うさぎライターの観てきた!クチコミ一覧

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One Situation Four Texts

One Situation Four Texts

舞台企画 斜楽生

萬劇場(東京都)

2019/03/06 (水) ~ 2019/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2019/03/09 (土) 14:00

「起承転結」という4つの文字を元に、4作家が全く違った作品を創る企画。
カラーの違いを見せて面白いが、強く印象に残ったのは
2作目の劇団マリーシア兄弟主宰、大浦力さんの作品。
なさぬ仲の頑固な師匠と弟子が、周囲の温かいフォローで素直に向き合う話。
落語を題材にしただけあって、ウィットに富んだ会話がクスリと笑わせる。
この劇団の持ち味である“愛あるぶっきらぼう”な人々の世界が生きている。
もう一つは4作目の劇団時間制作主宰、谷碧仁さんの作品。
息が詰まるような日々を送る法学部の学生3人が「自由になる」ために
姉妹を誘拐・監禁するという罪を犯す、その最後の1日を描く。
緊張感溢れる展開が巧い。

ネタバレBOX

起…脚本・演出:居候ユニット7%竹主宰 武藤心平 「アミューズ・ブーシュ」
妻と3人の娘を残して死んでしまった父が、あの世でご先祖様の力を借りて
気に入らない娘の彼氏と対決するため、彼の前に姿を現すというストーリー。
生前、監視カメラで二人を監視していたつもりが、実は家族に気づかれていた。
最後は心優しい家族に見送られてあの世へ戻って行く。
挿入されるダンスの唐突感が否めないのと、妻や娘のキャラが説明不足な感じ。
種明かしした後の妻や娘たちがとても素敵なキャラなので
そこを丁寧に描いたらもっとハートフルになったんじゃないか、という気がする。
それと私の好きなヨシケン改さんの使い方がもったいなくて残念。
“おバカでハートフル”な雰囲気は伝わって来た。

承…脚本・演出:劇団マリーシア兄弟主宰 大浦力 「コミックストーリー」
落語家の二海亭一門を率いる師匠は、独身のまま、
死んだ弟の子を引き取り噺家として育てて来た。
その子の二ツ目昇進を巡り “情で昇進” “身内だから” という声が
兄弟子のみならず本人からも上がって穏やかだった一門に小さな波風が立つ。
弟子たちによる“立体落語”のような出だしが面白く、それでまず状況が把握できる。
昇進を辞退する甥っ子の頑なさをほぐすのは、昇進できない兄弟子。
このあたりの優しく切ないアプローチはマリーシアの得意とするところで
「いいヤツだなあ、昇進できなくても絶対必要な人だ」と思わせる。

ウィットに富んだ会話が効いていて、師匠役のキヒラユウキさんが良かった。
「落語は地に落ちた、落語だからね」…そりゃそうだ、オチがなくちゃね。
「弟子って漢字で書くと弟の子って書くんだよ」…これ素晴らしい!
笑いを求める人がいなくなるような平和な世界が理想、というクールな師匠、
今回はアドリブ少なく(?2回繰り返したところがあったような気はしたが.
違っていたらごめんなさい)
落語だけでなくエンタメの存在感をきっちり語ってキメていた。

せっかく落語界を舞台にしたので、もう少し江戸っぽさが出ると良かったかな。
江戸弁のキレの良さと粋、艶、落語好きとしてはそこが好きでたまらないのだ。
江戸っ子の、“強がって無理してるけど、実は照れくさくて優しく出来ない不器用さ”は
マリーシアの持ち味ととても相性が良いと思う。
最後に甥っ子が「昇進のお話、承りました」ときっちり「承」を決めるところも◎


転…脚本・演出:劇団青色遊船主宰 白井ラテ 「クライマックスに向かってる」
不登校など行き場を失った人々を受け容れるフリースクールを舞台に
それぞれに訪れる転機と、そのせっかくのチャンスを見送って
相変わらずの世界へ戻って行く葛藤を描く。
10代の妊娠、クスリの売人、家族関係などシリアスな場面に説得力がある。
ラスト浴衣のエピソードは泣かせる。

結…脚本・演出:劇団時間制作主宰 谷碧仁 「ツルのハ」
法学部の男子学生3人が、息が詰まりそうな日常への不満を爆発させる。
自由になるんだ・・・親から、勉強から、不安から・・・いったい何から?
彼らがやったことは、姉妹を誘拐・監禁すること。
やがて犯人3人の関係にほころびが見え始め、それが大きな亀裂となって
終盤の悲劇へとなだれ込んでいく。
被害者と犯人、リーダーと従属者の力関係が目まぐるしく入れ替わり
その度に緊張が一層高まるところが素晴らしい。
ラスト、そもそも3人が空き別荘という空間を手に入れてはしゃいでいた
1週間前のシーンで終わるところが巧い。
アサガオの花でもなく、水をやる人でもなく、ただ棒に巻き付く
ツルの葉っぱに過ぎなかったのだという独白が哀しい。

個性豊かな作家によるオムニバス、観たことの無かった劇団も含め
新しい魅力に出会えたことが楽しかった。
天井の高い舞台も面白く、皆それを活かしていたと思う。








メアリー・ステュアート

メアリー・ステュアート

ZASSOBU

小劇場 楽園(東京都)

2019/03/06 (水) ~ 2019/03/10 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2019/03/06 (水) 19:00

下北沢の小劇場楽園でZASSO-BUの「メアリー・ステュアート」を観る。
生涯一度も会うことの無かった二入の女王が、もしも会っていたら・・・、
という想像力の生み出した戯曲が力強く素晴らしい。
二人の女優が切り替えも鮮やかに、4人の登場人物を演じ分ける。
結局44歳で断頭台の露と消えるメアリーの生き生きとした台詞が哀しい。

ネタバレBOX

生成り色のゆったりとしたドレスをまとった二人の女性。
スコットランド女王メアリー(樋口泰子)と乳母のケネディ(江間直子)が、
次の場面ではイングランド女王エリザベス(江間直子)と侍女ナニー(樋口泰子)になる。
場面を入れ替えながら交互に演じるこの形が、二人の人生と価値観を際立たせる。

理知的で冷静、生涯独身を貫き女王として生きたエリザベス。
一方最初の結婚、フランス皇太子が不幸にも早世したために未亡人となったメアリーは、
スコットランドへ帰国後、次々と奔放な恋愛模様を繰り広げる。
そしてついに追われる身となったメアリーは、イングランドのエリザベスを頼るのだが
一向に面会は実現せず、実に19年間の幽閉生活を送ることになる。

立場の違いはあるものの、それぞれが抱える葛藤と矛盾は
現代の女性にも共通するところがあり、普遍性を感じる。
幸せのひとつの形でありたい結婚も、国策や権力、支配欲にまみれて見通しが効かない。
その中で、エリザベスは結婚に価値を見出せず、
メアリーは“間違いだらけの男選び”を繰り返す。

残虐な公開処刑が“エンターテイメント”と化している時代に
常に斬首と隣り合わせで生き抜いてきたメアリーの腹の座り方はすごい。
だが同時にエリザベスを信じて便りを心待ちにする純粋さも持ち合わせていて
このあたりが稀代の悪女と言われながらも魅力的な女王なのだと思う。

