なにもおきない
燐光群
梅ヶ丘BOX(東京都)
2019/10/02 (水) ~ 2019/10/23 (水)公演終了
満足度★★★★★
「なにもおきない」延長公演(10月23日まで・21日休演詳細は燐光群へ)が決定したというので2回目の観劇。besimiru
ネタバレBOX
ホントに面白い作品である。導入部の演出は一般的なものになって、好みから言えば、自分は最初の演出の方が好きだ。為政者を奈落に送り込む話については、今回は個人名を挙げず代わりに立法府の長としている点が頗る良い。
この公演の前回レビューにも挙げた挿話の中には対比されているものがある。(以下再録:原発が原因の被ばく問題に繋がる核施設とロシアのぺテルゴフに当初ピョートル大帝の命によって建設が開始された「夏の宮殿」の噴水群の話である。この噴水は24時間総ての噴水から水を噴出させることができるが、その原理は高低差を基本とし水源は地下湖などである。水路を繋ぐパイプの総延長は56㎞に及び、原発の冷却水等のパイプに比べると短いがそれでもイメージで途轍もない規模だと想像するには充分、一方は、人々に美と安らぎと癒しを与え、而も無害で動力にも自然の摂理を利用しているのでエネルギー効率に無駄が無いが、一方は人類どころか地球上の総ての生命を危うくする危険を齎し、不効率で人々には不安、病と望まざる死や凄まじい苦痛、苦悩、不安と解決不能な災厄を齎す絶対悪の対比である。)更にエネルギー関係で比較されているのが炭鉱である。小出裕章さんの「隠される原子力 核の真実」P.37~38の記述によれば、原発のエネルギー源であるウランの利用できるエネルギー換算量は、石油の数分の1、石炭の数十分の1でしかない、という。石炭と石油は火力発電の原料として用いられているが、原発でも火力発電でも燃料を用いてやっていることは、湯を沸かすことだ。そこから発生する蒸気でタービンを回し発電しているのである。発電効率は極めて悪い。殊に原発は余りに危険だから人口密集地に作ることが出来ない為送電線が無駄に長くなりコストが膨らむばかりではなく、送電中のエネルギーロスも多く、今年のように台風被害が多い場合には復旧も手間取る。一方、我々の日常生活はかなりの割合で電気に依存しているから停電が長引けば命に関わる。以前にも書いたが、こんな問題を根本的に変えるには水素発電をメインに再生可能エネルギーを用いた発電をサブにエネルギーシフトを図るべきである。そうすれば、今作に描かれたような炭鉱労働者同士の悲恋とその結果のリンチや、親の知らぬ間に年端も行かぬ子供の他の山への売買、無理な掘削による炭塵爆発「事故」、一酸化中毒死・廃人化等々の悲劇も生まずに済む。原発は、炭鉱どころの騒ぎでは済まないのは自明である。今作でも防護服を着た作業員が高濃度汚染地域に転落し絶望視されていたのが、「神を見た、神が助けてくれた」と奇蹟の生還を果たすシーンがある。が、助けてくれたのは人間は入れない危険エリアで作業に従事するアンドロイドであった。美しい女性の形をしたアンドロイドが核汚染地域で働かされているのである。心が痛まないか?
