八月花形歌舞伎 公演情報 松竹「八月花形歌舞伎」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★

    福助さんの粗さが目立つ
    先日に続き、今日は、2部を観劇。

    大好きな、劇作家、長谷川伸の「暗闇の丑松」には、またしても、泣かされました。丑松の心根が哀れです。お米の気持ちが切なくて、同情を禁じえません。残念なのは、福助さんのお今の演技。巧いんだけれど、内面の描き方に難があり、表層的演技なのが、この芝居の真の悲哀を薄めたように感じます。

    「京鹿子娘道成寺」にしても、福助さんの身のこなし、特に手先にしなやかさが足りず、花子の気持ちの変化が所作に反映されず、いつになく退屈な道成寺でした。押し戻しの海老蔵さんの発声には、口アングリ。こんなに腹から声が響かない押し戻しは、生まれて初めて観ました。

    ネタバレBOX

    長谷川伸は、自らの母に捨てられた体験を「瞼の母」に重ねた作家だけあり、彼の作品の根底には、いつも贖い切れない、母への思い、女性に対する屈折した情念のようなものがあり、「暗闇の丑松」にも、それは、如実に描かれていて、だからこそ、他の殺人場面は、観客の目にさらされないのに、四郎兵衛の女房お今が、亭主を殺そうとやって来た丑松に対して、色仕掛けをして、そうすることで、敵討ちになると囁くのに、絶望し、殺人に至る場面だけが、客の面前に露呈されるのだと思うのです。

    「女は、いつもそうだ。愛する人を守ろうとして、そうして、自分の身も守ろうとして、そのために、怖い人の言いなりになって、体を任せてしまうものだ」と、お今の申し出に、自分の不明のために自殺に追いやった愛するお米を重ねて、そのため、言うに言われぬ後悔と諦観から、自分に擦り寄るお今を殺すのだと思うのです。その、丑松の悔恨が、お今を演じる福助さんの、通り一辺等な芝居に邪魔され、浮き上がって来ないのが、大変残念でした。
    遠いので、どなたか識別できませんでしたが、女郎旅籠で、丑松に、四郎兵衛の悪行を酒にほだされ、語ってしまう、使用人役の役者さんが、お見事でした。

    「娘道成寺」は、後見の技術も影響したか、引き抜きも、手間取り、とにかく、福助さんの花子には、所作の全てに、大雑把さが感じられ、とても冗長な踊りになっていたように思います。

    花道の、捕り手の「とう尽くし」も、あまり面白さがなく、残念!!
    長唄の囃子連中の技量にも、首を傾げるところがあり、この「娘道成寺」は、役不足なのではなく、逆に、役者不足の印象でした。

    7

    2010/08/20 21:25

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  • KAEさま

    >話戻って、福助さんにしても、巧い演技に、自ら酔って、最近、どの演目のどの役でも 
    演技のパターンが一緒な気がして、危惧してしまうんです。(基本的には、福助さん、好きなんですけれど)

    まったく同感です。KAEさんとは歌舞伎での話が合いそうですね(笑)。私は、最近福助さんを観てないんですけど、10年ほど前にそれを強く感じてしまいました。

    2010/08/25 23:07

    きゃる様

    そうですね。私も、中学か高校の頃観た猿之助さんの狐忠信には感嘆しました。
    あの狐の仕草は、なかなかでしたね。

    何事も、慣れが怖いなと思いますね。

    話戻って、福助さんにしても、巧い演技に、自ら酔って、最近、どの演目のどの役でも、演技のパターンが一緒な気がして、危惧してしまうんです。(基本的には、福助さん、好きなんですけれど)

    2010/08/24 16:13

    KAEさま

    >「四の切」は、大好きな演目なので、若い頃は、必ず観た時期もありましたが、鑑賞眼が肥えてからは、猿之助さんのも苦手になりました。アクロバッティングな動きや早替わりには感嘆しましたが、どうも狐の哀切な心があまり表出されていなくて…。
    菊五郎さんも苦手です。
    亡くなった辰之助さんのは良かったですね。

    猿之助さんも後年、手馴れすぎてしまったんでしょうね。「四の切」初演の翌年に観たんですが、凄く感動し「狐の悲しさ、哀れさが胸に迫った」と書いた観劇ノートをずっと取ってありました。
    欄干渡りのきめ細かな芸は、単にテクニック以上のものだから感動できたのだと思います。獣の動きがうちの愛犬に似てた(笑)。
    故辰之助さんの「四の切」は、六代目の型で、一番松緑さんの薫陶を受けた正統派だったんでしょうね。松緑さんは、猿之助さんの「四の切」にはずっと批判的でしたからね。菊五郎劇団の幹部からの批判は当時物凄くて、先代勘三郎さんだけが擁護派でした。
    現勘三郎さんの若い観客へのアプローチも、猿之助さんが先駆者として70年代に因習を破って道を披いたからこそだと思っています。

