ニッポンヲトリモロス
劇団チャリT企画
王子小劇場(東京都)
2013/10/25 (金) ~ 2013/10/30 (水)公演終了
満足度★
羊頭狗肉でお茶を濁した?
もう少し、楢原さんらしい、機知に富んだ、暗喩的頭脳明晰な脚本を期待していたのですが、完全な肩すかしを食らいました。
見かけ倒しならぬ、仕掛け倒しの感。
やけに挿入される、謎かけ問答のような台詞のやりとりも、計画した間が、冗長に感じるだけで、面白さゼロ。
社会の現状を、徹底的に、笑倒し、ブラックな笑いで、告発する、チャりTらしい、真実を茶化す茶番劇の真髄には、到底及ばない、脚本の出来栄えに、かなり落胆しました。
楢原さんが、何を描きたかったのかは、提示がダイレクトなので、すぐにわかります。でも、これでは、手品の品物だけ並べて、手品師が、トイレ休憩に行ってしまったような印象です。仏作って、魂入れずの感!
楢原さんらしい、センスある切り口に期待してたんだけどなあ。
エニシング・ゴーズ
東宝
帝国劇場(東京都)
2013/10/07 (月) ~ 2013/10/28 (月)公演終了
満足度★★★
主題曲のタップダンスは壮観!
以前、大地真央さん主演舞台を観ているし、今回のメインキャスト数名に苦手な出演者がいたので、観る予定はなかったのですが、eプラスで、得チケが出ていたので、急遽観劇して来ました。
1幕途中までは、あまり面白さを感じませんが、、このミュージカルならではの圧巻のタップシーンは、やはり壮観!の一言。
日本のミュージカル上演の最初の舞台から、かなりのミュージカルを拝見していますが、最近のアンサンブル俳優さんのレベルの高さには、嬉しくなります。
この舞台でも、水兵さん達のダンスが素晴らしい出来栄えでした。
瀬奈さんは、いつも思いますが、ミュージカルコメディエンヌとしての資質が備わった女優さんで、今回も、無理なく楽しい舞台を務めて下さいました。
ずいぶん昔「スイートチャりテイ」で、魅力的な演技が印象的だった玉置成美さんは、年月を経て、歌も演技も、大変力量がアップされ、目を見張りました。
保坂さんは、かなり年齢の高い役をユーモアたっぷりに演じられ、大変魅力的でした。
大澄賢也さんも、途中まで、誰かと思う程、役を演じきってお見事。益々、なくてはならない、中堅役者さんの存在感がタップリ。
吉野さんの演じられた役は、よく考えると、台詞が相当大変そうなのに、違和感なく、言葉を発せられていて、役者魂に感服しました。
全体的に、メインキャストより、脇が光ったステージでした。
つかのま真打ち
蜂寅企画
シアター風姿花伝(東京都)
2013/10/17 (木) ~ 2013/10/21 (月)公演終了
満足度★★★★
題名からして、秀逸
中尾さん、拝見する度、筆さばきが進化していらっしゃると感じます。
中尾脚本の秀逸さに比例して、役者さんの演技力も、旗揚げの頃に比べて、各段の進歩をされていると実感しました。
台詞に、説明過多な部分が少なくなったのも、脚本家としての中尾さんの成長ぶりを痛感して、胸にこみ上げる嬉しさがありました。
ただ、前半部分の、コント的な騒々しさには、やや蛇足感を否めませんでした。笑を生んで、舞台の空気を温めようという作者の配慮かもしれませんが、あーいう無意味な軽いギャグのような場面を廃した方が、作品の品を高めるように思うのです。
最後は、少し、涙腺が緩みました。
つかのま真打ちの、体を張った落語噺には、感動を頂きました。この場面で、この題名の真意がわかり、なるほど、してやられた感!
