
M.O.S.ヤングタウン
かるがも団地
SPACE EDGE(東京都)
2023/06/15 (木) ~ 2023/06/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
M.O.S.とは南大沢の略なのだろう。地元の馬鹿中学に入った主人公。馴染めなかった親友は不登校に。財力のある家に生まれた生徒会長が好き放題で学校を牛耳る。それに楯突いた兄は生徒会長に立候補する。そんな日々の中、学校では夜の放火騒ぎが起きていく。
主演の瀧口さくらさんが上戸彩に見えた。
その親友、樋口双葉さんは有村架純に見えた。
トンパチの主人公の兄、奥山樹生(いつき)氏は菊野克紀を思わせる。
主人公の母親、ラーメン屋店主、無線部などのキツいキャラばかり兼任するのは長井健一氏。流石に上手い。
中嶋千歩さんはバドミントン部の女なのだが妙に印象に残る。キャラの書き込みが多いだけに勿体無くもある。
ヒールの生徒会長・浦田かもめさんは奥菜恵に見えた。
大学生の北川雅さんは蒼井優に見えた。
大学生や校長の小日向春平氏は宮台真司っぽい。
Oasisの『Half The World Away』が似合うと思う。

R.P.G. ロール・プレーイング・ゲーム
ワンツーワークス
赤坂RED/THEATER(東京都)
2023/06/09 (金) ~ 2023/06/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
ワンツーワークスを観るのは今回で9本目。印象に残るのは『グロリア』、『鯨を捕る』、『私は世界』。
宮部みゆきは初期は読んでいたが、何かぬるくてハマれなかった。大林宣彦が映画化したのを観た『理由』だけが好印象。
今回も掴みは面白い。二つの家庭で二重生活を送る男(長田典之氏)。妻(みょんふぁさん)と娘(東史子さん)と息子(安森尚氏)、もう一つの妻(小林桃子さん)と娘(川畑光瑠さん)。彼がある日惨殺される。警察は娘(川畑光瑠さん)を取調室の隣の小部屋に呼び、マジックミラー越しにもう一つの家族と面通しさせる。
自分はみょんふぁさんのファンであることに気が付いた。
綾城愛里奈(えりな)さんが不快な馬鹿女を好演。

ホテル・ミラクルThe Final
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2023/06/08 (木) ~ 2023/06/20 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
【STAY Ver.】
どすけべ前説 「ホンバンの前に」 寺園七海さん 今井未定さん
①「THE WORLD IS YONCHAN's」 河西凜氏 森下凜央(りお)さん
②「噛痕と飛べ」 今井未定さん 秋山拓海氏 寺園七海さん
③「愛(がない)と平和 -Bagism by Love&Peace.-」 岡村梨加さん 藤本康平氏
〈5分休憩〉
④「スーパーアニマル」 金田一央紀氏 小練(こねり)ネコさん
⑤「最後の奇蹟 最終形」 環幸乃さん 坂本七秋氏
①チェリ男こと河西凜氏は全世界のもてない童貞男の象徴とも言うべきピープルズ・チャンピオン。この役をやる為にこの世に生を受けたのでは。ヨンちゃんこと森下凜央さんは凄かった。こりゃ人気ある訳だ。童貞男のパンパンに膨れ上がったエロ妄想が具現化したようなルックス。今作を世界中の(精神的)童貞男に捧ぐ。面白かった。
④最高傑作。金田一央紀氏が全作品の中の間違いなくMVP。この作家は天才だ。現代の“あしながおじさん”の織り成す街角のささやかなメルヘン。都会でささくれだった心を潤してくれるようなひとときの安らぎ。小練ネコさんがまた素晴らしい。客席がドッカンドッカン沸いてうねった。凄く文学性も高い。これが観れただけで何の文句もない。
⑤「さようなら、全てのエヴァンゲリオン」ならぬ「さようなら、全てのシアター(ホテル)・ミラクル」。『シン・シアター(ホテル)・ミラクル』のようなラスト。環幸乃さん&坂本七秋氏のキャスティングこそ最期にふさわしい。
帰りには隣の「レイスケバブ」でケバブラップ中辛(500円)を噛じれば満腹。なかなかこれからは行くこともなくなる。

