ハンダラの観てきた!クチコミ一覧

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しまいこんでいた歌

しまいこんでいた歌

劇団かに座

横浜関内ホール(神奈川県)

2022/12/16 (金) ~ 2022/12/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 横浜で活躍する地元劇団のようだが、初めて拝見した。今回の上演作品は山田 太一さんの作である。演出は馬場 秀彦さん。華4つ☆

ネタバレBOX

 ホールで明転すると舞台美術が余りに立派なことに仰天した。業界3位か4位のガス器具メーカー研究所所長の家の居間が表現されているのだが、絵画が壁を飾り家具調度の類も品のある落ち着いた雰囲気を醸し出している。上演回数だけからみても歴史のある劇団であることは一目瞭然だが、実際拝見してみて役者陣の演技は自然で落ち着きのある力量を感じさせるものでありつつ、作品内容に含まれる内部告発問題に就職氷河期に所長自らが紹介して入社した女性が絡んでいたこと、実際内部告発が為されれば所長自身の出処進退に関わるであろうことと、これらの事情を鑑み中に入って何とかしようと立ちまわる、この告発当事者である娘の母の行為が周囲を巻き込み、遂には「浮気」問題にまで発展しかけ、所長夫婦と告発者父母夫妻の夜の関係までもが赤裸々となる中、真の告発者は、研究所の若手ホープであり実は彼が彼女に内部告発をさせたこと、そしてそれにはそれなりの正当性があり、現実に現幹部の経営は汚辱に塗れ、こうでもしなければ改善が望めなかったこと等々が明らかになる。然し・・・。という内容でこのラストに様々な歌が入って大団円を迎えるが肝心の腐敗は「明転」することがない。即ち事大主義を告発することなく、明示することで終わる。これが日本の限界だ。との位置も示した作品であった。
ある母の記録

ある母の記録

NonoNote.

コフレリオ 新宿シアター(東京都)

2022/12/14 (水) ~ 2022/12/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 旗揚げ公演とのこと、それでこれだけ質の高い作品を創れるとは!

ネタバレBOX

 ちょっと舞台美術もユニークだ。丁度凸の字を手前に引き倒したような平台の高さ位の構造のホリゾント側センターにその背後を遮る大きなパネルが設置され袖を為している。凸の字の底辺から凸部のセンターに浅い掘り炬燵の凹みのような穴がありその中に可成り大きな座卓が据えられている。その両側に座布団が2つずつ敷かれている。この凸型構造物の周囲が板剰余部分だ。この剰余部分側壁側には壁にそってそれぞれ4つずつ、箱馬が置かれ、一旦役を演じた役者が座れるようになっている。
 旗揚げ公演ということだが、役者陣は中々修行を積んできたとみえる。脚本も一般の人々が日常的に経験する夢へのチャレンジと挫折の繰り返しの中での家族個々人の葛藤と居直りを母と長女との関係を中心に、姉妹同士の葛藤のうちにも在る、自己保持の為のプライドとそのような形でしか自己実現し得ない窮屈な発想から抜けられない硬直した思考の様を描くことによって多くの人々の共感を得る作品となっている。このような視座で書ける限り、作品の種は尽きぬであろう。今後にも注目したい劇団である。
明烏-akegarasu-

明烏-akegarasu-

猿博打

中板橋 新生館スタジオ(東京都)

2022/12/14 (水) ~ 2022/12/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★

 確かに落語を下敷にしてはいるが、こんなに小さな小屋で唯,
がなり立てるような台詞回し、センスも粋も無いギャグ。いくら何でも芸が荒い。ラストだけが見事であった。

時代絵巻AsH 其ノ拾六『赤雪~せきせつ~』

時代絵巻AsH 其ノ拾六『赤雪~せきせつ~』

時代絵巻 AsH

シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)