「笑う門には福来たる」というテーマが、堂々と語られ、胸のすく芝居でした。
ただ、役者さんにお願いですが、こういう小さな劇場では、一般客の帰り道を塞がない工夫をして頂きたいと思いました。せっかく、お知り合いのお客様と歓談されている中、「どいて下さい」と言うのも野暮かと待っていたら、いつまでも外に出られそうもありませんでしたので。
本当のことを言ってください。
劇団昴
赤坂RED/THEATER(東京都)
2013/10/19 (土) ~ 2013/10/27 (日)公演終了
満足度★★★★★
創作劇としての完成度は高い
食品偽装事件は後を絶たないし、最近、「週刊文春」が、特集を組んでいたのを見るにつけ、気にしていたら、何も食べられない病に陥りそうな昨今ですが、たまたま今日やなせたかしさんの「100年インタビュー」の再放送を観たばかりだったので、オリエントミートの会長がやなせさんと重なり、そのため、会長の娘瑞穂やその息子次郎の行動に、現実性がないような印象も感じてしまいました。
ただ、あくまでも、創作劇だという視点で観れば、相当よくできた芝居であることは間違いありません。
昴の役者さんは、どなたも演技者としてのレベルが高いので、こういうリアルな告発芝居は、固唾をのんで観られ、いつも見応えがあると感心します。
どうも、青年座風な芝居作りだと感じたら、演出は黒岩さんで、納得しました。
かつて、青年座で上演した、スーパーマーケットを舞台にした作品と、雰囲気が似通っていました。
尚、この舞台を観た数日後に、阪急グループのホテルレストランの偽装が明るみに出て、関係者の謝罪会見の台詞が、あまりにも、この芝居さながらだったので、一人で、大受けしてしまいました。
高級ホテルや、大手スーパーマーケットまでがこの騒ぎでは、まさに事実は小説より奇なり。本当のことを言う日本人は、我が国にどれだけいるのだろうと、気持が暗くなるばかりです。
TRUE WEST~本物の西部~
梅田芸術劇場
世田谷パブリックシアター(東京都)
2013/09/29 (日) ~ 2013/10/13 (日)公演終了
満足度★★
わかるようなわからないような…
何となく、途中までは作者の意図をわかったつもりで観ていたのですが、ラストになって、自分が理解しているのか、自信がなくなりました。
内野さんが、役作りでわざとそういう喋り方をされているのだろうとは、納得しますが、如何せん、3階席だと、ほとんど台詞の言葉を聞き取れず、手探り状態の観劇でしたから、尚のこと。
演出は、外国の方なんでしょうか?そうだとしたら、日本語の台詞が、どう客席に聞こえるのか、ご理解できないかもしれないので、仕方ないのかもしれませんが、これはあくまでも、台詞劇なので、もっと台詞を届ける工夫をして頂きたかったと思います。
音尾さんと菅原さんの演技は、愉快でした。
Forever Plaid(フォーエヴァー・プラッド)
シーエイティプロデュース
東京グローブ座(東京都)
2013/10/01 (火) ~ 2013/10/10 (木)公演終了
満足度★★★★★
楽しいまさに夢のライブショー
4人のハーモニーグループの、現世では実現できなかった、夢のライブショーは、本当に、観客の私にとっても、夢のようなひと時でした。
宣伝文句にあるような、絶妙なハーモニーと言うと、やや褒めすぎだと思うけれど、少なくても、絶妙なキャスティングであることは間違いない。
元劇団四季の綜馬さん、サッカー選手から転身した川平さん、ソフィアの松岡さん、V6の長野さんと、全く出自の異なる4人のキャスト陣のチームワークが抜群!
普段は、同じ公演は観ないような4キャストそれぞれのファンが、客席に集い、共に、ステージングに参加するような形の舞台構成は、実に、心地よい快感でした。
東京楽日ということで、皆さんのラフなトークが聞けたことも嬉しかった!
11月28日の青山劇場追加公演が決まったそうで、行けたら、また行きたくなる、本当に楽しいステージでした。
音楽劇 「ヴォイツェク」
TBS
赤坂ACTシアター(東京都)
2013/10/04 (金) ~ 2013/10/14 (月)公演終了
満足度★★
難解なのか、自分好みでないだけか?
