KAEの観てきた!クチコミ一覧

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忘却曲線

忘却曲線

青☆組

アトリエ春風舎(東京都)

2010/09/06 (月) ~ 2010/09/12 (日)公演終了

満足度★★★★★

秀逸な叙情小説の味わい
吉田小夏さんの作品を拝見するのは2度目ですが、今回の作品は、前回以上に、感銘を受けました。

あんなにお若い作家がよく、これだけの、人生機微を小説のようにきめ細かく舞台上に、具現化できるのかとただただ感嘆します。

役者さんも、全員が、その役として舞台上で生き、本当の家族がそこにいるようでした。

モノローグはあっても、説明台詞は一切なく、小説なら行間から滲み出る、家族間の切ない思いが、観る側の胸の隙間に染み渡り、終始、目の奥に涙が出番を待っているような、ジーンとする芝居でした。

本当に、素晴らしい!
昨日まで、行くか行かざるべきか迷いましたが、やはり行って良かったと、心から思います。

大西玲子さんが御出演でなければ、二の足を踏んでいたかもしれません。
こんな素敵な芝居を見逃さずに済んだのは大西さんのお陰です。
ありがとうございました。

ネタバレBOX

失踪した母親の誕生日を毎年祝う兄弟、姉妹の、母を慕う思いが切なくて、何度も涙が出そうになりました。

「祝うことは祈ること」、「いつの8月?」、「母さん、お帰り、さようなら」…、心の琴線に触れる珠玉の台詞が幾つも幾つもありました。

母がまだいた時の過去の記憶と、今現在の家族の、微妙にすれ違う愛と、苛立ち、理解されない淋しさ…。その表現配分も秀逸なら、場面転換や、一瞬の子供から大人へのキャスト陣の変化など、照明、音楽、演技、演出…、どれも、皆遜色なくて、舞台芸術のお手本にできるような完成度の高い舞台でした。

キャストの皆さん、誰も皆、申し分ない演技でしたが、やはり、大好きな大西さんの演技には今回も泣かされました。

太郎の記憶の中の若き母が、現実に引き戻されると、猫に変身する様もお見事でした。

東京から、挫折して帰郷した次女の、タバコを燻らすシーンも、切なくてなりませんでした。

母が失踪した日から、兄弟の母親になろうと決めた長女のいたいけな思いに、共感して胸が苦しくなるラストシーン近く。そして、やっと、これからは俊輔の妻として、再生しようとする幹子の夫へのさり気ない語りかけで、幕となるラスト、最初から最後まで、本当に、寸分の隙もない、傑作舞台だったと思います。

欲を言えば、テーブルがベットにも変身すのなら、もう少し、抽象的なテーブル仕様のセットの方が良かったのかなとは思いましたが…。
Sea on a Spoon

Sea on a Spoon

こゆび侍

王子小劇場(東京都)

2010/09/01 (水) ~ 2010/09/05 (日)公演終了

満足度★★★★

心底怖くなったストーリー
先日来、いろいろ人間不信に陥っている自分にはやや刺激が強すぎて、ところどころ身の毛がよだつ思いがしました。

成島さんの作品を拝見するのは、3回目ですが、いつも昆虫がキーワードになっていて、今回は蜘蛛が登場しました。

解説で想像していたより、ずっと、身近な怖い話で、最初から引き込まれて観てしまいました。

ただ、冒頭部分の人物紹介的部分がやや冗長に感じられたのと、役者さんの力量に差があったのがやや残念!

音響は実に効果的で、ずっと、怖がりながら観てしまいました。

ライター役の堀奈津美さん、いつもながら、傑出した存在感の佐藤みゆきさんの演技が印象的でした。

書かれたストーリー的な視点では、☆は5なのですが、上記の理由から、3に近い4という気がしています。(ちょっと本気で怖くさせられたので、手放しで5にできないところもあります。)

それと、アンケートを書く時も、暗いままでしたので、自分の書いた字が全く見えない状態でした。判読不能でしたら、ごめんなさい。

ネタバレBOX

舞台上空に置かれた円盤形のセットの使い方が、初めと終わりで、異なって見えて、大変効果的でした。

一見いいヒトそうに見える役場の職員達が、結託して、自分本位の恐ろしい計画を事も無げに、立てて、組織ぐるみで、大量殺人を目論む展開に心底、ゾッとしました。

村の住民が皆、海の塩に溶けて、肉体がなくなり、1人生き残った宇見が贖罪を果たせずにいる状態と、この恐ろしい職場一体のテロ計画をうまく融合させたストーリーは、大変独創的でしたが、惜しむらくは、冒頭部分の間延びした雰囲気をもう少し、サスペンスタッチで進めた方がよりテンポが良かったのではと思います。

でも、後半は、音響効果も抜群で、本当にリアルタイムでテロ計画が遂行されて行くような緊迫感がありました。
ライターの向井の、過去のストーカー被害の告白や、逃走経路の地図上で、蛍をテープで止めて、1人づつそれを潰して行く様子には、心から戦慄が走る思いでした。

後半、全てを宇見のせいにしようと、小泉が叫び、それを、贖罪の証として笑って受け容れる宇見。廣瀬さんと佐藤さんの迫真の演技には、自然と涙が誘われました。

有り得ない話のようでいて、そこいらにありふれた出来事を象徴しているようで、岐路も何だか、生きた心地がしなくなる、芝居でした。
昭和の子供

昭和の子供

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2010/08/25 (水) ~ 2010/08/29 (日)公演終了

満足度★★★★

過去に殺された人間の慟哭劇
過去に信じていたものに裏切られ、絶望して、生き辛くなった男の人生。
何度も、「過去に殺された」という表現が出てきて、昨日観た芝居ともどこか共通性がありました。

いつの時代でも、信じられるものがあり、疑いなく前に進めるヒトは幸せです。
この主人公は、信じていたものに裏切られ、この先の人生に誇りと自信を失ってから、ずっと過去に殺されたまま、生きながらえています。

その様子は、誰の身にも覚えがあることで、知らない時代の話ですが、いたく共感する部分がありました。

役者さん、皆さん、大熱演ですが、まだ肩の力が抜けず、演技している風が残ったのは残念でした。

ネタバレBOX

大家さん、今回は、膨大な台詞、一度も噛みませんでした。(笑)

最後に、天皇に「退位して下さい」なんて、台詞があるのは、とても衝撃的でした。

先日亡くなられたばかりの西島大さん、当時、ずいぶん骨太な作品を書かれたのだなと、度肝を抜かれました。
なかなか、見応えのある、あれこれ、生きかたを考えさせられるタイプの芝居でした。
今は亡きヘンリー・モス

今は亡きヘンリー・モス

シーエイティプロデュース

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/08/22 (日) ~ 2010/08/29 (日)公演終了

満足度★★★★★

濃密な家族の記憶劇が哀しい!
暗い話題で、舞台も張り詰めた空気が充満して、役者も、観客も、息をつめたままの2時間40分の純ストレートプレイの決定版!

