第一次審査(ネット審査)結果発表!

エントリー団体数

審査員がそれぞれに10作品を推薦し、1作品につき1票ずつ合計10票を投じました。票の入った作品について約2時間20分に渡って議論を重ね、10作品を決定しました。

演劇をつくる楽しさや、作品を多くの人に見てもらいたいという気持ちだけでなく、演劇を通して社会とどう関わろうとしているか、独自の戦略や団体の継続性はあるかなどを重視して選びました。首都圏以外の劇団からの応募もひろく検討し、迷った時は、再演よりも新作で応募してくださったところを推すようにしました。CoRich舞台芸術まつり!という場所で、審査員からの批評的言語が、作家や俳優たちに必要とされているのか、不安もあります。ですが、通過した10団体は単なる「おもしろかった」「つまらなかった」という言葉の応酬ではなく、2016年以降の小劇場演劇がどうなっていくかを共に考えていける団体だと思っています。109団体の応募を受けて「できるだけ多くの人にチャンスを」という思いから、わたしは、過去に1次審査を通過したことのある団体には、涙をのんで、投票しませんでした。しかし、今回選出できなかった団体にも期待しているところがいくつもあるので、可能な限り足を運びたいと思っています。
川添 創作の特性や方向性を明確に、かつ魅力的に表現できているか。そしてグランプリ受賞作は再演いただくので、継続的な活動のビジョンがあるか……などをポイントに応募書類に目を通しました。公式ホームページやチラシなど観客の入り口を丁寧につくっているか、そのクオリティーも判断の参考にしています。これまでの受賞者を見ると《若手支援/発掘》の傾向があるので、すでに高い評価を得ている創り手の扱いは迷いました。しかし審査会での議論で、キャリアに関係なく、シンプルに「高水準の作品が期待できる団体を選ぶ」と方向性が定まり、結果、経験も個性も様々な、ぶつかり合いにワクワクできる10団体が揃いました。演劇誌編集時代に地域演劇を担当していた者としては首都圏以外の団体を多く選びたかったのですが、圧倒的に東京の団体の応募が多く、そこは悔いが残ります。が、大阪・名古屋・札幌と、各地域の演劇ファンも盛り上げてくれそうな個性的な団体が残ってくれたので、期待を寄せています。
高野 提出された文章類と団体の公演実績、受賞歴等を重視しました。再演の可能性があるので、応募作品の内容、独自性、意気込み等に注目し、活動を継続する強い意志が感じられる、体制のしっかりした団体を選びたいと思いました。また、首都圏以外の団体になるべく多く投票しました(半数以上)。面白い作品をより多くの観客と分かち合いたいので、応募者の年齢(若手かベテランか)は重視しませんでした。ただ、CoRich舞台芸術まつり!は無名の団体にとってのステップアップのチャンスであるという認識は、他の審査員と共有するところです。名前も知らず作品も観たことがなかった団体の作風を想像する際は、CoRich舞台芸術!のクチコミを参考にしました。CoRich舞台芸術!をアーカイブとして上手に使って欲しいです。クチコミしてくださったCoRichメンバーの皆さん、ありがとうございました。
個人的には「CoRich舞台芸術!」における団体のアクティブ度やユーザーからの評価をベースに、今回の応募文章や個人的に感じる将来性のようなものを重視しました。自分たちの作品が一番面白いと信じ、全力で作られているのは、どの団体も同じ中、また本来ランキング的なものがそぐわない舞台芸術の中で、10の団体が選ばれたわけですが、その意味は個々に考えつつ、多様性をみんなで楽しめたらと思います。せっかくのお祭りです、みんなで今年選ばれた10団体の闘いを応援しましょう!
山本 日雇いのウエイターとして、18歳で働き始めた頃から早30年(!)、多分どの年も100~200本の映画を観てきました(2度目、3度目含む)。趣味といえば唯一の趣味です。縁あって昨年から芝居も少し観るようになったのですが、知ってる劇団は数えるほどしかありませんので、分厚い応募資料を見ても分からないことばかりでした。そんな中で、私が選んだ10作品のうち3本が一次審査を通過し、うれしかったです。どの作品も、上演を楽しみにしています。

