ブラックマーケット1930 公演情報 ユニットR「ブラックマーケット1930」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    岸田理生カンパニーのメンバーを中心とした結成されたユニットで、
    ユニット名の“R”は理生さんのRだという。
    初めて観たユニットRは、言葉の一つひとつが刻々と色を変えて粒立っていた。
    台詞の強さと美しさが、カニバリズムのグロテスクな内容を際立たせる。
    浮浪者の女が、やがて女王のように君臨する皮肉が素晴らしい。

    ネタバレBOX

    舞台中央には、血にまみれた肉屋の“仕事場”らしき台が横長に置かれている。
    それがそのまま別のシーンでは食卓になり、肉に飢えた客が料理を堪能する。
    戦後の食糧難の中で、肉などどこにも売っていないのに
    その肉屋に行けば肉が手に入る・・・。

    肉屋は人を屠るときだけ、“生の実感”を得ることが出来た。
    だがある日、浮浪者の女に脅される。
    「ここに一緒に住まわせて。もし私が死んだら友達が私の手紙を警察に持って行く」
    女はまもなく肉屋を操るようになる。
    「そろそろ狩りに行っておいで」
    そして客を集めて美味しい料理を出すのだった。
    だが肉屋はもはやかつてのように屠る喜びを得ることが出来なくなっていた・・・。

    繰り返される「肉」「飢え」、その「肉」と引き換えに「性」を売るのは
    食欲と性欲が同列に並ぶからに他ならない。
    そして人は欲望に忠実な時だけ、真の喜びを味わうことが出来る。
    命令されたり、システム化されたりすると、途端に喜びは半減し、苦痛と化す。
    肉屋を見ているとそれが良くわかる。

    前説の諏訪部仁さんがソフトな挨拶をして頭を下げ、その顔を上げないうちに
    最初の台詞が発せられる。
    その不気味なまでのギャップで、いきなり異世界に引きずり込む導入が巧い。
    実在するのかしないのか不明な幻覚の男、強烈な存在感で忘れがたい。

    浮浪者だが、肉屋を脅して人肉の調達を強要する女を演じた江田恵さん、
    殺人鬼に対して、不敵なまでの上から目線が素晴らしい。
    殺した人間を肉として売れば証拠はなくなるが
    それをよりおいしく食べよう、という発想は肉屋の上を行くと思う。
    ある意味、人間を牛豚鶏と同等に考えて“仕入れ”を命令しているよう。

    どんな世界にも「マーケット」はあり
    そこに「ブラックマーケット」も存在する。
    永遠に正当化されない、だがあからさまに欲望に忠実な人間が
    店頭に並んでいるのだ。

    ユニットRの隙の無い役者陣、魅力的な台詞と声、ぜひまた観たい。




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    2018/06/29 23:04

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