ホテル・ミラクルThe Final
feblaboプロデュース
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2023/06/08 (木) ~ 2023/06/20 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
【REST ver.】
どすけべ前説 「おし問答」 陽向さと子さん 渡邉晃氏
①シェヘラザード 環幸乃さん 今井未定さん 坂本七秋氏
②よるをこめて 陽向さと子さん 新井裕士氏 サラリーマン村松氏
〈5分休憩〉
③きゅうじっぷんさんまんえん 佐神寿歩(ひさほ)さん 木山りおさん
④クリーブランド 寺園七海さん 渡邉晃氏
⑤獣、あるいは、近付くのが早過ぎる 冨岡英香さん 後関貴大氏
シチュエーションがラブホ縛りの短編集。
③佐神寿歩さんと木山りおさんに尽きる。これだけで観る価値は充分ある。若き松坂慶子を思わせる佐神寿歩さんと自己肯定感ゼロのコミュ障・木山りおさんの対決は名勝負。どちらも光り輝きつつ、相手の存在を更に魅力的に高める理想的なプロレス。
寺園七海さんと岡村梨加さんの写真集2000円、ルームキーホルダー1200円、絶賛発売中。
寺園七海さんのTwitterからチケットを予約すると直筆のお手紙が頂けるのでお薦め。

風景
劇団普通
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2023/06/02 (金) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
なんだろ?そうでしょうよ。いいでしょうよ。
悔しくなる程の才能。演劇好きは早目にチェックしておいた方がいい。(まあ皆観てるだろう)。小説を書いても映画を撮っても賞は貰える筈。系譜としては小津安二郎なんだろうけれど、描き方が韓国映画っぽい。『ペパーミント・キャンディー』をホン・サンスが撮ったような。抑制の美学。暗転ごとに時間がかなり飛ぶ。これをやり切る力。
主演の安川まりさんが圧倒的。こんな女優がいたんだ!と驚いたが、結構『た組。』とかで観ていたようだ。彼女と母親(坂倉奈津子さん)、父親(用松〈もちまつ〉亮氏)のシーンが絶品。この遣り取りは永遠に観ていられる。
一歩間違えれば只々退屈の境界線上、断崖絶壁のギリギリの攻防を乗り切るのは役者陣の才覚のみ。
モルタル塗りされた灰色の壁が背後に無言で突っ立っている。
ある家族達が老いていく。子供を作るように親は諭す。

田園に死す
劇団☆A・P・B-Tokyo
あうるすぽっと(東京都)
2023/06/01 (木) ~ 2023/06/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
勿論、全く分からない。
主演の松本旭平氏は『ほおずきの家』で知ったが、かなり彼のファンが詰め掛けたようだ。
寺山修司は母親、寺山ハツとの母子関係をライフワークのように描き続けた。共依存と支配、“母地獄”とさえ称された歪な関係性。母殺し、駆け落ち、家出・・・、実際は47歳で死ぬ迄同居した。母親=自分自身、憎んで憎んでぶっ殺してやろうとしてもどうしても果たせない。自分との関係性。
話は自分の少年時代を美化して舞台化、その上演の途中で本人(浅野伸幸氏)がストップを掛ける。
「こんなのは本当じゃない。皆嘘だ。」
本当の少年時代を語る為に過去に遡行し、少年時代の自分(松本旭平氏)と向き合う。母殺しを果たして未来を変えることが出来るのか?
犬神サーカス団。空気女の元ネタは何なのか?寺山修司のオリジナルなのか?

壊れた風景
劇団かに座
スタジオ「HIKARI」(神奈川県)
2023/06/02 (金) ~ 2023/06/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
台風で大雨警報の中、びしょ濡れになりながら集う人達。しかも別役実の不条理劇。
鳴海悦子さんと浅川こころさんの母娘が山の散策の途中、道に迷う。地図と実際の風景がどうも合わない。自転車を置いて軽い口論。そこにはピクニック用のレジャーシートが広げられ、ピクニックテーブルの周りにはありとあらゆる食材が用意されている。ポータブルレコードプレイヤーからは掛けっ放しの明るいクラシックが流され、今にも楽しい食事が始まりそうな様子。だが、誰もいない。
そのうちレコードは針飛びを起こし、同じ部分を無限にリピートし始める。イライライライラする不快感。和服姿の鳴海悦子さんはそれが気になってしょうがない。
そこにトランク一つで通り掛かるのは薬売りの三上和之氏、駅に向かっている。何十年も通った道だから間違える訳がないと地図を手に取り、現在位置を教えようとするもどうもおかしい。更に大会途中で道に迷ったマラソンランナーの村上達哉氏も現れ、喧々諤々の会話が延々と続く。いや、そもそもその地図がおかしいんじゃないか?と思いつつ。
永遠に続くような何とも言えない不毛な遣り取りは、第二幕から登場する夫婦(馬場大希氏と大谷友子さん)によって更なる加速を見、狂乱の宴の果てへと。

