアワー

マジックアワー

[DISH]プロデュース

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2011/10/05 (水) ~ 2011/10/10 (月)公演終了

満足度★★★

福島正平すばらし・・
とにかくセットが素晴らしい!
舞台美術:福島正平、いい仕事するなぁ・・。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


下町の映画館が舞台。戦後の復興期に建てられたこの映画館は老朽化はいなめないが、町の人たちからは心のよりどころとなってきた場所である。前オーナーの大村大吉は、この映画館は町のシンボルとして、港の灯台のように町に帰ってくる人たちの為の足元を照らし道しるべになるようにとの考えから、このネオン管をその営業が終えた今でも決して消さないように言い残し、今、この灯りを守っているのが筒井伸幸である。

そしてこの映画館に残される格好で一人で暮らしていた長女の温子の元に、二人の兄が戻り、失踪していた父親も、フィルムの中から飛び出してきた母親も戻り、近所の人たちが加わって、あの頃の華やかな賑わいのあった映画館の情景が浮かび上がるのだった。

死んだはずの母親・志穂が、映画が盛んだった当時のままの若い姿で戻って来たのだが、志穂は憧れの映画スターに逢いたいと望んだら、異次元の空間に移動してしまったのだという。そうして数々の映画スターと逢った。という話はファンタジーだ。

劇中、「フィールド・オブ・ドリームス」や「マジェスティック」の雑談も入ったことから、これから先の展開は夢のある話なのかと思いきや、そうではなく、映画好きな人たちが過去を懐かしんでいるような舞台だった。これはこれで決して悪くはない。ただ、全体的に緩く締りがなかったのが残念だった。それから、もうちょっと爽快に笑わせて欲しかったかな。

更に無責任にも温子一人を残して出て行った家族らの失踪の理由がたわいもないことで、もうちょっと本を練り上げて欲しかったが終盤で家族が再生する方向に持っていっていた。この日は照明さんのアクシデントがあったけれど、無事に乗り切れて良かったと思った。
Birthday

Birthday

天才劇団バカバッカ

ギャラリーLE DECO(東京都)

2011/10/04 (火) ~ 2011/10/09 (日)公演終了

満足度★★★★★

舞台は渋谷のお花屋さん。

店主である父親は入院しており、この花屋を受け継ぐ形で父の留守を守り、切り盛りしていた三兄妹だったが、突然、過去の父の行いを恨みに思っていたフラワーアーティストの神石から罵倒された文章を雑誌に載せられる。この神石にはそれなりの影響力があり、途端に花屋は落ちぶれてしまう。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


それでも家族一丸となって、この状況を打破し、知人達の思いやりも加味されてなんとか乗り切っていく、といういい話だ。三兄妹を取り巻く人々の風景、特に、農業高校での生徒達の情景がコミカルで楽しかった。どうして学園ものって、こう、胸が締め付けられるほど素敵なんだろう・・。そして、オカマバーでの描写も楽しく可笑しい。

花とともに、蘇る三人の思い出をナビするのは、欄(河野真紀)だが、今回の河野はひじょうに自然で素晴らしい演技だった。この物語はまだ始まっていない。欄が母親のお腹の中で見た未来図だ。だから、これから生まれて今見た未来を歩みだす。という設定だ。
欄たちの運命に彩られた今後を予想した未来を描写した物語なのだ。

舞台にはキャストが演じる後ろ手でアーティストたちが生の絵を舞台セットとして沢山の花を描いてゆく。考えたら、これはとっても素晴らしい芸術的な舞台だ。ワタクシはこの手作り感溢れる舞台を観られただけで喜びだった。
相変わらず、天才劇団バカバッカの笑のセンスが好きだ。そして導入音楽もバッチリ。
引き際

引き際

metro

赤坂RED/THEATER(東京都)

2011/10/06 (木) ~ 2011/10/13 (木)公演終了

満足度★★★

やりたい放題!笑
序盤、4人の著名人たちがビップルームでポーカーに興じている場面から。これらは現在日本が置かれている大地震による環境と政治の混乱、金持ち達は海外へ脱出していくさまを風刺したものだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


