みさきみさの観てきた!クチコミ一覧

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*pnish*

サンシャイン劇場(東京都)

2011/11/02 (水) ~ 2011/11/06 (日)公演終了

満足度★★★★★

た、た、楽しい!
パニッシュの舞台は縁あって何度か観ているが今回は特に面白かった!
演出は毛利亘宏(少年社中)だったからキャストらへの小細工が効いていて笑いにパンチがあった。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


裏日記はこちら→http://ameblo.jp/misa--misaki/

17世紀初頭、フランス北部の港町に建つホテルに三銃士がお忍び旅行にやってきた。
ルイ13世直属の銃士隊の中でも剣豪として有名なアトス、ポルトス、アラミス。有名人がご宿泊!!とあって支配人やベルボーイは大喜び。大層なおもてなしで大歓迎を受けるが、宿泊している事をおおっぴらにされたくない3人は戸惑い気味。それもそのはず。実はこの三銃士、真っ赤なニセ者だったのだ。

彼らは支配人に「自分達はフランスの任務でここにお忍びでやってきている。だから我々の事は他言無用だ。」と釘を刺すも、おしゃべりの支配人は、街中に触れ回ってしまう。そして三銃士の宿泊にあやかって上手くするとホテルの宣伝にもなるという売名行為も加味して、町で三銃士祭りをするという企画まで立ち上げてしまった。

弱る偽三銃士。そしてそんなパニックの中、フランスの敵であるリシュルの使者がホテルにやってくる。そこに使者を追って銃士隊に憧れるダルタニャンもやってくる。どちらも本物の三銃士を知ってる連中だ。偽三銃士は大慌てで、自分達の身の上がバレないように画策するも、エディー(偽三銃士)はかつて三銃士に憧れてダルタニャンと共に銃士隊を目指した仲だった。

これらの出来事が三重にも四重にも加わり、偽三銃士は自分達のついた嘘がばれないように嘘の上塗りをして、にっちもさっちもいかなくなる。結局薬局、大きな悪さはできない偽三銃士はルイ13世を守る為に、ダルタニャンと共に本当の三銃士のようにリシュルの悪巧みを止めようとする。

「1人は皆の為に、皆は1人の為に」の言葉を掲げながら、戦わずして英雄になれたのは、ルイ13世を暗殺してイギリスと手を組むというバッキンガム公に宛てた密書と偽三銃士がベルボーイを三銃士にするという紹介状を間違えた為だったというオチ。笑

果たして彼らは真の英雄になる事が出来たのだが、ここまでに到着する経過のコメディがまったくもって面白いのだ。偽三銃士の三馬鹿トリオっぷりも可笑しいし、キャストらが放つ仕草もいちいち可笑しい。ひじょうに楽しく解りやすい舞台だった。何でも器用にこなすパニッシュの鮮やかな舞台。お勧め。次回も観たい!
リーボア・ヴォイクト

リーボア・ヴォイクト

おちないリンゴ

Com.Cafe 音倉(東京都)

2011/10/22 (土) ~ 2011/10/23 (日)公演終了

満足度★★★★

奇奇怪怪
アンデルセンの名作「人魚姫」をモチーフにし、映像をコラージュしたオムニバスストーリーというキャッチだったが、特に「人魚姫」というイメージは生まれなかった。「人魚姫」という狂気的で純粋で一途で我の強いキャラクターは確かに魅力的だが、かくゆう人間だってよほど奇奇怪怪だと思うのだ。笑

以下はネタばれBOXにて。。

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「青い鱗」
とあるホテルの一室。一世一代のプロポーズに見事玉砕直後の男(中村祐樹)が一人。そこに現れたのは招かざるタイ人のデリヘル嬢。タドタドシイ日本語を話すサラピョン(木村佐都美)が実にキュートだ。青い鱗を纏った彼女の言葉に次第に男は癒され励まされる。

「Wishcost」
「変わりたい」鏡を見てつぶやく整形女。ユキの部屋に転がり込んでるヒモ男・陽一はゲームをやりながら、まともにユキの話も聞かない。いつも二人でいるのに孤独だ。そんなヒモ男はタマエと言う家出少女の面倒をみてやるなんて言い出す。ユキに何の説明もなくパジャマ姿でヤマンバメイクのタマエ(木村佐都美)が突然訪れ、ユキをおばさん呼びしながらずかずかと上り込んで来る。しかしユキはタマエを使って自分を変えるきっかけを探していたのだった。そしてこの馬鹿王子から離れることを決意する。

「生まれて、もう何百年。後、ひと月で十五。」
老女・ハナサン(木村佐都美)は海を見つめながら何時間も砂浜に座り込んでいる。
そして彼女はそこに愛しい人がいるかのように、
「誰もいない無人島であなたと二人きりで暮らしたい。毎日すき焼きを食べて、接吻して、毎日海で泳ぎ裸足で恋を語り合いカモメのように歌いながら、ずっと二人で・・。」
と繰り返す。それはもう死んでしまった人を何百年も待ち続け、いつか逢えることを楽しみに生き続ける老女のお話。

3話全てに登場した木村佐都美が実に素晴らしい。ガングロタマエからタイ人のデリヘル嬢、そして老女と変化しながら魅せていた。ワタクシがキャラクター的に好きだったのは、なんつったってデリヘル嬢のサラピョンなのだが、シュールな会話の間があまりにも絶妙でコミカルだった。そういう点では1話も2話もコメディなのだが、3話で「待ち続ける女」という一途さに清々しく胸打たれたワタクシは、その情景を想像し、しっとりと、そしてどっぷりと浸かることが出来た。

今回の箱だが、段差のない平面に丸椅子を置いただけだったのでとにかくキャストが見辛かったのが難点。前列は桟敷席にするとか、工夫して段差は作れないものだろうか?
あるいは舞台を高くするとか、なんらかの方法を考えて欲しかった。
ここのキッシュ300円は絶妙な美味さ。後で下北沢に行った折に、また食べようと思う。
ワタクシ、常連客になっちゃう。
音楽劇『夏の夜の夢』『十二夜』

音楽劇『夏の夜の夢』『十二夜』

Studio Life(スタジオライフ)

紀伊國屋ホール(東京都)

2011/10/22 (土) ~ 2011/11/08 (火)公演終了

満足度★★★★

十二夜を観た
双子の兄妹セバスチャンとヴァイオラの乗った船が嵐に遭い、ヴァイオラはイリリアの海岸に打ち上げられる。彼女は消息の分からない兄を死んだと思い、身を守るために兄そっくりに男装してシザーリオと名乗り、イリリアの公爵であるオーシーノに小姓として仕えることにする。