久々、こんなに、全てのピースが完璧な重厚な演劇に出会えて、幸せでした。

原作はもちろん、小川さんの演出と、各キャストの実存性のある演技のオンパレードには、心底酔いしれました。
この企画をしたプロデューサーには、心から敬意を表します。
皆さん、甲乙つけ難い名演技ですが、ベテランに囲まれ、若い伊礼さんが、あそこまで、役者力を蓄えられたことに、嬉し涙が出そうでした。役者さん個人の名演にここまで感動したのは久しぶりでした。

久世さんの歌う鼻歌が、BGM的役割をして、ゾクゾクする程効果的でした。

主演の3人、中嶋しゅうさん、谷田さん、伊礼さんの父子のシーンは、まさにドキュメンタリーを目撃しているかと思う程の、リアリテイと緊迫感で、胸が痛くなる程でした。
名脇役の、福士さん、田中さん、久世さんの演技も秀逸で、演技力の一品会のような、素晴らしい舞台作品に、酔いしれました。

ネタバレBOX

初めから終わりまで、緊迫したシーンの連続で、喧嘩シーンは、役者さんの怪我が本気で心配になる程の、迫真演技で、まるで、映画でも観ているようでした。
家族の、秘めれた過去の哀しい記憶が、目の前で再現され、それを聞いているその場にいない弟レイ役の伊礼さんの表情が素晴らしく、見入ってしまいました。
ミュージカルもストレートプレイも、共に、これだけできる若手俳優さんはなかなかいません。次世代演劇界がとても楽しみになりました。

タクシー・ドライバー役の福士さん、隣の老人を気に掛けて毎日スープ作りに通うエステバン役の田中壮太郎さんが、共に、この緊迫した芝居の息抜きのような笑わせどころを巧みに演じて下さいました。

内容は、苦しくなる程、暗く辛い芝居なのに、こんなに終始ワクワクと観劇できたのは、作品、演出、キャスト、スタッフの仕事振りが、超一級品だったからに違いありません。

どんな駄作を100観ても、たまにこういう傑作舞台に遭遇できる可能性がある限り、観劇はやめられないなと思いました。

(粗筋は、しのぶさんのレビューに詳しいので、是非、そちらをご覧下さい。)
And You 2~Will~

And You 2~Will~

+ new Company

杉並公会堂(東京都)

2010/08/25 (水) ~ 2010/08/27 (金)公演終了

満足度★★★★

皆、生きている!!
家庭内に、かなり、このカンパニー、幅きかせています。(結構、迷惑蒙っている面もなきにしもあらず)
だから内心、身贔屓どころか、身引いきしそうになる面がありました。

でも、このカンパニー、そういう、自分のネガティブな感情を、観に行く度に、払拭してくれます。

本当に、スゴイ!!若さのエネルギーが満ち溢れ、皆の心を一つにしたパフォーマンス、演技、歌、ダンス、そして今回は、生バスケまで加わり、これが、アマチュアも含むカンパニーとは信じられない高水準の舞台を披露してくれるので、どんなネガティブな感情も一気に吹き飛んでしまいます。

本当に、素晴らしい舞台でした。感動しました。

ただ、あまり意味を感じなかったスモークで、常に、臭いと煙で、良い環境での観劇が困難だったのは残念でした。
このスモークがなければ、身贔屓でなく、掛け値なしに、☆5以上でした。

ネタバレBOX

このストーリーを聞いた時、とても心配になりました。実話であっても、安易な難病モノには辟易しているのに、あろうことか、心臓病の患者に、バスケをさせて、死なせてしまう話なんて、心情的に、全く賛同できませんでした。

最後をこういうストーリーに仕立てた点は、今でも、やはり不賛成ですが、でも、心配したよりは、お涙頂戴の安易な構成にはなっていなくて、安心しました。

旗揚げ公演の1より、舞台構成が進化し、主宰の金井さんが、メインの役で出演せず、演出に徹した点も、舞台のクオリティを高めました。

出演者全員が、全力投球で、ステージに生き生きと輝き、キラキラしている姿は、もうそれだけで、全てのマイナス要素をも、凌駕する力がありました。

演技も、歌もダンスも、バスケも、本職のプロを称するなまじの演劇作品より、よっぽど、技術的にも優れていて、この舞台をご覧になったら、きっと誰でも、心を動かさずにはいられないと思いました。

清々しさに、レベルアップした役者力。
きっと、いつか口コミで、もっともっと知られる団体に成長するに違いないと信じられました。
UFOcm

UFOcm

あひるなんちゃら

駅前劇場(東京都)

2010/08/25 (水) ~ 2010/08/29 (日)公演終了

満足度★★

それなりに楽しいけれど…
始まりは、なかなか愉快でした。でも、途中から、全然気持ちが乗り遅れて行きました。

これって、全てが、2分割されている気がします。役者力も、会場の空気も…。

何組かの組み合わせで、見せられる連作コントのような構成のため、秀逸な掛け合いのコンビがいるかと思えば、笑いのセンスが全然感じられないコンビやトリオも…。その温度差の違いは、客席も同じで、一つのネタ的芝居に対して、大笑いしているブロックと、冷ややかに観ているブロックが、常に2分されていました。
シュールな笑いを好むブロックは、他方の笑いには無反応。下世話な笑いが好きなブロックは、逆に、シュールさにはシーン。
その見事なコントラストに途中から興味が移り、私自身は、どんどん、気持ちが乗らないまま、ラストを迎えた印象でした。

最初の、女子だけのシーンは、とても好みの作風だっただけに、何だか残念。
好きなものを最初にすっかり食べてしまったら、後には、嫌いな食べ物だけ残ってしまったような…。あー、最後に、もう一度、あの好きな食べ物を口にしたかったなみたいな…。

緩い笑いが楽しくはあって、決して、印象は悪くないのですが、でも、これをわざわざお金払って、下北沢まで見に来なくても良かったかなと、少しだけ、後悔寄りな劇後の印象でした。

もう2度と観ないとまでは思いませんが、とても好きな役者さんが出る時だけでいいかなと思いました。

ネタバレBOX

最初に登場する、黒岩さん、石澤さん、ザンさんの掛け合いが、お見事なので、終始楽しく、このままの空気を維持するんだと期待してしまったため、どんどん、登場人物が増える度、こちらの気持ちは反比例するように、下降線を辿りました。

その後の、二人組、小学生経験だけない、基本的常識に欠ける女役の篠本さんと、いろいろ常識を教えてあげる女役高橋さんのコンビも愉快で、花屋とバイト君の、シュールなお笑いコンビも、声を上げて笑って観ていられました。

役者力のいきなりのトーンダウンは、これ以降。出て来るヒト、出て来るヒト、正視できない感じになって、一気にワクワクした気持ちが、空気の抜けた風船みたいに萎んでしまいました。

特に、笑いの間もセンスも全く感じられない方がいて、どういう劇団の方かと思ったら、無理もない!その在籍劇団は、日頃、観た人を奈落の底に突き落とすような、絶望の中のカタルシスを演劇化しているところでした。
笑いの間なんて、彼の役者人生には一番遠距離なのではと思い、逆にお気の毒になりました。

こういう、緩い笑いで見せる芝居は、一定レベル以上の役者力は必須条件だと思うし、キャストのレベルはある程度、一定でなければ、舞台の流れが、うまく運ばないと思います。

脚本自体は結構面白いと思うので、最初のチームに合わせたキャストレベルが揃ったら、この舞台、化けるかもしれません。

それにしても、黒岩・石澤・ザンの3人トリオはシリーズ化してほしいくらい、気に入りました。3人の名演技バトル、ずっと観ていたかった程。
W〜ダブル

W〜ダブル

キューブ

ル テアトル銀座 by PARCO(東京都)