ココノイエノシュジンハビョウキデス
日本のラジオ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2023/05/31 (水) ~ 2023/06/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
[犬組]
作家に何か見覚えがあったが『ザ・フラジャイル/ライト』の人だった。
日野あかりさんを久し振りに観たが、こんなに美人だったか?と驚く程綺麗だった。(役柄もあると思う)。
箱馬で作った書棚に並んだ古書、日本人の文学全集が多い。
神経質そうな店主(宮崎雄真氏)、その弟(神山慎太郎氏)、目の悪い妻(日野あかりさん)、訪れる客(澤原剛生〈ごうき〉氏)。江戸川乱歩のような美しい文体で紡がれる物語。
萩原朔太郎のオノマトペを効果的に使用。
例えば、『猫』という短い詩。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
『おわああ、ここの家の主人は病気です』
深夜の屋根の上、二匹の猫の会話の内容が自分のことを話しているように聴こえてくる萩原朔太郎。強迫性障害とアンビバレンス(両価感情)に長い間苦しめられた。
のをあある とをあある のをあある やわああ (犬の遠吠え)
とをてくう、とをるもう、とをるもう。 (鶏)
文学的な上品な会話の中に突如組み込まれるオノマトペの不安感。
澤原剛生氏は岡崎体育に似て、発達障害っぽい不自然さ。
何か増村保造っぽいな。日野あかりさんが若尾文子に見えてきた。
好きな人には堪らなく好きな世界。

海の木馬
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/05/30 (火) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
号泣した。ほぼチケット完売らしいので、観客にとってこの劇団の評価はもう間違いないのだろう。それでも何とか観て欲しい。
主演の小野武彦氏(80歳!)の物凄さ。何かしらの賞を設けないと申し訳ない程の存在感。このキャスティングで今作の重厚感は保証済み。
戦後78年、気持ち悪くなる位現在の空気感とリンクしていく昔話。何度も何度も嫌になる程聞かされてきた太平洋戦争の話なのにそれでも涙した。岡本喜八に『肉弾』のように撮らせたいネタ。小野武彦氏が現在の姿そのまま、青年時代の回想に混じる演出は大林宣彦風味。これが効いている。吉田知生(ともき)氏、前澤亮氏、藤澤壮嗣(そうし)氏と共に一瞬の光芒をまたたかせてみせる。高知県の静かで美しい海辺の旅館にお世話になる特攻隊員達と住民の仄かな交流。
美術の塵芥(東憲司)氏の流石の舞台美術。会場に入れば水色の紐やビニールが中空に無数に張り巡らされている。幾何学模様の青いラインアート、海底から見上げた空のような鮮烈な美しさ。そして天井から砂時計のように一筋に降り積もる砂。
すぐ舞台上に出演する役者達がギリギリまで普通にチケットを受け付け、場内を案内している物凄さ。オンオフの切り替えがプロフェッショナル。衝撃のラスト、カーテンコールが終わるとすぐにスタッフに戻る姿に震えた。化け物か。
増田薫さんが印象的。いろんな年代の人達でバラエティに富んでいた方が共同体の厚みが出る。
ヒロインは大手忍さん。特高に拷問され、足をちんばにされてびっこを引く少女。
勤労奉仕隊隊長に任命された石村みかさんも映える。
何と言っても焼酎おばちゃんのもりちえさんは強キャラ。常に自家醸造した強烈な焼酎を飲ませたがる。
子供の頃、戦争についての教育を延々受けて、悪いのは指導者だ、軍部だ、無知な民衆だ、なんて思っていたがどうやら違うらしい。誰にもどうにも出来ない時代の流れ。訳が分からぬまま放り込まれて、訳が分からぬまま死んでいく。(周囲に合わせて必死に分かった振りはするが)。生き延びた今も、本当に訳が分からぬままの小野武彦氏。死んだ奴等が亡霊となって纏わりつく。只々訳が分からない、それこそが人生。