演じる二人の女優が魅力的な声と豊かな表情で、台詞が心地よく入って来る。
歴史的背景を知って観ると、二人の崖っぷち感が一層迫って来る。

(私が体調イマイチで集中し切れなかったことが悔やまれる。
ところどころ飛んでしまって自分でも情けない。)

ビョードロ

ビョードロ

おぼんろ

新宿FACE(東京都)

2019/02/14 (木) ~ 2019/02/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

自らの血でウィルスを創り出す能力を持つ一族、ビョードロ・・・。
人間の欲望に翻弄される彼らの悲劇が5年ぶりにパワーアップして再演された。
サーカスとダンスが投入されたことで、一層ドラマチックな表現になっている。
次の展開も、結末も、わかっているのに泣けてしまう、おぼんろの世界再来。

ネタバレBOX

新宿FACEの7階へは初めて行った。
初演の時より装飾はさっぱりしているようだ。
いつもながら四方から観る舞台、役者が縦横に駆け回る3Dの場内。
初めての参加者には「体験してほしいのでこちらの席へ・・・」と案内し
常連の参加者には「来てくれてありがとう!」と手を取ってくれる。
本番前の語り部たちに物語の重さや緊張感はなく、
本当に来てよかった、と思わせてくれる歓迎ぶり。
ここしばらく、仕事や体調の都合でおぼんろの舞台に行けなかった私だが
久しぶりに行っても覚えていてくれることがとても嬉しい。
この楽しさが、演劇に親しむ要因ともなっていることを実感する。

さて、物語はいきなり悲劇から始まる。
血液から病原菌を創り出す能力を持つ一族ビョードロは、
細菌兵器を作りたい軍に利用された後、危険すぎる、と抹殺されてしまう。
村ごと焼き払われたその日、偶然外へ出ていた少年二人が生き残る。
タクモ(末原拓馬)とユスカ(鎌苅健太)は、森に隠れるように
ひっそりと暮らしている。
ある日、一人の男(さひがしジュンペイ)が二人を訪ねて来る。
彼はユスカの父親だと名乗り、細菌兵器を作ってくれないかと持ちかける。
ためらいながらも、やっと会えた父親を喜ばせたいユスカは
最強の兵器をつくることを約束する。
そして二人の血から生まれたのが「ジョウキゲン」(わかばやしめぐみ)だった。
やがてジョウキゲンは、タクモ達の予想をはるかに超えて強力になっていく・・・。

最強の兵器が誕生するシーンのおどろおどろしさ、不穏な空気や
ジョウキゲンがそれと知らずに人々を死に至らしめる様が
サーカスの驚異的な身体能力を活かしたダンスで表現される。
これから起ころうとしている不吉な出来事を想像させて非常に効果的。
“踊る”というより“身体を使って空気を表現する”ような動きが素晴らしい。

今回もわかばやしさんのジョウキゲンが秀逸。
タクモを喜ばせたいという無垢な思い、
後に裏切られ利用されたのだと悟って息絶えるまで
全ての感情を細やかに台詞に乗せる。
なんと可愛らしく、そして怖ろしく孤独なことだろう。
初演よりもテンションのメリハリがついて、ラストが一層悲しく哀れ。

さひがしジュンペイさん、ここ2年ほどでシャープになり色気が増したと思う。
おぼんろでは悪役が多いが、それも人間の一側面であり、
私たちの中にある欲望を取り出して見せてくれる存在だ。
だから憎めないし魅力的であって欲しいのだが、それを完璧に体現してくれる。

それにしても末原さんが紡ぐ物語はいつも驚きに満ちている。
微妙に時代とシンクロする内容、絶対泣かせるキャラと台詞、
それに何といってもあの演劇スタイルを生み出す自由奔放さ。
表現者と同時に、物語の書き手として、素晴らしいと思う。
次はどんな物語を語ってくれるのだろう。
誰に、どんな台詞を言わせるのだろう。
このおぼんろのチームワークの良さにますます期待したい。

ユスカ役の鎌苅健太さんが透明感あふれる演技で素敵だった。
もうファンの多い方だが、私は観たことが無かったので、
この方の他の舞台も観てみたいと思った。
今回の驚きの座組み、大成功じゃないですか!?








稽古場公演2019「野鴨」

稽古場公演2019「野鴨」

無名塾

無名塾 仲代劇堂(東京都)

2019/02/08 (金) ~ 2019/02/17 (日)公演終了

満足度★★★★

初めて無名塾の稽古場公演に足を運んだ。
イプセンの「野鴨」、そのあらすじくらいは聞いたことがあったが
作品を観るのは初めて、無名塾も初めて。
静かな住宅地に、主張しすぎずセンスと個性の息づいた建物外観と
重みのある作品が相性の良さを感じさせる。
哀れな野鴨は飼い殺しにされ、そして本当に死んでしまった・・・。

ネタバレBOX

アクティングスペースには白い椅子が1脚のみ。
重々しいBGMがこれから起こる悲劇を予感させる。

豪商ヴェルレとエクダル老人はかつて共同で事業を行っていたが、
ある不正の罪をエクダル一人が被って投獄、彼は精神に異常をきたしてしまう。
ひとり息子のヤルマールも大学を中退し、一族は没落する。
反対にヴェルレはその後も事業を拡大、成功を収めている。

罪の意識からか、ヴェルレはエクダル一家を金銭的に支援している。
ヴェルレの息子グレーゲルスは、父親のその偽善者ぶった行動が気に入らない。
当然のように恩恵を受けるエクダル一家も、真実を知るべきだと思っている。
ヤルマールの妻が、かつて自分の家の使用人だった
ギーダであると知ったグレーゲルスは、ヤルマールに彼女の過去を告げ
全てを知ったうえで新しい家族としてやり直してこそ「理想」の家族だと
信じて疑わない。

ところがこの「理想」は、エクダル一家を崩壊させる。
ヤルマールは真実を受け容れられず、ヤルマールを慕う娘のヘドウィックは
家を出ていくという父親に絶望して拳銃自殺してしまう。
思いがけない展開になすすべもないグレーゲルスは、ただの罪深い理想論者。

老い先短く、間もなく失明する運命のヴェルレは
何人目かの愛人セルビー夫人と正式に結婚、引退を表明する。
互いにこれまでのことをすべて包み隠さず告白し、その上で決めたと言う。
隠されていた真実によって幸せな暮らしが一瞬にして崩れ去るヤルマール一家と
鮮やかな対比を成している。

グレーゲルスは金持ちの息子としての人生を享受しながら
それを築いた父親を批判している。
運命を受け容れざるを得ない立場への理解が欠落している。
非常にバランスの悪い、机上の空論で他者を追いつめるだけの男だ。
一方のヤルマールも、現実を直視できない、解決も対処もできない幼い男。

対する女性陣は強くしたたかに生き抜く知恵を身につけている。
セルビー夫人は賢く、思いやり溢れる魅力的な女性だし
ギーナも夫の弱さを知り尽くして上手く操ることのできる大人の女だ。