2010/08/17 (火) ~ 2010/08/29 (日)公演終了

満足度★★★★

騙され勝ちの芝居です
作者の作劇パターンを知っていると、最後の展開は読めるとも思うのですが、それでも、尚且つ、愉快に、ドキドキしながら、ずっと舞台を凝視して観られて大変、満足行く観劇となりました。

何しろ、橋本さとしファンとしては、こんなに、おいしい芝居はありませんし…。

最前列中央で観た中越さんの美しさには惚れ惚れするし、堀内さんの益々磨きが掛かったコメディエンヌ振りは愉快だし、山西さんの性格俳優振りはお見事だし…全体的に役者力が安定していて、楽しく、サスペンスを堪能できて、幸せでした。

私の若い頃は、大手演劇興行会社には、きちんと演劇がわかる人がたくさんいらして、素晴らしい演劇供給をして下さっていましたが、最近は、チケット発売前から、素人にも、売れないのが一目瞭然な馬鹿げた企画が蔓延する中、キューブは、今一番、人材の宝庫で、役者、作家、演出家と、ツワモノ揃いの制作会社。とにかく、他に発注せずに、自前で、こんな舞台を制作できてしまうのが、スゴイと、変な視点からも、いたく感激致しました。

ネタバレBOX

ロベール・トマの常套手段の作劇なので、そこは忘れて、呑気に観るのが、何より賢い観劇方法かと思います。そして、トマの初見者にはたぶん、文句なく楽しめる展開。うまく騙された観客程、満足度が上がる舞台です。

皆さんの【W】の名演技、思う存分堪能させて頂きました。

外国が舞台なのに、所々に、日本語の語意や言葉を遊び道具にして、緊迫の気分を解してみたり、G2さんの遊び心が冴えた演出も愉快でした。

役者さんのファンの方なら、きっと大満足できる舞台だと思いました。
宝塚BOYS

宝塚BOYS

東宝

シアタークリエ(東京都)

2010/08/06 (金) ~ 2010/09/01 (水)公演終了

満足度★★★★

夢のレビューシーンにはやはり涙が…
この作品、私にとっては、生涯の忘れ得ぬ佳作舞台の一つです。
初演から、再演、今回の再々演と、たぶん10回以上は観たのですが、涙なしに観た記憶がありません。

ある芝居においては大酷評させて頂いた中島さんの脚本、こちらは、何回拝見しても、名作だと思います。
そして、また感心したのが、鈴木裕美さんの演出力の凄さ!!
今回のキャストは、御本人の役者さんの力量如何より、キャスティングそのものに無理がかなり感じられるのにも関わらず、今回のキャストに見合った、新たな演出工夫が随所に感じられ、驚きました。

初演があまりにもベストキャストだったので、再演、再々演と、舞台の出来栄えにおいては、相対的評価は、どうしても下降せざるを得ないのですが、それでも、この作品が、類稀な名作であることには疑いの余地がなく、初演に比べたら、星は少なくなる実情ながら、やはり、最大評価したい名作舞台には違いありません。

そして、今回の舞台で一番驚いたのは、赤ペン先生こと、瀧川さん!私は、どういう経歴の方か、全く存知上げないのですが、以前、みきかせの、こゆび侍のお芝居に出ていらっしゃいました。小劇場の役者さんなんでしょうか?
そうだとしたら、あっぱれ!本当に、皆さんと互角に渡り合い、キャクターのユーモアとペーソスを見事に、感じさせて下さいました。

ネタバレBOX

戦後間もなく、宝塚が男性劇団員を加入させていた頃の実話に基づく、青春ヒューマン・コメディ。
実際の宝塚BOYSに取材できるだけあって、中島さんの脚本にも説得力があり、そこに、ちょうど良い塩梅のコメディテイストの加わった、笑って泣けるハートウオーミングな芝居です。

宝塚の女子生徒との交際や会話も一切禁止される中で、いつの日か、宝塚の舞台に立てる日が来ることを信じ、何度期待を裏切られても、地道にレッスンに明け暮れる、宝塚BOYSの熱意が、哀れで、笑いながらも、時々、胸の奥が切なさで、苦しくなったりします。

初演時の、出自の異なる役者さん達の共演舞台は、そのまま、この宝塚BOYSの情況に酷似していた効果もあり、まるで、ドキュメンタリーを観るような、リアリティに満ちた舞台でした。
戦後間もなくの、生きかたに戸惑う当時の若者の苦悩も、よく表現されていました。皆、戦争体験者に見えました。

ところが、今回の再々演は、ミュージカル畑と、映像タレント出身者にほぼ2分され、ストレートの舞台で、役者力を培ったBOYSがいなかったのは、この舞台の説得性を薄める原因になっていて、その部分は大変残念でした。
皆さん、どこからどう見ても、現代青年にしか見えず、彼らが戦争体験を語る度に、どんどん気持ちが舞台から遊離して行くようでした。

と言っても、個々の役者さんの、演技者としての力量は、かなりアップしていて、そのことは、彼らの初舞台から観ている私には、何よりの嬉しい贈り物ではありました。特に、ミュージカル俳優の4人の役者さんは、演技力がとみに増して、心境著しく感じました。

ただ、この作品、皆、それぞれの役に、日舞の師匠の息子とか、大衆演劇の家の息子等、生まれながらに身についた所作が必要で、またその生来の特徴が、笑いのネタになっているので、日頃、そういう演劇訓練が全くない役者には、元来無理な役どころが多いのです。
皆さん、懸命に演じはいましたが、どうもそのキャスティング時点での無理が多すぎて、残念ながら、過去の相対評価は最悪にならざる得ないのが、ファンとしても残念でした。


でも、そうであっても、この作品の持つ得難い魅力は、健在で、何と言っても、とうとう10年近くも憧れ続けながら、ついぞ一度も、宝塚の舞台に立つことの叶わなかった、彼らの、幻のレビューシーンには、感動しない観客はいないだろうと断言できます。
あのシーンは、何回観ても、涙で舞台が見えなくなります。
ダンスや歌のレッスンなど、たぶんしたことのない役者さんも、見事なレビューを見せて下さり、心から驚嘆と尊敬の思いで、心が破裂しそうになります。

幻のレビューで、大きな羽根をつけて踊っていた、BOYSが、一瞬の内に早替えをして、団員の別れのシーンに登場した時は、客席にどよめきが起こりました。

最後の別れのシーンで流れるトランペット。今回も、演奏は、山路さんでしょうか?この曲、何回観ても、この場面に猛烈フィットで、泣かされます。

演劇を心底愛する家庭に育った身としては、こういう芝居が一番苦手です。(これ、最大の賛辞)だって、必ず泣いてしまいますから…。


初演、再演では吉野さんが演じた星野役の東山さん。ダンスの巧さを嫌がおうにも見せ付けて下さり、コメディセンスも抜群で、この役に関しては、初演と甲乙つけ難い印象でした。
浦井さんは、家禄さんの苦悩ぶりには遠く及ばないものの、人の良さと、可愛らしい性格描写はピカイチでした。

初演、再演をご覧になっていない方には、十中八九、気に入って頂ける作品の筈です。
悪役志願

悪役志願

黒色綺譚カナリア派

座・高円寺1(東京都)

2010/08/20 (金) ~ 2010/08/26 (木)公演終了

満足度★★★

どんでん返し(?)が爽快
少なくても、前回公演よりは、悠に好みの芝居でした。

全体的に、これは、ムック版のジャン・ジュネ芝居?というテイストでしたが、最後の、思わぬ展開で、一気に、してやられた感で、「はい、負けました、ムックさん!」という気分になりました。(笑)

牛水さん、片桐はづきさん、パラドックス定数の井内さんの存在感が印象的でした。

シガラ役の反田さんの髪型は、まるで、現代の水商売青年のようでしたが、あれはあれでいいのでしょうか?