ブレーメンの音楽隊
公益財団法人武蔵野文化事業団 吉祥寺シアター
吉祥寺シアター(東京都)
2023/05/27 (土) ~ 2023/05/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
何で今作のチケットを買ったのか思い出せなかった。開演前、舞台上で子供を楽しませる猫の扮装の女優が百花亜希さんであることに気が付いて腑に落ちた。百花亜希さんが元気そうで良かった。
メインの曲がイマイチで残念。演奏・作曲の岡町ぶうぶう氏の力不足か?
そもそもグリム童話の原作も訳が分からない作品。更に元の話があるのか?
ナレーターとメンドリ(原作では雄鶏)の平佐喜子さんが奮闘。
イヌは小林至氏。車だん吉っぽい。
ロバは松村武氏。悪党面。
ネコは百花亜希さん。子供向けじゃないキャラ設定。
皆何役も兼ねる為、所々フラフープを配した透けるパイプ状の4つの更衣所で早着替え。跳箱やケンケンパリングなど小学校から借りてきたものを小道具に。
老いぼれて処分される動物達が生きる為に逃げ出してブレーメンへと向かう。ブレーメンに行けば音楽隊として食べていけるという妄想。結局、ブレーメンまで辿り着けないのだが、泥棒のアジトを占拠してそこで暮らすことに。脅かす場面は影絵を使うべきだった。

人魂を届けに
イキウメ
シアタートラム(東京都)
2023/05/16 (火) ~ 2023/06/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
正直、自分はこの作家を過小評価していた。今作でやっと思い知る。こんな脚本、他に一体誰が書ける?とんでもない才能に興奮。ラストの着地点なんかに不満は湧くが、それにしても参った。この令和のふざけた時代、安居酒屋で膝詰めでドストエフスキー本人から語り掛けられるような夜。ベロンベロンに酔わされた帰り道。とにかく上手く言い表せないが、こんな作品を世界は欲している。
今作に一番近い作品は黒沢清の『カリスマ』だろう。“カリスマ”と呼ばれる一本の樹を巡る顛末で天皇制と日本社会を戯画化してみせた。もし今作を黒沢清が撮ることがあるならばモノクロでやって欲しい。役所広司の一人芝居でも良い。出来ればタルコフスキーに巨額な資金を提供して、『ストーカー』のように撮って貰いたい。一切の説明を排して。全く訳が分からないが皆平伏すような映画になる筈。
この世界のルールは人の数だけそれぞれに存在する。他人の解決法を幾ら熱心に学んでも、実は何にもならない。自分の世界の解決法を見付けることができるのは自分自身だけなのだから。
皆の“お母さん”である森のキャッチャー〈捕える人〉、山鳥さんこと篠井(ささい)英介氏が満場一致のMVP。美輪明宏のヴォイス、草笛光子のような表情、加藤登紀子のような強さ。彼を観る為だけに足を運ぶ価値はある。必見。
開演してすぐ地震があったのが残念、そこは集中できなかった。
「寒い、寂しい、お母さん・・・。」