セルビー夫人の世慣れた余裕のあるおおらかな態度がとても爽快だった。
演じる西山知佐さんの容姿と柔らかな声がぴったり。
ヴェルレ役の鎌倉太郎さん、“間違いだらけの”人生を送って来た老人の
渋みが上手く出ていて、これも愛すべき人間の正直な姿なのだと思わせる。

「真実」にいったいどれほどの意味があるのか。
「理想」はひとを幸せにするか。
正しい行いだけが幸せになる道なのか。
ヴェルレの最後の選択がいつまでも残っている。



鳥の市 2018

鳥の市 2018

なかないで、毒きのこちゃん

OFF OFFシアター(東京都)

2018/12/27 (木) ~ 2018/12/30 (日)公演終了

満足度★★★

Aを観劇。
「おせきはん、たく」「そば屋のあつこちゃん」
「ビックリハウスのこと、あの子とのこと、その他もろもろ」の3本。
チカラのある役者陣が熱量全開、ねばるような芝居で引っ張り続ける。

スピーディーな展開で面白かったのは「ビックリハウス・・・」
“古典的定番”のレトロな可笑しさと、文字通りびっくりさせる展開の意外性がベストマッチ。
振れ幅の大きいキャラを生き生きと演じていて楽しかった。

『美少年』

『美少年』

柿喰う客

Geki地下Liberty(東京都)

2018/12/15 (土) ~ 2018/12/30 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/12/20 (木) 19:30

フライヤーの美しさと巧さに、どうしても素通りできなかった1本。
怒涛の台詞、その技術と熱量に圧倒されながらの約60分。
だが「幻想怪奇譚」というほどの怪しさ・妖しさは感じられなかった。
むしろからりとしたドライな印象を受けるのは
滑舌は良いが5倍速の台詞のせいか、
4人が同じ衣装で個性際立つスタイリッシュな演出のせいか、
実は肝心な台詞を聴き損ねて一瞬迷子になった私のせいか?



ネタバレBOX

4人が全員赤いジャケットに黒いパンツというファッショナブルないでたち。
この“制服”が個性を際立たせるから面白い。

一人の美少年が行方不明になって、戻って来た時には別人のようになっていた…。
その理由は、「犯人が少年の美しさだけを奪ったから」という
ファンタジーのようなミステリーのような繊細さはなかなかよかった。

つまり「美少年」から「美」を取ったら、ただの「少年」ってことか。
それを突き付けられるのも、ちょっと気の毒なことだ。

台詞は3倍速か5倍速かというくらい巻きで繰り出されるが、
その心地よいスピード感に身を任せていると
大事なところがキャッチできなくて「ん?」ってなってしまう。
ついて来られる奴だけついて来い的な?
大村わたるさんが見栄を切ったとき、木ノ下歌舞伎に出演した時の場面を思い出した。

それにしても演出は躍動感100%、キレのある動きでコンパクトな作品。
アフタートークでは役者さんが普通のスピードでしゃべるのを聞いて
何だかほっとしちゃった。

エダニク

エダニク

ハイリンド

シアター711(東京都)

2018/12/07 (金) ~ 2018/12/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

男三人の暑苦しいハイテンション会話劇が素晴らしい。
ドハマリのキャスティングでそれぞれの背景が浮かび上がる。
ほろにがラストがなかなか素敵で、女じゃこうはいかない。

ネタバレBOX

舞台は食肉センターの一室。
休憩室でもあるこの部屋で、沢村(伊原農)と玄田(有馬自由)が話していると
そこへ一人の青年が入って来る。
伊舞(比佐一平)という、ニートだったが最近就職したこの青年は
実は食肉センターの大手取引先会社の跡取りだった。
立場がくるくる入れ替わり、強気になったり下手に出たり、
恫喝まがいになったり懇願したり、3人の男たちは
次第に自分をさらけ出してぶつかり合う。
利害の絡む、守るべきものを持つ男たちの闘いの結末は・・・?

ドンピシャのキャスティングに惹かれて怒涛の台詞について行く感じが心地よい。
それぞれが守りたいものに固執するあまり、矛盾に気づかない様が面白い。
そこを相手が容赦なく突いてくると、敵意をむき出しにして突っかかって行くところが
男のストレートで可愛いところ。
女ではこうはいかないし、女なら別の描き方をするだろう。
男3人の芝居の面白さを堪能した。

差別の歴史を持つ職業にありながら
絶対的な技術と自信を持って臨む彼らの複雑な誇りが謙虚で清々しい。
そこへ「命の重み」を持ち込んで「残酷だとは思わないのか」となじる若造が
次第に尊敬の念を抱き始める、に違いないと思わせるラストが秀逸。
このあたりの素直さもまた男芝居のたまらなく面白いところ。

熱量の大きいこの芝居も折り返し地点にさしかかった7公演目。
台詞もノッて来て、とてもリズムが良かったと思う。
残念ながら私はiakuの舞台を観ていないが
どんな役者、どんな演出にも染まり得る素晴らしい脚本だ。
逆に言えば、「やってみたい」と思わせる台詞満載の本。
ハイリンド、ぜひまた観たい劇団が増えた。
お父さんの休日

お父さんの休日

劇団娯楽天国

駅前劇場(東京都)

2018/11/21 (水) ~ 2018/11/25 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/11/22 (木) 19:00

三十周年記念特大号のしっかりしたパンフレットからもその歴史が感じられる。
舞台となる山奥の鄙びた(ぽっとんトイレの)旅館(名前はリゾートホテル)がきっちり再現され、
久しぶりに作り込んだセットを観た。
無理くり感はあるものの、ドタバタの中にいつの時代も変わらない
“人の心の揺れ”が描かれていて温かい。
番頭さんと女将さんがいいキャラだったなあ。
またオチが秀逸。


ネタバレBOX

思いっきり古い例を挙げるなら、どこかむかーし昔の「てんぷく笑劇場」みたいな、
レトロなフライヤーそのままの、騒々しくもほのぼのとした人情噺。

リストラされて、クビではないが系列会社のラーメン屋の店長になれと言われた
傷心のサラリーマンが主人公。
東北弁の女将に癒されているうちに、
家にいるはずの妻と娘や、会社の若い社員と連れの女、自殺願望のニューハーフ、
自撮り娘二人組、マタギの熊吾郎、ホストクラブの先輩後輩、そして
耳が遠くて腰の曲がった番頭の徳治郎が入り乱れて大騒ぎ。
宿は風吹と雪崩に見舞われて孤立してしまうが、無事助かって
一同めでたし、というお話。

24年前に初演した作品の再演だが、
“敢えて”の古めかしさが昭和のムードを醸し出して懐かしい。
半端なレトロは古臭さを感じさせるが、振り切れているので逆に定番の安定感がある。
                          
オチを知ってから舞台を辿ると、そう言えば…ということがいくつも出てきて
あらためて巧いなあ、と思う。

気弱なサラリーマンを演じた鷲津知行さん、
ラスト近くの独白がとても良かった。
これがあるから単なるドタバタではなく
居場所を失くしたお父さんの悲哀が強く印象に残る。
しんみりと良い台詞だったと思う。