そもそもこの物語はあまりにも瓜二つな双子の兄妹が発端となる恋物語だ。

以下はネタばれBOXにて。。

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オーシーノは伯爵の娘であるオリヴィアに恋をしていたが断られ続けており、オーシーノは、オリヴィアにこの求愛の手伝いをさせる。密かにオーシーノに淡い思いを抱いていたヴァイオラはその命令に苦しむが勤めを果たすべくオリヴィアに会いに行き、使者としてやってきたシザーリオにオリヴィアは心を奪われてしまうのだ。

一方でオリヴィアの執事であるマルヴォリオは、道化師のフェステ、オリヴィアの伯父トービー、彼の友人アンドルーの三人が毎日飲んだくれていることを説教する。これを恨んだ3人はオリヴィアの侍女のマライアと共に、仕返しをする。それはオリヴィアが書いたように思わせる偽恋文を彼に拾わせるのだった。「もし私の愛を受け入れるのなら、黄色い靴下に十文字の靴下留めを身につけ、微笑んで下さい」と書いてあり、彼はオリヴィアの前で実行するが、気違いと思われ、真っ暗な檻に監禁されてしまう。

一方、ヴァイオラがてっきり死んだと思っていた双子の兄セバスチャンは、別の船の船長アントニオに助けられており、彼と共にイリリアにやって来ていた。

場面は変わって、オリヴィアの求婚を巡ってアンドルーはシザーリオに決闘を申し込む。しかしシザーリオのことをセバスチャンだと思い込んだアントニオが割って入り決闘を止め、ヴァイオラは彼が自分の事をセバスチャンと呼ぶのを聞いて、兄が生きていることを知るのだった。

その頃イリリア見物をしていたセバスチャンは、偶然にオリヴィアと出会いセバスチャンは見ず知らずの美しい姫に求婚されて夢ではないかと戸惑うも、その申し出を受け入れる。オリヴィアはシザーリオに今まで頑なに拒まれてきたこともあり、相手の気が変わらぬうちにとすぐに結婚式を挙げてしまう。

その後オリヴィアと出会ったオーシーノは彼女に求婚するも、いつも通り断られてしまう。さらには彼女が自分の小姓を夫と呼ぶのを聞いて、裏切られたと思ったオーシーノはシザーリオに激怒する。しかし身に覚えのないヴァイオラはそれを否定するが、今度はオリヴィアが裏切られたと叫ぶのだ。そんな口論の最中にセバスチャンが現れ、一同は驚くのだった。ヴァイオラとセバスチャンは互いに素性を確かめ合い、別れ別れになっていた兄妹と知る。こうしてオーシーノはシザーリオが女だと知り、改めて求婚し二組のカップルがめでたく誕生した。

スタジオライフといえば宝塚の男バージョンみたいな劇団で有名だ。故にキャストの全ては男ばかりなので女役も彼らがこなすが、いわゆるこれらのオカマが実に美しい。
ヴァイオラ(シザーリオ)役の松本慎也は絶世の美女だし、セバスチャン役の関戸博一とも瓜二つだ。

またマルヴォーリオ役の坂本岳大のキャラクターの立ち上がりがとても素晴らしくて笑えた。

元々、『十二夜』は喜劇だが、スタジオライフ風に味付けするとものすっごくコミカルで楽しい。舞台セット、衣装、照明、音響、全てが秀逸でエンタメミュージカルだ。

そして初日のこの日はサー・トービー・ベルチ役の笠原浩夫が座った途端にパンツの尻が20cm以上も破れ、下着がまるで見えるというアクシデントがあった。このアクシデントを笑いに変えて彼自身が道化に徹するキャストとなった。観客の笑の渦を全て吸収していたが、これがあった為にむしろ楽しめたし、顎が外れるくらい笑い転げてしまった。
暗転後、彼はカーディガンを腰に巻いて登場し、それでも動きによっては白いパンツが見える。苦笑!
そしていよいよ次の暗転でパンツを履き替えて登場しちゃったから、ワタクシはものすっごく残念だった。笑

そんなこんなでとにかく笑った!舞台だった。
スタジオライフ、素晴らしいです。次回も必ず観ます。
でもって、笠原浩夫、がんばれ~~~!!
羽球魂

羽球魂

劇団EOE

千本桜ホール(東京都)

2011/10/11 (火) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★★★

菊池紗都が頑張る!
芝居が始まる前から客いじりサービスが行われる。直原役の菊池紗都が一本眉毛でおぼちゃまくんのように観客をもてなす。笑
いあいあ、これがことごとく可笑しいったりゃありゃしない。勿論、客席は暖まりこれから始まる舞台に期待しちゃうわけよ。

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成績もバドミントンも有名な名門女子高「山手女子大」と、お世辞にも成績がいいとは言えない三流大学「東京夢の島大学」の2校が合併し「東京山手大学」として新たなスタートを切ることになったバトミントン部の目標は「山手女子大」が代々守り続けてきた東都リーグ団体戦のシード権を守ることにあった。

しかし部員不足から男女それぞれの単体で団体戦に出場することが出来ない。そこで残るもう一つの策は「混合団体」だった。しかし、旧山手女子大の部員と、旧東京夢の島大学の部員とではやる気のベクトルが違いすぎる。果たして彼らは混合団体としてシード権を守れるのか?が今回の課題だ。笑

旧東京夢の島大学の部員達はシード権獲得をのっけから諦めムード。これに対抗し旧山手女子大の部員らのバトミントンに対する想いが熱い。スポコン魂と彼らの恋愛事情を絡めながら、お互いをしごき、戦いの精神的レベルを向上させていく物語だった。

なんとなく柿喰う客のスポーツ編のような感じ。キャストらのハイテンションでスピード感溢れる長セリフに圧倒された。特に塩川零役の平澤有彩のカツゼツが素晴らしい。そしてスマッシュフォームが美しい。バトミントン部員だったんじゃないか・ってくらい。
中島みゆきの導入音楽もいい。
エクソシストたち

エクソシストたち

渡辺源四郎商店

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/12/02 (金) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

