10月15日(木)よりザ・スズナリにて、コンプソンズ#14『善人はなかなかいないっぽい』(作・演出:金子鈴幸)が開幕する。2016年に明治大学 実験劇場を母体に発足後、攻めた作劇と俳優陣の粒立った存在感で上演の度にタイムラインを賑わせてきたコンプソンズ。社会の暗部を穿つ鋭い視点と演劇界きってのサブカルへの愛着と疑い、それらを独特のユーモアと疾走感とともに炙り出すその作風は他に類を見ない。『愛について語るときは静かにしてくれ』で第68回岸田國士戯曲賞にノミネート、第2回日本みどりのゆび舞台芸術賞では選考委員賞を受賞するなど、近年ますます活躍の加速を見せ続けている。本作は、そんなコンプソンズにとって10周年記念公演であり、2年ぶりとなる待望の新作でもある。
駅前広場で反戦運動に勤しむフリーターの男。恋人や友人や家族との距離が広がるなか、ある日、男の思想に共鳴する一人の女が現れるのだが…。混沌とした社会で「善人」であろうともがきあがく人々、その深部に潜むものとは? 開幕を控えた稽古場で、新作の見どころやコンプソンズの魅力についてキャストの星野花菜里、大宮二郎、金子鈴幸、平田敦子、川島潤哉に話を聞いた。

反戦運動から始まる、総合小説的ご近所群像劇
―コンプソンズ2年ぶりの新作です。まずは、作・演出の金子さんに本作のテーマについてお話しいただけたらと思います。
金子 戦争の反対運動をする登場人物を出発点に書きました。というのも、僕の祖父が実際にそうした活動をしていて、「反戦」を掲げたゼッケンを着用して電車通勤をしていたらしく、そこから着想を得たんです。ただ、あくまで執筆のスタート地点という感じで、他にも様々な立場や境遇の人々が出てきますので、「戦争」のみをテーマにしているかというとそうではなく、観る人によって捉え方も変わりそうだな、と思っています。
―メンバーの星野さん、大宮さんは台本を読んでどんなことを感じられましたか?
星野 “10周年記念公演”と謳ってはいるのですが、割といつものコンプソンズというか、これまでと変わらず劇団のカラーが出た作品だと思っています。いろんな人がどんどん出てきて、そのことによってぐちゃぐちゃな様相になっていく、みたいな…。その中で、私はとあるガールズバーの店員を演じます。
大宮 コンプソンズにとっては、ザ・スズナリでの初上演でもあるのですが、書き上がった本を読んだ時に、金子が「スズナリと言えば、『ふくすけ』(作・演出:松尾スズキ)だ」と言っていたのを思い出して…。似ているってわけではないけど、感触としては近いものもあるかもしれない、と個人的には思いました。僕は、細井じゅん演じる反戦運動をする男・大介の親友役で、コンプソンズでは珍しく善良な市民を演じます!
金子 そうなんです。これまでの公演ではメンバーに飛び道具的な役回りを担ってもらうことが多かったのですが、今回はドラマを背負う役柄を担ってもらうので、そこはちょっと新鮮かもしれません。

星野 今回は、キャスティングやテーマなどをまるっと金子くんや他のメンバーにお任せしていたので、そこに私の強いこだわりがあるわけではないのですが、主宰として一つ思っていたのは「10周年といった節目を背負い過ぎない」ということでした。特別なパーティー的な公演にするつもりはなかったので、いつものように楽しんでもらいつつ、ちょっとステップアップしたコンプソンズが見せられたらいいな、っていう気持ちでいます。
大宮 たしかに、10周年っていう意識はあんまりないのかもしれないですね。今まで通りっちゃ今まで通りで、その場で最善を尽くす、みたいな…。節目に劇団内部の話を上演する団体も結構いますが、そういうわけでもないし、自分たちの10年の付き合いがどうこうっていうことが反映された作品でもないんですよ。金子に1番面白い脚本を書いてもらって、それを頑張ってやる。そういうことをずっとやってきたので、今回も変わらず頑張るのみなんですけど、でもやっぱり外から見たら10周年だし、2年ぶりだし、しかもスズナリじゃないですか? だからもう天王山ですよね。うん!天王山だと思います!
金子 天王山公演です!

念願のキャスティング、配役に込めた思い
―安定の個性や魅力をキープしつつ、メンバーのみなさんのいつもとは少し違った横顔も見られるし、つまるところ天王山と! 楽しみです。初参加組の平田さん、川島さんにもお伺いしたいのですが、出演が決まった時はどう感じられましたか?
平田 まず言いたいのは、この人たちね、他のインタビューでまるで私が脅すかのように「絶対出せ!」って言った、みたいに語っていたんですよ。まずはこれを機にそこをきっちり訂正しておきますね。プレイガイド大手のぴあさんのインタビューでそんなこと言うもんだから、もう! ひどいですよね!
金子・大宮 言ってない言ってない!
大宮 でも、「出たい」とは思ってくれてたんですよね?
平田 元々は江原パジャマくんが色々面白い劇団を私に紹介してくれたんですよ。その流れで「もしよろしかったら出していただけますか?」と丁寧にお願いしました。そうでしたよね? そうでした!
金子・大宮 あははは!