2022/12/14 (水) ~ 2022/12/18 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 舞台レイアウトがこれまでと若干異なる。下手側壁側には渡り廊下手前に場面に応じ出城や櫓に見立てた二層構造の高楼。二階部分が踊り場になっている。また奥の渡り廊下には丁度能舞台の橋懸かりに三本の高低差のある松があしらってある風情で松が3本見える。但し高低差はなく廊下手前のみに配置されている点が能舞台とは異なる。いつものように廊下全体の中央に襖があり出捌けとして用いられる他、櫓に見立てた構造物が袖を形成しているのでこの袖の裏側も出捌けとして用いられているのは無論であり、上手には、こちらも場面に応じ武田の本拠地、評定所、武者溜まりにもなるエリアが設けられている。こちらは大きな沓脱石が置かれている点も通常の舞台美術とは異なる。いつも用いられる沓脱石の横幅は今回のそれの五分の三程度という感じだ。出捌けは無論、上手側壁側にもある。華5つ☆ ベシミル!

ネタバレBOX


 今回の主人公は武田信玄の後を継いだ勝頼。演ずるは無論、黒崎氏。戦国の世に在って人としての倫理と武士の意気地、武士が武士である為に必ず守らねばならぬと信じられていた領地と家(即ち血統を含む家名)。これらが劣勢時には状況の中で矛盾し合い血で血を洗う戦闘や、その戦闘を有利に戦う為の敵を欺く攪乱戦を含む情報戦、情報と状況分析に基づく戦略・戦術と婚姻関係を常套手段とし、互いに人質を取りあいつつ権謀術策を行使する家康が得意とした政治的手法に信長の仮借なき戦略。そしてこれらに対するは人間が人間として生きようとする倫理。軍事力の強弱が同等であると仮定するとこの条件での勝者が何れになるかは必然である。命も生きる価値も時代と場所に限定されつつ生きている我らヒトが、全うに生きようと欲すれば決して避けては通れぬ宿命を背負い戦国時代を生きた武将勝頼の人間性とその悲劇を観客の魂にキチンと送り届ける灰衣堂さんの脚本は流石である。同時にこの脚本を見事に身体化し、時に見る者を凍らせ、或は脈打たせ、身体を硬直させたり、和ませたりしてくれる役者陣の演技と演出の良さ、そして様々な要素をトータルで人間の悲喜交々、宿命の苛烈等を貴族の目で眺めている近衛役の演技がいやが上にも観客に一抹の相対的視座を齎し
舞台による演者らと観客の魂の交感を実現している公演に感謝する次第である。
『ダークダンス』

『ダークダンス』

尾米タケル之一座

ウッディシアター中目黒(東京都)

2022/12/07 (水) ~ 2022/12/14 (水)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 優れた作品というものは、人々の世界の観方を変える力を持つ。(追記後送)

ネタバレBOX

 ひとまず、勧善懲悪物のジャンルに区分けされようが、‟ものごと“というものはことほど左様に単純では無い。それはヒーローにせよ、怪人にせよ人々にそう見られることを含め、世の中の様々な人々との様々な関係の総体に影響を受けてアイデンティファイしているのであって、人々の評価が如何様なものであれ、何らかの形で目立ったヒーローなりアンチヒーローなりによる行為は、多くの人々の一種の代表としての行為に他ならないとすれば責任を負うべきは、単にヒーロー、アンチヒーロー当事者のみとは言えず、彼らにそのようなレッテルを貼り、レッテルを貼ることによって評価した多くの一般人にもその責任の一旦がある。この当たり前過ぎる事実を、匿名性に隠れて認めたがらない人々の怠惰に今作は杭を打ち込む如き作品である。
人魚姫の庭

人魚姫の庭

マルチリンガル演劇実行委員会

あうるすぽっと(東京都)

2022/12/12 (月) ~ 2022/12/12 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 ファンタジーで現実を抉った傑作、華5つ☆。 デンマークにある人魚姫の像は余りにも有名だが、人魚に纏わる様々な伝説やファンタジーの類は、その幻想性が極めて魅力的でイメジャリ―な点、舞台でどう表現するか? 相当に難しいのではないか? そう案じていたのだが杞憂に終わった。今回は1回切のプレ公演として演じられた舞台だったが、本公演は2023.2月25日(土)13時30~21時15分及び26日(日)10時~18時30分にプレ公演と同じあうるすぽっとで上演される。1日券は前売り3000円、2日券は4000円で当日券は各々500円増しである、予約開始は2023年1月中旬からを予定しているとのことだ。