コテコテの濃いキャラが行き交う中、
女将の着付けがとてもきれいで、ユーモラスな訛りとは裏腹に洗練された所作が美しい。

番頭さんの“耳が遠い”キャラを都合よく使い分けている辺り、ただ者ではない。
「ホテルマンのマナー」、良かったっす。

30周年を迎えた劇団の、益々のご活躍をお祈りいたします。




遺産

遺産

劇団チョコレートケーキ

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2018/11/07 (水) ~ 2018/11/15 (木)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/11/09 (金) 14:00

独立した作品ながら、9月に上演した「ドキュメンタリー」とゆるやかに繋がる内容。
普通の人間が“組織”や“命令”を理由に凄惨な実験を繰り返した731部隊。
あの現場を嫌悪しつつも、研究者として至福の時だったと回顧する老医師の告白が
淡々としているだけに、彼の背負ったものの重みを感じさせる。
選び抜かれた台詞が素晴らしい。
本編終了後に浅井さんのひとり芝居があり、狂気とはまた別の顔を見せてくれた。

ネタバレBOX

1990年、死の床にある一人の老医師とそこに現れる過去の亡霊たち。
旧満州ハルビン市郊外のピンファンに、陸軍の細菌兵器開発を担う巨大施設があった。
731部隊と呼ばれた集団を率いたのは石井四郎。
彼の強力な推進力のもと、中国人を“マルタ”と呼んで実験に使った。
まさに唾棄すべき行為であったが、同時に研究者にとっては至福の時でもあった。
老医師の死後、貸金庫から彼が遺した一つの資料が発見される。
その“遺産”を託された青年医師のもとに
かつて老医師とともに731部隊にいた男が現れる・・・。

老医師が告白するように、あの数年間は“耐えがたくも至福の時”であったという
まさにそれこそが最も恐ろしい事だ。
そして731部隊の幹部全員が、細菌兵器の研究成果と引き換えに
戦犯訴追を逃れ、米軍の要望に応える形で血液銀行を創業、
幹部の多くは731部隊出身者であった。
高々と理想を掲げて多くの人々の人生を狂わせた連中の、この要領の良さ!
この血液バンクは、やがて薬害エイズを引き起こし
再び研究優先、利益優先、研究者の天国は繰り返されることになる。

岡本篤さん演じる老医師は、終始淡々と自己の半生を振り返る。
己の利己主義に絶望し大学の研究職に未練なく別れを告げる潔さが、彼の覚悟を物語る。
その誠実さから、その後の人生をどこか諦めている風が良く似合ってはまり役。
戦後も731部隊での研究を巧みに加工して論文を発表しようとする
同僚(渡邊りょう)との対比が鮮やかで、作品の救いである彼の良心が際立つ。

浅井伸治さん演じる天野軍医少将は、石井軍医中将を信奉して迷いが無い。
組織と教育・命令の根深さや日本特有の責任の所在を曖昧にしたがる性を考えさせる。
端正な口跡が本当に魅力的でいつも惹きつけられる。

無駄のない台詞で緊張感を保ちながら一気に魅せる脚本はさすがで
時空を行き来する演出も違和感なくついていける。
ラスト、片言の日本語を話す“女マルタ”が踊るところだけ、
いたずらにセンチメンタルを絵にした印象で、ちょっと違和感を覚えた。

部隊が全て引き上げた後、証拠隠滅のために300人のマルタを処分し
延々と遺体を焼き続ける傭人役の佐瀬弘幸さんが味わい深い。
その下で手伝いをする少年隊員役足立英さんの瑞々しさが救い。

こういう題材に果敢に取り組む姿勢がまず素晴らしい。
私のように「ボーっと生きてる」者でも考えさせられる、
演劇にはこういう力があるのだといつも改めて思う。
だから劇チョコが見せてくれるものを追いかけたくなる。





愚か者。たがらもの【尻軽娘に愛と無関心のブルースを】

愚か者。たがらもの【尻軽娘に愛と無関心のブルースを】

獏天

Geki地下Liberty(東京都)

2018/10/12 (金) ~ 2018/10/21 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/10/16 (火) 19:00

圧倒する役者陣の熱量、洗練されたダンス、昭和なヤクザと人情が入り混じった
このテイストが最大の魅力。
一二三(にのまえ ふみ)という名前もフルってる警視庁キャリアのキャラが最高!
カラオケボックスが住居兼事務所という設定もいい。
ヘイ&ジューという、エリートコースに背を向けた二人の破天荒な日常が
作品全体を振れ幅の大きいドラマにしていて面白い。
だから事件の落としどころも、非現実的ながら感情的にはすんなり受け入れてしまう。

ネタバレBOX

舞台には四角い木箱のようなボックスが数個のみ。
このさっぱりしたセットは、探偵事務所、警察署、ヤクザの組事務所にと
変幻自在で、しかも蹴っても投げつけても壊れないという優れもの。

廃れたカラオケボックスを住居兼事務所にしている探偵コンビ。
平吾は元警察官、十蔵は東大出で元外務省官僚というエリート二人が、
なぜカラオケボックスの月30,000円かそこらの家賃が払えない人生になったのか?

その原因となったのはどうやら「スモーキースマイル」という謎の人物らしい。
数年前企業や政治家の悪行をネット上に晒して日本中を席巻、その後地下に潜った。
今回、そのスモーキースマイルが久しぶりに活動を再開したかと思われる事件が起きた。
ヤクザの手助けをする闇の医師や、AVビデオに出演させられた女、
平吾と警察大学で同期だった警察庁のキャリア、腐れ縁の地元のヤクザなどが入り乱れて
舞台は大混乱、大アクション、大喧嘩、大汗かいてのアツいエンタメとなった。

平吾役の太田雄路さん、ストーリーを牽引するキレの良いアクションと
硬軟併せ持つキャラが魅力。
十蔵役の汐谷恭一さん、正統派の二枚目ながら美人に惚れると呆けたようになる
ギャップが可愛い。
警察庁キャリア役の谷岡由扶子さん、スタイル抜群で美人なのに
実は複雑な過去を持つ二三(ふみ)の切なさが伝わって来た。
シリーズ化に必須の、魅力的なキャラが揃っている。

メンツを重視するヤクザや、情に傾いた解決など、昭和テイストとも言える
ちょっと“懐かしいテレビドラマ”のような手触り。
単純なヒーローものには無い温もりを感じさせてとても心地よい。
このセンスがいいなあと思う。

「スモーキースマイル」というダークな存在もまた謎めいていてすごく惹かれる。
これって法で裁けない悪者に制裁を加える“闇の仕事人”的な?
いずれにしても主役二人の人生を狂わせた理由が知りたい!
と思っていたらエピソード0を2019年秋に上演するという。
え、1年も待つの?