セットに、先日、別の思い出したくない芝居で観たのと同じサイズのお月様が出て来ましたが、このお月様の方は、この芝居の雰囲気にジャストフィットでした。(笑)

ネタバレBOX

以前、息子が出演した、ジャン・ジュネの「バルコニー」に酷似した雰囲気の芝居でした。

赤線が廃止になる前の昭和初期の娼婦達の物語。「バルコニー」的台詞も随所に顔を覗かせ、モチーフの芝居の骨格がしっかりしているせいか、前回の演目より、惹きつけられる部分が多く、結構、真剣に見入ってしまう部分も多々ありました。

ストーリーテーラーになる謎の青年が、モノローグの度に「僕はまだ生まれていない」と言う理由が、ラストで解き明かされ、その思わぬどんでん返し的展開に、してやられた感で、一気に、爽快な気分になりました。

穢れを知らない少女から、男性体験を積んで、落魄れた雰囲気の気だるい女性になるまでの、牛水さんの変貌振りがお見事でした。

文学座の反田さんは、どうも他のキャストと、芝居の作りに違和感があり、損な役回りでしたが、いつもコメディ中心の市川さんが、後半、思わぬ好演をされていて、驚きました。息子が以前共演させて頂いた小長谷さんも、あの時代の男の生き様を巧みに表現されていました。
パラドックス定数の井内さんには、改めて、実力の程を拝見させて頂き、嬉しくなりました。

退廃的倦怠感漂う芝居だと思いながら、ずっと観ていたら、ラスト5分の意表をつく、不思議なハッピーエンド!!とても、奇天烈な爽快感をもたらし、愉快でした。

個人的に、牛水さんの独特な英語の発音が、ツボでした。

退屈でもなく、かと言って、すごく面白かったという類の芝居でもなく、久しぶりに、形容し難い、不思議な観劇体験の2時間でした。
吐くほどに眠る

吐くほどに眠る

ガレキの太鼓

APOCシアター(東京都)

2010/08/19 (木) ~ 2010/08/26 (木)公演終了

満足度★★★★

上質な演劇作りに、快感を覚える
まず、この劇団、この暑い中、遠くまで、足を運ぶ観客の思いに立って、いろいろと心配りが行き届く、制作さんの態度からして、大変好感が持てました。
前日に、詳細な道順案内をメールで頂いた上、何と、この暑い中、最後の、劇場に曲がる道の端に、看板を持った女性が立って下さっていました。
受付を済ませ、まだ開場まで時間があるので、外で、待とうとしたら、「開場はまだですが、お暑いので、ロビーにどうぞ」と声は掛けて下さるし、座席の座布団を背もたれと思い込み、座っていると、「これは座布団ですので、どうぞ敷いてお座り下さい」と教えて下さるし、最近、あるまじき、ある劇団の話を聞いたばかりの私は、それだけで、この劇団への期待感が更に高まりました。

さて、芝居の方は、女性だけの出演が、実に効果的な、脚本構成、演出で、また改めて、舘さんの類稀な才気に感嘆しました。
ほぼ、全てが、非の打ち所のない出来栄えで、演劇としての、完成された職人芸さえ感じます。

感想は、驚く程、アキラさんに酷似していますので、ここで、自分が補足する必要さえ感じない程ですが、ネタバレで、若干自分なりの感想を書いておこうと思います。

ネタバレBOX

何かいわくありげな主人公のモノローグで始まる芝居。
この主人公の語り口が、カウンセリングルームで、実際耳にしそうな、抑揚、内容、話の持って行き方なので、まだ何があったかも知らない内から、既に、観客はすっかり、このストーリーの中に、気持ちが取り込まれて行きます。

アキラさんが書いていらっしゃるように、一人の役を、誰もが入れ替わり立ち代り演じるのに、何の違和感もなく、観ている気持ちが一瞬も、現実に引き戻される隙がないのは、驚嘆します。

誰の役は誰と、当パンに書きようがないので、私も、どなたのお名前もわからないのですが、子供時代の主人公を演じた女優さんと、アキラさん同様、結婚式で祝辞を述べたり、付き合ったたくさんの男達とのエピソードを、どんどん、服を脱ぐ中で、表現して行く、女優さんの演技は、特に心に残りました。
もちろん、モノローグを一人語りする女優さんの技量は、特筆ものです。

父と兄以外の男性が、全てお面をつけているのも、この作品の表現方法として、実に名案な上、その面が、西洋の芝居の仮面ではなく、ひょっとこや、大黒天など、純和風のお面なのも、気が利いています。

私自身、演劇部の仲間と、もう40年以上の付き合いで、家族以上にお互いの心の内を知り尽くしている友人がいるので、この芝居のブラスバンド部のメンバーの様々なエピソードが、まるで、自分の体験のように、感じられ、何度も、胸熱くなるシーンがありました。

一応プロの喋り手だったのに、その友人の祝辞を読む時、ぼろ泣きして、話が支離滅裂になった経験もあれば、前半部分の、兄と妹のストーリーは、自分が23歳で書いた佳作を頂いたシナリオに酷似していて、まさにかつて自分が創り上げた主人公に重なる部分が多くて、その作品を追体験するような感覚もあったりで、どこかしこに、見覚えのある感情の波が、観る側の心の襞に吸い付くような、擬似体感がありました。

人間、自分の思うようにはなかなか生きられず、家族への思いも、自分なりにはたくさんあるのに、それが相手にはうまく伝わらずに、平凡な筈の普通の家庭にも、少しづつ、歯車のずれて行くような、悲劇の種が芽を伸ばし始めて行く…。その、哀しい家族の有り様が、実にリアルに、気持ちを侵食して行きました。

でも、それだけに、アキラさんも書いていらっしゃるように、あのラストだけは、納得が行かない気がしました。
作品としての不備と感じたのではないのですが、自分的には残念な感じ…。
それまで、数々のエピソードや台詞に、自分の過去の想いを、様々投影して、観ていただけに、あそこで、あー、これ、虚構のお話だったわと、一気に、気持ちが現実の客席に引き戻されてしまったような、不思議な残念感がありました。


それと、個人的に思ったのは、先日の次男の結婚式の後、次男が、優しい兄に車で荷物を運んでもらえないかと言った時、「寝不足でお兄ちゃんが、事故を起こしたら、あなたは、一生後悔するよ」と、次男を説き伏せて、辞めさせて良かった!!ということでした。

本当に、いつどこに不幸の種が転がっているかわからない、人間の世の常。それが、巧みな作劇で、観客の心を鷲づかみにするような、素敵な舞台作品として、映し出されていて、お見事でした。
八月花形歌舞伎

八月花形歌舞伎

松竹

新橋演舞場(東京都)