ネタバレBOX


 脚本は劇作家の醒めた意識が光る。今作に登場する人魚の寿命は300年。大人になると人間の世界を見学に行く許可が下りる。姫たちの生活は穏やかで平和だから退屈でもある。長い寿命が退屈に満たされるのでは堪らない。而も姫たちは寿命を迎えると泡となって消えてしまうのだ。この空しい宿命は、生きていることの輝きを奪わぬばかりである。そんな姫たちの最も楽しい遊びはヒトの魂を集めることである。当初遭難等で死んだ魂を集めて、その光輝く永遠の魂を宝物として保持していたのだが、或る時から積極的に集めるようになった。その方法は観てのお楽しみである。数多い姫たちのうち1番多くこの宝物を持っているのは長女であった。彼女以下末娘を除く他の姉妹たちは皆同じように楽しく宝を集め平和な時を送って寿命が来たら泡となって消える運命を肯んじていたが、末娘だけは人間になりたいという望みを持っていた。彼女は、この望みを叶える為に海の底深く潜り願いを成就できなかった者達が海の魔女と呼ぶ女性に遭い、契約を結ぶ。魔力で人魚姫は人間の姿にはなれるが、言葉を奪われ肉体は鱗を生き乍ら剥がされる痛みに常に晒される過酷な条件であった。然し人魚姫はそれらの苦悩を背負っても尚人間になる望みを捨てずにいた。その原因は先頃人間の世界を見た際、大国の王子を見初めたことにあった。姫は人間に姿を変えその王国に入ることに成功した、然し言葉も碌に喋れない。手話はできるが万人に通用する訳ではない。宮廷で王子に見初められるにはダンスを上手に踊り、王子の相手として誘われる必要もある。相手は大国の王子、競争相手の女性達は何れもこの大国には敵わないまでも何れも別の王国の王女やそれに匹敵する娘たちである。初めの頃こそ珍しがられ少し注目を集めはしたものの人間界に来て1年程度では言葉も完璧には程遠く、ダンスも上手とは言えない。王子との恋は実らぬ方へ誘われていった。大嵐の際、王子の乗った船が遭難し命懸けで王子を救ったのが人魚姫であったにも拘わらず、王子の妻の座は小国の王子の手引きでその姉の才長けた王女のものとなり、願いを成就できなかった人魚姫はその寿命を全うすることなく泡と消えた。センチメンタリズムを排し、プラグマティックでドライな世界を如実に活写し微塵も仮借の無い世界のリアルが担保されている点が素晴らしい。現実に世界で起こっていることの理由が端的に示されその残酷性が如実に物語られているからである。
 板上は木材をたくさん用いて段差のある足場を組み照明と音響効果を最大限に活かして煌びやかな衣装とスタイリッシュなダンスで物語を紡ぐと同時に物語の展開する舞台をその海中の幻想的な雰囲気迄紡いで魅せるレベルに達し実に美しい! まあ、内容が如何にシビアでも、否だからこそ、ダンスの動きは、その華麗で柔軟な衣装や美しい女優、実に美しく幻想的な照明と音響効果とでいやが上にも対比されてひしひしと観客の胸を撃つ。
 殆ど総ての時間をこのような視座で描いた今作もファンタジーであるから、終盤若干、人間になって心血を注いで王子を愛し、生皮を生きたまま剥がれる痛みに耐え、無視や愛されぬ絶望にも、言葉拙く愛の伝え方すら覚束ぬのみならず、社交界の常識である上流社会へ関与する為の必須条件であるダンスも上手く踊れない人魚姫の、遭難した王子を実際に命懸けで救った事実を肝心の王子に意識されることもなく、泡と消えた人魚姫を探索する話が挿入され、本当に関わりの深かった人間の関与も描かれはする。然しそれは更なる世界の残虐性を描く為であるように思われる。その残虐性とは、最後まで人魚姫に関わろうとした幸せな者が存在する時、必ず不幸せな者がその代わりに幸せ者の足下に踏みつけられ呻吟しているという事実である、即ち自分が幸せならば、必ずそれは他者の不幸せを代替物として持つという残虐性なのだ。
Xmas fool

