桃太郎の大冒険 公演情報 劇団龍門「桃太郎の大冒険」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

     現在、阿佐ヶ谷は七夕祭りの真っ最中、アルシェへ辿り着くまでに人込み次第で通常の2~3倍程度は最低掛かると覚悟して早目に出掛けた方が良い。

    ネタバレBOX


     板上は奥センターに出捌け用の空間を設け左右に衝立、衝立各々に黒幕を斜めに取り付けて袖としこちらも出捌けに用いる。この袖から客席側に伸びた若干の部分は平台によって一段高くなっている。また下手の客席側に更に1か所出捌けが設けられている。
     オープニングでは1人の少女が腹をすかせ倒れ込まんばかりの有様で彷徨っている。そこへ正体不明のおじさんが現れるが、何かを警戒している模様。少女は助けて貰いたいと思いつつ、何となく怖い気持ちもあって中々素直に反応はできないものの、おじさんは家出娘と見当をつけて「腹が減っているのならこれを食って家へ帰れ」と食べ物を恵みサジェッションもしてくれる。単にナンパをしている訳ではなく、強面ではあるが親切なおじさんだと気付いた少女はおじさんを頼り一緒に行動するようになってゆく。この時、少女は勝手な想像を巡らしおじさんはスパイ、それも2重スパイでミッションをこなす為に日夜戦っているなどと主張し続けている点も面白い。
     場転があり、若い男1人に矢張り若い娘4人、どうやら訳の分からぬ理由で閉じ込められているらしい。理由も分からず檻に閉じ込められているが食事は出る。監視されているかも知れぬが定かではない。皆疑心暗鬼に襲われ睡眠中もどこか不安でぐっすり眠ることはできない、冷静であろうと努めるものの何故、何の為に閉じ込められているのか? 理由も分からずいつまで閉じ込められているのかも分からない。時折、何人かずつ連れていかれるが何処へ連れて行かれ何をされるのかも総て不明である。神経を病むな! という方が無理な話である。
     さて、新入りが入ってきた。つい先日、仲間というか一緒に放り込まれていた少年、少女が1人ずつ、連れて行かれた。何処へ連れて行かれどうなったかはいつも通り一切分からない。そこへ新入りの登場である。新入り達も先に閉じ込められていた者達も互いに自分達の方が少しでも有利な位置を占めようと勢力争いを展開するが争いが無駄であることを認め争闘は収束することとなった。
     ところで、シジュウカラという小鳥をご存知だろうか? 彼らは単語を使い分けて対話をし一定の文法を持ったコミュニケーションをしていることが学術的にも証明された。2つの単語を纏めて認識する能力を併合というが、この能力の意味する処は作文ができるということだ。シジュウカラはこの能力を持つ。これは人間の対話にも共通する極めて根本的な対話能力の原点ともいえる概念。多くの人間が、言語を用いて対話できるか否かが動物と人間を分ける決定的な能力差であると勝手に決め込んで他の生き物の上位に立ち、捕食し利用し収奪することを是としてきた訳だが、これは人間の勝手な思い込みに過ぎない、ということが立証され始めたということに他ならない。ギリシャの時代からオルフェウスのように鳥や獣、岩や川等までも魅了した詩人という人種が居たとされる。日本では宮沢賢治が代表だろうか? 何れにせよ詩人がこのように評されるのは、彼らの持つ自然に対する偏見のない態度と自然から学んだ多くのことを通して持ちえた想像力の巨きな力が、彼らをして正鵠を射た文言を定着せしめたという事実である。今作を観る前提として、以上の認識はヒントになろう。

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    2023/08/05 12:57

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