2010/08/07 (土) ~ 2010/08/28 (土)公演終了

満足度★★

福助さんの粗さが目立つ
先日に続き、今日は、2部を観劇。

大好きな、劇作家、長谷川伸の「暗闇の丑松」には、またしても、泣かされました。丑松の心根が哀れです。お米の気持ちが切なくて、同情を禁じえません。残念なのは、福助さんのお今の演技。巧いんだけれど、内面の描き方に難があり、表層的演技なのが、この芝居の真の悲哀を薄めたように感じます。

「京鹿子娘道成寺」にしても、福助さんの身のこなし、特に手先にしなやかさが足りず、花子の気持ちの変化が所作に反映されず、いつになく退屈な道成寺でした。押し戻しの海老蔵さんの発声には、口アングリ。こんなに腹から声が響かない押し戻しは、生まれて初めて観ました。

ネタバレBOX

長谷川伸は、自らの母に捨てられた体験を「瞼の母」に重ねた作家だけあり、彼の作品の根底には、いつも贖い切れない、母への思い、女性に対する屈折した情念のようなものがあり、「暗闇の丑松」にも、それは、如実に描かれていて、だからこそ、他の殺人場面は、観客の目にさらされないのに、四郎兵衛の女房お今が、亭主を殺そうとやって来た丑松に対して、色仕掛けをして、そうすることで、敵討ちになると囁くのに、絶望し、殺人に至る場面だけが、客の面前に露呈されるのだと思うのです。

「女は、いつもそうだ。愛する人を守ろうとして、そうして、自分の身も守ろうとして、そのために、怖い人の言いなりになって、体を任せてしまうものだ」と、お今の申し出に、自分の不明のために自殺に追いやった愛するお米を重ねて、そのため、言うに言われぬ後悔と諦観から、自分に擦り寄るお今を殺すのだと思うのです。その、丑松の悔恨が、お今を演じる福助さんの、通り一辺等な芝居に邪魔され、浮き上がって来ないのが、大変残念でした。
遠いので、どなたか識別できませんでしたが、女郎旅籠で、丑松に、四郎兵衛の悪行を酒にほだされ、語ってしまう、使用人役の役者さんが、お見事でした。

「娘道成寺」は、後見の技術も影響したか、引き抜きも、手間取り、とにかく、福助さんの花子には、所作の全てに、大雑把さが感じられ、とても冗長な踊りになっていたように思います。

花道の、捕り手の「とう尽くし」も、あまり面白さがなく、残念!!
長唄の囃子連中の技量にも、首を傾げるところがあり、この「娘道成寺」は、役不足なのではなく、逆に、役者不足の印象でした。
音楽劇 ガラスの仮面~二人のヘレン~

音楽劇 ガラスの仮面~二人のヘレン~

彩の国さいたま芸術劇場

彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)

2010/08/11 (水) ~ 2010/08/27 (金)公演終了

満足度★★★★

劇中劇「奇跡の人」はまさに演劇賞もの
たまたま、大和田美帆さんの、まだ素人じみた初舞台を一緒に観た友人との観劇だったので、二人で、大和田さんの女優としての進化に度肝を抜かれ、お世辞ではなく、マヤと、大和田さんが、私達の中で、一体化する舞台でした。
新納さんもまたこの友人と、初舞台から観ているので、何だか、このストーリーの中の役者達と、それを演じる俳優さんと、それに、自分の周囲の若き演劇人達と…、様々な視点で、心が右往左往して、たぶん、この芝居への評価は甘くなってしまう気がしました。

何しろ、フライヤーの言葉が「演劇を愛するすべての人へー」だもの。
演劇そのものが、テーマになっている以上、演劇が三度の飯より好物の私には、心の琴線に触れる部分が多すぎました。

でも、それでも、1幕はやや退屈でした。「どうして、この人にこんな役を与えてしまうの?蜷川さん」と質問したくなる、若い俳優さんの、学芸会以下の演技が、主に、客席で繰り広げられるので、観ている方が、気恥ずかしくてならないし…。

ところが、2幕は、本当に、目の覚める素晴らしさでした。
劇中劇「奇跡の人」は、まさに好配役で、このまま、ホリプロさんに上演願いたいくらい。最後の場面は、感動で、涙しました。

前回より、全体的には散漫な舞台でしたが、今回、香寿さんが加わったことで、この劇中劇が、どこやらの芝居の陳腐な茶番劇とは違い、本物の演劇のエキスを伝える、素晴らしい独立場面になり得ていました。

香寿さんは、本当に、元宝ジェンヌ中、最高の名女優であると、今回もまた感嘆しました。

ネタバレBOX

私は、この原作アニメを一度も読んだ経験がないので、わからないながら、月影先生の、夏木マリさんは、まさにこの方以外考えられないと感じました。
彼女の演じた伝説の舞台「紅天女」を、観たくなりましたもの。(笑)

大和田さんと、香寿さんの「奇跡の人」のダイジェストシーンは、本当に圧巻でした。稽古シーンから、既に泣きそうでしたが、本番シーンの、例の「ウオーター」の場面は、お二人の迫真の演技に、目が釘付け!!
ヘレンとサリバン先生は、年齢的にそれほど変わらないので、香寿さんにサリバン先生は実際には無理があるのかもしれませんが、本当に、この二人の演じる「奇跡の人」を、全編観たくなってしまいます。

亜弓役の奥村さんも、説得力ある名演技で、安心して観ることができ、幸いでした。マヤと亜弓のライバル同士の闘いは、演じる女優の演技が伴わないと、この芝居自体を観ていられなくなるので、心配でしたが、全くその点はOKでした。
劇団一角獣メンバーの、ラップ調の、「奇跡の人」オーディション参加メンバー紹介も、ダンスが洗練され、楽しく観られました。(歌詞が不明瞭なのは残念でしたが)

ただ、今回、桜小路役の俳優さんが、あまりにも素人演技で、その上、彼の、ソロナンバーなんかも1曲聞かされるので、その部分は、目も耳も覆いたくなりました。小劇場なら許せるけれど、あれをあんな遠い劇場まで行って、観させられるのは、正直、勘弁してほしくなりました。歌唱は、自分の子供の幼稚園のお遊戯を見るかのように、最後まで、ハラハラものでした。
原作では、桜小路は重要な役なのでしょうが、今回の芝居では、別にいなくても支障ない感じの役でしたから、彼の出演部分はいらなかった気さえします。

冒頭の、普段着での稽古場シーンは、前回以上に長く感じたものの、徐々に、ダンスレッスンに加わる人数が増えて行き、最後は一体化して行く様は、それだけで、演劇を志す若者の気持ちを推量して、感動的でした。(蜷川さん、ちょっとずるいよと、思ってしまいましたけれど)

客席で、松明を持って、キャストが疾走した後、しばらく、臭いが残ったのは、やや不快でしたが、客席の頻繁な利用に関しては、この舞台では不快感はなく、むしろ有効だった部分もたくさんありました。

テーマがテーマなだけに、全ての芝居を終えた後の、カーテンコールでのキャスト陣の、笑顔には、一番涙腺を刺激されました。観客の温かい、いつまでも続く拍手は、きっと私と同様の思いの表れだったように思います。

より、キャストを練り上げて、この舞台、是非、シリーズ化してほしいものです。
広島に原爆を落とす日

広島に原爆を落とす日

RUP

Bunkamuraシアターコクーン(東京都)