Xmas fool

ROUND TREE プロデュース

千本桜ホール(東京都)

2022/12/07 (水) ~ 2022/12/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 かなりキッチリ作り込まれた舞台美術は中々洒落ている。

ネタバレBOX

殊に小さな鉢植えや植生がバーカウンター奥壁に設えられた棚やカフェ店内のコーナー、バーカンの隅に置かれていたり、下手・上手側壁には洒落たランプが灯されているなどである。また下手側壁客席側は舞台上に少し迫り出す様に作られて居るか目隠しとして用いられるシーンも在る。バーカン手前には作り付けの椅子、板中央奥は出捌けにも用いられるが梁上部を透かし彫りにし真ん中にはXmasリースが飾られているのもお洒落、他の出捌けは上手側壁。店内随所にラウンドテーブルと椅子。
 基本が嘘から始まっているので、それを糊塗してゆく他に無いため嘘の構造が露わ故パターンが予め分かり切ったものになってしまう点で自分には退屈だったが、マスターの離婚した女房を演じた女優さんの演技が素晴らしい。また、ラストの纏め方も秀逸であった。
超科学戦闘機スーパーホーク1号の着陸(再演)

超科学戦闘機スーパーホーク1号の着陸(再演)

劇団鋼鉄村松

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2022/12/08 (木) ~ 2022/12/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 ボス村松さんの演技がグー。(華4つ☆追記後送)

ネタバレBOX

 今作の脚本はバブルムラマツ氏、演出は新宿ムラマティ。実は誰だか当てて欲しい。
 また今回の舞台美術では赤が多用されているのだが自分は好みの色なので可成り気に入った。作品自体は少年の頃、男の子の誰もが憧れた強くて正しい子供達の味方、スーパーヒーローと悪の権化・人類の敵の戦いを描くが、そのような悪と戦い地球を守る者は子供達のヒーローである。無論、強い正義の味方はエリート中のエリートでもある。そんな道を歩んでいた御陵(みささぎ)は、誕生日に彼女にフラレ、ファミレスの副店長になった。
全部、知っている。

全部、知っている。

SPIRAL CHARIOTS

アトリエファンファーレ高円寺(東京都)

2022/12/07 (水) ~ 2022/12/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 物語は地方の旅館で進む。外は吹雪で外出は極めて危険、車も照明が届くのは精々2m迄で実質運転は不可能である。舞台美術は極めてお洒落な和風旅館、正面奥下手は畳が敷かれ畳の奥には円形の明り取りの障子がありその円周に添わせるように壁の上下から竹が壁に貼り付けられている。(華4つ☆、追記後送)

幕末サンライズ

幕末サンライズ

URAZARU

ザムザ阿佐谷(東京都)

2022/12/07 (水) ~ 2022/12/11 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 ラチェットレンチチームを拝見。多くの落語をベースに史実をも織り込みつつ、幕末を描いてみせた。落語ベースなので殺陣で用いる刀も総て扇子という演出もグー。

