『ジャンヌ』 ―ノーベル賞作家が暴く 聖女ジャンヌ・ダルクの真実― 公演情報 世田谷パブリックシアター「『ジャンヌ』 ―ノーベル賞作家が暴く 聖女ジャンヌ・ダルクの真実―」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    シニカルなジャンヌ・ダルク劇
    社会主義者のバーナード・ショーの原作だからか、ジャンヌに対して、それ程好意的な気持ちは抱いていないようなキャラクター設定でした。

    カトリックに対しても、プロテスタントに対しても、ナショナリズムに関しても、皮肉めいた台詞が随所に散りばめられています。

    ですから、ジャンヌの役作りは、あれで正解かもしれないのですが、それにしても、もう少し、人たらし的な、魅力があっても良かったような気がします。

    聖女ジャンヌなんだから、やはり、オーラのようなものは不可欠ではと感じました。舞台の空気を変える力が、まだ笹本さんには感じられませんでした。

    何度も、台詞をつっかえて、言い直したりしているのは、どうも、この役には馴染まない。松たかこさんの「ひばり」の完璧さとつい比べてしまいました。

    ショーの描き方がどうであれ、歴史上、フランス軍を率いたジャンヌの功績は事実だったのでしょうから、もう少し、特別な少女感があればと感じました。

    一方、伊礼さんのデュノアの登場は、一瞬にして、舞台の空気を変え、やはり彼の舞台での存在感は圧倒的だと感じました。

    演出の鵜山さんと、芸術監督の萬斎さんのアフタートークは、もっと、芝居の中身について論じられるのかと期待しましたが、それほどでもなく、肩すかし。わざわざ残って聞く程の内容ではなく、残念でした。

    ネタバレBOX

    今井さんのウ゛ォリック伯爵と村井さんのフランス司教が、ジャンヌの扱いを論じる場面が、あまりにも、台詞劇としての体裁が長過ぎて、眠くなりました。

    ジャンヌをヒロインとして描くのではなく、あくまでも、彼女は、ストーリー上の道化のような存在で、主役ではなく、モチーフに過ぎないのでしょう。ショーが描こうとしたのは、宗教とナショナリズムの対立、人間社会の仕組みの不条理などなのだろうと感じ、そういう人間のき弁めいた行為を揶揄して描いたのだと思いました。

    火刑になったことで、その日から、永遠の命を与えられたジャンヌ。彼女は、台詞の中で、何度も、傲慢だとか、宗教に恋してるだけとか、戦争に恋してるとか言われます。実際のジャンヌは、政治や宗教に、言いように利用されただけだったのかもしれませんが、処刑されたことで、後年、聖女と崇められて行くのだから、皮肉なものです。

    「ひばり」でも思いましたが、宗教家や政治家のき弁には、いつも呆れつつ感心します。これは、古今東西、同じですね。一般庶民は、騙されないように、頭脳明晰にならないと、ジャンヌのように危険な目に遭いますね。

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    2013/09/10 23:43

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