エレジー 公演情報 (公財)可児市文化芸術振興財団「エレジー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    あまりにも素晴らしい!
    会場に入ると個々の観客椅子にラップで綺麗に包んだ真紅のバラが置いてある。
    およそ生まれてこのかた、真紅のバラなんてプレゼントされたことがないワタクシは、なんだかとっても嬉しくなった。そして平幹二朗主演の舞台を4000円というチケット代で観られるという設定も良心的だと思う。そのせいもあってか、この日はキャンセル待ちの観客が受付で列になって並ぶという反響振り。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX

    裏日記はこちら→http://ameblo.jp/misa--misaki/

    当日パンフは舞台上の登場人物が映されていたが、あちこちの劇場で置きチラシしてあったフライヤーに映ってる平はリア王の平。笑
    手抜きにもほどがあるのだが、やっぱ4000円だから?笑

    キャストは5人。今更ながら平幹二朗の厚みのある演技力に感動した。

    偏屈でがんこな老父・平吉(平幹二朗)は凧の研究家であり、昔は高校の生物教師だった。現在の平吉の家は八年前に平吉が頭金を出し、息子の草平がローンを支払うということで買った古家だが、その後、草平は平吉の意にそぐわない女優の塩子(山本郁子)を伴い、家を飛び出す。平吉が死ねば、家は草平の手に入るため、家を離れた後も草平はローンを払い続けた。残酷で荒涼とした家族の姿は、草平の急死で浮上した残りのローンの支払い問題により、大きく変化することになる。

    ある日、ローンの督促状を持って塩子が平吉の家にやってくる。対立する平吉と塩子の間に、やがて奇妙な愛情が生まれ、平吉の弟(坂部文昭)、塩子の伯母(角替和枝)、塩子に求婚する青年医師(大沢健)を巻き込んだドラマに展開していく。 という筋だが、この物語に登場する女性2人はノイローゼだ。一方で平吉はあるはずのない踏切が見えて、平吉の弟に鐘が鳴ってるから渡らないように注意を促す。この注意を弟はボケたと勘違いする。ちなみに登場人物の5人とも独身。


    ・・・というように物語全体が「老い」をテーマに孤独な老人がどう生きるかを見つめなおそうとした作品だ。老いて尚且つ、一人で暮らしてるような人間は知らず知らずのうちに自由な精神が宿ってしまうから、他人と暮らすこともおっくうになり、と同時に孤独も噛みしめるはめになるのだ。そうして一人で気楽に暮らしていると、いつのまにか周囲と適応できなくなり、本人にとっては周囲の方がねじくれているように感じてしまう。

    一方で塩子と平吉は嫁舅以上の感情を持ち始める。終の棲家にもならんとする家を巡っての人間模様、失った息子への悔い、残された息子の嫁に対するほのかな恋心などを盛りつつ主人公・平吉の頑固で孤高なたたずまいが美しい。

    だが、平吉の頑固さ故に塩子からの独白を受け入れられなかった矢先、塩子は交通事故で亡くなってしまう。亡き息子の草平が何とか人の期待に応えようとするあまり、裏目に出てしまう人生やこれと似たり寄ったりの平吉の弟、相反する強い精神の平吉の生き様も描写しながら、笑いと悲しみの中で、親子や兄弟関係をはじめ様々な人間関係のゆがみが浮かび上がる。そして終盤は孤独な老人2人の姿を映して終わらせる。

    舞台は笑いも随所に散りばめながら重厚で考えさせられる物語だった。角替和枝のトボケタ役も素敵だった。老人となった平のハマリ役な舞台だったが、現実に亡くなった息子・沖雅也との幻影と被ったような作品で平自身、想うところもあったに違いない。
    それにしても素晴らしい舞台だった。

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    2011/12/08 01:41

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