バリ、コメディ!
現代。北東北の小都市の閑静な住宅地で30代の母親と 小学生の娘、そして新しい父親が生活している。娘に異変が起きたのは 2ヶ月前から。男のような声でわけのわからぬこと を口走り、母を罵倒するように なった。顔はむくみ、ひび割れ、目は真っ赤。頬は 痩せこけ、可愛かった面影はどこにもない。「悪魔 が憑いた」と判断するよりほかなかった。そして、 この日、父親は 様々な能力を持った悪魔祓い(エクソシスト)たちを呼んで悪魔祓がいま始まる のであった。

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これはコメディである。11歳のちづるが上記のように陥る情景を見せない代わりに音や声で観客に想像させる仕掛けだ。一方でちづるから悪魔が移動してちづるの担任の村田に乗り移った場面では、しっかり村田(三上晴佳)は悪魔になる。笑

一方でバリ怪しげなエクソシストたちの詐欺的な行為が見ものだ。カミサマや僧侶、神父、ヒーリングミュージシャン、精神科医と、続々やってくる。もうこれ以上の神頼みはないぞ!ってくらいのおでましだ。そして一様にちづるが大きなベッドに括られながら叫ぶ光景を見て心の底から仰け反り、己の力量がそこまでないことを今更ながらに知らされるのだ。

まあ、元々、コイツラは似非エクソシストなのだから、何をどう転がしても悪魔祓いなんてできゃしないのだ。そんな折、本当の悪魔の真実が徐々に浮き出される。それはちづるの母・まゆみが浮気した相手と一緒になりたくて元夫をないがしろにしてしまった事だった。一つの家族で巻き起こる妻の性癖とちづると父親の関係を描写しながら、繰り返されるまゆみの罪を表現した舞台だった。本来、悪魔はうそつきなのだ。そして言葉の中に少し真実を混ぜ合わせる。そんな隠れた悪魔のお話。

面白い。ちづる役の音喜多咲子の淡々としたセリフ回しが素敵だ。工藤由佳子もいい。

Kと真夜中のほとりで

Kと真夜中のほとりで

マームとジプシー

こまばアゴラ劇場(東京都)

2011/10/14 (金) ~ 2011/10/24 (月)公演終了

満足度★★★★

絶妙な心理描写
田舎街の中心にあるシャッター商店街や、そこから見える丘の上の家並み、そしてその先にある湖、これらの風景は3年前となんら変わらない。変わったのはKが突然として居なくなったことだ。Kの兄のかえでは、あれ以来、夜中になると街中を何かあるんじゃないかと思ってうろつく。同じように、Kの同級生や友人たちも夜中になると、うろつく。まるで絶滅する恐竜が広い草原をかつて自分たちが繁栄してた頃を懐かしむような悲しさだ。

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Kは3年前に湖のほとりに靴を残したまま失踪した。誰かが突然、居なくなるということ。それは衝撃のなにものでもない。彼らの記憶が消滅するまで、Kは彼らの中で生き続けているのだ。記憶の欠片は、大切な何かを求めるように揺さぶられて、今でも彷徨い続ける。

高校生であったKは多感な年頃で、何かに泣いたり、夜中に電話をしたり、誰かを訪ねたりと眠れない夜を過ごしていた。そんな妹の行動を何も知らなかったかえでは、街中に尋ね人のビラを貼り、彷徨う。そうして歩きながら湖にたどり着くのだ。他のみんなと同じように。

それでも朝はやってくる。しかしその朝は本当の朝じゃない。彼らの夜はずっと終わらないのだ。街はあらゆるものを飲み込み、猫の屍骸やゴミも飲み込み、汚いものも漂っている。そして歴史も。

昼間は普通に暮らしながらも、夜中になるとKを思い、Kとの思い出の儚さに憂い彷徨いながら、現実の悲しさに打ちのめされた孤独な人間の心理を描写していた。その表現方法は繰り返される言動と行動だ。

ワタクシは藤田貴大の本が好きだ。彼の描く世界はいつも一つだ。今回はKという失踪した少女を軸に彼女に関った人たちの心を描いていた。何度も繰り返される同じセリフと行動に、意味がないように思う方もいるかも知れないが、何度も繰り返されるその刷り込みで、じわじわ~っと彼らの心情が痛くなるほど響くのだ。
だから今回も、その痛みを察して悲しくなり、この舞台全体が放つ悲壮感にも似た後悔や、それぞれが抱えた想いが錯綜するのだ。

キャストらは、汗ダクダクで頑張っていた。序盤、その動きは無駄のように感じたが、ある瞬間から、彼らの動きが、彼らのもがく心の動きだと感じて、のめり込んだ。
ハアハア、ゼイゼイしながらセリフを吐くので聞き取れない部分もあったが、まあ、生身の「「人間だから」(みつお)笑
シャッフル

シャッフル

劇団スパイスガーデン

東京タワー 1F 特設ホール(東京都)

2011/10/28 (金) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★

サスペンス
戸辺コウヘイの元に突然届いた案内状。そこには「拘束期間はわずか1日、報酬は200万。ただこちらの指示に従って頂くだけの簡単なモニター調査です。」と書かれていた。・・・・・から始まる物語。

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これをきっかけにとあるワイン工場に呼び出された5人は、かつて共に銀行強盗を企て5億の金を盗んだ仲間だった。

しかし襲撃直後に自分達の中に裏切り者がいることを知るメンバーたち。さらに不慮の事故により盗んだ5億円を運んでいたレイモンドが記憶喪失になってしまう。裏切り者も金の在りかも分からなくなった4人はレイモンドの記憶を取り戻す為にプロジェクト「シャッフル」を企画する。しかし、そしてこの「シャッフル」のモニター担当者・神宮寺によって「シャッフル」は進まれるが彼の出すむちゃくちゃな課題に状況は二転三転する。

レイモンドの記憶を取り戻す為にこの企画は練り上げられていたはずだったが、レイモンドは元々、記憶など失ってはおらず、裏切り者はレイモンド自身だったことが解るも、時は既に遅し。レイモンドは仲間を殺し、5億を独り占めにしたというサスペンス。

物語は良くあるお話で想定内。レイモンドが結婚詐欺師だった過去も暴かれ、こtらはどちらかというとこの物語を彩る過去に過ぎない。また以前観た「バンカラ」ほど熱いメッセージはなく、物部ユウサクとレイモンドのおちゃらけた動作もあったことから、コメディサスペンス的な描写が多かった。だから終盤に混乱と狂乱のシャッフルがあったとしてもワタクシを刺激するほどの緊張感や恐怖感やワクワク感への誘導力に欠けたように感じた。

