One Situation Four Texts 公演情報 舞台企画 斜楽生「One Situation Four Texts」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2019/03/09 (土) 14:00

    「起承転結」という4つの文字を元に、4作家が全く違った作品を創る企画。
    カラーの違いを見せて面白いが、強く印象に残ったのは
    2作目の劇団マリーシア兄弟主宰、大浦力さんの作品。
    なさぬ仲の頑固な師匠と弟子が、周囲の温かいフォローで素直に向き合う話。
    落語を題材にしただけあって、ウィットに富んだ会話がクスリと笑わせる。
    この劇団の持ち味である“愛あるぶっきらぼう”な人々の世界が生きている。
    もう一つは4作目の劇団時間制作主宰、谷碧仁さんの作品。
    息が詰まるような日々を送る法学部の学生3人が「自由になる」ために
    姉妹を誘拐・監禁するという罪を犯す、その最後の1日を描く。
    緊張感溢れる展開が巧い。

    ネタバレBOX

    起…脚本・演出:居候ユニット7%竹主宰 武藤心平 「アミューズ・ブーシュ」
    妻と3人の娘を残して死んでしまった父が、あの世でご先祖様の力を借りて
    気に入らない娘の彼氏と対決するため、彼の前に姿を現すというストーリー。
    生前、監視カメラで二人を監視していたつもりが、実は家族に気づかれていた。
    最後は心優しい家族に見送られてあの世へ戻って行く。
    挿入されるダンスの唐突感が否めないのと、妻や娘のキャラが説明不足な感じ。
    種明かしした後の妻や娘たちがとても素敵なキャラなので
    そこを丁寧に描いたらもっとハートフルになったんじゃないか、という気がする。
    それと私の好きなヨシケン改さんの使い方がもったいなくて残念。
    “おバカでハートフル”な雰囲気は伝わって来た。

    承…脚本・演出:劇団マリーシア兄弟主宰 大浦力 「コミックストーリー」
    落語家の二海亭一門を率いる師匠は、独身のまま、
    死んだ弟の子を引き取り噺家として育てて来た。
    その子の二ツ目昇進を巡り “情で昇進” “身内だから” という声が
    兄弟子のみならず本人からも上がって穏やかだった一門に小さな波風が立つ。
    弟子たちによる“立体落語”のような出だしが面白く、それでまず状況が把握できる。
    昇進を辞退する甥っ子の頑なさをほぐすのは、昇進できない兄弟子。
    このあたりの優しく切ないアプローチはマリーシアの得意とするところで
    「いいヤツだなあ、昇進できなくても絶対必要な人だ」と思わせる。

    ウィットに富んだ会話が効いていて、師匠役のキヒラユウキさんが良かった。
    「落語は地に落ちた、落語だからね」…そりゃそうだ、オチがなくちゃね。
    「弟子って漢字で書くと弟の子って書くんだよ」…これ素晴らしい!
    笑いを求める人がいなくなるような平和な世界が理想、というクールな師匠、
    今回はアドリブ少なく(?2回繰り返したところがあったような気はしたが.
    違っていたらごめんなさい)
    落語だけでなくエンタメの存在感をきっちり語ってキメていた。

    せっかく落語界を舞台にしたので、もう少し江戸っぽさが出ると良かったかな。
    江戸弁のキレの良さと粋、艶、落語好きとしてはそこが好きでたまらないのだ。
    江戸っ子の、“強がって無理してるけど、実は照れくさくて優しく出来ない不器用さ”は
    マリーシアの持ち味ととても相性が良いと思う。
    最後に甥っ子が「昇進のお話、承りました」ときっちり「承」を決めるところも◎


    転…脚本・演出:劇団青色遊船主宰 白井ラテ 「クライマックスに向かってる」
    不登校など行き場を失った人々を受け容れるフリースクールを舞台に
    それぞれに訪れる転機と、そのせっかくのチャンスを見送って
    相変わらずの世界へ戻って行く葛藤を描く。
    10代の妊娠、クスリの売人、家族関係などシリアスな場面に説得力がある。
    ラスト浴衣のエピソードは泣かせる。

    結…脚本・演出:劇団時間制作主宰 谷碧仁 「ツルのハ」
    法学部の男子学生3人が、息が詰まりそうな日常への不満を爆発させる。
    自由になるんだ・・・親から、勉強から、不安から・・・いったい何から?
    彼らがやったことは、姉妹を誘拐・監禁すること。
    やがて犯人3人の関係にほころびが見え始め、それが大きな亀裂となって
    終盤の悲劇へとなだれ込んでいく。
    被害者と犯人、リーダーと従属者の力関係が目まぐるしく入れ替わり
    その度に緊張が一層高まるところが素晴らしい。
    ラスト、そもそも3人が空き別荘という空間を手に入れてはしゃいでいた
    1週間前のシーンで終わるところが巧い。
    アサガオの花でもなく、水をやる人でもなく、ただ棒に巻き付く
    ツルの葉っぱに過ぎなかったのだという独白が哀しい。

    個性豊かな作家によるオムニバス、観たことの無かった劇団も含め
    新しい魅力に出会えたことが楽しかった。
    天井の高い舞台も面白く、皆それを活かしていたと思う。








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    2019/03/10 00:03

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