マミーブルー
劇団Q+
萬劇場(東京都)
2023/05/24 (水) ~ 2023/05/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
開演前SEはデヴィッド・ボウイのラスト・アルバム『ブラックスター』。この時点で観客の気分はかなり出来上がっていく。客席中央通路を大胆に使う構成。萬劇場はとても観易い。
小さな白い和傘を差した真白な衣服の主人公、柳本璃音さんが静かに海から現れる。衣装・ヘアメイクデザインも彼女。これがずば抜けたセンスで圧倒される。
「水に全ての記憶は溶けていく。まるで海は過去も未来も全ての想いが溶け込んだスープのよう。想い出せ。かつてか、遥か未来にか、己が刻んだ情念の記憶を。決して忘れることはない、と深く刻み付けたあの日の思いを。」(意訳)
オープニングは寺山修司の散文詩の感覚、凄くお洒落でポップなアングラ。
現れた人魚達の幻妖的な美しさ。顔の一部に鱗のようなメイクや模様。
雨が降り続く海辺の村、子供達は人魚の目撃談を聞いて集まる。これがまた琉装(ウチナースガイ)を思わせる色きらびやかな出で立ち。すると防波堤の先から本当に人魚達が現れる。逃げ出す子供達。一人、逃げ遅れた凪(柳本璃音さん)が目にしたのは遠い昔に海で亡くなった母(小夜子さん)の姿。人魚の尼御前(あまごぜ)〈中村容子さん〉は、とある警告を発す。
凪の友人役の佳乃香澄さんが印象に残る。友人役の宮越虹海(ななみ)さんのインパクトのある化粧。同じく友人役の加村啓(ひろ)氏は関東連合の柴田大輔を思わせる凶悪な風貌。
寂れた村に転機が訪れる。山高帽に襟無しの白いチャイナ服の上下、赤い長靴にヒヨコ色のフェザー・コート、虹色のパラソルというふざけた格好の男が突然現れる。小日向文世の志村けん風味、イエロー山口(史歩〈ふみ〉氏)だ。彼が持ち掛けるある提案。
この劇団、独特のオリジナリティの妙味。ステレオタイプな物語をイメージしていると、そうはいかない。凄い好きなセンス。ヴィジュアル・イメージが斬新で突き刺さる。
是非観に行って頂きたい。

宇宙の旅、セミが鳴いて
劇団道学先生
新宿シアタートップス(東京都)
2023/05/17 (水) ~ 2023/05/24 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
面白さは保証付き。演劇好きなら一度は観ておきたい演目。役者の厚みが凄い。只々感心。
未来、地球は食糧難に喘ぎ、宇宙ステーションで栽培した野菜を宇宙船で運搬している。日本の民間企業が運営しているその船内が舞台。もうすぐ地球に到着する頃合い、微妙なトラブルが頻発する。
船長(佐藤正和氏)は調理師(稲葉佳那子さん)にキツく当たる。味の濃さ、メニューのマンネリ、野菜の量・・・、延々と因縁をつけては便所掃除の罰。不条理なハラスメントに船内クルーも呆れる始末。
クルーの数名にアトピーや水虫が発生。チャラい医師(速水映人氏)は「大丈夫大丈夫、気の持ちよう。」と意に介さない。納得がいかない潔癖症の女医(鈴木結里さん)。
野菜生産技術者の三人姉妹(尾身美詞〈みのり〉さん、浅野千鶴さん、月海舞由〈つきみまゆ〉さん)とその弟(川合耀祐〈ようすけ〉氏)。父親に愛されたかった心の空洞を抱えるアダルト・チルドレン、弟への過剰な干渉に繋がるようだ。弟は野菜以外にも隠れて花を育てている。
ナルシシストの操縦士(青木友哉氏)は美形の会計・庶務職員(中村中さん)をひたすら口説き続けている。
エンジニア(本間剛〈つよし〉氏)は神父の資格を持っており、個人的にミサを行ない、心の平安を説こうと努める。
日本人版『インターステラー』の趣き。萩尾望都なのか竹宮惠子なのか少女漫画家目線からの本格SFのよう。何故、蝉はあんなに激しく鳴くのか?木の枝に産み付けられた卵は1年掛けて脱皮し幼虫となり地中に潜る。5年程地中に籠もり、木の根の汁を吸ってじっと生き延びる。夏のある日、樹に上りゆっくりと羽化する。成虫、蝉として数週間飛び回り繁殖行動を遂行。激しく鳴いて死んでいく。本能の赴くままに、DNAのプログラミング通りに。
凄くふざけたコメディで有りつつ、人間という種の本質を語らんともする。どうにも上手く言語化出来ない、否が応にも死を突き付けられないと直視出来ない“生”がある。もしかしたら皆早く死にたかったのかも知れない。
佐藤正和氏は『父と暮せば』の印象が強かったが今回もまた素晴らしい。妙に赤ら顔なのは演出なのか?
稲葉佳那子さんは中村玉緒の若い頃と高橋尚子を足したような和風美人。今作のキャラでは藤田紀子っぽさも思わせる。全く内面が読み取れない。
月海舞由さんは『カムカムバイバイ』のイメージが強烈だった。ラストに泣かせる。
衣装(担当は石川俊一氏)の制服が秀逸。水兵の襟にネクタイの付いたジャージ。黒のスキニーパンツで女性陣の美脚を強調。脚で選んだのか?と思う程皆細かった。スニーカーは韓国のfashionのハイカット、白黒ツートーン。