それでも出演したキャストが魅力的だった為に女子の観客が多かった。ワタクシの観た回は空席がちらほら。
The Girls next door 公演は無事終了いたしました。ご来場ありがとうございました。

The Girls next door 公演は無事終了いたしました。ご来場ありがとうございました。

遊戯ヱペチカトランデ

APOCシアター(東京都)

2011/12/08 (木) ~ 2011/12/12 (月)公演終了

満足度★★★★

ファンタジーミュージカル
会場に入ると電子ピアノで生演奏の調べ。当日パンフに書かれたモスクワカヌのメッセージが美しい。彼女の繊細な言葉の使い方は独特で、こちらの感性をくすぐりながら物語をみついでいくさまはワタクシの好みのど真ん中だ。だから、女子高校生らが合唱するシーンで、まず泣けた。この涙はたぶん当時の女子高校生だった頃の光景を思い出したからだ。

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卒業記念公演に演じる舞台を演劇部の顧問、木村絵里子先生が指導する場面から。現在の木村と10年前の高校生だった木村の過去を舞台上で交錯させながら演出していたが、過去と現在の一線の描写が曖昧な箇所があり分かり辛かった点が残念だった。

10年前に消えた高校生の謎を現在の卒業記念公演の舞台の内容に盛り込みながら、当時の彼女たちが何を考え行動していたかを表現した物語だったように思う。相変わらずワカヌが役者に吐かせるセリフの一つ一つが美しい。

毎年、夏の終わりに願い事を書いて流す「勾玉流し」を信じていた彼女らは、海の向こうにいる神様に願い事を書くが、自分で直接、神様に伝えたい、と思うようになる。残酷で危うい年頃の彼女達は純真さゆえの自殺への憧れも同時に持っており、人の心に新しい世界を創造する魔法(空想)を夢見ていた。彼女達は願いは叶うとか、愛は国境を越えるとか信じて疑わなかった多感な年頃だったのだ。

「少年たちの夏休み」みたいに、私が死んでも貴方が覚えていてくれたら、私は失われず生きている、なんてセリフも自分達のもう一つの世界である、ネバーランドのような感覚だ。私の姉妹は坂本さちお(女生徒)を愛し、悪い夢に囚われて死んでしまったが、あの美しく残酷な同性愛が真実の愛の物語だと締めくくる。

くだらないおとぎ話の中で真実を隠そうとする悪い魔女の話とか、ママのような魔女になれないとかのセリフは映画「ハリーポッター」を思い起こさせ、彼女達はまだ未熟な魔女だ。彼女達の吐くセリフに「ママ」がよく登場し、「私を愛して」とのセリフに重なり合う、この物語は基本的に渇望する愛を描いたものだとも思う。

導入生音楽は勿論のこと、演出が素晴らしい。

劇中、様々なシーンで感極まって泣かされた。
未熟な魔女達のファンタジー。

ソウル市民五部作連続上演

ソウル市民五部作連続上演

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

ソウル市民昭和望郷編
1929年10月24日、ソウル。篠崎文房具店にも大衆消費社会の波が押し寄せ、新しい経営感覚が求められていた。この家の長女に求婚したアメリカ帰りの新進企業家は精神を病んで、入退院を繰り返している長男を毛嫌いする。一方、エリートとして総督府に勤めながらも植民地支配への協力に悩む篠崎家の朝鮮人書生。関東大震災以来の重苦しい不景気を打開するため満州への進出を企てる日本国家。

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世の中がまるでビデオテープのように早送りして怒涛のごとく回転しているが、篠崎家の女性たちはつかの間の饗宴を楽しむように、相変わらず浮世離れな生活を送っていた。

一群の若者たちの姿を鋭く切り取ったシリーズ第三弾では、満州へと向かう道すがら、京城を通り過ぎる謎の若き芸術家集団が登場する。篠崎家では第一弾は手品師を、第二弾は力士といった具合に必ず余興めいた人物を登場させているが、今回の芸術家集団は青年団の中でもアニマル軍団的な要素の強い輩たちだ。笑

ボインの山本裕子、カンガルーのような石橋亜希子、ヤクザ顔の二反田幸平、妖怪っぽい木引優子が揃って芸術家集団という設定なのだから怪しいにもほどがあるのだ。しかも二反田に至ってはダンスなのか体操なのか理解に苦しむ踊りを踊らされて寸劇そのものを披露しちゃうのだ。二反田は第二弾でも書生として登場したが、個人的にはもっとセリフを与えて欲しい。

またこの回は長野海と渡辺香奈の民族の舞があったが、これが実に美しい。
惜しむらくは朝鮮人が吐く言葉がさっぱり解らず、字幕が欲しかった。
これから

これから

アンティークス

OFF OFFシアター(東京都)

2011/11/09 (水) ~ 2011/11/13 (日)公演終了

満足度★★★★

大絶賛な「これから」
アンティークスの舞台は妄想と現実の世界が交錯するのが特徴だと常々思っているが今回の2編はまさにその表現方法だった。特に『これから』は文句なしに素晴らしい作品で後半は涙ナシでは観られなかった。


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「ある日見た坂道で」
高校生のゆきとその教師・海人はつきあっていたが、デートの日に海人は交通事故でなくなってしまう。これをきっかけにゆきは悲しみのあまり現実の世界から逃避し独特の妄想の世界に入り込んでしまう。それは海人とゆきの魂だけが入れ替わるという映画「転校生」のようなものだった。ここまでなら映画でも小説でもよくある話で、ふんふん・・なんつって普通に楽しく観るのだが、物語はゆきがそういった妄想の中で海人と結婚し海人が浮気をしている様子も描く。

そして現実の世界ではゆきがあの頃から10年もたっているのに未だに精神科に入院してるらしいゆきをかつての同級生らが芝居を演じてゆきの記憶を呼び戻そうとしているのだった。
絶望の果てに現実逃避したゆきの物語。
えっちゃんこと柴田和美の小学生バージョンが中々笑える。



「これから」
これほどまでに落涙した舞台は久しぶりだった。
主人公しのぶは現在30歳。100回以上の就活に落ちまくりフテテいたが、いつも笑っている母がしのぶを元気付ける。そんな二人きりの生活に突如として表れた父と妹。彼らは奇妙にケケケケ・・・と笑いながら普通の人間とは違った生き物のように見える。しかし母は「お父さんと妹は前からここに居たでしょ。」なんて呆れた顔でのたまう。