そんな混乱の最中、東北の海岸に巨大な「海獣」の死体が何体も流れ着き、海岸を埋め尽くす。と、同時に各地で天変地異が多発し、新政府は放射能除去装置の開発に国家の命運を賭けていた。開発者は天才と謳われる亀田博士である。しかし亀田博士の倒病により、その道を隔たれた政府は放射能汚染の賠償を迫る国際社会と絶縁し鎖国してしまう。・・・とこう書くと、なにやら舞台はシリアスで物々しいように思えるが、実際は客いじりしながらのやりたい放題のはっちゃけたエンタメだ。苦笑!
特に、柿乃花先生のちっちゃな人形を使っての腹話術のような一人舞台は失笑!の類。観客はやれやれ・・の表情だった。

鎖国前夜。舞台は海辺の廃墟の町。その片隅にあるスナック「牛の腸」で出来事。人を殺しながら移動している鈴子は、ここでブスなママを殺して次の客が来たら殺そうと待ち構えていた。そこに海獣の内臓で作った不老不死の薬を売って闇商売をしている解体作業員のヒロシが、葱を背負った鴨のように現れる。

鈴子はヒロシをなんなく殺し、次いで元自衛官のトラブル処理屋金本、超絶行商人の黒俣がスナック「牛の腸」にやってくる。鈴子は彼らを殺す機会を探りながらもヒロシが持っていたセンズのようなものをつまみ代わりに3人で食べていた。これが不老不死の薬だったのだが、この時点で彼らはまだ知らない。

そんな折、ふとヒロシが生き返ってしまう。つまり以前から不老不死の薬を食べていたヒロシは死ねない体になっていたのだった。ヒロシが突如として生き返ったのを驚き、鈴子はまたも刺し殺すが、やはりヒロシは息を吹き返してしまう。ここで4人は殺し合いをするが、やはり全員が生き返ってしまうのだった。それらは不老不死の薬を食べたからだと理解した彼らは、今後、未来永劫、生き続けるのだと悟る。

やがて彼らはずっと生きなければならない体を持て余すように海辺でくつろぐのだった。時間はずっと続く。来る日も来る日も同じ時間の繰り返しだ。人が死なないとどうなるか。テロも宗教も戦争もなくなる。時間は止まったままだ。それは地獄と変わらない、という。
人は皆、永遠の命は恐いという。しかしワタクシは今の年齢がずっと続くなら、永遠に生きてみたいとそんな風に思う。

病院では瀕死の天才亀田博士がヒロシの不老不死の薬を食べて永遠の命を授かり、空港では海外脱出を願うセレブたちが暇をつぶし、蝉時雨蝶子はリサイタルで熱唱し、柿乃花先生は、講演会で国家の未来を熱く語る。救われない日本がそこにある。

しかしワタクシ達は精一杯生きるだけだ。なぜなら命は永遠ではないからだ。

今回の表現はすこしふざけ過ぎた感があり、肝心の笑いもイマイチだった。しかしエンタメとして楽しめる。終演後、主宰のさららが自ら物販販売をしていたがひじょうに魅力的な女優だった。
エクソシストたち

エクソシストたち

渡辺源四郎商店

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/12/02 (金) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

バリ、コメディ!
現代。北東北の小都市の閑静な住宅地で30代の母親と 小学生の娘、そして新しい父親が生活している。娘に異変が起きたのは 2ヶ月前から。男のような声でわけのわからぬこと を口走り、母を罵倒するように なった。顔はむくみ、ひび割れ、目は真っ赤。頬は 痩せこけ、可愛かった面影はどこにもない。「悪魔 が憑いた」と判断するよりほかなかった。そして、 この日、父親は 様々な能力を持った悪魔祓い(エクソシスト)たちを呼んで悪魔祓がいま始まる のであった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

裏日記はこちら→http://ameblo.jp/misa--misaki/


これはコメディである。11歳のちづるが上記のように陥る情景を見せない代わりに音や声で観客に想像させる仕掛けだ。一方でちづるから悪魔が移動してちづるの担任の村田に乗り移った場面では、しっかり村田(三上晴佳)は悪魔になる。笑

一方でバリ怪しげなエクソシストたちの詐欺的な行為が見ものだ。カミサマや僧侶、神父、ヒーリングミュージシャン、精神科医と、続々やってくる。もうこれ以上の神頼みはないぞ!ってくらいのおでましだ。そして一様にちづるが大きなベッドに括られながら叫ぶ光景を見て心の底から仰け反り、己の力量がそこまでないことを今更ながらに知らされるのだ。