インバル・ピント『リビングルーム』
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2023/05/19 (金) ~ 2023/05/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
かつてロザムンド・パイク主演の『エンテベ空港の7日間』という映画を観て、イスラエルのコンテンポラリー・ダンスに興味が湧いた。映画では椅子を使ったオハッド・ナハリン氏振付の作品が挿入される。これが妙に記憶に残るもので、映画の内容は忘れてもそのシーンのインパクトだけは未だに残る。十数人の男女がパイプ椅子に腰掛けては立ち上がり繰り返しては踊り続ける。何の意味があるのかないのか、随分面白い世界があることを知った。
イスラエルのインバル・ピントさんの新作公演。サイレント映画の古典的な喜劇を思わせるクラウン・パントマイムからのスタート。過剰な動作の繰り返しからその意図、意味を投げ掛け、観客は個々に妄想して読み解いていく。物凄く単純な動作を使って観客のイマジネーションを刺激してはいざない、いつのまにかに気が付いてみれば随分遠くの見知らぬ地平まで連れて行ってみせる手腕。
主演のモラン・ミュラーさんは人間と人形のハイブリッドのよう。ヨガの行者みたいに鍛え抜かれ研ぎ澄まされた肉体。腕を背中に回す動作はホイラー・グレイシーを思わせる。これ以上削げない程砥いだパーツはブルース・リー。『人間凶器』が真樹日佐夫なら、彼女は『人体表現機械』。本来、人体のパーツはそもそも何の為に備わっているのかを考えさせられる。
居間の壁紙に描かれた樹々のスケッチ、クロッキー画。ミュラーさんの服にも同様の樹々が描かれている。ミュラーさんは爪先と踵を交差する動作だけで壁沿いにスライドしムーヴしてみせる。部屋への違和感、服を脱ぎこの空間に慣れようとするも自分の意思ではどうにも自分の肉体を動かせない。まるで誰かの操り人形のような不具合。ポルターガイストのように椅子は動き出し壁の上部に備え付けられた照明はぐるぐる回転、蚊が飛び回り、ポットは壁に吸い付いて踊り出す。ロマン・ポランスキーの『反撥』のような離人症と強迫神経症のダンス。ワードローブを開くと流れる様々なミュージック。まるで精神は音楽に支配されているよう。
もう一人のダンサーはイタマール・セルッシ氏。コンパクトなワードローブからランプの魔神の如く這い出てくる。その軟体動物のような動きは『ロシアン・ラスト・エンペラー』、エメリヤーエンコ・ヒョードルを思わせる。サンボや獣の回転体の運動、受け身を繰り返す。スキンヘッドに鬚を生やした顔の下半分の印象でストーン・コールド・スティーブ・オースチンっぽくもある。酔った魔神がぐるぐる回転し続けながら重力に馴染もうとしている。舞踏というよりも格闘技だ。
使用される音楽のセンスが良い。マヤ・ベルシツマン氏や阿部海太郎氏。ポスト・トークに登場した阿部海太郎氏は今回初めて知ったが本物っぽい。

綿子はもつれる
劇団た組
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2023/05/17 (水) ~ 2023/05/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
舞台は四分円。豪華なアコーディオン・カーテンが寝室と客間を仕切る。爆竹花火のような、ビニールに叩き付ける豪雨のような効果音の炸裂と共に時空間が切り替わる。
ある壊れた家庭の人間模様、様々な感情に揺れ動くコップの水。自分でもどうしたらいいか誰にも判らないまま、ただ揺れ続けている。
ホテルでは永遠の美少女、安達祐実さんと不倫相手の鈴木勝大(かつひろ)氏。自宅では夫の平原テツ氏、継子の高校生の息子、田村健太郎氏。息子の友達、秋元龍太朗氏と天野はなさん。鈴木勝大氏の妻、佐藤ケイさんも登場。
表現が不器用な平原テツ氏が安達祐実さんのふくらはぎをマッサージするシーンが秀逸。韓国映画っぽい。
二人のイライラする掛け合いは流石。もう定番。
田村健太郎氏の両親とのシーンにおけるチック症が見事。そして対比しての同級生とのシーンの開放感。食ってるものがやたら美味そう。
個人的MVPは天野はなさん。すっぴんの彼女の魅力に溢れている。加藤拓也氏は良い仕事をした。誰もが昔好きだったあの娘のことを胸の鈍い痛みと共に想い出すようなキャラ。第十一回公演『百瀬、こっちを向いて。/小梅が通る』の2本立てのテイスト。こういうものの描き方がずば抜けている。大林宣彦だったかが石田ひかりと吉岡秀隆で綴った初体験の鈍い記憶のシーンを想起。(付き合えずに妄想で終わった方が、らしかった)。
上手く説明出来ないけれど人に勧めたくなる作品。