少しは抵抗したものの、やがて、しのぶ自身、この奇怪な父と妹にいつしか癒され奇妙な生活にも慣れ家族として受け入れていく。4人家族としてどうにか枠組みが整った頃、家族旅行の話が盛り上がり母は初恋の人に逢いたいと言い出す。これをきっかけに時空に歪みが出来て1974年の過去、母・ゆみこが高校生だった頃にフラッシュバックし母の初恋と疾病と妊娠の秘密が暴かれるのだった。余命いくばくもないと悟ったゆみこは恋人、つまりしのぶの父親・学と別れることを決意し一人でしのぶを育てる覚悟を決める。

それからというもの、母はしのぶが生まれてから常に自分としのぶをビデオに収め、こういった事情を知らないしのぶはそんな母親をウザク思いながらも愛情たっぷりに育っていったのだった。しかし眠り病の突然変異性という疾病は少しずつ記憶を失いながら、やがて最後には死が待っている。事実そのように母は静かにいつも笑顔を絶やさずしのぶと向き合いながらも、死んでいった。

しのぶは自分が孤独だったことを時々思い出しながらも母との楽しかった過去を思い出す。それはしのぶが望んで止まない妄想の世界だ。その世界にはケケケケ・・と笑う他の星から来た父と妹も居る。その架空の家族は、しのぶの理想の家族像だ。だから、こうしてしのぶは孤独を忘れるように妄想に浸るのである。
就活が思いようにならず孤独に生きる女のお話。

後半はほとんど泣きっぱなしだった。母・ゆみこを演じた鉄炮塚雅よの笑顔が素敵だ。死に直面しながらもしのぶの為に笑顔を絶やさない心もちに泣ける。対してしのぶを演じた森口美香の自然な演技が素晴らしい。孤独感をひしひしと表現する表情もいい。そして不思議な魅力を奏でたさっちゃん(妹)こと、つのだときこがあまりにも素晴らしい。序盤コメディかと思いきや、後半になってがっつりと泣かせる演出と本がお見事!!

「これから」だけなら文句なしに星5つだが総合で星4つとしました。
ソウル市民五部作連続上演

ソウル市民五部作連続上演

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

ソウル市民1939・恋愛二重奏
1939年11月、ソウル。日中戦争からすでに二年が経過し、日本国自体は、長期にわたる戦争状態という泥沼にのめり込んでいた。一方、30年代中盤から始まった好景気、軍需景気の影響を受け、満州への中継点としての役割を担う京城は、虚構の繁栄を謳歌する。国家総動員法の制定、欧州での世界大戦勃発、迫り来る軍靴の音に耳を澄ましながら、相変わらず、篠崎家の人々はそういった世相とはかけ離れた生活をし、つかの間の恋愛に興じる。

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今回で4編目を観たことになるのだが、全体を通してみると篠崎家の人々は「桜の園」に登場しそうな人たちで、やはり浮世離れしているように感じた。だから当事の戦争勃発の緊張感や戦慄はまったく感じられない。また今回のタイトルは恋愛二重奏となっていたが、ワタクシはどちらかというと、寿美子と昭夫の夫婦のズレを露呈させた舞台だったように感じた。

戦争という地獄を見て帰ってきた夫・昭夫は人が変わったように遊びや女に興じて全く働かなくなった。そして寿美子の父・謙一に小遣いをせびる様な始末だ。そんなことから夫婦関係は次第に冷え込む一方だった。昭夫役の古屋隆太が実にいい。彼ほどヤクザ的な・・ってかチンピラ風な役をやらせたら右に出るものは居ない。やさぐれ感のある演技力が素敵だ。

また昭夫が働かなくなったことから家族との折り合いが次第に悪くなっていく光景や昭夫の疎外感や孤独が見事に描写されていたと思う。また1編と2編で堀田家の妻・律子役だった松田弘子が今回は篠崎良子(母)役を演じており、まるで騙し絵を観ているようだった。笑

今回の余興はドイツ人のヒットラーかぶれ。笑
ソウル市民五部作連続上演

ソウル市民五部作連続上演

青年団

吉祥寺シアター(東京都)

2011/10/29 (土) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

サンパウロ市民
1939年11月、ブラジル・サンパウロ。移民開始から三十年を経て、成功者も登場し始めた日系移民。その代表格である寺崎家は、サンパウロで文房具店を営んでいる。欧州での大戦勃発による、日本人学校の閉鎖など、遠い戦争の影響はないわけではないが、それでも寺崎家の日常は平穏である。そこにやってくる相撲取りや、写真花嫁と呼ばれる新移民たち。『ソウル市民』四部作の地球の裏側で展開する、もう一つの「植民」の物語。


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今回の舞台はサンパウロの寺崎家。しかしソウル市民の篠崎家と、殆ど描写は同じで家族設定も同じ。違うのはサンパウロと寺崎家だけ。そんなだから叔父の慎二(山内健司)と書生が文具店店主の酒を盗み飲みしているシーンから始まる。笑

そして、ソウル市民では朝鮮人を差別していたが、ここではブラジル人とブラジルのジャングルに居るという土人を差別しているのだ。そして今回も相変わらず、毎日、この家には色んな人々が来て、ソウル市民1919と同じように阿蘇山という力士がやってくる。
1919の時にも書いたが、青年団のなかで力士役が出来るのは島田曜蔵しかおらず、やっぱり島田が登場して「ごっつあんです!」を連発するのだが、今回の島田の座り位置が舞台手前の左側で、顔が客席からは見えにくい位置だったのが残念だった。

これで全ての回を観たわけだが、やはり島田の目や表情の演技力が凄まじく、力士の回のソウル市民1919とサンパウロ市民が楽しかった!公演は12月4日まで続くので機会があったら再見したい。
少年探偵団

少年探偵団

ネルケプランニング

青山円形劇場(東京都)

2011/10/05 (水) ~ 2011/10/16 (日)公演終了

満足度★★★★

江戸川乱歩「怪人と少年探偵」の世界感
この本は本当によく読んだ物語の一つだ。だから少年の格好をして登場したキャストらを観ると頬が緩んでしまう。東京のデパートの洋服売り場で、人形に扮した宝石泥棒「人形怪盗」が現れたことから始まるこの物語は、どちらかというとシリアスではなくコミカルでハイテンポなさまで始まるが、この始まりはワタクシ達を直ぐに物語の世界感に誘導する。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