それが、一見では、はっきりわからないというのが、正直な感覚。
役者さんは好演されているとは思うのですが、芝居の空気と劇場の相性が悪いのかもしれない。
もし、これがトラムとかで上演されていたら、もっと気持ちを持って行かれたのかもしれませんが、少なくても、ACTシアターで、一万円近くのチケット代で、観るような芝居ではないと思いました。
一番感じたことは、マイコさん、大変そう!ということと、真行寺さん、雰囲気のある女優さんになられたなということ。
十月大歌舞伎
松竹
歌舞伎座(東京都)
2013/10/01 (火) ~ 2013/10/25 (金)公演終了
満足度★★★★★
梅枝の進境著しさに嬉しさ
ニ度目の新歌舞伎座。
考えてみたら、その役者さんの見せ場で、その役者さんの屋号の掛け声が掛るという、言わばあたりまえの状況の中での歌舞伎観劇、実に久々でした。
それだけでも、余念なく、落ち着いた気持ちで、舞台に集中することができ、本当にあたりまえのありがたさを痛感しました。
仁左衛門さんのいがみの権太観たさに、初日に参りましたが、梅枝さんの小金吾の演技が繊細で美しく、いつの間にこんな楽しみな役者さんに成長されたのかと、胸が熱くなりました。
仁左衛門さんの権太は数えきれない程拝見していますが、いつも芸が細やかで、何度観ても泣かされます。父と息子の情愛の機微に、昨日観た「そして父になる」と相通じるものを感じました。
菊五郎さんの「川連法眼館」は、何度も拝見していて、自分の好みではないので、今回は、パスさせて頂きました。
OPUS/作品
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2013/09/10 (火) ~ 2013/09/29 (日)公演終了
満足度★★★★
見せ方上手な演出
いつもは観難いバルコニー席も、こういう舞台配置ならどこからもよく観えそうと喜んだのも束の間、お隣の巨体女性が終始、前のめりでご覧になっているので、私は、彼女の顔と腕の挟間から、舞台を覗き込む形になり、かなり左肩が痛くなっての観劇体制でした。
もっと環境が良ければ、満点の満足度だったかもしれません。
小川さんの演出は、いつも見せ方が御上手だなと感心します。
カルテットメンバーは、皆さん芸達者揃いで、どなたも演技面で、ベストを尽くしていらっしゃり、見応え充分ですが、個人的には、相島さんの佇まいが一番好きでした。相島さんて、テレビとかだと嫌なタイプの人種を演じられることが多いような気がしますが、こういう、数人のグループの調整役的な役柄を演じられると、とても光り輝く気がしています。
紅一点の伊勢佳世さんも、相変わらず、演技の振り幅が自然で、愛嬌があって、文字通り、舞台に華を添えていました。
セットを特に変えることなく、小道具だけで、部屋を特定する技が素晴らしかったと思いました。
内容自体は、もっとシニカルで、重たい内容かと思いましたが、言ってみれば、どこの誰にも経験ありそうなごく一般的なお話でした。
ですから、クラシック音楽の素養がなくても、全く問題なく、楽しめる作品です。
next to normal(ネクスト・トゥ・ノーマル)
東宝
シアタークリエ(東京都)
2013/09/06 (金) ~ 2013/09/29 (日)公演終了
満足度★★★★
後列で正解!
以前、トニー賞の授賞式のパフォーマンスショウを観て、大よその雰囲気は予想がついていましたが、意外にも笑えるシーンなどもあって、舞台の雰囲気的にも「RENT]に共通するものがありました。
当事者にとっては深刻な内容で、決して愉快でもないストーリーですが、悩める家族が必死に関係性を保って、生きようとする姿が感動的です。
ダイアナとナタリーの母子関係に、藤圭子さんと宇多田ひかるさんを連想してしまいました。
自分の身近でも、まさに実際似たような体験をした時期もあるし、まさにネクスト・トウ・ノーマル!
