
「何もわからなかった」デビューから20年。鈴木裕樹は今、自身のキャリアにおいて最もエネルギッシュな変革期を迎えています。
CoRich舞台芸術!チャンネルでのインタビューを凝縮してお届けしてきた全3回の連載も、いよいよ今回が最終回。名優・内藤剛志氏から受け取った「座長のバトン」、そしてフリーとして365日芝居に浸りたいと願う飽くなき情熱。鈴木裕樹が描く「表現の未来図」を、動画のエッセンスそのままに余すことなくお届けします。
青井陽治氏から学んだ「バカ巻き」の凄み
鈴木氏が「俳優としてのターニングポイント」として迷わず名前を挙げるのが、演出家・青井陽治氏との出会いです。初のストレートプレイ作品での3ヶ月に及ぶ稽古は、これまでの常識を覆すものでした。
「稽古の最初の2ヶ月以上、台本を読まずにずっと即興(エチュード)をやっていたんです。そこで築かれた役者同士の関係性が、最終的に台本に入った瞬間に凄まじいリアリティを生む。論理ではなく、身体感覚として演劇の面白さを教わりました」
「中でも強烈だったのが『バカ巻き』という稽古法です。2時間半の芝居を、とにかく超ハイスピードでセリフを詰めて演じる。すると時間は1時間半ほどに短縮されます。その後に通常のスピードに戻すと、自然と『本当に必要な間』が見えてくるんです。教えられるのではなく、体験として刻まれた学びは今も僕の中に生きています」
内藤剛志氏から受け取った「主役のバトン」
映像の世界で長く共演している内藤剛志氏からも、大きな影響を受けました。人気刑事ドラマシリーズ『警視庁・捜査一課長』で共演する内藤氏は、常に現場の空気をデザインし、周囲を鼓舞し続けます。
「内藤さんはいつも『皆さんが頑張ってくれるから、僕が偉く見えるんです』と言って、エキストラの方一人ひとりにまで声をかける。主役がどれだけ周りを受け止め、現場の人間関係を豊かにするか。その姿勢は、今回の舞台『新しいエクスプロージョン』で主演を務める僕にとっても、大きな指針になっています」
岸田戯曲賞の名作へ挑む――「すごいところへ行ける」予感
現在、鈴木氏はCoRich舞台芸術プロデュース『あたらしいエクスプロージョン』の稽古の最終盤にいます。福原充則氏による同名の傑作戯曲を、堀越涼氏(あやめ十八番)の演出でリメイクする注目作。戦後、日本初の「キスシーン」を撮ろうと情熱を燃やす映画人たちの物語。
「堀越さんの演出はとにかく面白い!初演へのリスペクトを持ちつつ、僕たちにしかできない”あたらしい”エクスプロージョンを創っています。1人で何役もこなす場面もあり、肉体的にはハードですが、毎日新しい発見がある。この座組なら、すごいところへ行けるという確信があります」
終わりのない野望。「365日、芝居をしていたい」
2025年秋よりフリーとしての活動を開始した鈴木氏。40代を迎え、その瞳には少年のような情熱が宿っています。
「今後の野望は、1年中、365日芝居をし続けること。今まで触れてこなかったようなジャンルや、全く新しい環境でのチャレンジをどんどんしていきたい。今回の舞台はその幕開けにふさわしい、エネルギッシュな作品になると確信しています」
20歳で上京した時の「勘違い」は、20年という歳月をかけて「確固たる実力と終わりのない探究心」へと昇華されました。鈴木裕樹の新しい冒険は、今まさに始まったばかりです。
全3回にわたり、俳優・鈴木裕樹さんのルーツから未来までを紐解きました。インタビューの全編を視聴したい方は、ぜひ元動画(CoRich舞台芸術!チャンネル)も併せてチェックしてみてください。
※本記事は動画でお話いただいた内容の一部をピックアップし、コンパクトに集約した形になります。記事の元となった動画はこちらからご覧いただけます。
https://youtu.be/xO3bNU6ejo8

シリーズ:鈴木裕樹 インタビュー全3回
▶ 第1回|「カリスマ」との決別と、一発の拳。俳優・鈴木裕樹を形作った「挫折」の夜
▶ 第2回|伝説の「椅子から落ちる歌唱」から、命懸けの『ゲキレンジャー』爆破まで
▶ 第3回|演劇の呼吸を体に刻む。365日芝居を続けたい、終わりのない情熱 この記事