小林少年率いる「少年探偵団」の団員である、井上一郎とポケット小僧は、町のはずれで顔の動かない怪しい男を目撃し、尾行しはじめるが、まんまと男の罠にはまり睡眠術をかけられてしまう。二人を助けるべく少年探偵団は中村警部を巻き込み、事件の真相に迫るのだが、中盤にセリフる「私にも少年時代がありました。あの頃の事を思い出すと、なんとも言えない妙な気分になります。それは淡い大冒険の記憶です。少年時代とはいったいいつからいつまでをいうのか解りませんが、とにかく大きな出来事の連続でした。」は、眼の前の芝居に郷愁じみた感覚があいまって、なんとも不思議な気持ちにさせられるのだ。

美しい思い出は歩んだ人生の宝物だが、観客の殆どが若い女性だったことがひじょうに惜しい。本来ならもっと高い年齢の観客に観てほしい舞台だ。そして自分にも、あのキラキラ光った美しい少年時代があったことを思い出して欲しい。世界が希望で満ち溢れていたあの頃。勇気と無謀を勘違いしていたあの頃。危険なことにワクワクしたあの頃。それらの出来事はずっと続くものだと信じていたあの頃。この淡い思いをこの舞台を観て
思い出して欲しいのだ。

「人形怪盗」のごとく怪しい人形は複数、登場する。見方によっては子供じみたように受けるかもしれない。しかし、登場人物の主役は少年だ。だから、ワタクシ達自身が少年になった気持ちで観れば、あの頃に一瞬でも戻れるのだ。

教師役の石倉良信がいい演技をしている。
コントンクラブ image5

コントンクラブ image5

K Dash Stage

本多劇場(東京都)

2011/10/13 (木) ~ 2011/10/23 (日)公演終了

満足度★★★★

おもちろい!
今年のコントンクラブは笑いのセンスが素敵だった。なんでも出演者14人でショートコントやショートストーリーを作り上げたらしく、ショートストーリーに至ってはちょっと感動した展開もあった。ムエタイレストランの店員チャンパに至ってはワタクシの好みのコメディでオモチロ可笑しく笑った、笑った!

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

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そして今年は女子がカッコいい。圧巻のダンスに加え、オムニバスギャグでも大活躍で、まさにエンターテインメント、魅せる舞台だった。更に、イケメン達とのコラボに、女性アクロバット集団G-Rocketsの知念紗耶らの絡みも絶妙で、全てに大満足の舞台だった。

終盤で演出家のリチャード・レインが東京ヴォ-ドヴィルショーの奈良崎まどかにセクハラした事件を、民事裁判中という事も取り上げていたが、マジなのかコメディなのかイマイチ霧の中。笑
今年は公演前にロビーで観客サービスがあり、出演者がパフォーマンスしていて、イケメンを間近に女子観客がドーナツ型に取り囲み楽しんでいた。こういうのっていいね♪
あの日 ママがくれたもの

あの日 ママがくれたもの

メガバックスコレクション

阿佐ヶ谷アルシェ(東京都)

2011/12/01 (木) ~ 2011/12/04 (日)公演終了

満足度★★★★

家族とは
メガバの舞台はひじょうに好きだ。セットといい、物語の風景といい、想像力を掻き立てられるからだ。しかし、今回の物語は全体的にコミカルな部分が多く、観客を無理に笑わせようとしているようなところがあって、ダラダラした感は否めない。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

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だから前半は長く感じた。その後、9才の少女敦美が、ひき逃げされて亡くなったママの当時の記憶(ママから贈られた記憶)の断片を思いだし、まるでママがのり移ったかのように吐くセリフあたりから、舞台全体がホラーのような、あるいはサスペンス調になり、引き締まったように感じた。

敦美が語る事故の記憶によって、誰が犯人かを追い詰めていくさまや、犯人を炙り出そうとして性急に事を運ぶ父・俊介の行動。過去の過ちに怯える篤と恭介ら兄弟の心理描写は流石に上手い。

一方で有紀から去って行った彼をいつまでも忘れられない有紀の欝はなんだか、うじうじしていて頂けなかった。こういったマイナス思考が、性格的にあまり好きではないのだ。

今回は子役の吉原と細野が素晴らしかった。幕後、彼女らが感極まって号泣しているシーンは作られた舞台より、よほど感動してしまったよ。そして新行内啓太はきっちりと見せ場を作り、秀逸な演技力で魅せた。終盤にかけて家族について考えさせられた。今回もクオリティーの高い美術セットは全て劇団員たちによる手作りだ。こちらも素晴らしい。

疑問点をひとつ。滝一也が作・演出を務めているメガバックスコレクションだが、今回、キリマンジャロ伊藤という名で役者として登場していた方は滝ではないのだろうか?ワタクシ、観劇後、マジマジと見てしまったよ。笑
ワタクシも端役で出演してみたいなぁ。

「モカみさ」って芸名で。
傷心館の幽霊

傷心館の幽霊

劇団 浪漫狂

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2011/10/20 (木) ~ 2011/10/23 (日)公演終了

満足度★★★★

バリコメディ!
劇団浪漫狂NEOといえば第27回公演「新・五月晴れの青い空」を観てからなんと2年半ぶりだ。当時は古臭い笑いのネタの乱舞で劇団側は必死に笑わせようとしているのだが、客席はシーン・・。あまりにも痛々しい舞台だった為、ワタクシ自身、遠ざかってしまっていたわけだが、久しぶりに観ようと思い劇場に足を運んだ。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX

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傷心館の幽霊はいくばくかの小劇団で公演しているが、決してホラーではない。むしろコメディだ。

何かに導かれるように傷心館に集まった2人の女と1人のオカマ。オカマのリリーは浩に騙され店の権利証を売られてしまう。信用金庫勤務のOL・美里は不倫相手の上司・寺田に騙され大枚を巻き上げられる。そして丸友商事秘書課勤務のOL・京子は婚約者である銀行の頭取の息子・洋介に破談を言い渡される。

「死にたい・・・」とまで呟いていた彼女達だったが、傷心館のオーナー・絹子に、「無駄死にするまえに騙した男たちを懲らしめてからでも遅くない。」と説得され、近所の村野一家もこれに賛同し復讐劇を計画する。それは自分達を騙した男達を招待しての『復讐パーティー』だった。