幻書奇譚

幻書奇譚

ロデオ★座★ヘヴン

新宿眼科画廊(東京都)

2018/09/28 (金) ~ 2018/10/08 (月)公演終了

満足度★★★★★

65分の濃密な会話劇は、コンパクトでガッと集中できる理想的な時間だ。
澤口さんがキレのある口跡とたたずまいで冒頭から惹きつける。
「ナノ文書」って一体どんな書物なんだ、と興味を抱かずにいられない展開が見事。
緊張感溢れるストーリーに笑いを差し込むセンスもさることながら
そもそもこのオチが、脚本・柳井氏の“大人の余裕”を感じさせて秀逸。

ネタバレBOX

アクティングスペースには7つの丸椅子と小さなテーブル、
その上には遺跡から発掘された土器のような器と、薄い木箱が置かれている。
ここは博物館の会議室。
これから「ナノ文書」と呼ばれる書物をめぐって激論が交わされることになる。

「ナノ文書」は、12年前に日本の調査団がとある国で発掘した“書物”だ。
詳細な鑑定の結果2400年前のものと判った。
“世界最初の書物発見”、と大々的に報道され、専門家による解読が待たれたが、
ある時から「ナノ文書」は忽然と姿を消してしまった。
調査も打ち切られ、「やはり捏造だったのだ」という噂が独り歩きを始める。
マスコミに糾弾された関係者は病死、失踪、失職などに見舞われ
謎は謎のまま12年が経った。
その「ナノ文書」が博物館の倉庫から発見された、というので
世間は再び「捏造疑惑」に沸いているのである。

集まったのは、博物館の副館長をはじめとする研究員や事務局のスタッフ5名のほか、
元新聞記者で今は実家のうどん屋を継いでいる面堂(鶴町憲)と
日本考古学研究所の主任安西(澤口渉)。
実は、7人は皆「ナノ文書」に翻弄され、今もその中途半端な幕切れを引きずっていた。
やがてそれぞれが抱えていた秘密が明るみに出て、「ナノ文書」の内容が明かされる・・・。

おっと、そういう理由か!というオチが面白かった。
「ナノ文書」は“世界平和の鍵を握る最古の書物”ではなく
“世界最古の職業”のための指南書であった。
人類は今も昔も変わらぬ愛おしい俗物であり、社会も政治家も成熟していない社会では
それを笑って受け容れることが、何としても出来ない。

この笑えない真面目な人々の失敗を
極めて真面目に議論し追及し、最後に「ナノ文字」を解読できる元新聞記者が
手袋をはめ、そーっと書物を開いて読み始める時の緊張感こそが
この作品の最大の山場であり、次の瞬間の爆笑とのギャップが冴え渡る。

失意のうちに亡くなった「ナノ文字」を解読した女性研究者ゆかりの人々が
立場を隠して博物館にもぐりこみ、真実を探ろうとしていた、という設定も
登場人物の単なる正義感だけでない必死な思いに繋がっていて説得力あり。

ロデオの音野さん、澤口さんのキャラの造形が鮮やかで
体幹がしっかりしているから、鶴町さんのアツさがはみ出さない。
全体を牽引するような鶴町さんの台詞は相変わらず素晴らしい。
副館長役の福田真汐さん、ほっそりしているがとても“らしい”キャラで
華やか且つリアルな存在感。

人知を超えた現象を扱ったり、未知の生物が出てきたりと
柳井作品の辛口ファンタジーはいつも魅力的だが
こんな風に“身から出サビ”をもファンタジーにして
“勝手に期待して勝手に失望する”人間の可笑しさを描くとは!
柳井さん、次はどの方向からファンタジーにアプローチするのか、マジで楽しみです。



ドキュメンタリー

ドキュメンタリー

劇団チョコレートケーキ

小劇場 楽園(東京都)

2018/09/26 (水) ~ 2018/09/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

劇団員3人による生チョコみたいに濃密な会話劇。
キャラの設定がドンピシャで、特に岡本篤さんの老医師がはまり役。
「ようやくこの時が来たか」という“開き直り”と“待ってた感”がないまぜになったような
淡々とした覚悟が素晴らしい。
浅井伸治さんの正義感に突き動かされる実直なプロパーも良かった。
ラスト、もう少しドラマチックになるかと思ったが、これもドキュメンタリーということか。


ネタバレBOX

舞台はフリーライター(西尾友樹)が先輩ライターから借りた仕事部屋。
ある日、ここをひとりの男(浅井伸治)が訪れる。
グリーン製薬のプロパー(営業)で、「内部告発をしたい」というその男から
話を聴くためだった。

グリーン製薬は、血友病患者が使用する血液製剤を製造するトップメーカー。
他国が安全な加熱製剤に切り替えた後も、日本は非加熱製剤を使い続けた。
グリーン製薬の在庫を売りさばくため、エイズ感染の可能性を知りながら・・・。
プロパーの男は、この事実に耐えられず、告発したいと言う。
そしてもうひとり会社の裏側を知る男、グリーン製薬を辞めて小児科医を開業する
老医師(岡本篤)にコンタクトを取り、彼からも話を聴くことになる。
彼の語る会社の体質は、あの731部隊の恐るべき実態に繋がるのだった・・・。

正義感溢れるフリーライターが話を聞き出す形で進むが
若干前のめりなキャラとはいえ、彼が一人で動き回るのがちょっと不自然に映った。
が、それがあまり気にならなくなるほど、明らかになっていく事実に衝撃を受ける。

製薬会社のルーツが、あの731部隊にあるということ、
かつて人を“マルタ”として扱ったように、在庫処分のため危険な血液製剤を売り続ける。
根底にある実験優先、科学優先、利益優先の精神は全く変わっていなかった。

研究者にとって、常軌を逸したあまりに自由な現場は、彼らに黒い狂喜を覚えさせ
その記憶は製薬会社にそのまま持ち込まれたのだ。

ところがラスト、あれほど内部告発に燃えていたプロパーから、
「やはりできない」という電話が入る。
暗澹とするフリーライター。
「どうしますか、二人でやりますか?」と問う老医師・・・。

難しい歴史的事実に果敢に切り込むチョコレートケーキだが、今度はこれか、という驚き。
そしてそれをエンタメに仕上げるには「明快な理由が必要」と言う古川氏の言葉に納得。
史実としては「謎」だが、演劇で相変わらず「謎」と言われては社会の教科書と同じだ。
豊かな創造力による「明快な理由」があって初めて観る者は共感する。
チョコレートケーキの作品を観た時の「そうだったのか!」という深い共感は
これ故だったか、と思った。
たとえそれがフィクションであっても、である。

したたかな反面、人生の最後に自らを総括したいという老医師のたたずまいが素晴らしい。
単純な批判だけでは済まない人間の業を感じさせる。
実直なプロパーの緊張と憤りが伝わるような視線、表情がリアルで一緒に肩に力が入った。
彼の心変わりの変遷がどうしても知りたいと思わせる。
牽引役となるフリーライターの台詞、冒頭の録音シーンから事の重大さが伝わる。
迷いなく突き進んできた彼の、ラストで茫然とするシーン、このギャップが次を期待させる。

演劇の力を見せつけるテーマの選択、これからもずっと見続けたい。
それを具現化する役者陣の素晴らしい台詞に酔いながら。



白雪姫という女

白雪姫という女

ライオン・パーマ

駅前劇場(東京都)

2018/08/23 (木) ~ 2018/08/26 (日)公演終了

満足度★★★★

浅いようで深い、深いようで浅い(?)ライパらしさ全開の作品。
白雪姫が王子の愛によって生き返るという美談に隠された驚愕の真実。
客演の丹羽隆博さんが、濃い悪役を魅力的な声と台詞回しで演じている。
お妃さまの心理がリアルで面白い。
終わってみれば、何だかめちゃくちゃ素敵なラブストーリーじゃないの!