人間十人十色、誰の人生を基準にするかで、幸福観も、価値観も、正常異常の判断も、人それぞれ。
この家族は、100%のハッピーエンドではないにしろ、不完全融和的なハッピーエンドを迎えたかに見えました。
訳詞が字余りで、皆さん歌いにくそうでしたが、作品の魅力は十分伝わる舞台でした。
セットの構造上、後部座席の方が見易いのではないかと思います。
かもめ
シス・カンパニー
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2013/09/04 (水) ~ 2013/09/28 (土)公演終了
満足度★★★★
「私は女優」対決?
ニ―ナ役の蒼井さんと、トレープレフの母親役の大竹しのぶさんとの、一騎打ち感覚の観る楽しみがありました。
個人的感想では、蒼井さんに軍配かな?
大竹さんは、以前、チェーホフの妻を演じたことがあるので、どうもそういう視点で、アルカージナの役作りをなさったのではと思いました。
以前、拝見した、Kさん演出の「かもめ」とは比較しようもないほど、喜劇としての面白さには満ちていました。
ただ、大竹さんの役作りには、少しやり過ぎ感があったのと、萬斎さんの演技意図があまり理解できず、戸惑った部分もあります。
生田とう真さんのトレープレフが、清廉な美しさで、青年の戸惑いを誠実に再現されていて、大変好感が持てました。若い頃、夢中になって読んだロシア文学の作中の青年が目の前にいるような錯覚を覚え、清々しい気持ちになりました。
ケラさんの演出では、トレープレフと母親の関係が、「ハムレット」のように描かれ、マザコン的な印象もありました。そのせいか、いつか、生田さんの演じる「ハムレット」を是非拝見したくなりました。
真田十勇士
TBS
赤坂ACTシアター(東京都)
2013/08/30 (金) ~ 2013/09/16 (月)公演終了
満足度★★★★★
最高の高揚感で楽日を満喫
台風の中、半年以上も心待ちした舞台故、何も躊躇せず、行ってまいりました。
神のご加護か、往復とも雨には降られず。
キャストも、装置も、見せ方も素晴らしく、大満足!!
台風だと言うのに、満場の客席からは、何度も本気のスタンディングコールが…。
何人か、知らない役者さんもいらしたので、クオリテイを心配したりもしたのですが、全くの杞憂で、私の認識不足でした。特に、倉科カナさんの2変化振りには感服しました。
十勇士それぞれを同じ配分で描くことはせず、必要最小限の登場人物に絞ったのも賢明でした。
馬木也さんファンとしては、十勇士にキャスティングされたら尚嬉しかったのですが…。
それにしても、猿飛佐助の命名理由の説明には、ある意味、驚き!
とてもまことしやかで、信じてしまいそうですが、作り話ですよね?
犬、だれる
劇団HOBO
サンモールスタジオ(東京都)
2013/09/10 (火) ~ 2013/09/16 (月)公演終了
満足度★★★
小林さやかさん快演
HOBOは、おかやまはじめさんのファンなので、観始めた劇団です。
皆さん、実力ある俳優さんばかり。
だから、つい安心して観てしまうのですが、これだけ達者な役者さんが揃っているのだから、たまには、劇作はプロに任せた方が更に面白い舞台になりそうな気がします。
役者と演出のおかやまさんは満点ですが、劇作には、どうもスパイスが不足している気がして…。
今回、一番気に入ったのは、時男さんと直子さんでした。直子役の小林さんは、青年座の中でもとりわけ好きな女優さんですが、演技してるのを感じさせない、それでいて、抜群の計算され尽くした役作りぶりに、いつも脱帽します。
松本紀保さんの寝顔が美しいことも、新たな発見でした。
『ジャンヌ』 ―ノーベル賞作家が暴く 聖女ジャンヌ・ダルクの真実―
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2013/09/05 (木) ~ 2013/09/24 (火)公演終了
満足度★★★
シニカルなジャンヌ・ダルク劇
社会主義者のバーナード・ショーの原作だからか、ジャンヌに対して、それ程好意的な気持ちは抱いていないようなキャラクター設定でした。
