満足度★★★
唄ってもいいよ、笹本。
ジャンヌにつきものの
「神の声を聞く」「オルレアンの戦闘」「戴冠式」「幽閉」「火刑」
といった場面は直接は描かれない。
だから、これらを期待する方にはお奨めできない。
そのかわりジャンヌに関わる様々な人の思惑が語られる場面が多い
これがかなり長く、その膨大な台詞には正直ちょっとツラかった
ってか寝てたたぶん
宗教裁判の場面は、心理戦であることが強調され、
結局は自ら火刑の道を選択せざるを得ないという
過程をとても丁寧に描かれていたのが興味深かった
最終的な罪は「男装」、これが“異端”であるという証だと
死刑執行人まで法廷に呼び寄せ処刑の恐怖を
徹底的に刷り込むという手段
一旦は宣誓書のサインをし火刑を免れるものの、
それが終身禁固刑であることを知らされ、
あくまでも釈放を主張するジャンヌが激情の赴くまま火刑の方がまだまし、
と誘導されてしまったのだ
長きにわたる幽閉、男装は監視のイギリス軍の兵士たちの目から
身を守る為のもの、幾度の拷問、繰り返される尋問
そして法廷での巧妙で冷酷な審議
どうあれ、初めからシナリオは決まっていた
それを二転三転、恐怖と安堵を弄ばれ、
混乱と混沌の内に平常心を奪い
普通の人間ならとっくに参ってるだろう
でもジャンヌは良く頑張った
そしてもう疲れた、そう思ったのではないだろうか正直のところ
これは現代でも法廷で良く使われるテクニックである
そして、エピローグ。
いままでこんなジャンヌの物語はお目にかかったことがないくらい
斬新で大胆なものだった。
まさか時空をも超える大団円になるとは想像すらつかなかった。
ラストシーンでライトがだんだん絞られていき、
スポットライトだけになった時
唄うか?笹本。って本気で思った
さすがにミュージカルではないので
でもあの退屈な時間を耐えたからこそ、
この何とも言えぬ感覚を味わうことができた。
唄ってもいいよ、そう思った
ジャンヌが火あぶりにされ、
聖女でも魔女でもなくただの女性なのだという証を群衆に誇示する為、
処刑中に女性器を晒されたという逸話がある。
ジャンヌに関わった人々は、
それで終わりだったかもしれないけど、
ジャンヌにとってはそれが始まりだったということがとても心に残った。
ジャンヌに向けられた印象的な台詞を二つ
「君は宗教に恋してるんじゃないのかい?」
「君は戦争に恋してるんじゃないのかい?」
7時開演で終演は10時10分
ジャンヌに少しでも興味があるなら見て損はない。
満足度★★★
聖女ジャンヌの英雄的活躍ではなく、その存在をめぐる周辺の人々の困惑、動揺、詭弁…宗教裁判と死後に比重がある。
もうおなじみジャンヌ・ダルクの物語。
ここ数年の舞台でも、毎年のように登場するジャンヌ。
その英雄的活躍を描くわけではなく、
彼女が周辺を巻き込んで、その登場を利用する者、
活躍に困惑する者、自分の地位を守らんとする者など、
政治、宗教、関わる人々の思惑を描く。
特に宗教裁判で、公正を規そうとする流れと、
片や感情的な攻撃、あくまでも理論的に進めようと
したり、形式的で空虚な結論が見えたりと、
駆け引きが錯綜する部分が興味深い。
これに加えて、火刑の後、夢幻の世界で
各人物が再登場し、本音と愚痴を交し合う。
このシーンは、これまでとは打って変わって、
意図的に陳腐な会話が続く。
作者は、もう絶対に、裁判とこのシーンが
特に描きたかったのであろうということは明白。
観ているこちらも急に突き放されたようで白けてしまう。
そこまで意図されたであろうとおりに。
満足度★★★★
聖女にも狂女にも見えるジャンヌ
美術、照明、衣装等のスタッフワークの厚みを堪能。はぁ~ゴージャスなお芝居観た!って気分♪新国立劇場「ヘンリー六世」「リチャード三世」もそうだったけど鵜山仁さんの布の使い方はかっこいい。重厚な歴史劇からぶっ飛んだファンタジーになって仰天(笑)。
1923年に書かれた戯曲なのに、宗教裁判の場面の“茶番”っぷりは今の日本そのものと思った。笹本玲奈さん演じるジャンヌは聖女にも狂女にも見えるのが良い。フランス王シャルル役の浅野雅博さんがさすがのコミックリリーフ。