浩と寺田に対する復讐劇は、まさにコメディなのだが、浩はヤクザに脅された挙句、オカマにされてしまう。一方で寺田は美里の亡霊を見て失神し、恐怖に慄き返金し自首する。そして京子は今でも洋介を愛しているという理由から、復讐心で彼を酷い目にあわす事が出来なかったが、同じように洋介にも破談せざるを得なかった理由が明らかになり二人はめでたく結ばれる。というオチだ。

観ていて絶妙にスカッとする幕引きだった。そしてオカマのリリー役のJ田平の演技がサイコーに素敵だ。マッチョなバディに程よくこんがり焼けた皮膚のカマ風味が女装している姿を想像してほしい。無駄に気持ち悪いことこの上ないオカマなのだ。笑

そして佐伯卓郎(亡き傷心館のマスター)の存在感の無さは、あまりにも素晴らしい。彼は死んでるのに成仏できない、云わば死にぞこないで、未だに傷心館をうろつきまくっているのだが誰も気が付かない。まあ、幽霊だから気が付かないのは当然なのだが、何をするでもない只、そこに居るだけだ。黒いマントを着て。

ワタクシも最初は気になっていたが、そのうち幽霊が動いても立っていても、殆ど気にならなくなった。とにかく目立たない顔立ちなのだ。だから彼が役者を降りてひっそりとリアルに戻った時、駅で見かけても、あるいは、道でぶつかっても、あるいは犯罪を犯しても、殆ど記憶に残らない顔なのだ。

メフィストフェレスはこんな奴だったのではないだろうか、と思った。悪魔は決して目立たない。悪魔でございますという顔もしていない。いつのまにか、百年の知己のような顔をして静かに隣を歩いているのだ。笑

そんなこんなで無茶な想像もしながらひじょうに楽しめた舞台だった。コメディとしても面白い。そして登場人物もそれぞれがインパクトがあって笑えた舞台だった。次回は紀伊国屋ホールで公演するという。大丈夫か?!
観に行きたいと思う。
IN/GO

IN/GO

EgofiLter

シアター711(東京都)

2011/10/26 (水) ~ 2011/10/30 (日)公演終了

満足度★★★★

カクレキリシタン
実は恥ずかしながらカクレキリシタンをよく知らない。カクレとは今の今までキリスト教だと信じてきたワタクシはカクレと呼ばれるカクレキリシタンがブードゥ教のようなキリスト教と土着の信仰が融合したものだと始めて知る。

以下はネタばれBOXにて。。

ネタバレBOX


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長崎県南松浦郡。上五島の中心である中通島にほど近い孤島、柄島。漁業を営むわずか2世帯14名が居住する島の一角、下窄孝子の家が舞台。劇中のセリフから苗字に下という字がつくとカクレであるとのこと。出来たらこういったカクレについてもっと詳しく描写してほしかった。

孝子の葬儀に離れて暮らしていた3人の娘たちと近所の住民、シスターが集まってくる。孝子はカクレであったが、ある理由から26年前に家を捨てて失踪していた。孝子の3人の娘たちは隣家によって育てられていたが10年前に孝子が戻ってきた時を最後に娘たちは家を出て暮らしていたのだった。

孝子の葬式で集まった娘たちは賑やかな葬式の場でふと自分たちの過去の話題になった時、つばきという4人目の妹が居たことを思い出す。それは26年前、つばきを抱いた長女が階段を滑ってつばきを落としてしまい、これが起因でつばきは死んでしまったのだ。3人の娘たちはつばきを隠してしまえば、なかったことに出来るんじゃないか、という幼子の咄嗟の考えから、長女と秀晴(孝子の弟)の二人でつばきを貯水槽の中に沈めてしまったのだ。

この記憶をすっかり忘れていた京子と八重に陽子が過去の出来事を説明する。「母さんが失踪したのは私たちのせいじゃない。二人とも覚えてないの?じゃあ、ずっと苦しんでいたのは私だけ?!」と。

一方で10年前に孝子が帰ってきてから秀晴は自宅の家の水道に仕掛けをして赤い水が出るようにする。これは失踪した孝子に対して、振り回される周りの人を考えたことがあるのか、水道から血の涙を出して姉さんを反省させる。という秀晴の鬱積した行為だった。

家族を軸に偏狭的な人々は島という、独特の閉ざされた環境で皆で抱えた罪を黙してけっして外に漏らさないことで、柄島独自の治安を守ってきたのだ。一つの事柄に対して秘密を持つということは集団の結束を固め易い。

この物語に登場する佳代子という女がつばきの霊のように振る舞う。母親が神経症になってナンドガミを祀っていた、ナンドガミのようにも振舞う。
この物語はカクレを信仰し続けた女とその家族の物語である。カクレをもっと勉強していたらまた違った見方も出来たと思う。それが残念でならない。終盤、徳雄が歌うカクレの歌が神々しかった。

また序盤に撒いた伏線を終盤にかけてきっちり回収されていたものの、それまでの謎あかしがあまりにも長く思えた。そしてシスターの存在とカクレの関係性もイマイチ良く解らなかった。次回もこの劇団は観たいと思う。本が素晴らしい。。
たゆたう曾祖父

たゆたう曾祖父

さるしげろっく

テアトルBONBON(東京都)

2011/12/08 (木) ~ 2011/12/11 (日)公演終了

満足度★★★★

人間味溢れた公演
セットが素晴らしい。どっしりとした趣のある民宿のセットだ。
祖父の一周忌の為に三姉妹が、老舗の民宿「松浪荘」に集ったさまを描く。三女の多恵(作家)を主軸に大正時代の情景を絡みながらの舞台だった。

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序盤、老齢の腎茂エイジが登場するが、これが実に素敵だ。エイジもこんな風な老人になるのだろうな・・と想像できて楽しかった。また、「松浪荘」のアルバイトの金谷(中村まゆみ)のキャラクターが毎度のごとく、ウザ過ぎるほどで、完全に中村はピエロ化していた。苦笑!

多恵は自分の作品を描く上でルーツを探るべく、見知らぬ曾祖父に想いを馳せる。その物語は作品の中の大正時代の松浪荘だ。曾祖母の恋愛と曾祖父の関係を現代と交差させながら三姉妹の今後の行く末も描いていた。長女、次女、三女の性格設定が絶妙で、次女の夫は、いろんな意味で理想的な夫ではなかろうか?