ネタバレBOX

 ペリー来航からの約十数年間、所謂幕末を吉田松陰を中心とした松下村塾塾生、松陰が師と仰いだ落語家・燕枝やその弟子達、町民たちの関わりを通して松陰の人間としての開放性、謙虚、忌憚の無さ、ヒトとしての真摯な姿勢、即ち真に優れた知性の最上の部分を持ち、剰え単に知を敷衍するのみならず実践し得た丹力をも示した。自分は今迄松陰が「幽囚録」で唱えた拡張主義、力によりその目標を実現しようとする思想に対して嫌悪感を抱いてきたが、そして未だにその事実に対する嫌悪感は変わっていないが、彼の心象が今作に描かれたようなものであったなら、己の論理の中で松陰を再評価できるか否かを問う為に今迄嫌って調べてこなかった多くの事象についてもキチンと自分で調べてみたい。少なくとも今作、そのように思わせるだけの内容を持った。今迄私自身に持ち得なかった視座を提供してくれたことに感謝すると同時に燕枝の持つ人間性に関してよく表現しまた今作では体力の衰えを微塵も感じさせずに走り回り、若い世代と互角に張り合えるだけの肉体一元論の正しさを立証してみせたた山口太郎さんに諸手で拍手を送る。同時に壮年の松陰を演じた役者酒井孝宏さんにも同等の拍手を送りたい。
キンモクセイの頃

キンモクセイの頃

アダチコレクション

ユーロライブ(東京都)

2022/12/07 (水) ~ 2022/12/08 (木)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 ‟あかとんぼ”という名のスナックで起こる客とマスターとのあれこれを70分のムービーと30分の舞台で見せるという趣向の作品。

ネタバレBOX

前説をやった女性が今作のシナリオ担当者に懇願して叶った企画ということであったが、企画自体の実現成果はまずまず。斬新感は感じない。この小屋の構造そのものがムービー向けということもあるだろうし、台詞には可成り擽りもあって楽しめる作品ではあったものの生舞台の感動よりは、お茶の間TV番組的な発想と作りという感が強かった。意外性も若干盛り込まれているが、それは観てのお楽しみだ。
河童と川邑家と何か

河童と川邑家と何か

劇団cMcc

千本桜ホール(東京都)

2022/12/01 (木) ~ 2022/12/05 (月)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★

 極めて素直な脚本。今ここ迄捻らない作品は珍しい。

ネタバレBOX

 物語は三部構成になっている。一部で過去、二部でほぼ現代(昭和後期から平成に掛けての頃か。この辺りの感覚は住んで居た地域によって異なろう)、そして近未来の三部である。ある一家の縁起を描いた作品だが、主題は、人工と自然である。現在、漸く人間という生き物が地球全体に与える悪影響が人口に膾炙するようになったが、当然既に殆ど手遅れである。自分は科学少年であったから10代始めには人間の発展に疑問を持っていた。それは必然である。当時、農薬がヘリコプターで山間、農地、河川近辺に撒かれ、あっという間に生き物の数(総ての昆虫類、貝類、魚類、鳥類、両生類、甲殻類、爬虫類等が激減した。種によっては十分の一以下になったという印象を持っている。これだけ野生の生き物に悪影響を与える農薬が人間にとっても良い訳が無い。そんな感覚が自然を観察するのが好きだった自分にはあったのである。今作は、にも拘らずヒトは自然を荒し遂には修復不可能なレベル迄突き進んでしまうことに警告を与える作品になっている。唯、その表現は具体的に自然と向き合ってきた人々と接し己の生き死にを賭けて紡がれたというより、間違いの無い基本的考え方を敷衍したレベルだとは感じた。更に作品を研ぎ澄ますには、実際に自然と向き合って暮らして来た人々に多く取材し現場の生の声を反映させる他あるまい、とは思う。
ハムレットマシーン

ハムレットマシーン

LOGOTyPEプロデュース

吉祥寺シアター(東京都)

2022/12/02 (金) ~ 2022/12/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 真にラディカル、久しぶりに前衛と言える作品を拝見。タイゼツベシミル! 華5つ☆

