特集・コラム

【ロンドン演劇通信】#1 演劇のまち、ロンドンから。

執筆神永 真美(ドラマプラクティショナー・教師)

はじめまして!ロンドンのコンセルバトワール(芸術単科大学)で「応用演劇学」の修士課程に通う神永真美です。9月末にロンドンに引っ越し、大学院での一年間がはじまりました。これからの一年間、演劇のまちロンドンで見聞きした様々な演劇事情をお届けしていきます。

大小さまざまな劇場が街じゅうに点在するロンドン。

ちょっとだけ自己紹介 ―なぜ応用演劇学?

「応用演劇」とは、俳優と商業的な成功を目指した演劇をつくるのではなく、俳優ではない一般の人と、その創作過程での成長や変化を大切にしながら創り上げる演劇のことです。

私は大学で演劇を学び、演劇制作として働いたあと、高校教員になったという少し変わったキャリアをもっています。また、まちなかでミュージカルを上演したり、翻訳劇を上演したりと、演出も行ってきました。

高校では主に「演劇」の授業を教えていました。まだまだ日本では実施の少ない「演劇」の授業ですが、たくさんの生徒に関わる中で、いまの日本にとってすごく必要で、豊かな時間じゃないかという確信を深めていきました。「もっと日本でこの分野を発展させたい!」そのために、長年の研究と実績の蓄積のあるイギリスで応用演劇を学びたいと思い、思い切って留学に飛び出しました。

大学の正面玄関にて。

まちじゅうに劇場があるロンドン

ロンドンのまちを歩いてみて感じたのは、劇場の多さです。キャパ2000人ほどのものから、30人ほどのものまで、大小様々な劇場が溢れています。ロンドンの劇場は、客席数の大きさだけで劇場の価値や評価が決まるわけではありません。劇場ごとに、それぞれの理念や扱っている領域があって、それに基づいて上演作品が選ばれています。

たとえば、新しい劇作家の発掘に特化した劇場、社会問題をよく扱う劇場、実験的な身体表現が見られる劇場など……。劇場は単に作品を上演するための「箱」ではなく、何を社会に問いかけ、どのような表現をこの場で育てていくのかという理念をもった場所になっています。

その劇場のシーズンラインアップを見ているだけでワクワクしてきます!演劇と社会の関係性について考えるのに、これほど魅力的な場所はありませんよね。

挑戦に開かれた場

先日大学の入学式がありました。そこでは、本校を卒業した人たちが、ここでの学びがどのようなものだったかを語ってくれる場がありました。

ある衣装デザイナーの方は、こんな話をしてくれました。「私が入学した時、シングルマザーで30代半ばだった。だれも私の選択を賢いと思う人はいなかったと思う。でもいま、自分がこころから愛する仕事で活躍できている。みんな自分を信じて。」

わたしのクラスメイトは約30人。30代からの留学ということで、最初は「若い人たちのなかで浮いたらやだな……」なんて心配をしていましたが、いっきにふきとびました。クラスの年齢層の広さに驚いたからです。大体25歳~60代まで、様々な年齢層の人がいます。

自分の人生は自分がきめる。そんなドライできっぱりした価値観が、私にはとても心地よく感じています。

大学の入学式の様子。ウエストエンドの劇場で行われた。

「ロンドン演劇通信」はじまります

観劇した舞台、授業の内容、劇場の制度、演劇団体の活動視察など、ロンドンならではのトピックをお届けします。次回もお楽しみに!

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