また画家の湯浅の「みんな好き」な女好きキャラクターの立ち上がりも絶妙で、バカバカしいけれど楽しい。一方でちょい役で登場した人気作家の北原(大竹浩平)がものすっごいインパクトで、観客を喰っていた。正直言ってもっと見ていたかったキャストだったが、ほんのちょっとの登場だったので残念だった。ものすっごいオーラ!ケンシロウもびっくりのオラオラオラオラ・・・の百裂拳オーラ!笑

終盤の描写と導入音楽が素晴らしい。温度のある人情味溢れた舞台だった。
Live forever

Live forever

キコ qui-co.

Pit昴/サイスタジオ大山第1(東京都)

2011/10/26 (水) ~ 2011/10/30 (日)公演終了

満足度★★★★

荒船泰廣の映像力
土着系幻想演劇を謳う小栗としては今回は異色の作品と言っても過言ではないと思う。
今回は1995年、阪神淡路大震災を題材に脚色した物語だ。だから以前のように幻想度は強度ではないものの、演劇としてはやはり虚構の世界だ。

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そして毎回のごとく、この物語に映像がなかったら成り立たないほどの映像力!荒船泰廣の巧みな技だ。ワタクシは以前からこの荒船の映像が好きで好きで堪らない。だから荒船が映像だけで物語を作りますぜ。なんて誘われたらタケコプターで吹っ飛んで行ってしまう。そのくらい好きだ。

虫から成長するヘリコプタの羽。舞い上がる粉塵。青く明け始めた朝の空。誰かの返り血。蝶。カブト虫。大地震で壊れた街並み。焼け爛れた風景。カブト虫が大怪獣に変化していく映像は、残酷な幻想の世界だ。やがてこれらの下で息づいていた主人公・佳代のドキュメントとして家族や知人で構成されるストーリーへとワタクシ達は誘われる。

物語は阪神タイガースの選手・満男が、知的障害者である自分の弟のためにとある施設を設立した。彼の愛人・ミミを管理人にしたその施設は「ハウス」と呼ばれ、近隣の芸大生や関西地区で活動するア-ティストが居住し芸術を作った。ある日、タイガースの選手の本妻が押しかけて、夫を取り戻すべく画策する。一方で本妻が夫の後輩と不倫をしてしまうと、これを許せない夫は「俺のものだ」とばかりに後輩と殴り合いの喧嘩をする。夫はどちらも欲しいのだ。そしてミミを慕うギタリストの久地楽。

佳代のいとこのミミの妹・野花はアホと呼ばれながら育つも絵画に才能を発揮する。世の中のあらゆる悲しみや喜びや怒りや楽しみを彼らはどん底で味わいながら、泣き叫び、そして温かみを感じるのだ。それは真実の人間像なのかも知れない。だから、満男の本妻・ゆう子の感情が不憫で悲しいのだが、彼女は夫を捨てられず、ひたむきに愛するのだ。

そして佳代の恋人は大震災で死に、これらの揉め事は絶えないけれど、彼らの生活の営みはここしかなかった。震災をきっかけに病んだ者。アルコール中毒になった者。避難所で生活しながら彼らが「ハウス」に戻るまでを描いた物語だ。

描写は抽象的でピースをばら撒いたように舞台上の右と左で演技される。そして終盤にかけてがっちりとこれらが結ばれて収束するのだ。当日パンフで配布される「ほしのふるよるにあいましょう」という詩があるが、こちらの方が土着的幻想ではある。そして神のこういった仕打ちを受け入れながら、それでも生きるという業に忠実に生きるのだ。そして、「頑張ろう神戸」と締めくくる。

野花を演じた桑島亜希がめちゃくちゃ可愛い。そして全身タイツを吐いたなんちゃってヌードで登場するあたり、目が離せない。知的障害者・ショウジ役の吉田能が生ピアノを担当し、野球のシーンで魅せる。阪神タイガースの選手・満男役の櫻井よりフォームがいい。笑) それぞれのキャラクター達の見せ場もあって楽しめた舞台だった。

だけれど次回はやはり土着的幻想劇が観たい。なにしろ小栗の独特の世界感が大好きなのだから・・。
我が儘な巨人の足音【千秋楽当日券はキャンセル待ち】

我が儘な巨人の足音【千秋楽当日券はキャンセル待ち】

ノアノオモチャバコ

サンモールスタジオ(東京都)

2011/10/19 (水) ~ 2011/10/23 (日)公演終了

満足度★★★★

大人の童話
とにもかくにもノアノオモチャバコの描写が好きだ。その描写は劇団名と同じく夢見るオモチャバコなのだ。

以下はネタばれBOXにて。。

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ダメ男・中村が今回の主人公。中村はテレビ製作会社に勤務する、覇気のない男だ。カレーに福神漬けが添えてなかったことで恋人・しのぶを詰ったことが原因となりしのぶに振られる。振られてからやっと今更ながらに彼女への想いがつのる中村ダメ男。笑

そんな中村が勤めるテレビ製作会社では「妻沼に現れる伝説の巨人の足」と称してVTRを撮っていたが局からVの契約解除をされ放送出来なくなった。
そして中村はその日から職場の全員が盗賊団ヴォルガになってる光景と、伝説の巨人が居る世界の夢を見始める。彼の観る夢の世界では、巨人の眠りを妨げないように神官が巨人の足を洗う事を義務付けされていたが、ある日、これを怠り巨人は目覚めてしまう。

巨人が眠りから覚めるとその振動で街は大地震が起こり滅びてしまう。だからこの街の勇士はヴォルガに「私たちの街の住民を盗んで欲しい」と頼むが、ヴォルガの長はこの申し出を断り「ならば巨人の足を盗もう」と強調する。

物語は中村の現実と夢を錯綜させながら現実社会と中村の心の内を風刺したような作品だった。つまり巨人の足跡は政治やら得体の知れない大きなものに屈服した人間の残骸で、それらが蓄積された垢なのだ。

そして中村は改めて感じる。恋人との関係も新鮮さを失い、なあなあになっていた事。始まりの頃や最初の想いが、次第に色あせてしまっていつしか恋人を邪険にしてしまっていたこと。これらに気付き後悔し去っていった恋人を取り戻すまでの物語だ。

ストーリーは決して難しくない。極めて解りやすい。中村の心理の動きを捉えた作品だ。
それをノアノオモチャバコ風にアレンジして一見、難しそうに魅せる技が巧みだ。
間の悪い時にばかり電話をかけてくる中村父も中村にとってはダメ父だ。しかし、中村はこれらを土台に立ち上がるのだ。その希望に満ちた幕引きが清清しくて素敵だ。

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