戒厳令が敷かれたと言って洞窟に逃げ込んで来たのは、4.3事件で米・韓軍の虐殺を逃れてきたチェジュド島民であった。多くの日本人は4.3事件を知らないだろう。ところで鶴橋は知っているかも知れない。旨いキムチの産地として地名を冠し、スーパーでも良く売られているから。鶴橋は大阪環状線の駅名でもある。かつてこの駅からは猪飼野に行けた。現在、猪飼野は無い。というか地名変更されてその呼称が消えた。だが、このエリアには在日の人々が数多く暮らす。住民にはかなりチェジュド出身者が多いが、4.3事件のあった当時、チェジュドから大阪へは直行の船便があった。虐殺を逃れた難民としてチェジュドの人々が命からがら逃げ延び辿りつき、定住したのが猪飼野であった。この人々に日本の官憲は随分辛く当たった。戦後の彼らの生活の一端は開高健の「日本三文オペラ」小松左京の「日本アパッチ族」に描かれ、金時鐘という優れた詩人を生み、ヤン・ソギルというユニークな表現者を生んだ。キム・チョリが主催する劇団Mayの傑作「風の市」は4.3事件絡みの作品、観なかった人はDVDが出ているから観ることをお勧めする。
「なにもおきない」どころか今作は、我々の多くがそのように信じ込まされていることを、一皮剝けばヤバイことや、眼を背けたくなる事実が絡み合い蝟集していることをこそ、告発している。
そう思うなら、尚更。
小岩崎小企画
新井薬師 SPECIAL COLORS(東京都)
2019/10/11 (金) ~ 2019/10/14 (月)公演終了
満足度★★★★★
■約105分■
短編集でありながら、全体が“生死”というテーマで貫かれ、とてもよくまとまっていた旗揚げ公演。今回、そこまでの一貫性はなかったものの、全五編中、三編が優れた出来映え。
うち一編は、不可抗力により日に日に意思疎通が難しくなっていく夫婦の悲しみを描いた吹原幸太脚本・演出『ミニマム』。そしてもう二編はともに小岩崎小恵脚本作品。本人演出による『君を守る千匹の犬』も、吹原幸太演出による『あなたのいない人生なんて』も、“人間、この奇なるもの”へのやさしい眼差しが感じられて、観終わった後、胸がじんわり温かくなった。
小岩崎さんという人は、善悪という尺度なんかじゃ測りきれない、複雑怪奇にして滑稽至極な人間というものに、ゾッコンなのだなぁ。
第三回公演は一本モノを期待。長編を仕上げるのは短編をものするよりもずっと大変だろうけれど、今回示された脚本力を持っていながら長編に挑まないのはもったいない気がしてしまう。
ネタバレBOX
『あなたのいない人生なんて』は、寿命の融通が可能になった未来社会(?)で、余命わずかな妻に夫が寿命を分け与えようとするお話。自分の寿命から18年(だったっけ?)を譲ろうとする夫。それを固辞する妻。二人は寿命管理官(?)の前で激しい口論を繰り広げるが、どちらの言い分にも互いへの強い思いやりが感じられて、なんとも微笑ましかった。
調和と服毒
Ammo
上野ストアハウス(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/22 (火)公演終了
満足度★★★★
初日を観劇。そしてタイトルの意味がわかった。人の心に住むのは正悪両方なのだから。アトリエで弟子たちとのパラゴーラの場面ではラファエロの一存でなくこうして出来上がっていくのかと初めて知った。
ナイゲン
果報プロデュース
インディペンデントシアターOji(東京都)
2019/10/16 (水) ~ 2019/10/21 (月)公演終了
満足度★★★★★
しばらく観ないうちに随分パワーアップしたように感じられました。
ネタバレBOX
前半のごたごたがパワーアップしていました。
その後、演劇シナリオの許諾を得ていなかったという理由で一クラスがあっさりとエコの催し物を受け入れましたが、生徒会自治原理主義者がそもそも論を展開して再度紛糾。学校側からの押し付けではなく、当初目論んだ演劇に取り込むことで昇華するという形をとり、原理主義者も渋々納得して決着。
色恋沙汰、浮気、天然ボケ、トイレの我慢等々、本当に面白かったです。
小刻みに 戸惑う 神様
劇団ジャブジャブサーキット
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★★
どこか懐かしい感じのする劇団である。地方、それも(確か)なじみの薄い岐阜で三十年余。
すると、初めて見たときはまだ昭和だったのか。最初は、この時期、流行っていたSFやファンタジーを、独特の調子で日常生活にかませた作品で、当時、大袈裟なタッチがはやりだった東京の小劇場の中でも、存在感があった。
それはちっとも変っていない。今回はタイトルそのままの通夜もの。場面設定は時代に合わせてはいるが、中身は変わらない。北村想が、ユニークであり続けているように見えながら、変わっていくのに比べると、はせは不動のドラマ世界である。こういう演劇を支持し続ける名古屋の風土には、東京・大阪と違う独自の伝統があると感じる。それがよくわからないところも名古屋的なのかもしれない。はせは、そんなことはない、見たままです、と言うかもしれないが、そこが名古屋の深さであろう。初日のアゴラの夜はほぼ満席だった。