ネタバレBOX

毒りんごを食べさせられた白雪姫(絹川麗)が、
王子(石毛セブン)のキスによって生き返ってから20年、
二人は小さな村の鏡工場で働きながらひっそりと暮らしていた。
ところが、あのお妃(比嘉建子)にもう一度嫉妬の炎を燃え上がらせ
再び毒りんごを買いに来るよう画策する男たちが居た。
ミスタ―小助川(丹羽隆博)とりんご農園主バトラー(加藤岳仁)である。
今回毒りんごを食べさせられるのは誰か、
そして20年間誰も知らなかった秘密とは・・・!?

冒頭の“意味深・実はナンセンス”な会話で
悪者小助川を演じる丹羽さんの声に魅了された。
鏡男(瀬沼敦)の佇まいも良い。

この作品一番のキモは、“20年間秘密を抱えて来た王子”ではないか。
白雪姫を純粋な愛情で生き返らせたのではなく、
計画的に毒消しを注入しただけだったという、その事実は王子を長く苛んできた。
鏡工場で働く王子の仕事は「目視」、完成した鏡に自分を映して曇りや傷を見つけること。
それはそのまま自分自身の弱さと向き合うことだった。
その辛さに耐えられず多くの者が「目視」を続けることが出来なかった。
王子だけが、許せない自分自身から逃げずに向き合い続けた。

真実を知った白雪姫が、一度はショックを受けたものの
「一緒にいたこの20年間こそが愛情の証」と気づいて
刑務所に送られた王子を待ち続ける。
刑期を終えて出て来た王子は白髪交じり、迎える白雪姫の髪も真っ白。
この愛が軸にあるから、周囲がおちゃらけても心に残るものがある。

それともう一つ、悪役の妃を支える健気なマテス(草野智之)の純な気持ちが
人間の多面性を描いて深みがあった。
ライオンパーマが大人の恋愛を描くとこうなるのか、と新たな発見!


バンブーオブビッグ

バンブーオブビッグ

劇団マリーシア兄弟

Geki地下Liberty(東京都)

2018/08/16 (木) ~ 2018/08/19 (日)公演終了

満足度★★★★

劇団10回目の記念すべき作品は、お笑いライブが開催される劇場の楽屋が舞台。
芸人たちのキャラがバリエーション豊かで作品に奥行きが生まれている。
この作品の笑いと涙を一手に引き受けている感じの、お笑いの場面が秀逸。
男だらけの“暑苦しい”作品の中、ミドリの淡々とした言動が涼やかで魅力的だ。

ネタバレBOX

本番前の楽屋では、先輩後輩コンビ、来ない相方を待つ者、ピン芸人、
落語家、事務所の社長二人、そして不穏な空気漂う二人が出番を待っている。
カエデ(佐々木祐磨)とヨウヘイ(中島健人)のコンビのうち、ヨウヘイだけが
映画に出演することになり、しかもそれが“別のお笑い芸人と組んで漫才をやる”役
ということで、カエデは甚だ面白くない。
腹立ちまぎれに「もうお前とは組まない」と口走るカエデ、
ヨウヘイも「映画も辞める、芸人も辞める」と言ってしまう。
本番は刻々と迫ってくる・・・。

自分も何らかの問題を抱えながら、衝突する二人をなだめたり説教したりして
二人を見守る周囲のキャラが良い雰囲気。
“徹底的にヤな奴”が登場しないのはマリーシアの特徴だろうか、
そういう”育ちの良さ”も、私がこの劇団が好きな理由のひとつだ。

誰も悪くないのに上手くいかないのが世の中ってやつで、そのほろ苦さを
社長のミドリ(大浦力)が体現している。
前作「Green Peace」で“辞めたいと言う相方を引き留めなかった”ミドリが
今、同じ状況の若い芸人にどんなアドバイスをするのか、というのも
今作の見どころとなっている。

そこにもう一人、ミドリの過去を知るカラキ社長(歳岡孝志)が絡むのが面白い。
演じる歳岡さんが自然体ながら、この人の台詞になると舞台が落ちつく。
一度この方の劇団Please Mr. Maverickを観てみたいと思った。

久々にマリーシアに合流した佐々木祐磨さん、勢いのある台詞がメリハリを生む。
今日一番ウケたのはキヒラユウキさんの“コーライッキ飲み”じゃないか?

作品中のお笑いの台本がとても良く出来ていて楽しい。
ナンセンスな一発フレーズに頼ったりするのではなく、
きちんとストーリーがあって、客の気持ちが一緒に動くようなお笑い。
終盤ネタを離れて二人の関係が変化する辺り、構成の上手さも光る。
通常マリーシアの台詞はリアルで細かいやり取りが持ち味だが、
その分ストーリー展開がもたつきがちな時がある。
それがお笑いの台本になると必要最低限の会話で、一気に話が早くなる。
作品全体の緩急を生み、ラストが締まる。

「バンブーオブビッグ」というよくわからないタイトルの意味が明かされた時
考えてるなあ、と軽い衝撃を受けた。
ミドリ社長、あなたは自分を大切にしていますか?
息子を心配するような気持で、オバサンは劇場を後にしたのだった。


『首無し乙女は万事快調と笑う』&『漂流ラクダよ、また会おう』

『首無し乙女は万事快調と笑う』&『漂流ラクダよ、また会おう』

ポップンマッシュルームチキン野郎

シアターサンモール(東京都)

2018/08/10 (金) ~ 2018/08/15 (水)公演終了

満足度★★★★★

「漂流ラクダよ、また会おう R18」を鑑賞。
テイストの違う短編が問いかけてくるのは「存在」ではないか。
信じていた「自分」が相手には「別の自分」として映っていた。
自己の存在のはかなさ、自己主張の虚しさ、
所詮自分は“相手に委ねられている”ことの腹立たしさ・・・。
自分を見失いがちなのも当然、私たちは“人の思惑”で生きている。

そんな真面目なテーマを内在させながら、R18で崩してみせる、
このバランスがいつも楽しいんだな。
少々の下ネタでブレるようなテーマではないから出来ることなのだろう。
「君といつまでも」の静かな狂気に寄り添う哀しみが素晴らしい。

ネタバレBOX

R18の回の楽しみは、そのナンセンスな笑いを織り込んだアドリブっぽいやり取りと、
にもかかわらず結構シリアスな本流がブレずに貫かれているのを観ることだ。
“R18の看板”井上さん、いつもありがとうございます。
手に汗握る活躍でした(笑)

ひとりの作家が、謎の知的生命体(作家にはラクダに見える)と交信、
互いの星の物語を語る、というかたちで短編作品がくり広げられる。

全編を通して問われているのは「存在」、
そして「存在」は「相手からどう見えているか」が全てである、ということ。
自分が信じる「自分」よりも「相手にとっての自分」が優先するという理不尽が
面白く、皮肉っぽく、また痛切に語られる。