金子 いや、でもマジな話をすると、その流れで決めたというよりは、僕の中ではやっぱりいつか平田さんにコンプソンズに出演してほしかったですし、渡りに船というか、「ついにその時が来た!」と思ってオファーをさせていただいたというのが正直なところです。そんな平田さんには、作品における母なる象徴的な役どころを演じていただきます。
平田 そうだったんですか! まだちょっと分かってなかった。だって、本、上がったばっかりなんだもん!
金子 母親役というよりは、母なる象徴という感じですね。これが神話だとしたら、平田さんはやはり「母」的ななにかだろう、と。そんなイメージで書きました。一歩間違えると魔女化するというか、そういう母親なるものの恐ろしさみたいなところも平田さんだから託したいと思って書きました。
平田 ですって! がんばります!

金子 それで言うと、川島さんにはじゅんくん演じる反戦運動をしている男の父親役を演じてもらいます。
川島 僕はコンプソンズの公演を一度拝見しているんですよ。よく喋って、よく動いて、展開もものすごく早くて、「これが今話題の劇団の演劇なのか!」という風に思ったことを覚えていますね。
大宮 コロナ禍に上演した『WATCH THE WATCHMEN(we put on masks)』を観に来て下さったんですよね。

川島 そうそう、コロナ禍でしたね。一方で、僕は昨年末から今年の頭にかけて劇団普通の公演に出演していたんですけど、それはまた真逆のタイプの演劇というか、ほぼ何も起こらない静かな会話劇だったんです。そこで、細井じゅんくんとも共演して、それはそれでとても楽しかったんですけど、こんな風に極端に違う演劇に出るのも面白いじゃないですか。「そろそろいっぱい喋りたいな」と思っていたところで親交のあった金子くんからオファーをいただいたので、いい機会だと思ったんですよね。
金子 僕は過去にMCRの公演で川島さんを観ていて、その強烈なインパクトがずっと忘れられなかったんです。同時に、「コンプソンズでお呼びするとしたら、どんな役が川島さんのこの魅力を最大限にできるんだろう」ということを結構考えていて…。そんな矢先に劇団普通を観に行ったら、じゅんくんとそこはかとなく顔の雰囲気が似ていることに気づいて(笑)。そこで「親子役だ!」となったんですよね。そこから役や物語のイメージが広がった感じがあって…。しかも、ただの父親じゃない感じというか、記号的ではない父と子の様相を描きたいと思ったんですよね。
川島 それは本を読んだ時にも感じました。親子の間柄の深さとか、そういうことを描くお話じゃないと思ったんですよね。どちらかというと、関係の設定がただ父と子というだけで、その先にもっと大きい問題やテーマがある、というか…。
金子 まさにそうですね。僕の中で、「父親」ってどこか父親のふりをしている者だと思っている節があって…。そこが「母親」とは異なるところというか、僕自身も子どもが生まれてから「今の自分、父親っぽいことしてるな」みたいに、メタ視点で自分を見るようなところがあるんですよね。そういう部分もちょっと感じてもらえたらと思っています。

初スズナリ、劇団史上最も予測不可能な新作に
―天王山公演というお話も出ましたが、やはり今回はスズナリでの上演で、そこを楽しみにしている観客の方もいらっしゃるのではないかと思います。スズナリ経験者の先輩として、平田さん、川島さんから何かアドバイスなどはあったりするのでしょうか?
平田 私は下手からは出ハケができません! 知ってました? スズナリって、下手に向かって通路が狭くなっているんですよ。私はその幅を通れないので、上手を使います!
金子 という話を、オファー後に一番最初にしてくださいました(笑)。ちなみに、平田さんがスズナリに最初に立ったのはいつ頃だったんですか?
平田 1998年のサモ・アリナンズだったと思います。30年近く経ってますね。
川島 僕もなんとなく出ちゃったけど、たしかに特別な劇場ではありますよね。下北沢の景観としてもシンボリックな劇場です。
星野 10周年についてはあんまり意識していないけど、コンプソンズにとってスズナリでの上演は一つの目標で、ずっとやりたかったので、楽しみです!