エウゲニ・オネーギン
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2019/10/01 (火) ~ 2019/10/12 (土)公演終了
満足度★★★★
同じオペラを何度も見ていると、毎回発見がある。音楽的には1幕の序奏冒頭の下降旋律のモチーフが、タチヤーナ「手紙の歌」にしろ、レンスキーのアリアにしろ、旋律の大元になって、全体のトーンを統一している。こうしたメロディーの使い方は、豊かで美しい旋律家のチャイコフスキーの真骨頂。
物語的に今回は、2幕でレンスキーをからかったオネーギンのニヒルさ、冷たさが印象的だった。レンスキーの短気より、しつこく嫌がらせして決闘に追い込んだオネーギンの責任を感じさせた。最後第3幕の、タチヤーナのオネーギンとの別れの歌の切実さも以前よりよくわかった。前は「愛しています」といいながら、道徳に縛られて決断できないでいるだけのようだったが、今回みて、やはり取り戻せない過去があるという人生の不可逆性、辛さを感じた。毅然として人生を歩むタチヤーナの決断に対し、余計者オネーギンの甘えと優柔不断の対比があった。
ネタバレBOX
体調のせいか、一番の聞き所のはずの「手紙の歌」でウトウトしてしまった。なんたる不覚。家に帰ってMETの録画で聴き直したが、この曲は有名なクライマックスに来るまでが長い。全体12分のうち、うじうじ迷う前振りが8、9分。それで眠気が催したとわかった。
最貧前線 『宮崎駿の雑想ノート』より
水戸芸術館ACM劇場
世田谷パブリックシアター(東京都)
2019/10/05 (土) ~ 2019/10/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
傑作、素晴らしかった。宮崎駿の原作ということで、どう舞台化するのか多少心配だったが、期待と不安を圧倒的に乗り越える舞台だった。脚本、美術、俳優、振り付け、ステージング、映像、音響と七位一体、八位一体。まさに総合芸術としての演劇が、映画にも負けない生命力のあることを示したと言える。とくに漁船の艦橋、甲板、船室を、舞台上の3階たてのやぐらに組み、船首と船尾の二つの組み合わせで、様々な動きをつけた美術の成功がこの舞台の肝だった。相当重いはずなのだが、スムーズに動かした工夫と黒子に拍手。俳優は皆好演。
ラヴズ・レイバーズ・ロスト ―恋の骨折り損―
東宝
シアタークリエ(東京都)
2019/10/01 (火) ~ 2019/10/25 (金)公演終了
満足度★★★
とびきりの人気俳優はいないが、そこそこの若手アイドルが男女合わせて10人も出る賑やかなミュージカル。シェークスピア作品の中では最も上演される機会の少ない(人気のない)戯曲をどうアレンジするかと楽しみに見た。王たち男4人の女絶ちの誓いと、4人の美女の来訪の始まりからロックな歌で聴かせる。
変人アーマードーの酒場女ジャケネッタへの下卑た恋、道化に託したラブレターの誤配、誓いを破った男たちの滑稽な姿、仮面舞踏会では女たちにからかわれ、最後、1年後の愛を誓うラストまで。脇筋の学者連もからませつつ、ストーリーはそのまま。しかし、セリフは大きく端折って、エッセンスで組み立てている。男たちのラブレターや、ビローンの愛の賛歌などの重要な場面は歌に。これがよかった。王女の悪ふざけをいさめるロザラインの愛の歌は原作にはない創作。これが一番しんみり聞かせた。
冗長なしばいを、若者も楽しめる現代のエンターテインメントに上手く脚色したと思う。それにしても見所は俳優・女優の若さそのもの。客席も大いに笑っていたが、俳優たちのおどけた所作や派手なアクションへの反応で、シェークスピアらしい皮肉や機知への反応は少なかった。「俺のアナコンダをあのアナへ入れたい」など、卑猥な歌もご愛嬌というべきだろう。
ただし、4組(五組)の男女の出会い(恋の始まり)のところが聞きづらかったし、段取り化して早すぎて印象が弱い。男たちが女たちに(あるいはその逆)一目惚れする場面をもう少しじっくり聞かせてくれれば、舞台に深みが増したと思う。シェークスピアの原作は、恋を前提にしているが、現代ではどうやって恋におちるかこそが大事なので。休憩無し1時間50分
じゅうごの春
やみ・あがりシアター
アトリエファンファーレ東池袋(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
この劇団を以前観たのは二年前、二年も経つと成長しているか、周りに振りまわされて、持ち味が変わって来ているか、当然変化はあるはず。ブレずに面白いものを作っているなと、また演技力も上がってきているなと感嘆!言葉に縛られたジュウゴの人生。それか!と驚かされる話の構成が見事だった。
じゅうごの春
やみ・あがりシアター
アトリエファンファーレ東池袋(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
良かった。最大の賛辞を。ありがとう!
