ツヤマジケン 公演情報 日本のラジオ「ツヤマジケン」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    犯罪史上名高い大量殺人事件の犯人を「同席させて」舞台が始まる。
    女子高生のまっすぐな身勝手さと、孤立を恐れる気持ちが交差する。
    期待していた人に裏切られると、身体のどこかでじわりと殺意が芽生える恐怖。

    ネタバレBOX

    携帯の電波も入らない山奥に、合宿のため女子高の演劇部がバスでやって来る。
    途中部員のひとりがバスに乗り遅れて、到着してから大騒ぎになる。
    ちゃらんぽらんな顧問の教師、ツンデレの演劇部長はじめ、
    全員が何らかの思惑を持って、誰かを観察しながら行動している。
    そんな中、部屋の隅に“その男”を見つけたのはキコ(藤本紗也香)だった…。

    懐中電灯を頭につけたあのいで立ちで客席から登場し、部屋の隅にうずくまる男ムツオ。
    津山事件の犯人の名前は都井睦雄、バスに乗り遅れた生徒の名前は都井。
    そう思って当日パンフの人物相関図を見ると、登場人物は全員
    世を騒がせた殺人事件の犯人と同じ名字を持っている。

    偶然合宿所の管理人の男の秘密を知ってしまった生徒が彼に襲われ、
    目撃した生徒も襲われ、ついに殺人事件が起こってしまう。

    「好きな人が幸せになるのも、不幸せになるのも見たくない」という生徒の台詞、
    最初に、大好きだった祖母の首を斧で切り落とした睦夫の行動。
    身勝手な思い入れが先行する彼らの行動は
    勝手に他者に期待して、その期待を裏切る者は許さないという
    自己中心的な点で共通している。
    孤立するのを極端に恐れ、それを避けるためなら嘘をつくくらい何でもない。
    時折笑いを織り交ぜながらイマドキの女子高生をリアルに描き
    ふとしたきっかけで振れ幅が度を越せば、津山事件のようなことも起こり得る、と思わせる。

    「あと10人くらい…」と言いながら客席を抜けて去っていくムツオ。
    その思いを受け継ぐかのように、懐中電灯を頭に付け日本刀を持つキコとユキ。
    二人がこれからどうするのか、教師と部員たちに制裁を加えるのか、
    というところで舞台は終わる。
    女子高生の誰もが煮詰まって爆発する可能性を秘めているところがキモ。
    その爆発の連鎖が見たかったかな。
    殺戮シーンが見たいわけではないが、隅からじっと見つめるムツオの不満が
    彼女らに乗り移るような相互交流がもっとあればと思った。
    キコとユキがラスト、津山事件を思わせるいで立ちで出ていくのが若干唐突な感じ。

    キコを演じた藤本紗也香さんが巧い。
    とらえどころのない浮遊感があって、存在感大。
    ヤバいことをしている管理人の松本役の野田慈伸さん、それがばれた時の
    緊張感が素晴らしく、一気に客席も緊張した。
    ひたむきで世間知らずで、でもしたたかな女子高生たちが、実は一番怖いのかも。

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    2018/06/07 20:06

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