カトリックに対しても、プロテスタントに対しても、ナショナリズムに関しても、皮肉めいた台詞が随所に散りばめられています。
ですから、ジャンヌの役作りは、あれで正解かもしれないのですが、それにしても、もう少し、人たらし的な、魅力があっても良かったような気がします。
聖女ジャンヌなんだから、やはり、オーラのようなものは不可欠ではと感じました。舞台の空気を変える力が、まだ笹本さんには感じられませんでした。
何度も、台詞をつっかえて、言い直したりしているのは、どうも、この役には馴染まない。松たかこさんの「ひばり」の完璧さとつい比べてしまいました。
ショーの描き方がどうであれ、歴史上、フランス軍を率いたジャンヌの功績は事実だったのでしょうから、もう少し、特別な少女感があればと感じました。
一方、伊礼さんのデュノアの登場は、一瞬にして、舞台の空気を変え、やはり彼の舞台での存在感は圧倒的だと感じました。
演出の鵜山さんと、芸術監督の萬斎さんのアフタートークは、もっと、芝居の中身について論じられるのかと期待しましたが、それほどでもなく、肩すかし。わざわざ残って聞く程の内容ではなく、残念でした。
上手に笑えないまさこさん
ペテカン
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2013/09/04 (水) ~ 2013/09/08 (日)公演終了
満足度★★★★★
益々好きになる劇団
長く演劇を観ていると、最初好きでも何度か拝見する内に、手の内が見えたり、個人的に裏切られた思いがしたりで、自然と足が遠のく劇団もあるのですが、ぺテカンは、拝見する度、満足度が大きくなる劇団で、今回の芝居は、とても自分好みで、久しぶりに、笑顔で会場を後にすることができました。
遊び心と優しさに満ちた脚本、お洒落な演出、強靭な役者力で、私にとっては理想形に近いお芝居でした。
19人もの登場人物を配して、ストーリーが散漫にならず、各人に存在価値がある芝居が書ける本田さんの才能に感嘆してしまいます。
結婚式場に打ち合わせに訪れるカップルそれぞれに、親近感が湧き、登場人物全員に愛着を感じてしまいました。
笑って、泣いて、とても素敵な舞台でした。
ただ、お父さんは、ラサールさん以上に、適任者がいたのではという気もしました。
兄帰る
ニ兎社
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2013/08/03 (土) ~ 2013/09/01 (日)公演終了
満足度★★★
これで、岸田賞は意外
永井愛さんは大好きな劇作家であり演出家です。
永井作品に、何度も感激を頂いた身としては、この作品にも、感動を頂いたと錯覚しようとする自分もいたのですが、やはり無理でした。
途中までは、面白く拝見しました。ですが、正春の登場あたりから、時計が気になり出しました。
あー、これは、永井さん、シチュエーションアイディアに重きを置き過ぎて、人間描写がおざなりになっていると感じました。
全体を通して、手際の悪い脚本の粗が目立ち、居心地が悪くなりました。
結局はそういうことなのねとわかるまでの、枝葉末節、装飾を施し過ぎた、引っ張りすぎの脚本に、冗満さを感じて、後半退屈でした。
20分は、余計な部分があったように感じます。
素敵なセンスのインテリアは、芝居の中身とも関係する、重要な舞台セットですが、部屋の奥に見える植木の置いてある窓の外の景色が、マンションのベランダ風で、そこから庭に続くという設定なんでしょうが、どうしても、家族以外の人達が羨んで話題にする、百日紅の咲く一戸建ての庭は想像出来かねました。
役者さんは、どなたも、気持良い好演です。ただ、皆さん、演出に忠実過ぎたきらいもあります。御自身で、役の気持ちを掘り下げて下さる役者さんがいらしたら、もっと深みのある舞台になった気もします。
10 MILLION MILES テン・ミリオン・マイルズ
サンライズプロモーション東京
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2013/08/24 (土) ~ 2013/09/01 (日)公演終了
満足度★★★★
この値段は罪