まあ、元々、コイツラは似非エクソシストなのだから、何をどう転がしても悪魔祓いなんてできゃしないのだ。そんな折、本当の悪魔の真実が徐々に浮き出される。それはちづるの母・まゆみが浮気した相手と一緒になりたくて元夫をないがしろにしてしまった事だった。一つの家族で巻き起こる妻の性癖とちづると父親の関係を描写しながら、繰り返されるまゆみの罪を表現した舞台だった。本来、悪魔はうそつきなのだ。そして言葉の中に少し真実を混ぜ合わせる。そんな隠れた悪魔のお話。

面白い。ちづる役の音喜多咲子の淡々としたセリフ回しが素敵だ。工藤由佳子もいい。

キネカ メモリア

キネカ メモリア

SPIRAL MOON

「劇」小劇場(東京都)

2011/11/25 (金) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★

映画ファンにはタマラナイ企画
築65年。客足も途絶えた場末の映画館に夢を求めてやってくる人々。元学生運動の女闘士、地上げを狙う不動産屋、映画に目覚めた高校生、薹の経ったストリッパーなどなど。これらの人間模様が交錯する映画館のロビーを舞台に描かれた人間模様。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

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映画ファンには堪らない企画だと思う。昔懐かしの映画の話題がてんこ盛りで舞台上にはかつての名画のポスターも貼ってある。昭和の雰囲気が満載で全体的な流れもレトロだ。しかし、物語はしっとり進む展開ではなく、どちらかというとコミカルに描かれコメディな物語のようだった。

そんなだから日替わりゲストも勿論、観客を笑わせる狙いでアドリブする。本日の突撃ゲストはカミまくっていたが・・。笑
往年の映画ファンを魅了するような描かれかただったなら、また違った郷愁めいた心もちになれたかも知れないのだが、この舞台に関しては笑いを取ることに集中し過ぎて、観客の心の奥底に眠ったままの宝のおもちゃ箱の鍵を開けるまでに至らなかったようだった。

つくづく舞台を作るという創作は難しいものだと感じた次第。
それでもコメディ大好きのワタクシは笑って楽しいひと時を頂いたのだが。
あの日 ママがくれたもの

あの日 ママがくれたもの

メガバックスコレクション

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2011/12/01 (木) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

家族とは
メガバの舞台はひじょうに好きだ。セットといい、物語の風景といい、想像力を掻き立てられるからだ。しかし、今回の物語は全体的にコミカルな部分が多く、観客を無理に笑わせようとしているようなところがあって、ダラダラした感は否めない。

以下はネタばれBOXにて。。

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だから前半は長く感じた。その後、9才の少女敦美が、ひき逃げされて亡くなったママの当時の記憶(ママから贈られた記憶)の断片を思いだし、まるでママがのり移ったかのように吐くセリフあたりから、舞台全体がホラーのような、あるいはサスペンス調になり、引き締まったように感じた。

敦美が語る事故の記憶によって、誰が犯人かを追い詰めていくさまや、犯人を炙り出そうとして性急に事を運ぶ父・俊介の行動。過去の過ちに怯える篤と恭介ら兄弟の心理描写は流石に上手い。

一方で有紀から去って行った彼をいつまでも忘れられない有紀の欝はなんだか、うじうじしていて頂けなかった。こういったマイナス思考が、性格的にあまり好きではないのだ。

今回は子役の吉原と細野が素晴らしかった。幕後、彼女らが感極まって号泣しているシーンは作られた舞台より、よほど感動してしまったよ。そして新行内啓太はきっちりと見せ場を作り、秀逸な演技力で魅せた。終盤にかけて家族について考えさせられた。今回もクオリティーの高い美術セットは全て劇団員たちによる手作りだ。こちらも素晴らしい。

疑問点をひとつ。滝一也が作・演出を務めているメガバックスコレクションだが、今回、キリマンジャロ伊藤という名で役者として登場していた方は滝ではないのだろうか?ワタクシ、観劇後、マジマジと見てしまったよ。笑
ワタクシも端役で出演してみたいなぁ。

「モカみさ」って芸名で。

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