    2010/08/24 16:02

    きゃる様

    申し訳ないけれど、海老蔵さんの「四の切」なんて、観る前から、どんなお芝居をなさるか想像がつくので、絶対、観たくありません。(笑)

    「四の切」は、大好きな演目なので、若い頃は、必ず観た時期もありましたが、鑑賞眼が肥えてからは、猿之助さんのも苦手になりました。アクロバッティングな動きや早替わりには感嘆しましたが、どうも狐の哀切な心があまり表出されていなくて…。
    菊五郎さんも苦手です。
    亡くなった辰之助さんのは良かったですね。
    今現在では、当代勘三郎さんが一番、狐の心を演じられるのではと思いますが、私は、勘太郎さんがいつか、最高の狐忠信を演じて下さる日が来るのではと楽しみにしています。

    2010/08/24 12:38

    KAEさま

    申し訳ありません。最後尾が消えてました。

    つい先日、夕刊フジに「日経劇評で、海老蔵を酷評」という記事が載ってました。我が家は日経なんですが。で、フジに朝日の劇評も紹介されてて、伊右衛門についてはKAEさんと同じ表現で台詞回しのおかしさを指摘していました。
    先日、NHKのドキュメントを見て、「四の切」のヒドさに唖然!としました。昔、右近さんの初演を観た時は「よくやってるけど、コピーだな」という物足りなさでしたが、そんなレベルではなくて(笑)。朝日でも「文楽の太夫に狐言葉を一度キチンと習うべき」と書かれたとか。日経でも同様でした。猿之助さんも先代勘三郎さんも、狐言葉は先代竹本綱太夫さんに習ってから演じたはず。
    「四の切」については昔KAEさんのお父上の劇評を読んだ記憶があります。他のかたの批評より詳しく、説得力があり、「なぜいま、この演出で上演されるのか」についても言及されてたと思います。

    2010/08/24 11:37

    きゃる様

    ごめんなさい。頂いていたコメントに、気付かずにおりました。

    そうですか!きゃるさんが購読されている新聞評は概ね好評だったわけですね?

    我が家は、生前、父が劇評を担当していた3紙をそのまま今も読み続けているのですが、最近、その中の1紙のコメントが、私の感想にかなり類似していました。(この劇評を書かれた方は、父をリアルタイムで御存知の、つまり、劇評家として、とても古株の方です。)

    その劇評に寄れば、福助さんには、それとなく、海老蔵さんに対しては、かなりストレートに、酷評されていましたよ。Y紙の劇評です。興味あられたら、ご覧になってみて下さいね。

    2010/08/24 04:43

    KAE様

    この欄の福助論を読み、このお芝居は観ていませんが、KAEさんの鋭い観察眼に大いに共感・納得できました。さすがです。そう、福助さんは巧いけど粗いんですよね。絵本太功記の初菊の稽古風景を昔、NHKで観たんだけど、「兜」のイントネーションを何度お父さんに直されても直らなくて、直さないままOKもらってて、え?いいの?と思いましたけど。
    海老蔵さんの押戻しを新聞などは褒めてて、これも「え?」だったけど、KAEさんの評を読んで納得。やっぱりそうだったのですね(笑)。海老蔵さんについての所感は、前のときのコメントの「助六」に詳しく延べたので、省略します(笑)。

    >長唄の囃子連中の技量にも、首を傾げるところがあり、

    最近は、踊りでも習ってないと、地方(じかた)のよしあしにまで触れるかた、わかるかたは少ないと伺いました。いまは、演奏すれば毎度拍手のくる時代ですからね。
    福助さんの踊りでは、昔、時蔵さんとの「二人道成寺」だっけなー、一緒の振りでも、もう2人ともバランバランで合ってなくて、まちがえるし、呆れたんですが、ファンが「いつ観ても上手。いいわー」って言ってて、ハァーってなった(笑)。「紅葉狩」の更科姫でも扇を受け損ねて落としたり、ね。踊りが得意でないみたいですね。

    でも、こういう辛口評、遠慮しないでズバズバ書いてください。楽しみなので。

    2010/08/23 22:48

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