虹む街の果て
KAAT神奈川芸術劇場
KAAT神奈川芸術劇場・中スタジオ(神奈川県)
2023/05/13 (土) ~ 2023/05/21 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
開演前からずっと廻り続ける2つの乾燥機。役者達が登場して挨拶。マイクを持つのは中華街の有名店『馬さんの店 龍仙』の女主人・馬双喜(マー・ソウキ)さん。北京語で全員を紹介。ステージに吊るされた4つのモニターに日本語字幕が流れる。「彼(彼女)の笑顔に何度も救われました。」と一人ひとりに。パーカッショニストの渡辺庸介氏と小人症の俳優、赤星満氏以外はプロではないようだ。かなり多国籍な陣容。紹介が終わると、皆緑色のツナギの作業着に着替えてそれぞれの立ち位置に着く。
どうやらここはシェアハウスのような建物。
1つの乾燥機が止まり、段ボールのロボット姿の小澤りかさんがストッキングを取り出して干していく。そしてもう1つが止まると、小柄な段ボールのロボット姿の赤星満氏が現れる。これらのロボットのデザインが『猿の軍団』に出てくるチップ(ポップ)と同じレトロ・チープな魅力で凄い好き。
話は有って無いようなもので、皆チルっている。それぞれに見せ場が用意されているが面白いんだか面白くないんだかさっぱり判らない。皆それぞれの言語で好きに喋る。(字幕がフォロー)。
二階で寝ている(?)脚だけ見えた人間が気になった。死体か?
これは観客も皆回して気怠く浸った方が良い。

糸地獄
劇団うつり座
上野ストアハウス(東京都)
2023/05/11 (木) ~ 2023/05/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
滅茶苦茶面白い。押井守『イノセンス』とか、りんたろう『迷宮物語』の感覚。合法ドラッグを決めて集合的無意識、そして自らの深層心理にダイヴ。そこは日本人が共有する戦前田舎の紡績工場のイメージ。親に売られた娘達は昼は糸を紡ぎ、夜は自身の色を紡ぐ。
亀戸にある工場、月のない夜、海から上がって来たずぶ濡れの繭(青木恵さん)は東京湾から上陸して来たようだ。記憶を失くした繭は本能だけで『家』を探す。
天井から垂れ下がった何本もの赤い太縄。糸屋主人の縄(柘植英樹氏)はSMの緊縛師を思わせる佇まい。その太縄と淫靡に絡み合う女達のエロスが噎せ返るように立ち込める。女達が寝話に語るそれぞれの身の上話。梅の花の入墨を入れる梅(yokoさん)が印象に残った。
「さやりひゅう」。淫らな秋風が体を駆け抜けてゆくとき、老いさらばえた皺くちゃの女は自らの肉体に涙ぐむ。「さやりひゅう」。
女性のカルマをリアルに女優達が顕現。この布陣でないと表現出来なかったであろう世界観。
見事な演出、見事な美術、篠本賢一氏にリスペクト。