調和と服毒
Ammo
上野ストアハウス(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/22 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
議論好きにはたまらない作品。女性観客が多かった。
美とは何か。
形を認識する前に、やはりパッと見、色彩に左右されるんだろうか。
でも、奇麗な女性に目が行くのは、パッと見、顔のつくりだし。
女性主人公の創り出した美。
実物を見た登場人物たちのパラゴーネだけで浮き上がらせた美。
演劇っていいなーって思えた場面でした。
どん底
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2019/10/03 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★★
黒沢明監督の日本版「どん底」以来つくづくこの作品が好きである、と今回も実感。ただし数年前初めて観た原作版の舞台は、黒沢版が染み付いているからか、最終盤のやり取りが長く間延びの印象は今回も然り。世の中を見切った者らがそれぞれの仕方で日々を傷つき傷つけ合いながら逞しく生きる様は、やはりどこか江戸の長屋話の登場人物に通じ、群像の中に輝く生が描かれる珠玉の一編であるのは確か。
ネタバレBOX
ボロを纏った心は錦の長屋住まい達が、空腹を忘れ利害を超える象徴的瞬間は歌。黒沢版ではサイコロ勝負をしながらお囃子を口ずさむ。「こ~んこ~んこんちきしょう」「おひゃいと~ろ」「てれつくつ、ちきちん」「へえどっこい!」(落語の「祇園祭」では拍手の起きる所)。今作はロシア風の旋律を群唱する(音楽:国広和毅)が、あうんの呼吸で節をリレーしてアンサンブルのある黒沢版の躍動感は変えがたい。斉唱だと「心は一つ」の瞬間を作るがそこが綺麗過ぎる(独立した個の存在が見えるような演出も可能かも知れないが難しそうである)。
文学座若手・五戸真理枝演出は初めてだがしっかりとした構成力を感じさせた。劇中劇の構成だが、煩わしくならず、加筆は最小限にとどめて効果的であった。視覚的に圧倒される舞台装置も効果的。ストーリーを知る者であるので、一風変わった場所での上演を堪能という所。
惜しい部分も。最後の顛末を知っている目には、物語上はそこに居ないはずの役をやる役者が皆に混じって歌っているのが、変に意味を持って見え、気になった。
またこれは原作の問題だがニヒリストのサーチンに、舞い来って風と消えたルカが憑依したかのように熱っぽく語る最終場面。黒沢版では三井弘次が遠い目をしながらふと「甘い」台詞を吐く、そんな自分にふと気づいて「おいおい」と戸惑う様子がうまく撮れていた。サーチンは普段の振る舞いの演技も中々大変な役どころで、舞台では私には大変そうに見えた。ちょっと映画版をなぞり過ぎか。
小川絵梨子・新芸術監督の下、主催公演はオーディション方式を採用。今回の出演者は殆どが知らない役者だったが実力あり。容姿端麗映像向きの女優は声がナチュラルで台詞が聞こえない、演劇としては押し出しが弱い面もあったが、他がよく出来ているので相対的にそこが目立ったのでもあるか。
しかし最後のサーチンの「主張」は、言葉の内容そのものを聞かせる、というのでは芝居として収まりが悪い気がした。昔ならともかく・・そうした言葉を吐いてしまう彼自身の中にある、「今」起きつつある変化とは何なのか、とか。しかしそこは「劇中劇」として見れば、あとは観客の解釈に・・という受け渡しが無理なく成立しているのであるが、もう一歩ぐっと踏み込み、迫って欲しい気がした。期待度が高すぎるか。
調和と服毒
Ammo
上野ストアハウス(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/22 (火)公演終了
満足度★★★★★
125分目が離せません。十分に見ごたえ聞きごたえのあるパラゴーネ。役者さん熱演で美の探求のすさまじさ、熱さを追求していく苦悩と過程をみせていただきました。大満足の舞台でした。
調和と服毒
Ammo