満足度★★★
会話劇
アイロニカルです。感動を求めると肩透かしを喰う。すかした雰囲気の中からなにを掴み取るかですね。ポストトークで「宝探し」という言葉が出てきましたが、よく言えば宝探し、悪く行けば手探りなのでしょう。12日目の公演を観ましたが、まだまだ手探りの途中といった具合か。
満足度★★★
賛否両論ありそうですね
笹本玲奈さんはミュージカルでしか拝見し事がなく、ポスターを見かけた時、これまで演じてこられた役とは全くイメージが違う気がしました。彼女にとっても挑戦だったのではないでしょうか。
戯曲と言う事で非常にあの時代が風刺画的に、宗教と政治や強さと弱さなどが絡み合って、その間にいるジャンヌがどういう人物だったのか?問いかけられている感じを受けました。あえてジャンヌの強いイメージを残さなかったのは、よかったのかもしれません。
途中間延びする場面もありましたが、伊礼彼方さんがグッと締めて下さる演技で魅力的でした。
何度か観ると良いと思える作品になりそうな予感。
満足度★★★
作家のシニカルな視線
ジャンヌ・ダルクの生涯、そして死後の彼女に対する評価を描いた物語で、サブタイトルの「ノーベル賞作家が暴く聖女ジャンヌ・ダルクの真実」は大袈裟でしたが、単なる歴史劇に終わらないラストが興味深い作品でした。
シーン毎に左右の大きな壁を移動させて空間を変化させつつ、史実通りにストーリーが展開し、ジャンヌが裁判で異端者とされ火刑台に掛けられて死ぬまでが描かれていました。そこまでは史実に則っていたのですが、ジャンヌの処刑から25年経った復権裁判が行われた時代に飛んでファンタジー的な展開となり、さらに20世紀の人物も登場して、それまで地味目だった演出も遊び心が感じられるものとなったのが印象的でした。ジャンヌを含めた登場人物達に対するシニカルな視線が、いかにもバーナード・ショーらしかったです。
ほとんど動きの無い、イギリスの伯爵とフランスの司教の対話シーンがかなり長かったり、ジャンヌの処刑シーンは描かれていなかったりと、シーン毎の時間配分のバランスが良くないと思いました。
ジャンヌ役の笹本玲奈さんは、声や表情の演技は良かったのですが、元々の戯曲上の描き方がそうなのか、キャラクターの造形にあまり魅力を感じませんでした。
ジャンヌ以外の登場人物は全て男性で、ベテラン勢のシリアスな台詞の応酬に見応えがあり、所々で見せるユーモラスな演技も楽しかったです。
転換の時に流れるピアノ曲以外にはほとんど音楽が用いられず、音楽に頼った雰囲気作りをしていないのが良かったです。衣装は時代考証的には正確ではないものだとは思いますが、重厚な雰囲気があって格好良かったです。
満足度★★★
シニカルなジャンヌ・ダルク劇
社会主義者のバーナード・ショーの原作だからか、ジャンヌに対して、それ程好意的な気持ちは抱いていないようなキャラクター設定でした。
カトリックに対しても、プロテスタントに対しても、ナショナリズムに関しても、皮肉めいた台詞が随所に散りばめられています。
ですから、ジャンヌの役作りは、あれで正解かもしれないのですが、それにしても、もう少し、人たらし的な、魅力があっても良かったような気がします。
聖女ジャンヌなんだから、やはり、オーラのようなものは不可欠ではと感じました。舞台の空気を変える力が、まだ笹本さんには感じられませんでした。
何度も、台詞をつっかえて、言い直したりしているのは、どうも、この役には馴染まない。松たかこさんの「ひばり」の完璧さとつい比べてしまいました。
ショーの描き方がどうであれ、歴史上、フランス軍を率いたジャンヌの功績は事実だったのでしょうから、もう少し、特別な少女感があればと感じました。
一方、伊礼さんのデュノアの登場は、一瞬にして、舞台の空気を変え、やはり彼の舞台での存在感は圧倒的だと感じました。
演出の鵜山さんと、芸術監督の萬斎さんのアフタートークは、もっと、芝居の中身について論じられるのかと期待しましたが、それほどでもなく、肩すかし。わざわざ残って聞く程の内容ではなく、残念でした。