2010/08/06 (金) ~ 2010/08/22 (日)公演終了

満足度★★★★

様々に、つかさんの逝去を実感して、
言葉には表せない、絶望的現実を、改めて痛感しました。

この芝居、コクーンで上演する芝居ではないと思う。

そして、つか芝居を演じきれる人と、全く演じられない人が、入り混じり、まるで、舞台の統一感がない。

私が、この作品をかつて観たのは、もう、40年近く以前のことなので、正直、その当時の具体的な舞台情景は覚えてはいませんが、でも、その時には、こんな違和感は感じませんでした。

この舞台で、つかさんの台詞を、つかさんの伝えたいニュアンスで、言えた役者さんは、主演の筧さんと、山本さんと、山口沙弥加さんと、後お1人、終盤近くに台詞のあった若い男優さんのみ。
それ以外の役者さんは、あまりにも、つか芝居の本質とは掛離れていました。

つかさんの芝居は、その上演時の社会情勢や、新たな真実により、その都度変容して行く作品なので、同じ原作でも、全くテーマさえも変容するところがあり、だから、もう、今後、本当のつか芝居を観られることはないのだという、悲しい現実を、改めて、痛切に認識し、悲しさで、胸潰れる思いでした。

カーテンコールでの、見えない人物へのスポットライトは、本当に、その方を失った喪失感で、胸がいっぱいになり、芝居以上に泣いてしまいました。

ネタバレBOX

つかさんの芝居は、昔から、粗筋で説明しようとすると、「何?それ?」って感じになり、とにかく、体と心で、ダイレクトに受け止めるライブ演劇の真髄的舞台なのに、今回の出演者で、つかさんの伝道師になれる役者さんが数名しかいないのは、本当に、悲劇的でした。

ダンスは、お粗末過ぎて、目を覆いたくなるし、もう、学芸会以下。
稽古場で、振りをつけられた直後の、やっと身振り手振りを覚えた程度の所作で、驚きました。地球ゴージャスとか、TSレベルの踊りができなければまして、つか芝居で、踊るレベルではありません。

素人レベルの役者のせいで、若い観客に、つか芝居の真髄が伝わらないのは、本当に、ただただ残念!!

星は、全て、つかさんと、筧さんと山口さんに…。
ハンナとハンナ

ハンナとハンナ

TACT/FEST

あうるすぽっと(東京都)

2010/08/14 (土) ~ 2010/08/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

素晴らしい秀作に涙しました
フライヤーから想像した通り、「モジョ・ミキボー」の女の子版的ストーリーでしたが、それ以上に、描かれた世界は哀切な感情を湧き起こす芝居でした。

全くの2人芝居。双子のお2人だからこその、ハーモニーの美しさが随所に光る、期待以上の秀作舞台で、2人の舞台挨拶が終わった後も、拍手は鳴り止まず、再登場したお2人の清々しい笑顔に、心が洗われました。

公演期間が短かったので、是非、また再演してほしい作品です。

それにしても、2人の声の美しさには感動しました。

ネタバレBOX

あの「二人っ子」のマナカナちゃんが、もうこんな素敵な大人の女性になったかと、まず感嘆!実は、お二人の舞台を観るのは初めてでした。

人間性とかでは以前からファンでしたが、こんなに実力を身につけた女優さんに成長されているとは思っていませんでした。

イギリス、マーゲットに在住のイギリス人ハンナと、コソボ難民のハンナの、16歳の同名少女の出会いと別れの物語。

イギリスのハンナは、佳奈ちゃん。キュートな現代少女振りが可愛い!
コソボのハンナは、茉奈ちゃん。コソボで、悲惨な体験をして、どこか陰を引きずっている。
名前は一緒でも、立場や体験が異なる二人は、反目しつつも、ある事件で、心が通じ合い、お互いに、音楽好きで、一緒に楽しく歌って、一気に仲良くなるのに…。

舞台は、素舞台。両側の映像が、観客の理解と想像を助け、効果的。
ほぼ、二人交互の説明台詞で、ストーリーは進みつつ、時々、話の中の人物を演じる形で、進行します。
小道具は、数個の大きさの異なるスーツケースのみ。
簡易な舞台空間が、二人の少女の心の軌跡を、スケール豊に想像させる、秀逸な演出で、プロの演出の醍醐味を味わいました。

二人が、時々歌う歌は、演奏つきもあれば、アカペラの場合もあり、その両方の歌唱とも、大変魅力的でした。
二人の少女の人生の岐路で、歌う、アバの「マンマミーア」の歌詞が、見事、その時の二人の思いと重なり、この曲を聴いて、こんなに涙することになろうとは…。二人の心と声が一体化して、胸を打つ、素晴らしい歌唱でした。

声高でなく、こういう静に、民族の争いや、戦争の悲惨さを、語る作品こそ、本物なんだと、また強く感じて、本当に、見逃さずに済んで良かったと思いました。

佳奈ちゃんは、コメディエンヌとしても、楽しみな女優さんでした。双子のお二人が、キャラクターの違う少女を共に好演され、また楽しみな女優さんをみつけたと嬉しくなりました。(今更ですけれど…)
express

express

PLAT-formance

王子小劇場(東京都)

2010/08/13 (金) ~ 2010/08/15 (日)公演終了

満足度★★★★

先行きが益々楽しみ
15ミニッツメイドで、一目でファンになり、その時「観て来た」をコメントしたら、御招待頂けるということで、ありがたく、伺わせて頂きました。

ただの連作コントではなく、きちんと、ストーリー性があって、とてもお2人だけの舞台とは思えないような、クオリティの高い舞台運びに大満足!!
王子小劇場の機能性にもまたビックリしました。

まだ、課題はあるとは思いますが、とにかくお2人のバイタリティや、役作りの巧さ、爽やかさ、いろいろな魅力の虜になりました。

次回は、再演ものとのこと。より練られたより良い舞台が拝見できるに違いないと今から楽しみでなりません。

ネタバレBOX

2人のお笑いシーンから始まる舞台。ずっとこのまま行くのかと思いきや、きちんとストーリーが設定されていて、コント集と見せながら、最後のシュールな終わり方まで、とても秀逸な舞台運びに感心しました。

この舞台を観て、「ウインズ・オブ・ゴッド」を思い出しました。それは否定的想起ではなく、肯定的想起として…。筋運びは全く違いますが、シチュエーションが似ていました。でも、もし、何らかの先人の作品にヒントを得たとしても、こちらの作者のオカヨウヘイさんは、それをすっかりご自分の独自の作品に変容させる力があり、見事だと、感嘆の思いです。

安藤さんの酔っ払いの「お兄ちゃんさあ」の台詞ぶり、大好きでした。鉄道オタク少年も良かった!吉田さんは、お笑い芸人役と、駅長さんが、とても素敵な雰囲気で、年甲斐もなく、心が、少女化しそうでした。(モエってこういう感じかなと思います。)
鉄道少年が持っていた時刻表の表紙は、このフライヤーのモチーフでしょうか?そうだとしたら、小粋ですね。

15ミニッツメイドの時ほどの意外性や、スピード感、歌舞伎の早替わりのような手際良さは、ありませんでしたが、その分、人間描写がより秀逸だったように思います。
若いお2人が、瞬時に、様々な役の演じわけができるのには、本当に、頭が下がる思いです。
舞台運びを、何から何まで2人だけでやり、その上、吉田さんが音楽、お2人で、宣伝美術も担当されているようで、その手作り感も、心の琴線にビシッと触れてしまいました。
高校の同期生のお3人のユニットだからこその、お互いへの信頼が、客席にまで、伝わって、とにかく清々しくてなりません。