上野ストアハウス(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/22 (火)公演終了
満足度★★★★
17日19時半回(125分)を拝見。
ネタバレBOX
ルネサンス期の三大巨匠の1人・ラファエロとその工房の弟子たちが「美とは何か?」について議論(パラゴーネ)を重ねていく…「ごあいさつ」で作者の述べる通り、2年前の作品『光、さえも』では、結局のところ、提示されなかった「美の本質」についての(作者が提案する)一つの解が導かれていくまでの過程を描いた125分だった。
その「美とは何か?」の探求だが、同テーマの『光、さえも』を観た身として覚悟?!していた以上に、本作は「執拗」だった。勿論、その点が本作の魅力ではあるのだが、ただ、話の広がりというか膨らみといった点で、出自の違いこそあれラファエロ工房内の関係者という点では同質的な人々が意見を戦わせる本作よりも、米国独立芸術家協会の立場も様々な理事たちが論戦を繰り広げる『光、さえも』の方が、娯楽作品という観点からの「舞台」としては、より愉しめたように思えた。
演じ手では
作品の性格上、登場人物の過半が同様な硬質的な演技に徹するなか、同じく硬質的な演技ながらも、舞台に登場しただけで・セリフを発する度に、場の雰囲気を和ませてくれた
井上実莉さん(今回、美貴ヲの劇での「お茶目」な印象とは別の側面を魅せてもらいました)
もうおひとり、他の役者とは明らかに質の異なる演技をなされた
吉村公佑さん(ゴメンナサイ! プロレス関係の方だとばかり思っていて、役者さんとの認識が皆無でした)
のお二人が、個人的には印象に残った。
【配役】
枢機卿ビビエーノ(ラファエロのパトロン)
…大原研二さん(8月に「双葉町の町長」「飯館村で牛の肥育農家」としてお会いしたばかりの役者さん)
フリート(ラファエロの愛人)
…今駒ちひろ(こんま・ちひろ)さん(初見の『菊菊&刀』での刑務官役の印象が強い方)
ラファエロ
…西川康太郎(にしかわ・こうたろう)さん(この作品世界における「ラファエロ」を熱演)
フランチェスコ(ラファエロ工房のマエストロ(親方)で、職人肌の工房長)
…高木健さん(今年はアガリスクエンターテイメントの2作品でお馴染みの役者さん)
タッデオ(工房のマエストロ。自他共に認めるラファエロの一番手の弟子だが、実はジュリオが彼の才能を上回る存在であることに薄々気づいている)
…辻井彰太さん
トンマーゾ(工房のマエストロ。貴族出身。神への畏敬の念が強い)
…日下部そう(くさかべ・そう)さん
ロレンツォ(工房で働くラファエロの新入りの弟子)
…港谷順(こうたに・じゅん)さん
ポリロード(工房で働くラファエロの弟子。元資材運搬人)
…森田匠さん
カルロ(工房で働くラファエロの弟子。商人出身)
…杉林健生(すぎばやし・けんた)さん
アンナ・マリア(工房で働くラファエロの弟子。貴族女流画家)
…中野智恵梨さん(とにかく会場じゅうに響く声の質が「アンナ・マリア」!)
ステファノ(工房で働くラファエロの弟子。元・解放奴隷。後のジュリオ・ロマーノ(ルネサンス後期を代表する建築家・画家)。ジュリオの才能に気づいている工房内の人間の一人)
…津田修平さん
ジュリオ(工房で働くラファエロの男装の弟子。「美とは何か?」の真理に迫るキーパースン)
…前園あかりさん
マルカントトーニオ(共同制作者。贋作の名人)
…吉村公佑(よしむら・こうすけ)さん
パオラ(小間使い)…井上実莉(いのうえ・みのり)さん
猩獣-shoju- <東京公演>
壱劇屋
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2019/10/11 (金) ~ 2019/10/14 (月)公演終了
満足度★★★★★
観終わった後に出た言葉がコレです。「やばっ…」。なんかもう色々感情決壊で号泣。台詞のない殺陣芝居でこんなに心が動くとは思いませんでした。
例えば、ケガをおして走りきったマラソン選手や死闘を繰り広げた選手の良試合を見たあとの感動と爽快感。そして最初から最後まで一貫して切ない。でも愛しい。なんじゃこりゃ!!