いつも華奢な身体を惜しみなくさらけ出す野口オリジナルさんが
誰だかわからないようなラクダメイクで熱演、骨太の知的生命体になった。
声も太く、表現の幅を感じさせた。

「私の彼は甲殻類」の増田赤カブトさん、観る度に上手くなるなあ。
ひとり芝居をここまで集中させ、笑わせるようになったかと、母の気持ち(笑)
台詞も間も、ほんとに面白かった。

「老婆と椅子」の吉田翔吾さん、心を持つ椅子の気持ちが伝わって切ない。
結局夕子は望み通り幸せな死を迎えられるのだと暗示していてほっとする。

「君といつまでも」の加藤慎吾さん、ストーリーを知って観ると
冒頭からその表情や台詞に苦いものが混じっていることがわかる。
認知症の進んだ妻が自分に見ているのはかつての恋人であり、
自分はどこにもいない、という絶望的な状況がどれほど人を苛むことか。
それでも病む妻に寄り添っていこうという決意が辛く哀しい。
この老夫婦の後日談が観たいと思わせる。
自分の存在を否定する妻を、夫はどこまで受け入れるのか、
それは愛情と呼べるのか・・・?

笑いながらこんな重いテーマを突き付ける、
だから吹原幸太さんの作品から目が離せないのだ。



ブラックマーケット1930

ブラックマーケット1930

ユニットR

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/06/27 (水) ~ 2018/06/30 (土)公演終了

満足度★★★★★

岸田理生カンパニーのメンバーを中心とした結成されたユニットで、
ユニット名の“R”は理生さんのRだという。
初めて観たユニットRは、言葉の一つひとつが刻々と色を変えて粒立っていた。
台詞の強さと美しさが、カニバリズムのグロテスクな内容を際立たせる。
浮浪者の女が、やがて女王のように君臨する皮肉が素晴らしい。

ネタバレBOX

舞台中央には、血にまみれた肉屋の“仕事場”らしき台が横長に置かれている。
それがそのまま別のシーンでは食卓になり、肉に飢えた客が料理を堪能する。
戦後の食糧難の中で、肉などどこにも売っていないのに
その肉屋に行けば肉が手に入る・・・。

肉屋は人を屠るときだけ、“生の実感”を得ることが出来た。
だがある日、浮浪者の女に脅される。
「ここに一緒に住まわせて。もし私が死んだら友達が私の手紙を警察に持って行く」
女はまもなく肉屋を操るようになる。
「そろそろ狩りに行っておいで」
そして客を集めて美味しい料理を出すのだった。
だが肉屋はもはやかつてのように屠る喜びを得ることが出来なくなっていた・・・。

繰り返される「肉」「飢え」、その「肉」と引き換えに「性」を売るのは
食欲と性欲が同列に並ぶからに他ならない。
そして人は欲望に忠実な時だけ、真の喜びを味わうことが出来る。
命令されたり、システム化されたりすると、途端に喜びは半減し、苦痛と化す。
肉屋を見ているとそれが良くわかる。

前説の諏訪部仁さんがソフトな挨拶をして頭を下げ、その顔を上げないうちに
最初の台詞が発せられる。
その不気味なまでのギャップで、いきなり異世界に引きずり込む導入が巧い。
実在するのかしないのか不明な幻覚の男、強烈な存在感で忘れがたい。

浮浪者だが、肉屋を脅して人肉の調達を強要する女を演じた江田恵さん、
殺人鬼に対して、不敵なまでの上から目線が素晴らしい。
殺した人間を肉として売れば証拠はなくなるが
それをよりおいしく食べよう、という発想は肉屋の上を行くと思う。
ある意味、人間を牛豚鶏と同等に考えて“仕入れ”を命令しているよう。

どんな世界にも「マーケット」はあり
そこに「ブラックマーケット」も存在する。
永遠に正当化されない、だがあからさまに欲望に忠実な人間が
店頭に並んでいるのだ。

ユニットRの隙の無い役者陣、魅力的な台詞と声、ぜひまた観たい。




ツヤマジケン

ツヤマジケン

日本のラジオ

こまばアゴラ劇場(東京都)

2018/06/05 (火) ~ 2018/06/10 (日)公演終了

満足度★★★★

犯罪史上名高い大量殺人事件の犯人を「同席させて」舞台が始まる。
女子高生のまっすぐな身勝手さと、孤立を恐れる気持ちが交差する。
期待していた人に裏切られると、身体のどこかでじわりと殺意が芽生える恐怖。

ネタバレBOX

携帯の電波も入らない山奥に、合宿のため女子高の演劇部がバスでやって来る。
途中部員のひとりがバスに乗り遅れて、到着してから大騒ぎになる。
ちゃらんぽらんな顧問の教師、ツンデレの演劇部長はじめ、
全員が何らかの思惑を持って、誰かを観察しながら行動している。
そんな中、部屋の隅に“その男”を見つけたのはキコ(藤本紗也香)だった…。

懐中電灯を頭につけたあのいで立ちで客席から登場し、部屋の隅にうずくまる男ムツオ。
津山事件の犯人の名前は都井睦雄、バスに乗り遅れた生徒の名前は都井。
そう思って当日パンフの人物相関図を見ると、登場人物は全員
世を騒がせた殺人事件の犯人と同じ名字を持っている。

偶然合宿所の管理人の男の秘密を知ってしまった生徒が彼に襲われ、
目撃した生徒も襲われ、ついに殺人事件が起こってしまう。

「好きな人が幸せになるのも、不幸せになるのも見たくない」という生徒の台詞、
最初に、大好きだった祖母の首を斧で切り落とした睦夫の行動。
身勝手な思い入れが先行する彼らの行動は
勝手に他者に期待して、その期待を裏切る者は許さないという
自己中心的な点で共通している。
孤立するのを極端に恐れ、それを避けるためなら嘘をつくくらい何でもない。
時折笑いを織り交ぜながらイマドキの女子高生をリアルに描き
ふとしたきっかけで振れ幅が度を越せば、津山事件のようなことも起こり得る、と思わせる。

「あと10人くらい…」と言いながら客席を抜けて去っていくムツオ。
その思いを受け継ぐかのように、懐中電灯を頭に付け日本刀を持つキコとユキ。
二人がこれからどうするのか、教師と部員たちに制裁を加えるのか、
というところで舞台は終わる。
女子高生の誰もが煮詰まって爆発する可能性を秘めているところがキモ。
その爆発の連鎖が見たかったかな。
殺戮シーンが見たいわけではないが、隅からじっと見つめるムツオの不満が
彼女らに乗り移るような相互交流がもっとあればと思った。
キコとユキがラスト、津山事件を思わせるいで立ちで出ていくのが若干唐突な感じ。

キコを演じた藤本紗也香さんが巧い。
とらえどころのない浮遊感があって、存在感大。
ヤバいことをしている管理人の松本役の野田慈伸さん、それがばれた時の
緊張感が素晴らしく、一気に客席も緊張した。
ひたむきで世間知らずで、でもしたたかな女子高生たちが、実は一番怖いのかも。
堀が濡れそぼつ