低俗な笑いや、ヒトを嘲笑する類のお笑いネタが大嫌いな私には、本当に理想的なお笑いユニットで、正に宝物を掘り当てた思いでした。

ただ、聖書ネタが、キリスト教に明るくない方には、わかりにくいのではと思う部分はありました。まあ、解るヒトにはより解り、解らないヒトでも、雰囲気で伝わる感じで、それほどのダメージとは思わないのですが…。

だから、13日の金曜日が、初日だったのでしょうか?
お月さまの笑顔

お月さまの笑顔

経済とH

ザ・ポケット(東京都)

2010/08/11 (水) ~ 2010/08/15 (日)公演終了

駄作バテで、寝込みそうです
途中で帰りたくて、本気で泣きたくなりました。
大人が書いた脚本で、ここまでの駄作にはたぶんもう2度とお目に掛からないだろうと思うので、たぶん、この作品、私の生涯のワースト1舞台になると思います。

お月様が、セットに比して異常に大きく、それが、この舞台の全てを語り尽していたように思います。

ネタバレを書く気力もありません。
ただ、新さんのお元気なご様子を拝見できたことがせめてもの救いでした。

拍手は、こんな作品に付き合わされた役者さんに対して、功労の意味で、懸命にしましたが、帰途は、生まれながらの演劇愛好者としては、怒り心頭で、ようやくのことで、家にたどり着いて、ほっとしました。
もう、この劇団は、どんな親しい知り合いが出演したとしても、2度と観たくありません。

ネタバレBOX

作品や演出に関しては、論評するレベルではないと私は感じますので、一々論う気はありませんが、その他の点で、気になることが二つ。

まず、私は、客席サイドの暗幕の傍の席でしたが、その暗幕後ろに、役者さんやスタッフが控えているのか、常に、中で蠢く足音や動作の音、ひそひそ声、ひいては、中の人物が動く度に、暗幕が揺れて、座っている私の脇腹を撫でるので、舞台上のあり得ない展開と、実際、自分の身に降りかかる災難で、居心地が悪くてなりませんでした。

また置きチラシはせず、帰りに、希望者には手渡しするということでしたが、私は、いつも、開幕前に、置きチラシを見ながら、開幕を待つのが楽しみなので、ずっと手持ち無沙汰で、客席に座っているのが、とても残念でした。その上、希望者には、手渡ししてくれる筈のチラシは、どなたも、私に手渡ししては下さいませんでした。この芝居に心底ショックと疲労感を感じていた私は、係りの方に、「チラシを下さい」と言う気力もなく、悲しい気持ちで、手ぶらで帰宅致しました。

舞台作りにも、こういう演劇ファンに対する配慮のなさにも、本当に、この劇団には心底、落胆させられました。それに、この配布チラシは、各劇団の方達が、稽古やバイト時間を割いて、一生懸命、折り込んでもらおうと、この劇場まで運んで来たものではないのでしょうか?彼らの労力を思うと、この劇団の「地球環境を考慮して…」という、全く演劇畑ではない経済人の驕りを感じてしまいました。地球環境を考慮するなら、不要チラシを入れられる箱を用意すれば良いことだと私は思います。

どんな、名人の大工に建設を頼んでも、モトの設計図が滅茶苦茶では、偽装建築で倒れるマンションの如く、名建築は建ちません。

どうか、経済とH様には、宣伝に余念のない行動をなさる以前に、もう一度、舞台作り、戯曲の書き方、演出のノウハウを、一から、勉強し直して頂けますよう、心から、祈念致します。

この芝居、笑ってご覧になっている観客もいらっしゃったし、現に、私以外の方は、高評価されています。その方々の御感想に異を唱えるつもりは毛頭ありませんが、ただ、一つ、りいちろさんの御感想に、夢の場面が、新国劇を彷彿とさせるというような記述がありましたが、これだけは、3代にわたる新国劇ファンとして、全く、新国劇を彷彿とさせるような次元の芝居ではなかったという点だけは、声を大にして、申し添えさせて頂きたいと思います。
サーフィンUSB

サーフィンUSB

ヨーロッパ企画

本多劇場(東京都)

2010/08/04 (水) ~ 2010/08/15 (日)公演終了

満足度★★★★★

この劇団独特のカラーが生きている
ヨーロッパ企画を観るのは、これで、3度目ですが、いつも感心するのは、とても台詞とは思えないような、若者の日常会話が、ごく自然に舞台上で繰り広げられる、見事なリアルさです。

今回の舞台装置は、空想組曲の「遠ざかるネバーランド」のフライヤーで見たような、非日常の世界でしたが、でも、そこで、繰り広げられる会話は、まるで、ファミレスで、隣り合った若者達の会話を、聞くともなしに聞いてしまったような、ごく日常の、普通な会話の連続でした。
その会話が、あまりにも自然体なので、この劇団、稽古風景が全く想像できません。

シチュエーションや、語られる内容は、非日常なのに、語られる会話は、実に日常的なので、そのアンバランスに違和感を感じてしまう方には、オススメし辛い劇団ですが、私は、この劇団の、この独自な雰囲気が大好きで、ずっと、笑顔で、観ていました。

アフタートークの緩さも含めて、とても好きな空気感の劇団で、その上、今回の舞台で、酒井さんの大ファンになりましたので、ずっと、この劇団、追いかけたいと思います。

ネタバレBOX

アナログの体験が最良と言っていたサーファー達が、アキバ…の営業マンの口車に乗って、自分のサーフィンのダウンロード数を気にする内、本末転倒になって、サーフィンを楽しむのではなく、ダウンロード数を増やすために躍起になり始めるところで、私は、実際ネット上でも、こういう人種がいるなあと、卑近な例を思い浮かべて、妙に、受けてしまいました。

ハンバーガーが、もはやスローフードだと言って、自殺しそこねて仲間入りした女性に、その食べ方を皆が口々に伝授するシーン、もう、この劇団でしか、成立しないような場面で、感嘆しつつ、大笑いして観ていました。

本当に、普通の会話を切り取ったようなシーンの連続ながら、シニカルな部分もあり、この絶妙な匙加減の、作劇が、私は、心底大好きです。

今回、2回も、海に落とされる、営業マンの酒井さんの演技に魅了されました。
私が、かつて大ファンだった、今は、役者は休業中の、8割世界の吉岡さんを彷彿とさせる、見事な営業トーク、心酔しました。アフタートークでも、また海に落とされる場面を再現して下さったのですが、その素の表情まで、とても魅力的な役者さんで、彼を観られただけでも、ラッキーな観劇となりました。
スリー・ベルズ

スリー・ベルズ

パルコ・プロデュース

PARCO劇場(東京都)

