忘却曲線 公演情報 青☆組「忘却曲線」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    秀逸な叙情小説の味わい
    吉田小夏さんの作品を拝見するのは2度目ですが、今回の作品は、前回以上に、感銘を受けました。

    あんなにお若い作家がよく、これだけの、人生機微を小説のようにきめ細かく舞台上に、具現化できるのかとただただ感嘆します。

    役者さんも、全員が、その役として舞台上で生き、本当の家族がそこにいるようでした。

    モノローグはあっても、説明台詞は一切なく、小説なら行間から滲み出る、家族間の切ない思いが、観る側の胸の隙間に染み渡り、終始、目の奥に涙が出番を待っているような、ジーンとする芝居でした。

    本当に、素晴らしい!
    昨日まで、行くか行かざるべきか迷いましたが、やはり行って良かったと、心から思います。

    大西玲子さんが御出演でなければ、二の足を踏んでいたかもしれません。
    こんな素敵な芝居を見逃さずに済んだのは大西さんのお陰です。
    ありがとうございました。

    ネタバレBOX

    失踪した母親の誕生日を毎年祝う兄弟、姉妹の、母を慕う思いが切なくて、何度も涙が出そうになりました。

    「祝うことは祈ること」、「いつの8月?」、「母さん、お帰り、さようなら」…、心の琴線に触れる珠玉の台詞が幾つも幾つもありました。

    母がまだいた時の過去の記憶と、今現在の家族の、微妙にすれ違う愛と、苛立ち、理解されない淋しさ…。その表現配分も秀逸なら、場面転換や、一瞬の子供から大人へのキャスト陣の変化など、照明、音楽、演技、演出…、どれも、皆遜色なくて、舞台芸術のお手本にできるような完成度の高い舞台でした。

    キャストの皆さん、誰も皆、申し分ない演技でしたが、やはり、大好きな大西さんの演技には今回も泣かされました。

    太郎の記憶の中の若き母が、現実に引き戻されると、猫に変身する様もお見事でした。

    東京から、挫折して帰郷した次女の、タバコを燻らすシーンも、切なくてなりませんでした。

    母が失踪した日から、兄弟の母親になろうと決めた長女のいたいけな思いに、共感して胸が苦しくなるラストシーン近く。そして、やっと、これからは俊輔の妻として、再生しようとする幹子の夫へのさり気ない語りかけで、幕となるラスト、最初から最後まで、本当に、寸分の隙もない、傑作舞台だったと思います。

    欲を言えば、テーブルがベットにも変身すのなら、もう少し、抽象的なテーブル仕様のセットの方が良かったのかなとは思いましたが…。

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    2010/09/06 23:45

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