―スズナリでの初上演、心して目撃したいと思います! 最後に、みなさんがそれぞれ思う本作の見どころやコンプソンズならではの魅力をお聞かせ下さい。
金子 「戦争反対」っていうところから始まって、かと思ったら、とんでもない下ネタみたいなのも入ってくる。そういうある意味での落差がどう受け取られるか、そこはちょっとワクワクしています。コンプソンズの公演では、「こういう風になるだろうな」っていう予測をいかに裏切れるか、っていうことを至上命題にしている節があります。それで言うと、過去作も含めて1番予測できないお話になったかもしれません!
大宮 僕のセリフで言うと、「森だ」っていうセリフがあるんですけど、そこでとんでもない演劇の魔法がかかると自負しておりますので、ぜひとも聞き逃さないでほしいです! 三文字です、三文字で魔法をかけます!
金子 唐十郎ばりの魔法がかかります! あと、今まではテーマにおける到達点みたいなのをそれなりに決めて、そこに向かって書いていた節があったのですが、今回はタイトルの「っぽい」という言葉にも反映されているように、「世の中そんな簡単に結論づけられるようなことばかりじゃないんじゃないか」という思いのもと、性善説に行ったり性悪説に行ったりしつつ、「善人」とは何たるか、ということを考えながら書きました。そういう生々しさも感じ取ってもらえたらと思います。

星野 登場人物においても、1人の人物に焦点を絞るのではなく、それぞれが異なる葛藤を抱えていて、そこにドラマがあるということが魅力になっているように思います。群像劇なので、人によって感情移入するキャラクターも変わると思うんですよね。そこも楽しんでもらえたら!
川島 コンプソンズを観たことがある方や好きな方が、金子くんや彼が書くものに対して抱いている強固なイメージがあると思うんですけど、そこを裏切らない作品に仕上がっていると思います。金子くんって、まず人として面白いじゃないですか。こんなに低姿勢だけど、ちゃんと突き抜けて狂っているというか…(笑)。前回公演から2年経とうが、その間に子どもが生まれて親になろうが、人間そんな突然は変わらないし、金子くんやコンプソンズは依然面白いままなので、ファンの皆さんは安心して開幕を心待ちにしていただけたらと思っています。

平田 私はまだまだコンプソンズのことわからないですね。だって、やっぱり変な劇団ですよ! 稽古時間やけに短いし! あと、誕生日も祝わない! だって、今日大宮くんの誕生日なんですよ。
星野 劇団員の誕生日とか覚えてないですよ!
平田 仲悪い団体でも形だけでも祝うよ!
大宮 そういうのは、案外仲悪い団体の方が祝うんですよ!
金子 9月ムズイんですよ。大宮くんとじゅんくん近くてややこしいから!
大宮 そうそう。じゅんくんが9月21日で、僕が9月30日でね。
平田 でも、じゅんくんの誕生日の時には休憩時間にこっそりドーナツ買ってあげてたじゃん。でも今日は誰も何も買ってないでしょ?
大宮 やめてくださいよ! こう見えて僕だって傷ついているんですから! これ以上傷が広がる前に終わります! それでは、コンプソンズ天王山公演『善人はなかなかいないっぽい』楽しみにしていてください!

取材・文/丘田ミイ子
写真/鈴木啓佑(コンプソンズ)
<公演情報>
【コンプソンズ10周年記念公演】コンプソンズ#14『善人はなかなかいないっぽい』
作・演出:金子鈴幸
出演:川島潤哉、夏アンナ(ジャパニーズ生活)、hocoten(劇団「地蔵中毒」)、平田敦子、村田寛奈、(以下コンプソンズ)大宮二郎、金子鈴幸、細井じゅん、星野花菜里

<会場>
ザ・スズナリ
<日程>
2026年10月15日(木)〜20日(火) 全9回公演
10月15日(木) 19:00︎☆
16日(金) 14:00/19:00︎☆
17日(土) 14:00/19:00
18日(日) 14:00︎☆
19日(月) 14:00/19:00︎☆
20日(火) 14:00
受付開始は開演の45分前/開場は開演の30分前
☆はアフタートークあり◎
<料金>
一般:4,500円/学生:3,500円/当日:5,300円
※全席自由
<チケット>
ローチケ Lコード:34647
https://l-tike.com/compsons
演劇最強論
https://www.engekisaikyoron.net
チケットぴあ
https://w.pia.jp/t/compsons
カンフェティ
http://confetti-web.com/@/comp14
<配信公演>
2026/11/7(土)14:00〜1/11(月)23:59
料金:2000円
https://teket.jp/851/71058
<スタッフ>
舞台監督:小川陽子
舞台美術:谷佳那香
音楽:額田大志(ヌトミック/東京塩麹)
音響:中村光彩
照明:中西美樹
映像:ニュービデオシステム
宣伝美術:江原未来
当日運営:堀内萌絵子(セビロデクンフーズ)
制作:星野花菜里、鈴木啓佑
企画・製作:コンプソンズ
協力:FMG、ヌトミック、東京塩麹、舞台美術研究工房、六尺堂、パ萬、吉本興業、空、 株式会社ゼスト、劇団「地蔵中毒」、ジャパニーズ生活
助成:アーツカウンシル東京 [東京芸術文化創造発信助成(単年助成)] 芸術創造活動
問い合わせ:compsons1206@gmail.com
公式HP:https://www.compsons.net









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