堀が濡れそぼつ

MCR

ザ・スズナリ(東京都)

2018/05/18 (金) ~ 2018/05/22 (火)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/05/18 (金) 19:30

まったくこれじゃ堀は濡れそぼつしかないじゃないか、というお話。
久しぶりに櫻井さんのブラック全開な展開がめちゃめちゃ楽しい。
複数の強烈な個性が生き生きと躍動する感じは役者のテンションと巧さの賜物。
みんなパワーあるなあ、中でも堀さんのテンション・コントロールはさすが。
ハイスピードで繰り出す台詞の中にピュアなスピリッツが見える。
飛び道具的キャラも効いているし、舞台の作り・場転もうまい。


ネタバレBOX

妻にはかつて恋人がおり、彼は自分の親友だった。
彼が死んでしまって、自分はその彼女と結婚した。
妻は妊娠している、郊外に一軒家を立てた、自分たちは幸せだ。
ところが押しかけ隣人や昔の友達、怪しい霊媒師、出所して来た夫の友人など
おかしな人々が出入りして平和なはずの新居に波風が立つ…。

“何となく避けて通っていること”をおせっかいで意地悪な人々が
容赦なくえぐり出してくれる“余計なお世話感”満載。
おかげで夫婦は言うつもりの無かったことまで口に出し、溝に発展する。
その中で堀のスタンスはぶれない。
時々小さくぶれるのだが、芯はぶれない。
だから孤独で切なくて、結果堀(堀靖明)は濡れそぼつ。

そんな彼を、そして怪しい霊媒師(澤唯)に騙されて
壺やらなにやら買わされている妻(笠井幽夏子)を救うのは
意外なことにちょっと困った出所したばかりの友人櫻井(櫻井智也)だ。
“人を殺すことを何とも思わない”この友人が黙って彼らを救う。
さんざん言われっぱなしやられっぱなしだったからスカッとするラストが秀逸。
めでたしめでたしで何だかとても嬉しくなる。
この“世直しヤクザ”なキャラ、スピンオフで何かやって欲しいくらい。

いつもながら伊達香苗さんのダイナマイトボディが存在感大。
人の幸せを妬んで壊したがるキャラを遠慮なく演じて効果絶大。
超年齢不詳な子ども(加藤美佐江)が飛び道具的に面白く、効いている。
堀の妹の婚約者でAV男優(長瀬ねん治)が味わい深い。
櫻井さんのキャラが久々に突き抜けて実に爽快。
そして堀さん、いいヤツだなあ、末永くお幸せに!





Brand new OZAWA mermaid!

Brand new OZAWA mermaid!

EPOCH MAN〈エポックマン〉

APOCシアター(東京都)

2018/05/05 (土) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/05/12 (土) 14:00

小沢道成さんのひとり芝居観劇は2回目だが、今回も素晴らしかった。
世間知らずな少女の“期待しすぎな”夢と好奇心がまぶしい。
なんて綺麗な人魚、そして脚なんだろう!
人魚は軽やかに東京を目指すが、
パーカッションのドラマチックな演出が彼女の選択の重大さを表している。
ライブならではのアクシデントをものともせず、
たたみかけるような台詞とテンションでむしろパワーアップさせるのはさすが。
ひたむきな“平成人魚姫”が東京を泳ぎ渡る。

ネタバレBOX

黒い舞台の奥にドラムセット。
波の音が次第に高くなる中、開演を待つ。

ティア―ドスカートの人魚は、海の底で人間世界の情報を収集している。
「an an」を読んだりして地上の生活をシミュレーションするのが可笑しい。
18歳を迎えた姉たちは、次々と広い海へ出ていく。
決して人間に近づかないように、と注意を受けて…。
やがて一番下の人魚が18歳になった日、彼女は海に落ちた人間の男を助ける。
それが彼女に“人間になる”決心をさせる…。

「人魚姫」は可哀想すぎる、という小沢さんの
「純真さへの愛おしさ」が作品に満ちている。
“東京イマドキ王子”とのあるある感満載の会話や
情報に振り回される若い女性の心理が細やかに描かれてとてもリアル。
日本中毎日どこかでこんなやり取りが交わされているだろう。

演出的には
一大決心をして“足”を手に入れた時のシーンが圧巻。
姉たちの人形も笑った。
冷蔵庫や水族館の演出も巧み。
劇場を活かして目いっぱい楽しい演劇体験をさせよう!という
気概にあふれている。
ドラムのマルシェⅡ世さんが、にこやかに人魚を見ているのがまたいい。

ラスト、海辺で花火を見上げる人魚は何を思っただろう。
これからどうするのだろう。
小沢人魚は泡になったりしない気がする。
海へ還るより、東京を自在に泳ぐ方がずっと似合っている。

ひとり芝居でありったけの想像力を結集させる小沢さん、
次は何だろう、絶対また観に行きます。
いたこといたろう

いたこといたろう

渡辺源四郎商店

ザ・スズナリ(東京都)

2018/05/01 (火) ~ 2018/05/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

「なべげんイタコ演劇祭」と名付けた今回の公演、
GW唯一の休みに、2本立てのうち1本を観ることが出来て観劇感激!
青森に伝わる特異な文化“イタコ”という「生者と死者”をつなぐ者」が
なんと強烈かつ優しい存在であることか。
経文と憑依のシーンがキモだが、人の本音が迫力満点で迫り素晴らしい。
「イタコ体験ツアー」とかあったら絶対行きたい!

ネタバレBOX

舞台中央から奥は大きな祭壇、階段状にぎっしりと並んだ神仏の類い。
両脇にはたくさんの白い着物や制服など、亡くなった人のものだろうか。
祭壇中央には深紅の細い珊瑚みたいなものが炎のように立っている。

イタコ(林本恵美子)の元をひとりの女性が訪れる。
このサトウハナ(三上晴佳)はホトケオロシを依頼するが、実は深い事情があった・・・。

冒頭からイタコの唱える経文に惹き込まれた。
インチキか、超現象か、という議論を超えた土着のリアリティが素晴らしい。
もうひとつの見どころは憑依する場面、イタコの師匠でありハナの育ての親の登場だ。
子を“捨てた”者、“捨てさせた”者、そして“捨てられたが大切にされた”者が交差する。

イタコを通して、つまり人知を超えた存在から告げられる真実は
恨みつらみを生むのではなく、聞き手に自然な受容の姿勢をとらせる。
生きている者から言われると受け容れ難いことも、死者の声として告げられると
どこかからりとした雰囲気ですんなり入って来る。

アフタートークで畑澤氏が「3.11で被災しなかった東北人としての表現を探った結果」
のひとつが「イタコ」であったという話が心に残る。
「イタコ」も「カミサマ」も風土と結びついた文化である。
“生きている者同士では上手くいかない世の中”にあって、人はこんなかたちで
救い、救われるすべを生み出した。
そこに演劇表現の原点を見い出した畑澤氏に感服。
これからもイタコ劇作家として様々な作品を見せて下さい。

このページのQRコードです。

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