実演鑑賞
満足度★★★★
「キムンウタリOKINAWA1945」
1978年、The Crassは「Punk Is Dead 」と歌い、1981年、The Exploitedは「Punks Not Dead」と返した。
今作はまさに「Punks Not Dead」。もう演劇である必要もない。アイヌと琉球の被差別の歴史から日本を語る。
『ドラゴン怒りの鉄拳』というブルース・リーの名作がある。日本映画にある、耐えに耐えて到頭堪忍袋の緒が切れて・・・の段取りを全部カット。開幕そのままブルース・リーはブチ切れている。Aメロ、Bメロ省略、サビだけというハードコア・パンク。スターリンの『虫』みたいな感じ。今作もそんな荒々しさで叫びまくる。言いたいことが客に伝わらなくちゃ意味ねえんだよ!どんな形になろうが伝えてやる!凄く良い。
『怒りの鉄拳』の「東亜病夫」のように、「琉球、朝鮮、アイヌはお断り」がキャッチーに歌われる。作曲演奏の鈴木光介氏の才能が今作を彩る。
知念正真の戯曲『人類館』をモチーフに物語は綴られる。1903年大阪で起きた「人類館事件」。人間動物園として、各地の土人の暮らしぶりを観客に提供。アイヌ、琉球、台湾生蕃、朝鮮・・・。今作では沖縄戦に投入されたアイヌ人兵士と現地のウチナンチュー(沖縄人)のエピソードを芝居形式で送る見世物。シルクハットにタキシードとマント、鞭を片手に持つサーカス団の団長風の調教師(山下直哉氏)、横に立つアシスタント的な女(伊藤弘子さん)。鞭を鳴らしながら観客に口上をふるい、絶望と地獄の沖縄戦で楽しませてくれる。属国とされた弱い民族は理不尽に支配され服従するしか道はない。しかもアイヌは琉球人にさえ差別された。実話のエピソードが並べられ皆当たり前のように死んでいく。後に残るのは「キムンウタリ(山の同胞)」と刻まれた石碑、南北之塔。
安全圏から高みの見物を決め込む観客に拳銃を向ける調教師・山下直哉氏がMVP。このメフィストフェレスは誰も彼もに銃を突き付ける。どうやったらこの話を観客が自分自身の話だと受け止められるようにすることが出来るのか?
ウチナンチューの兵士役、五島三四郎氏は林泰文や若き日の本田博太郎っぽくて愛嬌がある。
ウチナンチューの妊婦役、竹本優希さんも印象的。
是非観に行って頂きたい。