あたらしい朝
うさぎストライプ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2023/05/03 (水) ~ 2023/05/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
かなり面白い。
清水緑さんと木村巴秋氏の夫婦がピンクの車で山道を走っている。誰も通らないような山奥で『羽田空港』行きのボードを掲げているヒッチハイカーの北川莉那さん、何故か中世のペスト医師の『くちばしマスク』姿。それが可笑しくて何度も何度もUターンしてそこを通る二人。到頭乗せる羽目になる。車の中で盛り上がる話題。何処か遠くへ旅行に行きたい気分。
木村巴秋氏は宮藤官九郎風味のもう中学生。矢鱈ハイテンションで明るい。
清水緑さんは扱いがムズい情緒不安定女子。
北川莉那さんの態度の悪さが笑えた。チュッパチャップス。
デヴィッド・リンチの『ロスト・ハイウェイ』や筒井康隆の『夢の木坂分岐点』を思わせる作風。新婚旅行の思い出や病死した母親と行けなかった旅行。鯖にあたって死んだ男のエピソードの断片や『あいのり』風のラブワゴンでの旅。ベトナムのメコン川、ヴェネツィアの墓地であるサン・ミケーレ島。『地獄の黙示録』のように記憶の川を遡上し、『ベニスに死す』のように耽美的な終焉へと。曖昧な記憶と想像と妄想とが何処までも彷徨い続けていく。つげ義春だよなあ。
途中、哀しみが足りなく感じていたが、一曲の唄で作品を決定付けてみせた。
是非観に行って頂きたい。

雨、晴れる
teamキーチェーン
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/05/03 (水) ~ 2023/05/08 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
『A・P・B-Tokyo』の絶対的ヒロイン、横木安未紗さんが好きだった。寺山修司といえば彼女の印象。今は安未紗名義で活動中。またキャバ嬢か、と思えば今回はまさかの弁護士役。
前作の『朝ぼらけ』のイメージが、善人の織り成す優しさの甘ったるいおとぎ話。ファンタジーとしては有りなのだが、現実から目を背けた作風に拒否感。どうしようもない現実の痛みに打ちのめされた時に握り締めるような強さがない。「みんな良い人だったら良い世界になるのにね」。(自分も含めて)そうじゃないから皆苦しんでいるんだろう。リアルな苦しみを凌駕する強さが欲しい。
だが今作には強度があった。テーマは『性同一性障害』。いろいろと不満はあるが、言わんとしていることはしっかりしている。
元フェアリーズの伊藤萌々香さんが主演。初々しい清純派キャラで応援するファンも多そう。
FtM(フィメール・トゥ・メール)=〈肉体は女性だが自己認識は男性〉を演ずる三澤康平氏がMVP。凄く納得させる役作り。清潔感が圧倒的。
不妊治療に励む森川梢さんは見覚えがあるのにそれが何だか思い出せなかった。
化粧品で成功した女社長役、徳岡明(あかり)さんの台詞が芯を食う。それぞれの美しさに手を伸ばすこと。高い鼻梁。
ガサツな今井裕也氏はどこにでもいそうな存在感。

二次会のひとたち
エイベックス・エンタテインメント
紀伊國屋ホール(東京都)
2023/04/14 (金) ~ 2023/04/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
チャップリンの『ライムライト/テリーのテーマ』がここぞとかかる。この名曲、作曲すらもチャップリン。チャップリンを流されたら反射的に感動するように日本人は幼少時より躾けられている。
セットが見事。吹き抜けの洋館、オープンテラス。大きなカーテンが鍵になる。閉めればスクリーン、映像の投影。開けば開放的で気持ちのいい清々しい空間。調度品もバッチリ。中二階への階段。
美村里江(旧芸名ミムラ)さんが美しい。できる女オーラが半端ない。後半のジャージ姿でこの美貌と気品は宝塚OG並み。皆が使いたくなる気持ちが分かる。
内田理央さんもスラリとしたシルエット。かつて『星の数ほど星に願いを』と云う、ある意味記憶に残る舞台を観たことがある。
東啓介氏は190cmの長身でフルポン村上のようなうざキャラ。誰得なクイズを出し、シンキングタイムでは妙なステップで踊る。
元光GENJIの佐藤アツヒロ氏は初めて観たが、稲垣吾郎みたいに軽妙な俳優になっていた。
さくらももこのような可愛いイラストはカラテカの矢部太郎。『のろい少女』が良い。
巨大なカーテンを上手く利用し、イラストやアニメやシルエットを使って心象風景を表現。ふざけた新郎新婦からのラブラブ動画も。
結婚式の二次会の仕切りを任された、あぶれた初対面の4人。手探りで互いのことを知っていく。
かなり好感度の高いコメディ。