ネタバレBOX

 原作は何でも数ページしかないそうで、タイトル通りシェイクスピアのハムレットに因む話が中心とはなるのだが、作品の要諦は文藝を含む文化一般及び文明という人間の拵えた作り物の論理を追求して行くとき、ヒトは何に行き着き、行き着いた先から何をどんな形で受け取り、その受け取った果実に納得づくで対応し得、心身ともに健全・健康足り得ているのか? という極めて本質的な問いである。その問は結論として否を導いているのが今作だろう。その形は映像という形で提示されているのだが、被写体が木の葉や蟻、蜂、蟷螂、オタマジャクシ、蜥蜴、毛虫、蝉、ハゼ、蜘蛛等小動物の生々流転即ち生存競争と全体としてのバランス、個々の命の精緻等々の映像と対比され生き物としてのヒトが、ヒトが作り出した巨大な作り物の世界と対峙されているのだ。恰もこれこそが我ら、ヒトの根本問題である、と宣言しているかのように。そして対比する過程に於いてもヒトは作り物を用いてこの本質を描き出す他ないのだと。謂わば己の彫ったヒトそのものの仮面を観る為には、顔に張り付いた仮面を血肉と共に剥いで自ら眼前に晒す他に無いといったやり方で。その意味で極めてラディカルで前衛的な作品と言って良い。
Flamenco Caleidoscopio

Flamenco Caleidoscopio

ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団

よみうり大手町ホール(東京都)

2022/12/02 (金) ~ 2022/12/03 (土)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 ARTE Y SOLERA 30th Anniversaryと記されてもいる今回の催し、先ずは寿ほぎたい。女性の靭さしなやかさをまずは感じた公演であったが、三味線(恐らく太棹と推察した)とギターのコラボ演奏もあり、この合奏が見事に呼応していたのは、三味線奏者とギター奏者の腕が素晴らしいことと同時に優れた音楽家同士の音感の鋭さを前提に鍛え上げられた技術と矢張り素晴らしいアーティストに共通するオープンマインドが在ることの結果と思われる。また日本語の歌唱による踊りもあってその親近性に驚かされると同時にレベルの高い表現者同士によるコレスポンダンスを目の当たりにすることが出来至極満足! 今後の皆さまのご活躍を期待し楽しみにしている。

「青空トコロにより」「夜空トコロにより」

「青空トコロにより」「夜空トコロにより」

ハグハグ共和国

萬劇場(東京都)

2022/12/01 (木) ~ 2022/12/04 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

「青空トコロニヨリ」を拝見

ネタバレBOX

 4話をオムニバス形式で上演。何れの物語もイベントが行われる公共施設の裏手午前6時から9時、9時から12時、12時から15時、15時から18時迄と3時間ずつの話として紡がれるが、何れもリアルな生活と微妙に離れ、ちょっと詩的でファンタジックな而も各々の挿話に深く心に沁みる人の心の機微と哀切感が織り込まれた秀作。演技では、えのぐの松下勇氏が演じた向井役が気に入った。
サイレント・ブレス

サイレント・ブレス

千夜一夜座

ブディストホール(東京都)

2022/11/19 (土) ~ 2022/11/22 (火)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 看取りのカルテというサブタイトルがついている。尺は休憩10分を挟み約140分。原作は南 杏子さんで挿話はもっと多いのだというが、今回座長の田中 千寿江さんによって脚本化されたのは、(追記後送)お勧め

 『鋼鉄の棺』

 『鋼鉄の棺』

東京華劇団

シアターグリーン BASE THEATER(東京都)

2022/11/18 (金) ~ 2022/11/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 日本という国の為政者に欠けているもの、それは人間性である。その欠如の意味する所を今作は本質的に捉えて表現してみせた。観たいで自分がこの国を未だに許せないと書いた。その理由に特攻に行かされて亡くなった従兄の弟が敗戦後何度も分祀してくれるように願い出たにも拘わらず、常に門前払い扱いを受け続けたことが在る。敗戦前、大日本帝国は有為な多くの学徒を特攻の名の下、あたら殺した。而も唯一の主権者は、その罪を一切公式に問われたことなどなかった。遺族は本音では誰一人このような為政、為政者を赦しはすまい。(追記後送)

妖話会

妖話会

遊戯空間

プロト・シアター(東京都)

2022/11/19 (土) ~ 2022/11/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 流石は遊戯空間の作品、ベシミル!

