Live forever 公演情報 キコ qui-co.「Live forever」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    荒船泰廣の映像力
    土着系幻想演劇を謳う小栗としては今回は異色の作品と言っても過言ではないと思う。
    今回は1995年、阪神淡路大震災を題材に脚色した物語だ。だから以前のように幻想度は強度ではないものの、演劇としてはやはり虚構の世界だ。

    以下はネタばれBOXにて。。

    ネタバレBOX


    裏日記はこちら→http://ameblo.jp/misa--misaki/


    そして毎回のごとく、この物語に映像がなかったら成り立たないほどの映像力!荒船泰廣の巧みな技だ。ワタクシは以前からこの荒船の映像が好きで好きで堪らない。だから荒船が映像だけで物語を作りますぜ。なんて誘われたらタケコプターで吹っ飛んで行ってしまう。そのくらい好きだ。

    虫から成長するヘリコプタの羽。舞い上がる粉塵。青く明け始めた朝の空。誰かの返り血。蝶。カブト虫。大地震で壊れた街並み。焼け爛れた風景。カブト虫が大怪獣に変化していく映像は、残酷な幻想の世界だ。やがてこれらの下で息づいていた主人公・佳代のドキュメントとして家族や知人で構成されるストーリーへとワタクシ達は誘われる。

    物語は阪神タイガースの選手・満男が、知的障害者である自分の弟のためにとある施設を設立した。彼の愛人・ミミを管理人にしたその施設は「ハウス」と呼ばれ、近隣の芸大生や関西地区で活動するア-ティストが居住し芸術を作った。ある日、タイガースの選手の本妻が押しかけて、夫を取り戻すべく画策する。一方で本妻が夫の後輩と不倫をしてしまうと、これを許せない夫は「俺のものだ」とばかりに後輩と殴り合いの喧嘩をする。夫はどちらも欲しいのだ。そしてミミを慕うギタリストの久地楽。

    佳代のいとこのミミの妹・野花はアホと呼ばれながら育つも絵画に才能を発揮する。世の中のあらゆる悲しみや喜びや怒りや楽しみを彼らはどん底で味わいながら、泣き叫び、そして温かみを感じるのだ。それは真実の人間像なのかも知れない。だから、満男の本妻・ゆう子の感情が不憫で悲しいのだが、彼女は夫を捨てられず、ひたむきに愛するのだ。

    そして佳代の恋人は大震災で死に、これらの揉め事は絶えないけれど、彼らの生活の営みはここしかなかった。震災をきっかけに病んだ者。アルコール中毒になった者。避難所で生活しながら彼らが「ハウス」に戻るまでを描いた物語だ。

    描写は抽象的でピースをばら撒いたように舞台上の右と左で演技される。そして終盤にかけてがっちりとこれらが結ばれて収束するのだ。当日パンフで配布される「ほしのふるよるにあいましょう」という詩があるが、こちらの方が土着的幻想ではある。そして神のこういった仕打ちを受け入れながら、それでも生きるという業に忠実に生きるのだ。そして、「頑張ろう神戸」と締めくくる。

    野花を演じた桑島亜希がめちゃくちゃ可愛い。そして全身タイツを吐いたなんちゃってヌードで登場するあたり、目が離せない。知的障害者・ショウジ役の吉田能が生ピアノを担当し、野球のシーンで魅せる。阪神タイガースの選手・満男役の櫻井よりフォームがいい。笑) それぞれのキャラクター達の見せ場もあって楽しめた舞台だった。

    だけれど次回はやはり土着的幻想劇が観たい。なにしろ小栗の独特の世界感が大好きなのだから・・。

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    2011/12/11 12:47

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