殺陣ばかりで理解できるか心配でしたが、そんな心配は徒労でした。作品の冒頭から、物語の設定はこうですよ、と分かりやすい演出だったし、そこですでに引き込まれてしまって…。それに色んな武器や戦い方が出てきて全く飽きなかったし、むしろ台詞なくて良かった!と思えるくらい集中して観てしまいました。
初めて観た壱劇屋さんの作品がコレで良かった。ちなみに故郷の劇団さんなので本当に応援したい気持ちでいっぱいです。また東京での再再再演、期待しています!
ネタバレBOX
受け取ってもらえない想い、身に覚えがありすぎて切なく苦しかったです。(それで余計に感情移入して号泣だったのかも)
猩獣になった男の強さに、たくさんの花束を贈りたいです。あれほど嗚咽して嘆いていたのに、届かないとわかっている想いを、最後にもう一度差し出した。その男の想いに対してヒロインは最後にどうしたのか、どう返したのか。
あかん、思い出すだけで涙腺が……
殺陣が圧倒的にすごかったからこそ、切ない想いとのギャップでやられました。
Photograph2019
劇団カンタービレ
ウッディシアター中目黒(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/21 (月)公演終了
満足度★★★★★
初見の劇団だったけれど、とても良い公演だった。ストーリーの概略はよくある家族ものだけれど、脚本の細かい部分もしっかりしていて、2時間を超える舞台が全く時間の長さを感じさせることなく、引き込まれる内容だった。所々に散りばめた笑いも、白けさせるものではなく、ストーリーを進める良い息抜きになっていた。脚本の出来、演出、舞台美術、いずれも素晴らしかったし、役者の演技の巧さが素晴らしい公演を作り上げていたと言っても過言ではないと思う。久々、楽しめた公演だった。
ネタバレBOX
メインの物語進行に添えられた主人公夫婦の新婚の回想録。ちょっと蛇足かなと最初思ったけれど、物語の筋をより一層盛り上げる名脇役だったと思う。公演の題名にも掲げられた「Photograph」写真を家族で撮るシーンがクライマックスで、「あそこで終わりにしとけば良かったのに」と直後に考えたが、余韻を残した語りすぎないラストシーンで、最後も引き締まっていたと思う。初日ということもあり、どうりでファン(身内らしき人たち)で満員になっていたが、皆が引き込まれるのもよく分かる劇団の作風を感じられた。
「隣の家-THE NEIGHBOURS」 「屠殺人 ブッチャー」
名取事務所
「劇」小劇場(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/29 (火)公演終了
満足度★★★★
「隣の家-THE NEIGHBOURS」ストーリーの大半が舞台の半分で展開するのだが、その演出意図は何なのだろうか?原作の指示?スズキさんが劇に出てくる意味は?
じゅうごの春
やみ・あがりシアター
アトリエファンファーレ東池袋(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★★★
こういう人いるよなぁ、と思わせるような人物像を描いた観察劇のようだ。自分では「観て ごらん」と思えるような面白さ、そして最後まで目が離せない公演。あまり書くとネタバレになってしまいそうだ。
(上演時間1時間40分) 2019.10.21追記
ネタバレBOX
舞台セットは、畳敷きに丸卓袱台。幕(緞帳風)や衝立に夏休みの自由研究を思わせるような造作が微笑ましい。序盤はポップで笑いを含んだ展開であるが、だんだんと主人公・じゅうご(石村奈緒サン)の完璧というか偏執的な行為が狂気じみてくるような。
物語は1999年8月1日から始まる。「ノストラダムスの大予言」で人類滅亡を信じ夏休みの宿題(特に自由研究)を行っていないことを嘆いているところから始まる。その前年は教師から自由研究について評価され、やればできる子といった暗示のような言葉「やってごらん」に縛られた主人公・じゅうご。この じゅうごのその後の人生を10年刻みで35歳まで描いた物語。つまり35歳は今年であり現在を生きていることになる。なお当時の時代表現は、姉とその友達の ヤマンバ メイク、ルーズソックスなどの衣装で見せており笑える。