2010/08/10 (火) ~ 2010/08/29 (日)公演終了

満足度

落胆度95%、大王も完璧ではないと知る
すごーく残念!!後藤ひろひと作品で、初めて、睡魔に襲われました。

本当に、期待度100%だったんですよ。音尾さん、岡田さん、石丸さん、佐戸井さんと、好きな俳優さん揃いでしたし…。

でも、期待度が高すぎたため、落胆度も高くなってしまいました。

幕開きの後藤さんらしい、客席の雰囲気作りと、最後の岡田さんの歌は、とても良かったのですが…。
今回は、あまりにも、脚本に、芸がなさ過ぎました。
どこかで観たようなストーリーが、ない交ぜになり、それがきちんと消化されない感じでした。あー、すごく残念。特に、石丸さん、もったいなさ過ぎました。

ネタバレBOX

開演前に客席でパフォーマンスをする男女、最初、あまりにも衣装が可愛いので、まさかホームレスの役とは思いませんでした。
彼らに、誘導されて舞台に上げられた観客に、注意事項を読ませ、ややあって後方から後藤さんが登場したところまでは、気持ちがワクワクしていたのですが、ストーリーが進むに連れ、これは駄作かもの思いが強くなりました。

結局、場転のセット替えなどを担当する後藤さん自身の登場シーンが、一番楽しく、肝心のストーリーの方は、どこかの作品の二番煎じ、三番煎じの、それもブレンドしそこなって不味くなったお茶みたいでした。
素敵なキャストが勢揃いしていたのに、とても残念でした。
子役さんが一番客席の注目を集めていたかもしれません。彼は、かなりの名子役さんでした。
八月花形歌舞伎

八月花形歌舞伎

松竹

新橋演舞場(東京都)

2010/08/07 (土) ~ 2010/08/28 (土)公演終了

満足度★★★★

初役、勘太郎さん、お見事でした
「四谷怪談」通しを、大好きな女優さんを誘って、観に行きました。

たまたま、新婚の、伊右衛門お岩コンビ。
海老蔵さんの伊右衛門は、良くも悪くも予想通りでしたが、勘太郎君は、期待以上の素晴らしい初役でした。

序幕の与茂七の軽快な演技振り、実直な小平、哀切なお岩と、3役を、どれも破綻なく務め上げ、初役で、ここまで、演じきった「四谷怪談」は、もしかしたら、初めて観たのではと思う程。父親である勘三郎さんのお岩を踏襲してはいるものの、伊藤家からの毒薬を、ありがたがって一つ残らず飲み干そうとする哀切さは、お父上以上だったように、感じました。

獅童さんの直助権兵衛、七之助さんのお袖もとても良かったので、2人の「三角屋敷の場」がカットされたのは、残念でしたが、猿弥さんの愉快な解説で、カット場面の粗筋説明があったのは、大変観客に親切で、好感が持てました。

ネタバレBOX

勘三郎さんが、コクーン歌舞伎などで、若いヒトにもわかりやすい歌舞伎上演を積極的に行うようになって、ようやく、歌舞伎の本公演でも、そういう空気が生まれて来たのだなと実感できる、大変嬉しい気持ちになる公演でした。

序幕から、陰隠滅滅とした雰囲気になりがちな演目なのに、今回は、序幕から、やけに軽快な雰囲気で、与茂七とお袖の夫婦の再会や、伊衛門と直助権兵衛の悪党2人の殺し場後の、結託シーンも、まるで、喜劇テイストで、ずいぶん、様変わりした「四谷怪談」でした。

でも、お岩が、伊藤家の親切を信じ切って、血の道の薬と偽られた面相が変わる毒薬を、拝みつつ、飲み干すシーンは、哀切極まり、胸が痛くなります。

勘太郎さん、3役を、見事に、演じ分けて、本当に感嘆してしまいました。
中村屋3代のお岩、皆、拝見していますが、今後、一番好きなお岩になりそうです。
海老蔵さんではなく、菊之助さんの伊右衛門とのコンビで、観たい気がしました。
海老蔵さん、どうも、わざとらしい台詞回しに感じます。最初から、すごく嫌な男で、何故お岩と縁りを戻したかったかが、見えてきません。伊右衛門は、最初は、お岩を愛していた筈なのに…。
勘太郎さんが、3役とも良いだけに、残念でした。

お岩、小平の戸板返しから、だんまりで与茂七に早替わりするところが、実に鮮やかで、嬉しくなりました。

3階席に、幽霊が出現したり、猿弥さんの愉快な解説があったり、お客さんに親切な歌舞伎上演形態になり、今後の歌舞伎界に希望が持てて、歌舞伎歴50年の私には、とても心嬉しくなる「四谷怪談」でした。
12人の優しい殺し屋

12人の優しい殺し屋

ホリプロ

赤坂RED/THEATER(東京都)

2010/08/07 (土) ~ 2010/08/15 (日)公演終了

満足度★★★★

なかなか楽しめました
赤坂REDシアターの狭い通路は、花でビッシリで通りにくいし、入り口は、ポスターやパンフレットを買う若い女性でごった返しているし、アンケート用紙は、40代以上は、10羽一からげだし、あー、やっぱり、自分のような高齢者は場違いだったかと後悔しそうになりましたが、始まってみると、なかなか楽しめて、久しぶりに、アフタートークまで、満喫し、何だか気持ちが若返った感じでした。

若いアイドル俳優さんばかりなので、学芸会演技なのかと心配しましたが、いやいや、皆さん、なかなか堂に入っていて、感心しました。
それに、全員、滑舌がバッチリ!!
これは、ベテラン役者さんや、小劇場の役者さん、もっと実力つけなきゃダメだよと、思いました。(笑)

今回の出演者は、木村了さん以外は、存じ上げない方ばかりでしたが、4人の殺し屋も、それぞれ、役をそれなりに生きて舞台にいらして下さり、ほっと一息!
それに、個人的に、感慨無量だったのは、大石吾郎さん。私の高校生時代に、朝の情報番組に出演されていた大石さんの声に送られ、通学していたので、まさか、こんなところで、再会を果たすとは思いませんでした。なかなか味わいある中年俳優さんになられていて、嬉しくなりました。

それにしても、木村了さんの、役者オーラと言ったら…。この人で、この役が観てみたいという、願望的妄想が幾らでも膨らみます。
近い将来、ホリプロを背負って立つ大スターになられる気がしました。

ネタバレBOX

「12人の優しい殺し屋」に関する知識は皆無なのですが、どうやら、殺し屋は、12人いて、今回の舞台は、その内の4人が、特命を受けて、犯罪者の木村さん扮する、風間芳樹を制裁するという話で、また、次回は別の殺し屋が活躍するシリーズ化第一弾のようでした。

川村さんは、天才俳優役には、かなり無理を感じたものの、設定をアイドル俳優にしてもらえれば、文句ない演技。ニヒルな精神科医役の鈴木さん、売れっ子ホスト役の前田さん、実直で、職人気質の料理人役の菊田さんの、後の3人の殺し屋は、それぞれ、役どころをしっかり押さえた演技で、正直、驚きました。

会場のお客さんを巻き込む、ホストクラブ「ミラージュ」の場面は、とても楽しくて、ホストクラブ未体験の私は、思わぬ、疑似体験をさせて頂きました。(笑)
木村さんのようなホストがいたら、はまってしまう女性心理もわかるような気がしてしまいました。
客席から、木村さん扮する№1ホストが登場した時は、ちょっと平常心でいられませんでしたから…

やたら、暗転が多い舞台でしたが、そんなに、気分がそがれることもなく、結構、照明や音楽も、レベルが高かったので、これで、4000円なら、手ごろな娯楽的観劇にはもってこいなのではと思います。

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