このチラシを目にした時から、素敵な作品だろうと予感して、観たいと思いながら、やはり、国立の小劇場での公演にしては、べらぼうな値段で、二の足を踏んでいましたが、幸いカンフェテイで、割引チケットが買えたので、行ってきました。
素敵な味わいのある、ミュージカルでした。
何役もこなされる、土居さんと戸井さんのご活躍が光ります。
貴城さんは、チャーミングで、美しく、魅力的。
岡田さんも、相変わらず、普通の人のリアルな存在感を体現されて、素敵。
でも、岡田さん、数年前から、台詞が不明瞭なのはネックです。特に、語尾は、ほとんど聞き取れないので、想像しつつ拝見します。これが、ちょっと、観劇に疲労をもたらすので、困りものでした。
『iSAMU』 20世紀を生きた芸術家 イサム・ノグチをめぐる3つの物語
KAAT神奈川芸術劇場
PARCO劇場(東京都)
2013/08/21 (水) ~ 2013/08/27 (火)公演終了
満足度★★★
前衛的な美しい、夢を見た気分
イサムノグチの作品は、感じることはできても、あまり理解し得たと思ったことはありません。
どんな人物だったのかも、よくわからない印象。
そういう、不可思議な人物を、窪塚さんが、体現される様子が、小気味よい舞台作品でした。
日本の古式ゆかしさを大事にする彼の考え方に、そんなもの、とっくに消え失せたこの国の人間として、辛い戦慄めいた思いが、何度も心をよぎりました。
村上春樹の作品を舞台化したような非現実的なシーンと、昔の、日比谷芸術座で上演したような東宝現代劇チックなシーンとが、ないまぜになった、一種アンシンメトリーな舞台空間でしたが、それが不思議とアンバランスでもなくて、何だか曰く言い難い観劇体験をさせて頂きました。
視覚的に、妙に心に残る美しい舞台でした。
ミュージカル「ハロー・ドーリー!」
(公財)富山市民文化事業団
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2013/08/23 (金) ~ 2013/08/25 (日)公演終了
満足度★★★★★
念願成就に感無量!
「ハロー・ドーリー」は、私にとって、最初に観た壮大なスケールのミュージカル映画でした。
ニューヨークの広い通りの、パレードのシーンや、ダンスシーンを観た時の興奮は、未だに、はっきりと覚えています。
その当時から、いつかこれを舞台でも観たいと、ずっと切望して過ごして来ました。
それが、やっと、それも、想像以上のクオリテイ高い舞台をこの目で観ることができて、感無量でした。
レストランのシーンの、アンサンブルの皆さんのダンスが心底楽しくて、できれば、もう一度観たいと思ったのですが、楽日で、叶わず。
どうか、近い将来、再演してもらえたらと切に願います。
キャスト、スタッフ、一丸となって、この舞台を成功させようとする気がいと熱意が感じられて、本当に、観ていて、胸が熱くなるステージでした。
ただ、欲を言えば、もう少し、開幕前のオーケストラの皆さんのチューニングの騒音は、何とかならないものかしらと感じました。
東宝のミュージカルとかでは感じたことのない、やや耐えがたい騒音でしたので。
ART
関西テレビ放送
東京グローブ座(東京都)
2013/08/17 (土) ~ 2013/08/25 (日)公演終了
満足度★★★★
初演の感動には遠く及ばず
ヤスミナ・レザのこの戯曲は、友人関係の真実の姿をあぶり出した、実に秀逸極まりない作品なので、もちろん、一定水準は楽々超える力を持っています。
演技者を目指す、男性俳優さんには、是非テキストにして頂きたい本です。
シチュエーションにばかり拘る、劇作家にもお手本にして頂きたい、戯曲です。
今回の男優3名も、実力のある若手俳優ばかりで、舞台作品として、かなり上出来な作品に仕上がっていたのですが、初演メンバーの舞台に比べると、どうしても、軽い印象を受けました。
他愛ないことから口喧嘩になる友人同士の関係に、他人ごと気取りで笑って観ている内に、自らの深層心理を抉りだされたような衝撃を受けた初演舞台の感動には、残念ながら、遠く及ばなかった気がします。
特に、イワン役の平田満さんの名演は、今でも、目に焼き付いていますので…。