じゅうごは、8月1日時点で夏休みの宿題を終えていない、自由研究のテーマさえ決められないと嘆いており、計画通りに事が運ばないと気が済まない性格。そして何事にも高みを目指し、ある種の完璧主義者で、さらに教師の期待しているといった言動に捉われる。しかし計画が破綻すると途端に自暴自棄になるといった、どこかに居そうな人物像が立ち上がってくる。友達のお気楽な性格との対比で偏狭さが浮き彫りになる。そして物語のキーとなるのが友達が拾った拳銃。
物語は10年刻みで、15歳の「じゅうご」、25歳の「にじゅうご」、35歳の「さんじゅうご」と名前は変わるが同一人物。外見的成長-変化と内面的本質-不変という構図を表す。年代の人物連携は、始めのうちは じゅうご と にじゅうご が同時に登場しているが、徐々に じゅうごが登場しなくなり25歳の にじゅうご へスムーズに引き継ぐ。映像のフェードアウトするようなイメージ。25歳から35歳も同様。この人物移行の演出が実に巧い。人物移行は同時に情況や状況も一変させる、ここに笠浦ワールドの真骨頂を観ることができる。にじゅうご は大学院生、さんじゅうご はニート、引き籠りといった状態である。そこには15歳時の自由研究-やってごらん-未完成という呪縛から解き放たれない。この呪縛の原因は担任教師であるが、その教師が姉と結婚することになり元凶?がさらに身近にという苦悩。どこか歪な、もしくは壊れた世界観が窺い知れる。
物語は じゅうご の人間(内面)性の描き、同時に父親が息子を見る、その育児もしくは観察日記のようでもあった。父親のとぼけた振る舞い、後日この家に出入りしている保険外交員が読み上げる父のノート。書かれているのはそれまでのシーンの数々、過去がフラッシュバックするようで、色々な感情がこみ上げてくる。自分の気持を自由に弾けさせることが出来ず、衝動的なのか他の感情が或る物で別の者を弾いてしまい...。
後には虚無感、空虚感が漂うという独特な結末が重量感ある余韻を残す。
次回公演を楽しみにしております。
紺屋の明後日
オフィス上の空
あうるすぽっと(東京都)
2019/09/20 (金) ~ 2019/09/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/09/25 (水) 14:00
座席G列5番
価格6,500円
少年期に殺人を犯したが更生して働いている男のいる町のそばでかつての彼の手口と似た殺人が起こり……というキ上の空論には珍しい(初らしい)サスペンスタッチの物語。
少年による殺人について、かつての犯人と現在の職場の同僚、被害者遺族などの立場から多角的に描き、観る側も二通りの受け取り方をしそう(最終場のアレはその最たるもの?)。
ちなみにσ(^-^)(爆)は比率に差はあるがそれぞれの心情を理解。
少年犯罪についてはもちろん、贖罪や更正、ひいては「罪」というものに関してあれこれ考えさせて、「面白い」というのは的確ではなく、優れたあるいはよくできた作品と思う。
「面白い」と言えば打球や炭酸(の泡)を照明効果によって表現したのが独特で面白い。
また、衣装の(生地の)デザイン(かつての犯人は下方の黒が次第に薄らいでゆく染模様だし、他に紺が薄らいでゆく生地も)が良く、(得意の)深読み(黒が殺人であるように紺色も何かの罪を暗示しているのではないか?)もする。
終盤での中心人物二人の会話に松澤くれは作品と通ずるナニカを感じたのは、TLでそんなことを見たことやガキさんご出演であることによるだけではなかろう。(笑)
岩井七世、春名風花お二方は(少なくともσ(^-^)が存じている範囲内では)かつてなかったような役どころで「あ、新しい顔!」みたいな。(笑)
なお、最後のモノローグを聞きながら「もう罪は償い更正しているのに周囲から白い目で見られて気の毒」「過去のこととはいえ人の命を奪うという償いことができない罪を犯したくせに何を勝手な……」という相反する感情が起きた旨を中島さんに伝えたところ、執筆の意図は後者だったとの返答が。
じゅうごの春
やみ・あがりシアター
アトリエファンファーレ東池袋(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★★
105分。休憩なし。
いろいろな解釈が出来る物語だと思うが、私には、引きこもりの物語に思えた。過去、引きこもりを断ち切る場面・・・先生を銃で殺す・・・というシーンが、現実のようにも、虚構のようにも描かれて。その困惑した状況に、引き込もる、という事を真に理解することの難しさを感じた。