実演鑑賞
満足度★★★★
「OKINAWA1972」
素晴らしい脚本に唸った。
まさかの実録ヤクザもの。中島貞夫の『沖縄やくざ戦争』と松尾昭典の『沖縄10年戦争』を観ておいた方が楽しめる。笠原和夫の危な過ぎて映画化されなかった『沖縄進撃作戦』という脚本も御薦め。「これを製作したら俺が殺される」と東映の岡田茂社長がストップを掛けたガチ実録。この辺りの映画は、抗争を煽るとして当時沖縄では公開出来なかった。
伝説の空手家兇暴ヤクザ、新城喜史(よしふみ)、通称“ミンタミー”(目ん玉)。映画では千葉ちゃんが大友勝利まんまで演じた。とにかくヤマトンチュー(本土の人間)が大嫌い。「タックルせえ!タックルせえ!(叩き殺せ)」。
今作では甲津拓平氏が演ずる。
同じく伝説の空手家ヤクザ、又吉世喜(せいき)、通称“スター”(仇名のシターが訛ったものとされる)。未だに尊敬を集める男の中の男、リンチを受け生き埋めにされても自力で這い出して生き延びるなどのエピソードが多数、“不死身の男”と呼ばれた。Vシネでは小沢仁志が演っていた。
杉木隆幸氏が演ずる。
内部抗争の末、本土の山口組と手を組まざるを得なくなる上原勇吉。上原組は50〜60人、対する旭琉会は800人。勝負にならない戦いだが、延々と地獄の抗争を繰り広げた。映画では松方弘樹が踏ん張る。
演ずるは龍昇氏。
主人公的な立ち位置にいる語り部は日島稔。『海燕ジョーの奇跡』という小説、映画にもなった。演ずる五島三四郎氏は石森太二と町田町蔵をMIXしたような魅力。喋り口が朴訥で好感を持つ。上原組のヒットマンとして名を残した。
亀頭をペンチで捻り上げ切断されると云う、未だに誰の心にも残るトラウマリンチを受けた日島稔の弟分。演ずるは工藤孝生氏。やけに明るく能天気でこの地獄をエンジョイしてみせる。
この修羅地獄を生き延びてみせたのは富永清。演ずるは浅倉洋介氏。金城正雄の要素も混ぜているのかも。
エロい巨乳がいるな、と思ったら福井夏さん。流石に場をさらっていく。
佐藤栄作(塩野谷正幸氏)と若泉敬(里見和彦氏)が沖縄返還を巡り、ニクソン配下のハルペリン、キッシンジャーと極秘会談を続ける描写がサイドストーリー。
フィリピン人にレイプされて孕んだ子供を必死に育てた母親役、かんのひとみさん。彼女がある意味、今作の要。縫いぐるみの猫との遣り取りは美しい。読み書きが出来ない為、必死に勉強して字を覚えていく。
凄く好きなドラマ。こういう作品にこそ、神が宿る。
是非観に行って頂きたい。