
京都を拠点に、ホテルマンのごときスタイリッシュな佇まいで極上のシチュエーション・コメディを創り続ける劇団「THE ROB CARLTON(ザ・ロブカールトン)」。作・演出・俳優を一身に担う“キャプテン”こと村角太洋氏の原点はどこにあるのか。CoRich舞台芸術!チャンネルでのインタビュー動画を元にした、全3回連載の第1回である。
『トムとジェリー』の英才教育と、学芸会での「敗北体験」
鹿児島県で生まれ、福岡を経て京都で育った村角氏。その「笑いのDNA」の根底には、幼少期に父親が録画してくれたアニメ『トムとジェリー』の存在がある。CMを丁寧にカットし、膨大なエピソードを詰め込んだ「3倍録画のビデオテープ」を、擦り切れるほど見続けた経験。そこで刻まれた台詞のない身体的ユーモアとテンポの良さが、現在のTHE ROB CARLTONが誇るスラップスティックな笑いの基礎を築いている。
一方で、演劇における原体験は苦い。幼稚園の最初のお遊戯会では『さるかに合戦』の臼(うす)役を割り当てられたが、年長組に別作品で勝ち取った天使役では「オンリーワンを演じる勝利体験」を味わう。しかし小学校の学芸会では、同級生が当時流行していたチャーリー浜のギャグを披露して爆笑をさらう姿を目の当たりにし、「強烈なジェラシーと敗北感」を覚えたという。この悔しさこそが、のちの喜劇作家としての反骨心と、独自の笑いへの追求に火をつけたのである。
洛星高校ラグビー部から、ホテルマンへの道
進学校として知られる洛星高校で、ラグビー部に所属し6年間を捧げた村角氏。副キャプテンを務める傍ら、文化祭ではクラス演劇の脚本を担当する。映画『A.I.』と『ドラえもん』を掛け合わせたパロディ劇を執筆し、自身もジャイアン役で出演。これが大ウケしたことで「笑いを取る快感」を決定的に知ることとなった。
卒業後、彼が選んだのは演劇専業ではなく、三谷幸喜が脚本を手がけるドラマ『王様のレストラン』への憧れから始まったホテルマンの道。リーガロイヤルホテル京都での勤務時代に培われた、黒服(タキシード)や「キャプテン」という呼称、そして徹底したホスピタリティの精神。これらはのちに、劇団のビジュアルアイデンティティとして鮮やかに結実することになる。
「大王」後藤ひろひと作品が導いた劇作家への道
ホテルマンとして働きながら、彼の背中を決定的に押したのは、演劇ユニット「Piper」の公演だ。シアター・ドラマシティで後藤ひろひと氏(大王)が手がけるコメディの熱量に触れた村角氏は、「自分もこういうことがしたい」と決意し退職。ラグビー部の仲間たちを集め、憧れの「リッツ・カールトン」の品格を名に冠した劇団「THE ROB CARLTON」を旗揚げすることとなる。
次回は、俳優名「ボブ・マーサム」誕生の(意外すぎる)秘密と、劇団の転機となった恩人たちとの出会いに迫る。
動画出典: CoRich舞台芸術!チャンネル『【劇トクッ!】村角太洋、登場!①』URL: https://www.youtube.com/watch?v=KT9Fy8gSIWE
村角太洋さん インタビュー連載(全3回)
【前編】村角太洋 | 劇団「むらずみ」旗揚げ、不条理への挑戦と「笑い」へのこだわり(この記事)