ネタバレBOX

 何れも三島由紀夫の作品で前者は近代能楽集のうちの一篇であり、後者は1945年2月10日、三島が入隊検査で肺浸潤を誤診され自宅に戻って直ぐ書かれた。この初校にあった‟キスシーン“が検閲に触れるおそれがあって『文藝』に持ち込まれた原稿は不採用となったという作品だが、敗戦後大蔵官僚となる頃改稿し発表された、と当パンの説明にある。
 何れにせよ、戦後の一時期、日本の文芸のみならず文化状況というものは、コマーシャリズムの頸城を逃れて作者の主張をラディカルに表現する熱気を持った。そのような時代の作品である。何れの作品も今回は朗読という上演形態を採っている。
 尚、実際の上演は「斑女」「サーカス」の順であり、何れも生のチェロ演奏が入るのは、流石に遊戯空間の品格を表す作品である。無論、演者のレベルは非常に高い。そもそも、朗読という表現法は演者各々に作品を読み込む力(作品の時代背景、登場人物各々の位置、その相互関係と価値観が各要素に絡まり合い生々流転する様、その時、登場人物に起こる心理的変化等の総てを演者自らの総ての神経と想像力の所産として声、呼吸、間、抑揚、更に身体感覚にまで落とし込んで為される表現であろう)本当に難しい表現形式なのだが、各演者各々がこれらの難題に果敢にチャレンジして果実を実らせている。
ジャンキー・チエの木人件

ジャンキー・チエの木人件

グワィニャオン

シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)

2022/11/16 (水) ~ 2022/11/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 配信もあるそうである。生舞台を観劇できなかった方々は是非この傑作を観るベシ! 華5つ☆

ネタバレBOX

 福島県の豪雪地帯に位置する九段町は近隣4町村と合併することとなり、人口僅か6000という規模に過ぎないにしても来年には自治体としての歴史を終え消滅の憂き目をみる。住民にとっては自らの故郷を失いアイデンティティが曖昧化することを意味する。そこで町役場では、最後の華を飾ろうと東京から歌手や劇団を呼んでフェスティバルを開催することとした。然し担当が演ずる劇団を2団体頼んでしまった。予算は1団体分しかない。だがダブルブッキングしてしまったのである! おまけに当の担当者はその事実に気付いたのであろう出演者がやって来る本番前日から行方を晦まし何十回留守電を入れても返事が無い。担当を代行したのは役場の若手女子と担当の上司である。然し2人共、東京の演劇事情に関してはずぶのトウシロウである。約束通りやって来た2つの劇団は、タイプが全く異なる。1つは若手劇団で結成して日も浅いエンタメ指向。対してもう一方の劇団はメンバー既に人生の半ばを終えたような30年も夢に縋っている人々で所謂アングラ。で、ずぶのトウシローである役場の女子が演劇だけで食べているのか? 問われると、アルバイトをし乍らとの答え。このように建前と本音というより、夢を追い続ける実際の小劇場演劇集団メンバーの生活と日本という国で実際に起こっている事実との対比が、ド素人の発する忌憚のない質問という形を通して明らかになってゆく。而もこれだけでも凄いのにかつて一世を風靡したデンスケによく似たキャラが登場して当に飛び道具として大活躍。これでもか! と謂わんばかりの箍外しをやってのけるから堪らない。観客は単なる笑いや苦笑いでは無い面白過ぎると同時に痛烈な泣き笑いという極めて複雑な感情を呼び覚まされ、且つその感情の波に洗い流される。全編、このノリであるから、観た者は唯唖然とするほかは無い。
法螺噺 アオイトリ

法螺噺 アオイトリ

ツツシニウム

上野ストアハウス(東京都)

2022/11/16 (水) ~ 2022/11/20 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

 可成り深読みできる作品。(追記後送)

ネタバレBOX

 メーテルリンクの「青い鳥」を援用する形を採りながら紡がれる今作。現代の病理をかなり読み込んだ作家の作品と思われる。ヒロインのミチルは、貧しい。というのも母はシングルマザーで兄のチルチルは病で寝たっきりだからである。無論、母は幾つもの仕事を掛け持ちし体を壊しそうなのに尚仕事を増やそうとするほど一所懸命に働くのであるが

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