無法地帯 公演情報 藤原たまえプロデュース「無法地帯」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     秀作、ベシ観ル!

    ネタバレBOX

     出演は総勢10名。総て男、それもおじさんばかりの110分強。それで、こうなったか!? 唸らせるとも、何とも言えぬ侘しさ寂しさだけの現実に突き返されるとも表現可能な、♂という生き物の所在なさが端的に表れた秀作。
     物語は観てもらうとして、一応設定だけは記しておこう。物語が進行するのは、篤志家の弁護士が買った一軒家、現在はシェアハウスとして用いられているこの一軒家の共用スペースが物語が展開する舞台となっている。出捌けは下手側壁の暖簾の掛かった開口部と上手側壁の矢張り暖簾の掛かっている開口部。上手側壁の客席側には2階へ上がる階段が設えられている。面白いのはこの側壁の天井に近い所から板方向へ斜めに角材が伸びている点。実は広げると板中央辺りにスクリーンが客席から観易い角度で開く仕掛けがしてあるのだ。この開閉操作を上手壁のハンドルを回して行うのである。共用スペースであるから喫茶室のような体裁で椅子と小テーブル、ソファとテーブルの大勢用等が配置されているのは無論のこと、軽食や飲み物を用意し客に渡す為の開口部がやや下手寄りホリゾントに設けられている。更に上手壁の前には。ラジカセ、歌曲集などの入った本棚、本棚の手前にはギターも置かれている。
    弁護士が一軒家を買ったのには訳がある。冒頭篤志家の弁護士、と書いた。この弁護士、冤罪を含め情状酌量の余地あり、と彼が判断したり冤罪だと主張するも犯罪者とされた人々に格安の家賃で入居することを可能にしていたのである。無論住人の面倒を何くれとなく見、地域、警察などにも余計な介入をさせたり、また住人たちが何とか自立しこの仮住まいを独立して立ち去ることができるよう様々なことを行うためにも自宅の近所の物件を購入していたのである。住民は、今回初めてこのシェアハウスにやってきた新人を含め8名、それ以外に弁護士と彼をサポートする元警察官(冤罪、上司の横領の罪を着せられたが、元々無実なので弁護士のサポートをしている)の10名。物語がこの新人の体験をとおして新たな世界の何たるかを明らかにしてゆくという形式を採っていることも、今作の上手さである。(無論、この方法は成功した多くの作品で採用されてきた普遍的な方法であり決して新しくは無いが、自然に観客を物語の住人としてゆくに最も適した方法の一つである)
     観終わって実に様々なことを考えさせる優れた舞台である。こう感じさせたのは出演した総ての役者の演技力であり、演出、効果(舞台美術、照明、音響等)裏方さんの対応が一体となって今作を統一感のある一本の作品に仕上げたからである。

    0

    2023/07/06 13:18

    0

    2

このページのQRコードです。

拡大