※公演初日順。

「1999年、国際基督教大学での旗揚げ以来、世界各国の神話や寓話をモチーフにしながら、現代の社会や人間を問いかける物語を創り続けてきた」舞台芸術集団 地下空港。主宰の伊藤靖朗を中心に、深い考察に裏付けられた独特の物語と芸術表現が魅力と言えると思います。最近では、グローバルな視点や、テクノロジーを取り入れた新しい取り組みなどにも積極的です。個人的には“アナログ”的な良さがウリにも思えていた地下空港の進化が発揮されるのは、デジタルや技術をくぐったこれからなのではないかという期待があり、今回の作品も注目しています。
(橘康仁)
オイスターズ(愛知県)
2008年旗揚げの名古屋の劇団。代表・中尾達也、作・演出は、第16回劇作家協会新人戯曲賞最優秀賞受賞、若手演出家コンクール2011最優秀賞にて劇作・演出の二冠を達成した平塚直隆。「過剰なまでに会話劇」をテーマとし、不条理な状況に追いつめられる人間をドライな会話で浮かび上がらせる、“趣向の巧さ”が際立つ劇団。こまばアゴラ劇場サマーフェスティバル<汎-PAN2011>への参加を機に、全国ツアー、韓国公演など、精力的に場を広げ活動しており、今回の参加でさらに存在感を示してほしいと思っています。
(川添史子)
yhs(北海道)
「1997年、代表の南参を中心に札幌で結成され、さまざまな社会現象をシニカルな視点で捉え、「笑い」や「人間」を強く浮かび上がらせる演出に定評がある」yhs。今回は「死刑制度」をフィーチャーした作品で、北海道の劇団でありますが、大阪のインディペンデントシアターから声がかかったという意味でも、その完成度に期待が高まります。個人的にも、芸術性と大衆性、テーマ性と娯楽性のバランスといったものに普段から苦労しているので、「社会派エンターテインメント」と謳うこの作品を楽しみにいしています。
(橘康仁)
2005年、ダンスカンパニー「ニブロール」の主宰・振付家である矢内原美邦が「演劇作品の創作」を目的に立ち上げた団体。圧倒的な情報量と運動量で、役者たちが限界まで高速で動き、セリフを発話する挑戦的な表現が特徴。10年『前向き!タイモン』でシェクスピア・コンペにて優秀賞受賞、12年同作で第56回岸田國士戯曲賞受賞、14年『桜の園』をフェスティバル/トーキョーにて上演と、10団体の中ではすでに評価を得ている団体ですが、なおこういう場に挑む姿勢に敬意を表し、更なる高みを見せつけてほしいです。
(川添史子)
演出家、振付家、俳優、パントマイマーの小野寺修二さんが主宰するカンパニーデラシネラは、大劇場、小劇場等の規模を問わず、日本各地および海外でも精力的に活動し、高い評価を得ている団体です。新作「椿姫」は3年継続の長期プロジェクト“白い劇場シリーズ”の第2弾。第1弾「分身」はスリリングで密度が高く、笑いもふんだんな娯楽作で、勝手ながら2015年の私選ベストテンに数えました。無名と言っていいパフォーマーたちが心をひとつにして生み出す舞台は純度が高く、作り手と観客とが、その作品をともに寿ぐような時間だったと記憶しています。「椿姫」でもそのような空間に立ち会えることを期待します。
(高野しのぶ)
(劇)ヤリナゲ(東京都)
2015年度の、王子小劇場佐藤佐吉賞・最優秀演出家賞を受賞するなど、CoRich舞台芸術まつり!休止中に実績を重ね、ひそかに、しかし着実に頭角をあらわしてきた(劇)ヤリナゲが、今回初の選出となりました。越寛生の書く台詞は、なにげないエピソードが緻密で、文学的なセンスを感じます。同時に、人の痛みや弱さを描写するのに必要な「鋭さ」を、確かに持っているのです。今作は「出生前診断」という難しいテーマですが、観ているこちら側を照らし出し、はっとするような「問い」を突きつけられる瞬間を楽しみにしています。
(落雅季子)
壱劇屋(大阪府)
「関西を拠点に活動していても人気が出始めると東京に進出する劇団がほとんど」という状況はベンチャー企業と同じです。2013年に大阪で上演された本作は壱劇屋の代表作で、パフォーマンスシーンと言語芝居によって構成されています。「関西小劇場界に身を置く劇団のパワー」「大阪に壱劇屋という劇団があると知らしめたい」「地域の垣根を越えた活動拠点」と、どこまでも地域、そして大阪への強い拘りが創作動機になっています。大阪の文化とガッツを、じっくりと観させて頂きます。
(山本亮二郎)
カムヰヤッセン (東京都)
2015年1月にパリの新聞社「シャルリ・エブド」が襲撃された国際テロは衝撃的でした。その後もテロは止むどころか広範に、また大型化し、犠牲者は後を絶ちません。7年前に王子小劇場で初演され、差別や排除への怒りや悲しみを描いた『レドモン』は、「社会という漂流に翻弄される人々を描く」カムヰヤッセンの根源的テーマそのものです。
ー大事なのは「同じ」という思い込みではなく「違う」という事実だー
(山本亮二郎)
劇作家、演出家、俳優の喜安浩平さんが作・演出・主宰するブルドッキングヘッドロックは、2010年に続いての最終選考10団体への選出です。映画や大劇場公演の脚本執筆でも大いに活躍されている喜安さんが、劇団新作公演でぶちかますのは「スケベの話」第4弾。チラシ表面ではエロティックな妄想を呼ぶ露骨なタイトルが踊り、若い女性が色っぽい視線を送ります。しかし裏面には、ある特徴的な軍服姿の男性たちが並んでいました。様々な角度から「スケベ」を嗜む、「オトナ」の芝居を見せてくれそうです。
(高野しのぶ)
20歳の国 (東京都)
今年の1月に3名の俳優を迎えて劇団化した20歳の国。2014年の三鷹市芸術文化センターのMITAKA“Next”Selection 15thに選出され、他劇団とのコラボレーションなどにも精力的で、エネルギッシュに成長している団体です。ダンスやJ-popを生かした作風が印象的ですが、ベタにもオールドファッションにもならない絶妙なバランス感覚にいつも楽しませてもらいます。少しのほつれや疲れをものともせず、熱く駆け抜けることができるのが「青春」の強み。それは20歳の国の演劇そのものの強みです。自由で楽しくて、ときめき★ノンストップな作品を、どうか見せてください。
(落雅季子)

※オイスターズ「この声」愛知公演とyhs「しんじゃうおへや」大阪公演の日程が3月12日(土)~13日(日)に重なっているため、一部の審査員はオイスターズ「この声」の2月東京公演を鑑賞することになりました。


以上の10作品です! 次の最終審査では、審査員が実際に公演を観にいきます。

最後まで候補に残っていた、大変惜しかった6作品です。
“審査員注目の作品”として公表させていただきます。※初日順

じゅんすいなカタチ ドキドキぼーいず (京都府)
サウンズ・オブ・サイレンシーズ 弦巻楽団 (北海道)
水」 sons wo: (東京都)
愛、あるいは哀、それは相。 TOKYOハンバーグ (東京都)
わが家の最終的解決 Aga-risk Entertainment (千葉県)
渇いた蜃気楼 下鴨車窓 (京都府)


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